久世 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

久世 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の外食産業向け食材卸売および食材製造企業。主要事業は業務用食材の卸売とスープ・ソース等の製造販売です。第78期は、外食市場の回復や新規開拓により売上高は過去最高を更新し増収となりましたが、物流費や人件費等のコスト増により営業利益は微減、経常利益は増益、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社久世 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 久世ってどんな会社?


外食産業向け食材卸売およびスープ等の製造販売を主軸とし、高品質な食材と物流機能を提供する企業です。

(1) 会社概要


1950年1月に株式会社久世商店として設立され、1979年には業務用スープ等を製造する子会社キスコフーズを設立し製造事業を開始しました。2001年9月にJASDAQ市場へ上場を果たし、2009年には生鮮野菜を扱う子会社久世フレッシュ・ワンを設立、2014年には水産物仲卸の旭水産を子会社化するなど事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結614名、単体377名です。筆頭株主は酒類・食品卸売大手の国分グループ本社、第2位は創業者の久世健吉氏、第3位は社長の久世真也氏です。国分グループ本社とは2022年に資本業務提携契約を締結し、関係を強化しています。

氏名 持株比率
国分グループ本社 19.99%
久世健吉 10.38%
久世真也 6.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は久世真也氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
久世真也 代表取締役社長 2002年入社。取締役経営企画室長、キスコフーズ代表取締役社長、取締役副社長兼営業本部長などを経て2017年より現職。
吉田弘之 専務取締役 中埜酢店(Mizkan Holdings)を経て2011年入社。海外事業部長、経営企画部長、常務取締役などを経て2024年より現職。
加藤広忠 常務取締役 1979年入社。人事総務部長、取締役経営サポート本部長、久世(香港)有限公司董事長などを経て2021年より現職。
久世健吉 取締役会長 1970年入社。専務取締役、代表取締役社長、代表取締役会長などを経て2024年より現職。
井出譲二 取締役 プラザクリエイト、東陽テクニカを経て2024年再入社。コーポレートサポート本部長を経て2025年より現職。


社外取締役は、鈴木嘉一(国分グループ本社取締役専務執行役員)、伊能美和子(元タワーレコード代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食材卸売事業」「食材製造事業」および「不動産賃貸」事業等を展開しています。

(1) 食材卸売事業


首都圏を中心に関東・中部・関西地区の飲食店等に対し、業務用冷凍・冷蔵食材、生鮮野菜、資材等の販売を行っています。また、連結子会社の旭水産が豊洲市場内で水産物仲卸事業を展開し、国内外へ水産物を販売しています。

収益は、外食産業等の顧客に対する商品販売代金として受け取ります。運営は主に同社、株式会社久世フレッシュ・ワン、旭水産株式会社が行っています。

(2) 食材製造事業


ホテルやレストラン等の外食産業向けに、専門性の高い業務用スープ、ソース、ブイヨン等の製造・販売を行っています。ニュージーランドにも製造拠点を持ち、高品質な製品を提供しています。

収益は、製品の販売対価として受け取ります。運営はキスコフーズ株式会社およびKISCO FOODS INTERNATIONAL LIMITEDが行っています。

(3) 不動産賃貸事業


同社グループが保有する不動産資産の有効活用として、賃貸事業を行っています。

収益は、主に連結子会社等からの不動産賃貸料として受け取ります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はコロナ禍の影響から回復し、直近では過去最高水準で推移しています。経常利益も黒字転換後、順調に拡大傾向にありますが、当期純利益は直近で減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 379億円 439億円 565億円 645億円 686億円
経常利益 -21億円 -7億円 9億円 19億円 22億円
利益率(%) -5.5% -1.7% 1.6% 3.0% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -17億円 -8億円 7億円 17億円 14億円

(2) 損益計算書


増収効果により売上総利益は増加しましたが、物流費や人件費等のコスト増により、営業利益は前期比で横ばいから微減となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 645億円 686億円
売上総利益 146億円 157億円
売上総利益率(%) 22.6% 22.9%
営業利益 19億円 18億円
営業利益率(%) 2.9% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が42億円(構成比30%)、給料が19億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


食材卸売事業は市場回復と新規開拓により増収増益となりました。食材製造事業は増収ながら原材料価格高騰等の影響で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食材卸売事業 582億円 618億円 23億円 24億円 3.9%
食材製造事業 62億円 66億円 5億円 4億円 6.7%
不動産賃貸事業 1億円 1億円 1億円 1億円 79.3%
その他 1億円 1億円 -0億円 -1億円 -42.2%
調整額 -1億円 -2億円 -10億円 -11億円 -
連結(合計) 645億円 686億円 19億円 18億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、営業で利益を出しつつ、借入金の返済を進め、投資は手元資金の範囲内で実施している「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 7億円
投資CF -9億円 -2億円
財務CF -4億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、ミッションとして「食の力で、想いをつなぐ。」、ビジョンとして「食を通じて 人と人がつながり 心満たされる世界。」を掲げています。生産者から消費者までの想いをつなぎ、食を通じた相互理解を深めることで、社会の基盤となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Entertainment(予想を超える楽しさを、提案します)」「Creativity(時代を先取り、価値を創造します)」「Logistics(正確で効率的に、届けます)」の3つの価値(Value)を提供することを重視しており、頼れる食のパートナーとしての企業文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、計画上の経営指標として以下の数値を掲げており、直近の連結会計年度においてはこれらの目標を達成しています。

* 営業利益率:2%
* 自己資本比率:30%

(4) 成長戦略と重点施策


「持続可能で質的な成長」を目指し、関東エリアへの経営資源集中や低温物流機能の強化、加盟するJFSA商品の拡販を基本戦略としています。また、市場環境の変化に対応し、フードサービスや中食・惣菜分野を強化市場と位置付けています。

* 物流機能の強化とインフラ整備
* EC事業、DX化推進、商品開発、海外事業、グループシナジーの推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「食の力で、想いをつなぐ」というミッション実現のため、「周囲視点重視」と「リーダーシップ重視」を人財方針とし、部門間連携と全体最適を重視する組織づくりを進めています。2023年からは新人事制度を導入し、キャリアプランの明確化や評価の適正化を図り、多様な人材が活躍できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 10.7年 5,570,360円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.3%
男女賃金差異(正規雇用) 60.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食材卸売事業への高い依存度


同社グループの売上高の9割以上を食材卸売事業が占めており、主要顧客である外食産業の景況や動向により、グループ全体の業績が大きく影響を受ける可能性があります。

(2) 原材料・仕入価格の変動


食材卸売および製造事業において、国際情勢や為替変動、自然環境の変化等により原材料や商品の仕入価格が高騰した場合、コスト増加により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 経費の高騰


食材卸売事業は配送業務を伴うため、物流委託先の人件費や燃料費の高騰により物流コストが増加し、利益を圧迫するリスクがあります。物流インフラの確保と効率化が重要課題となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。