※本記事は、株式会社あらたの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あらたってどんな会社?
日用品・化粧品等の卸売業を展開し、消費者の生活を支える社会インフラを担う企業です。
■(1) 会社概要
あらたは、1936年設立のダイカ、1966年設立の伊藤伊、1990年設立のサンビックが共同で2002年に持株会社として設立し、ジャスダックに上場しました。2004年に事業会社へ移行後、2011年に東証二部、2012年に東証一部へ上場し、2022年に東証プライム市場へ移行しています。
同社グループの従業員数は連結で3,008名、単体で1,954名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は音羽殖産、第3位はあらた社員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.62% |
| 音羽殖産 | 6.28% |
| あらた社員持株会 | 3.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長執行役員経営戦略本部長は東風谷誠一氏が務めています。社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 東風谷誠一 | 代表取締役社長執行役員経営戦略本部長 | 1988年タナカ入社。2017年あらた執行役員首都圏支社副支社長、2018年同支社長。2023年取締役専務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 須崎裕明 | 取締役会長 | 1978年ダイカ入社。2008年あらた執行役員、2016年取締役常務執行役員。2017年代表取締役社長執行役員最高執行責任者等を経て、2025年4月より現職。 |
| 瓜生善郎 | 取締役副社長執行役員管理統括本部長兼IT改革DX推進本部長 | 1994年菱食入社、1999年サンビック入社。2016年あらた執行役員、2021年取締役常務執行役員人事本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 畑中秀太 | 取締役専務執行役員商品本部長 | 1999年住友銀行入行、2004年シスコ入社。2016年あらた執行役員、2020年常務執行役員商品本部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 水野昭人 | 取締役 | 1986年ジャペル入社。2013年常務取締役営業本部長等を経て、2016年代表取締役社長に就任。2020年6月よりあらた取締役。 |
社外取締役は、那須雄次(元住友商事マシネックス社長)、八尾紀子(TMI総合法律事務所パートナー)、小西規雄(元山星屋社長)、武藤雅俊(元みずほ第一フィナンシャルテクノロジー社長)、坂本倫子(岩田合同法律事務所執行パートナー弁護士)、牟禮恵美子(青山学院大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日用品・化粧品等の卸売業」において以下の事業を展開しています。
■(1) 日用品・化粧品等の卸売事業
ドラッグストア、ホームセンター、スーパー等に対して、日用品や化粧品、家庭用品、ペット用品等を提供する卸売事業を展開しています。消費者の生活様式や購買意識の変化を捉えたカテゴリー戦略を強みとしています。
収益は、小売業への商品の卸売による販売代金から得ています。運営は主にあらたのほか、ペット関連商品の卸売を専門に担うジャペルなどが担当しています。
■(2) 店頭管理・フィールドサポート事業
メーカーと共同で企画した広告提案をお得意先である小売業に対して行い、提案した広告と店頭とが連動するように店頭管理を行うことで店頭活性化を図るサービスを提供しています。
収益は、店頭管理などのサービス提供に対する対価として受け取ります。運営はインストアマーケティングが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は持続的な成長を遂げており、直近では1兆円を突破しています。一方で、利益面はコストコントロールの遅れや各種費用の増加などが影響し、直近は減益傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8571億円 | 8916億円 | 9441億円 | 9862億円 | 10047億円 |
| 経常利益 | 137億円 | 137億円 | 153億円 | 156億円 | 135億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 1.5% | 1.6% | 1.6% | 1.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 78億円 | 66億円 | 80億円 | 73億円 | 90億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は着実に増加していますが、流通業界の環境変化や物価上昇に伴うセンターフィーなどの増加により、売上総利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9862億円 | 10047億円 |
| 売上総利益 | 962億円 | 973億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.8% | 9.7% |
| 営業利益 | 150億円 | 132億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造包装運搬費が287億円(構成比34%)、給与手当が239億円(同28%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 98億円 | 187億円 |
| 投資CF | -64億円 | -128億円 |
| 財務CF | -80億円 | 101億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で非製造業の市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世の中のお役に立ち続ける」という経営理念のもと、「美と健康、清潔で快適な生活を創造する」を経営ビジョンとして掲げています。皆様の暮らしを快適にする身近な商品を全国の小売業の店頭に届けることで、社会的インフラの一翼を担い、経済や社会に価値を提供し続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
常に和親協調・相互信頼・謙虚なるをもって身上とする姿勢を重んじています。「強く」「正しく」そしてその先には「楽しく」という「あらたESG基本方針」に沿い、全社員が働き甲斐を持ち、長く働き続けられる職場環境づくりや、多様な専門性を持つ人材が互いに高め合う相互理解の文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2030年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の定量目標を掲げています。
・売上高:1兆1,600億円
・経常利益:160億円
・EBITDA:240億円
・ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「強さを磨き、未来を拓く」をテーマに、卸事業本来の強さを磨く「体質強化戦略」と、独自性を強化して中長期的な成長を進める「成長戦略」を推進します。売上総利益率の改善や販管費率の抑制を図りつつ、インストアシェアの拡大や新たな成長ドライバーの確立を通じて独自の付加価値を高め、トップラインの拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画のテーマを人材面から支えるため、多様な専門性を持つ人材が互いに高め合う組織への変革を推進しています。独自性強化を実現する「自律自走型人材」や生産性最大化を追求する「DX人材」の育成に注力するとともに、性別や年齢に関わらず一人ひとりの挑戦と成長を後押しする環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 18.5年 | 6,188,970円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 93.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 42.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 64.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(69.9%)、継続勤務意識の肯定的回答率(61.5%)、適正体重維持者率(61.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競争激化による投資コストの増加
業界再編や物流形態の変化に対応するため、新しい事業分野への進出や大型物流センター等の設備投資が必要となる可能性があります。これにより減価償却費や物流関連経費が一時的に増加し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) ペット生体の需給動向
犬猫生体の供給不足や高齢生体の死亡による飼育頭数の減少、また人獣共通感染症の発生によりペット生体が減少した場合、ペットフード・用品の販売に影響が及び、グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) システムトラブル等の発生
営業活動や商品管理等の多くをネットワークシステムに依拠しており、自然災害やサイバー攻撃などによりシステムが停止した場合、商品の供給が滞り業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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