※本記事は、株式会社トーメンデバイス の有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トーメンデバイスってどんな会社?
サムスングループ製の半導体および電子部品の販売に特化した、豊田通商グループの専門商社です。
■(1) 会社概要
同社は1992年、トーメン(現豊田通商)、トーメンエレクトロニクス(現ネクスティエレクトロニクス)、三星電子ジャパン(現日本サムスン)の合弁により設立されました。2004年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2005年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2012年には香港に現地法人を設立するなど海外展開を加速させています。
現在の従業員数は連結で197名、単体で119名です。筆頭株主は親会社である総合商社の豊田通商で、第2位は同グループの事業会社であるネクスティエレクトロニクス、第3位は主要仕入先である日本サムスンとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊田通商 | 26.62% |
| ネクスティエレクトロニクス | 23.51% |
| 日本サムスン | 12.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は中尾清隆氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中尾 清隆 | 代表取締役社長営業本部長 | 1991年豊田通商入社。豊通エレクトロニクス常務、ネクスティエレクトロニクス常務等を経て、2024年6月より現職。 |
| 小井戸 信夫 | 取締役副社長 | 1985年リョーサン入社。同社ホンコン支店長、専務取締役等を経て、2022年6月より現職。 |
| 益山 順光 | 常務取締役管理本部長 | 1990年日本長期信用銀行入行。豊田通商財務部長、豊田通商アメリカCFO等を経て、2024年6月より現職。 |
| 松﨑 英治 | 取締役 | 1991年豊田通商入社。同社執行幹部等を経て、豊田通商経営幹部デジタルソリューション本部CEOを兼務し現職。 |
| 小松 洋介 | 取締役 | 1998年豊田通商入社。ネクスティエレクトロニクス取締役等を経て、豊田通商先端モビリティサービス事業部長を兼務し現職。 |
社外取締役は、本田敦子(弁護士)、前田辰巳(元京セラ代表取締役副会長)、浅井敏保(元デンソーテン取締役執行役員副社長)、黄泰成(CaN International 監査法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」および「海外」報告セグメントを展開しています。
■(1) 日本
同社が日本国内において、主に日本サムスンなどの国内サムスングループから商品を仕入れ、国内の電機メーカー等の顧客へ販売を行っています。取扱商品はDRAMやNAND FLASHなどのメモリー、システムLSI、液晶パネルなどのディスプレイ、その他電子部品です。サーバー・ストレージ向けや車載向けの販売が主力となっています。
収益は、顧客への製品販売代金として受け取ります。運営は主に同社(トーメンデバイス)が行っています。設立の経緯からサムスングループ製品に特化しており、豊田通商グループのネットワークを活用した販売活動を展開しています。
■(2) 海外
海外市場において、主に海外のサムスングループ各社から商品を仕入れ、海外に進出している日系企業や現地企業などの顧客へ販売を行っています。特に中国やアジア地域でのビジネス展開に注力しており、新興国向けのモバイル端末やデジタル家電向けの販売活動を強化しています。
収益は、顧客への製品販売代金として受け取ります。運営は、ATMD (HONG KONG) LIMITED、ATMD ELECTRONICS (SHANGHAI) LIMITEDなどの海外連結子会社が行っています。グローバルな供給体制を活用し、現地顧客へのサポート体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は3,000億円台から4,600億円台の間で変動があり、当期は4,217億円まで回復しています。経常利益は60億〜80億円台で推移しており、当期は増益となりました。利益率は1%台後半を維持しています。当期純利益については、前期は減少しましたが当期は56億円と大きく伸長し、収益性の改善が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,024億円 | 4,628億円 | 4,176億円 | 3,707億円 | 4,217億円 |
| 経常利益 | 46億円 | 85億円 | 66億円 | 62億円 | 74億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | 1.8% | 1.6% | 1.7% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 34億円 | 64億円 | 49億円 | 21億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は3.5%から3.7%へとわずかに改善しました。営業利益も増加しており、営業利益率は2.4%から2.6%へ上昇しています。全体として増収増益の基調にあり、本業の収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,707億円 | 4,217億円 |
| 売上総利益 | 137億円 | 147億円 |
| 売上総利益率(%) | 3.7% | 3.5% |
| 営業利益 | 95億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が16億円(構成比36%)、保険料が5億円(同11%)を占めています。売上原価については、商品評価損がほぼ発生していない状況です。
■(3) セグメント収益
日本セグメントはサーバー・ストレージや車載向けが好調で増収増益となりました。海外セグメントもサーバー向けやPC、スマホ向け製品の販売増により増収増益を達成しています。両セグメントともに売上規模を拡大させつつ、利益もしっかりと確保しており、地域を問わず堅調な事業運営が行われています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,088億円 | 1,273億円 | 41億円 | 44億円 | 3.5% |
| 海外 | 2,619億円 | 2,944億円 | 52億円 | 59億円 | 2.0% |
| 連結(合計) | 3,707億円 | 4,217億円 | 95億円 | 102億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
トーメンデバイスは、営業活動により資金を獲得し、投資活動では一部支出があったものの、財務活動では借入金の減少等により資金が使用されました。その結果、当連結会計年度末の資金は前期末より減少しました。営業活動による資金獲得は、主に税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少によるものです。投資活動による資金使用は、無形固定資産の取得が主な要因です。財務活動による資金使用は、短期借入金の減少が大きく影響しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 44億円 | 92億円 |
| 投資CF | 5億円 | -0億円 |
| 財務CF | 29億円 | -169億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「先端技術の提供とグローバルなパートナーシップを通じて、顧客・社会の現在(いま)と、ひとつ先の未来に貢献します」を経営理念として掲げています。この理念のもと、お客様に密着したきめ細かなサービスを提供し、顧客満足度を高めることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
サムスングループとの強固な関係を強みとしつつ、親会社である豊田通商グループとのシナジーを活かす企業文化があります。急速な技術革新やグローバル化に対応するため、リスクマネジメントの徹底や人材育成、環境変化に対応できる自律した人材の育成を重視しています。また、ESGへの取り組みやステークホルダーとの関係性も重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年4月から2026年3月までの中期経営計画を策定し、推進しています。最終年度となる2026年3月期に向けて、厳しい環境下でも定量目標の実現に取り組んでいます。また、資本コストを上回るROEの実現を目指し、資本効率を重視した経営を実践することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内では生成AIサーバービジネスの開拓や車載ビジネスの強化、海外では新興国向けモバイル端末やデジタル家電への販売強化を掲げています。また、サムスングループ商材を中心に取扱商品の幅を広げ、技術・品質対応体制を構築することで提案力を強化し、新規顧客の開拓に取り組む方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資源と位置づけ、プロフェッショナルとして自らの価値向上のために挑戦できる人材育成の仕組みづくりを推進しています。また、リモートワーク等の活用による柔軟な働き方や、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進し、多様な人材が共存できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.4歳 | 12.4年 | 9,183,610円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 61.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 31.0% |
※男性育児休業取得率は、対象者がいなかったため「-」となっています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり研修時間(19時間45分)、有給休暇取得率(81.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先(サムスングループ)への依存
同社グループはサムスングループ製品の販売に特化しており、仕入高の約8割を同グループが占めています。そのため、同グループの経営戦略変更や地政学リスクが業績に直結する可能性があります。これに対し、第2の柱となる商材やビジネスモデルの発掘に努めています。
■(2) 取扱商品の価格変動リスク
主要商品である半導体や電子部品は、需給バランスによって価格が大幅に変動する傾向があり、これが業績に大きな影響を与える可能性があります。同社は顧客の需要動向と仕入先の供給状況を常に把握し、在庫管理を徹底することで影響の軽減を図っています。
■(3) 海外ビジネス展開に伴うリスク
中国を中心に海外市場での事業拡大を図っていますが、為替変動、地政学リスク、信用リスク、カントリーリスクなどに直面する可能性があります。これに対し、安全保障貿易管理の徹底や与信管理の強化、為替予約によるリスクヘッジなどの対策を講じています。



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