※本記事は、株式会社久世 の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 久世ってどんな会社?
外食産業向け食材卸売事業およびスープ・ソース等の製造販売事業を軸に、「食」のインフラを支える企業です。
■(1) 会社概要
同社は1950年に久世商店として設立され、1967年に現在の社名へと変更されました。1979年にはキスコフーズを設立して業務用高級スープ等の製造に乗り出し、業容を拡大しました。2001年にJASDAQ市場(現スタンダード市場)へ株式上場を果たし、2022年には国分グループ本社と資本業務提携を行うなど、強固な事業基盤の構築と物流網の強化を進めています。
現在の従業員数は連結で649名、単体で395名となっています。筆頭株主は事業提携先である国分グループ本社で、第2位および第3位には創業家出身の役員である久世健吉氏、久世真也氏が名を連ねており、安定した所有構造を形成しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 国分グループ本社 | 19.99% |
| 久世健吉 | 10.28% |
| 久世真也 | 6.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は久世真也氏が務めており、取締役における社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 久世真也 | 代表取締役社長 | 2002年入社。取締役広域営業本部長等を経て、キスコフーズ代表取締役社長や副社長を歴任。2017年より現職。 |
| 久世健吉 | 取締役会長 | 1970年入社。専務、代表取締役副社長を経て、1990年代表取締役社長に就任。2017年代表取締役会長を経て2024年より現職。 |
| 吉田弘之 | 専務取締役 | 中埜酢店(現Mizkan Holdings)を経て2011年入社。海外事業部長、経営企画部長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 加藤広忠 | 常務取締役 | 1979年入社。人事総務部長、経営サポート本部長等を歴任し、香港子会社の董事長などを経て、2021年より現職。 |
| 井出譲二 | 取締役 | プラザクリエイト社長室長等を経て2013年入社。一度退社後2024年再入社し、コーポレートサポート本部長を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、鈴木嘉一(国分グループ本社取締役専務執行役員)、伊能美和子(Yokogushist代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食材卸売事業」「食材製造事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 食材卸売事業
首都圏を中心に関東・中部・関西地区で、外食産業向けの業務用冷凍食品、冷蔵食品、生鮮食品および資材の販売を行っています。また、豊洲市場内での水産物仲卸や国内外向けの販売、中国主要都市における食材販売・物流事業なども手掛けています。
主に顧客である外食産業への商品販売代金から収益を得ています。運営は同社をはじめ、連結子会社の久世フレッシュ・ワン、旭水産、非連結子会社の斎藤商業が国内を担当し、持分法適用関連会社の上海日生食品物流有限公司などが海外展開を担っています。
■(2) 食材製造事業
ホテルやレストラン等の外食産業向けに、専門性の高いブイヨン、スープ、ソースなどの食材の製造および販売を行っています。独自の品質基準による厳格な管理のもと、付加価値の高い専門的な製品を提供しています。
製造した製品を顧客に販売することで収益を得ています。当事業の運営は、主に連結子会社であるキスコフーズおよびニュージーランド法人のKISCO FOODS INTERNATIONAL LIMITEDが担当しています。
■(3) その他事業
報告セグメントに含まれない事業分野として、不動産賃貸事業や物流受託事業、さらにはEC(電子商取引)事業などを通じた新たなビジネスチャンスの掘り起こしを展開しています。
テナントからの賃貸収入や、物流・プラットフォームの利用に関する対価などが主な収益源となっています。当事業の運営は、主に同社が主体となって取り組んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、感染症等の影響を受けた時期からの回復を経て、継続的な増収増益基調にあります。既存顧客への提案営業や新規開拓、輸出拡大の取り組みが奏功し、売上高は安定的に伸長し、利益率も着実な改善を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 439億円 | 565億円 | 645億円 | 686億円 | 735億円 |
| 経常利益 | -7.5億円 | 9.0億円 | 19.4億円 | 21.9億円 | 23.5億円 |
| 利益率(%) | -1.7% | 1.6% | 3.0% | 3.2% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8.1億円 | 7.1億円 | 16.7億円 | 13.6億円 | 12.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い、売上総利益率および営業利益率ともに向上傾向を示しています。各種コストや原材料価格の高騰を吸収しつつ、生産性の改善や価格転嫁に努めた結果、本業の収益力が着実に高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 686億円 | 735億円 |
| 売上総利益 | 157億円 | 174億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.9% | 23.6% |
| 営業利益 | 18.5億円 | 22.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.0% |
販売費及び一般管理費(152億円)のうち、物流環境の変化に対応するための運賃及び荷造費が50億円(構成比33.0%)を占め、次いで給料が20億円(同13.3%)となっています。
■(3) セグメント収益
食材卸売事業はインバウンド需要の増加や提案営業により堅調に推移しました。食材製造事業は原価低減と生産性向上に取り組み、大幅な増益を達成しました。各セグメントが収益の改善に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 食材卸売事業 | 618億円 | 664億円 | 24.2億円 | 25.6億円 | 3.9% |
| 食材製造事業 | 66億円 | 69億円 | 4.4億円 | 8.7億円 | 12.6% |
| その他 | 1億円 | 2億円 | 0.5億円 | 0.3億円 | 18.4% |
| 連結(合計) | 686億円 | 735億円 | 18.5億円 | 22.0億円 | 3.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態である「健全型」のキャッシュ・フロー・パターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.6億円 | 12.2億円 |
| 投資CF | -2.1億円 | -6.1億円 |
| 財務CF | -30.1億円 | -3.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、ミッションとして「食の力で、想いをつなぐ。」を掲げ、生産者から消費者までの想いをつなぐ役割を重視しています。また、ビジョンには「食を通じて 人と人がつながり 心満たされる世界。」を定め、食によるコミュニケーションや相互理解を深めることで、心豊かな未来を目指す姿勢を明らかにしています。
■(2) 企業文化
同社は「頼れる食のパートナー」として、3つの価値(バリュー)の提供を重視しています。「Entertainment(予想を超える楽しさの提案)」「Creativity(時代を先取りする価値の創造)」「Logistics(正確で効率的な配送)」を掲げ、ハード(品揃え)とソフト(サービス)の両面で顧客に貢献する文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「持続可能で質的な成長」を果たすための目標として、以下の指標を掲げて経営を行っています。
* 営業利益率2%
* 自己資本比率30%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の第2フェーズのもと、「成長戦略」「変革推進」「基盤強化」「リスクマネジメント」「グループシナジー」「サステナビリティ」の6つを骨子としています。物流キャパシティの確保やDX化の推進、グループ力を結集したEC事業や物流受託事業など、新たなビジネスチャンスの創出に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「顧客満足と収益向上を通じた働く人の物心両面の幸福の実現」を目指し、個人の幸福と組織の成長を両立させる「ウェルビーイング」の実現を掲げています。「適財適所」「ダイバーシティ」「キャリア形成支援」を推進し、一人ひとりがリーダーシップを発揮する「One Team」の組織づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 10.9年 | 5,775,345円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.1% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 56.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、長時間労働の削減対策における36協定違反者(0名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食材卸売事業への高い依存
同社の連結売上高における食材卸売事業の割合は90.4%と高く、主要な取引先である外食企業の業績が悪化した場合、同社の経営成績や財務状況に直接的な影響が及ぶリスクがあります。
■(2) 食のサプライチェーン・調達の変化
第一次産業従事者の減少や供給網の変化、大規模な気候変動などにより、商品の供給不足や安定調達が困難になった場合、安定した事業基盤の維持に支障をきたす可能性があります。
■(3) インフレーションとコスト高騰
燃料費などの物流関連費用をはじめ、原材料価格、人件費、水道光熱費などが急激に上昇した場合、コスト吸収や価格転嫁が追いつかず、収益性が悪化するリスクを抱えています。
■(4) 大規模災害とサイバー攻撃
国内外の物流拠点が自然災害の被害を受けた場合や、外部からのサイバー攻撃によって基幹システムが停止した場合、顧客への商品供給が滞り、事業継続に影響を及ぼす恐れがあります。



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