あらた 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あらた 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場しており、ドラッグストアやスーパー等に向けた日用品・化粧品・ペット用品等の卸売業を主軸としています。直近の業績は、化粧品やペット関連商品の好調に加え、新規取引の獲得などにより売上高が伸長し、増収増益を達成しました。


お待たせいたしました。有価証券報告書に基づいた企業分析記事を作成しました。

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あらた転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態


※本記事は、株式会社あらた の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. あらたってどんな会社?


日用品や化粧品、ペット用品などを扱う卸商社であり、全国規模の物流ネットワークと店頭管理機能を強みとしています。

(1) 会社概要


同社は、2002年に卸商社であるダイカ、伊藤伊、サンビックの3社による共同持株会社として設立され、ジャスダック市場に上場しました。2004年に事業会社へ移行し、2005年にはペット関連卸のジャペルを子会社化しました。その後、2012年に東証一部への指定替えを経て、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

同社の従業員数は連結で2,923名、単体で1,960名です。大株主構成については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は音羽殖産、第3位は同社の社員持株会となっています。特定の事業会社による支配的な資本関係は見られず、独立性の高い経営体制といえます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.23%
音羽殖産 6.28%
あらた社員持株会 4.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名(社外含む)の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員は東風谷 誠一氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
東風谷 誠一 代表取締役社長執行役員経営戦略本部長 1988年タナカ入社。同社執行役員首都圏支社長、取締役専務執行役員、取締役副社長執行役員営業本部長などを経て、2025年4月より現職。
須崎 裕明 取締役会長 1978年ダイカ入社。同社常務執行役員中部支社長、代表取締役社長執行役員最高執行責任者(COO)などを経て、2025年4月より現職。
瓜生 善郎 取締役副社長執行役員管理統括本部長兼IT改革DX推進本部長 1994年菱食(現三菱食品)入社。同社取締役常務執行役員人事本部長、取締役専務執行役員経営戦略本部長などを経て、2025年4月より現職。
表 利行 取締役経営全般 1979年ダイカ入社。同社執行役員営業本部広域量販部長、取締役副社長執行役員営業本部長などを経て、2025年4月より現職。
畑中 秀太 取締役専務執行役員商品本部長兼商品部長 1999年住友銀行入行。同社執行役員関西支社長、取締役常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。D-Neeコスメティック社長を兼務。
水野 昭人 取締役 1986年ジャペル入社。同社常務取締役営業本部長などを経て2016年同社代表取締役社長に就任(現任)。2020年6月より現職。
畑中 伸介 取締役特別顧問 1974年秀光舎入社。同社社長、シスコ社長を経て、2007年あらた社長、2017年会長CEOに就任。2025年4月より現職。


社外取締役は、那須 雄次(元住友商事マシネックス代表取締役社長)、八尾 紀子(TMI総合法律事務所パートナー)、小西 規雄(元山星屋代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日用品・化粧品等の卸売業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日用品・化粧品等の卸売業


日用品、化粧品、家庭用品、ペット用品などを、ドラッグストア、ホームセンター、スーパーマーケット、総合スーパー(GMS)等の小売業者に対して販売しています。全国規模の物流網を活かし、幅広いカテゴリーの商品を供給する社会インフラとしての役割を担っています。

収益は、小売業者への商品販売による対価が主な源泉です。運営は、同社および連結子会社のジャペル(ペット関連)、リビングあらた(家庭用雑貨)、D-Neeコスメティック(化粧品)などが担っており、各社が専門性を活かした事業展開を行っています。

(2) その他


卸売業に付随するサービスとして、メーカーと共同で企画した広告提案と連動した店頭管理・フィールドサポート事業を展開しています。小売店の店頭活性化を図ることで、商品の販売促進を支援しています。

この事業の収益は、取引先からのサービス対価等によって構成されています。運営は主に連結子会社の株式会社インストアマーケティングが行っており、専門的な店頭管理サービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面でも、経常利益は安定的に推移し、直近では過去最高を更新しています。利益率は1%台後半で推移しており、卸売業としての特性を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,340億円 8,571億円 8,916億円 9,441億円 9,862億円
経常利益 121億円 137億円 137億円 153億円 156億円
利益率(%) 1.5% 1.6% 1.5% 1.6% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 82億円 90億円 82億円 103億円 104億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約9.8%で安定しています。営業利益も増益となりましたが、営業利益率は1.5%と横ばいで推移しており、コストコントロールを維持しながら事業規模を拡大している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9,441億円 9,862億円
売上総利益 9,242億円 9,622億円
売上総利益率(%) 9.8% 9.8%
営業利益 145億円 150億円
営業利益率(%) 1.5% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、荷造包装運搬費が273億円(構成比33.7%)、給与手当が230億円(同28.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは単一セグメントですが、カテゴリー別の売上動向を見ると、主力のヘルス&ビューティーやペット関連商品が好調に推移しています。また、インバウンド需要の回復によりドラッグストア向けの売上が伸長しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日用品・化粧品等の卸売業 9,441億円 9,862億円 145億円 150億円 1.5%
連結(合計) 9,441億円 9,862億円 145億円 150億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 141億円 98億円
投資CF -53億円 -64億円
財務CF -46億円 -80億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%でプライム市場平均(9.4%)とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.4%でプライム市場(非製造業平均24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世の中のお役に立ち続ける」を経営理念として掲げています。また、経営ビジョンとして「美と健康、清潔で快適な生活を創造する」を掲げ、生活必需品を全国の小売業の店頭に届ける卸商社として、社会的インフラの一翼を担うことを使命としています。

(2) 企業文化


同社はESG基本方針として「強く」「正しく」そしてその先には「楽しく」を掲げています。どのような状況においても消費者の生活と地域社会のために企業活動を持続させ、経済や社会に対して価値を提供し続ける姿勢を重視しています。また、設立の精神である和親協調・相互信頼・謙虚を重んじています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の目標を掲げています。なお、一時的要因や人的資本・物流への先行投資の影響により、経常利益目標は下方修正されています。

* 売上高:10,000億円
* 経常利益:180億円
* ROE:10%台
* 配当性向:30%

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2026」において「成長の加速」をテーマに掲げ、成長事業、基盤、人材における戦略を推進しています。具体的には、ヘルス&ビューティーおよびペットカテゴリーへの注力、物流2024年問題への対応としての物流事業者との連携強化、人的資本への投資強化などが挙げられます。

* 2027年3月期目標:売上高1兆500億円
* 2027年3月期目標:経常利益200億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「未来の人と組織づくり~2030年に向けて強い組織を作る~」をスローガンに、多様な人材が協働し高い付加価値を生み出す組織を目指しています。新人事制度の運用や、「A&Jプロジェクト」を通じた女性活躍推進、全社員向けEラーニング「Ael E研修ナビ」による人材育成など、働き甲斐を持って長く働ける環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 18.7年 6,035,479円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 94.8%
男女賃金差異(全労働者) 41.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.8%


※データは単体の数値です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修受講人数(延べ25,282人)、育児休業復帰率(100.0%)、有給休暇取得日数(12.9日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争激化による投資コストの増加


業界再編や小売業による物流機能の取り込みなどの環境変化に対応するため、大型物流センター等の設備投資が必要となる可能性があります。これに伴い、減価償却費や物流関連経費が一時的に増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業績変動


同社の業績は第4四半期に低下する傾向があります。これは年末の需要反動や2月の営業日数の少なさが要因です。また、自然災害や消費税増税などの環境変化が生じた場合、四半期ごとの傾向が過去と異なる可能性があり、業績予測に不確実性が伴います。

(3) ペット生体の需給動向


犬猫の飼育頭数減少や生体の供給不足が発生した場合、ペットフード・用品の売上高に影響を及ぼす可能性があります。同社は高機能商品の提案などで対応を図っていますが、市場全体の縮小はリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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