石光商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石光商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、コーヒーおよび食品の輸入販売を行う専門商社です。創業100年を超える歴史を持ち、業務用食品卸や外食産業向けに強みを持ちます。直近の決算では、売上高は650億円と増収を達成しましたが、コーヒー相場の高騰などの影響により、各利益段階では減益となりました。


※本記事は、石光商事株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 石光商事ってどんな会社?


コーヒー生豆や食品の輸入・販売を主力とする専門商社です。老舗企業として安定した基盤を持ちます。

(1) 会社概要


1951年に株式会社石光季男商店として設立され、コーヒー生豆・紅茶原料の取扱いを開始しました。1963年に現在の社名へ変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、大阪証券取引所JASDAQ市場を経て、2013年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場しています。2020年には持分法適用関連会社であった東京アライドコーヒーロースターズを連結子会社化し、グループ体制を強化しました。

2025年3月31日時点の連結従業員数は493名、単体では232名です。筆頭株主は食品メーカーのマリンフードで、第2位は石光商事従業員持株会、第3位は主要取引銀行である三井住友銀行となっており、取引先や従業員との関係を重視した安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
マリンフード 6.09%
石光商事従業員持株会 4.76%
三井住友銀行 3.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は荒川正臣氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
荒川 正臣 代表取締役社長 1999年同社入社。コーヒー生豆カテゴリーマネージャー、コーヒー・飲料部門長などを歴任。石光商貿(上海)有限公司董事長を経て、2025年4月より現職。
中埜 晶夫 取締役副社長 元日本長期信用銀行行員。イーグル工業、雪国まいたけを経て2011年同社入社。経営企画室長、海外事業部門長などを歴任し、2021年4月より現職。
石脇 智広 取締役サステナビリティ推進室長 1999年関西アライドコーヒーロースターズ入社。同社研究開発室長、コーヒー・飲料部門長などを経て、2016年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
奥野 裕二 取締役管理部長 1985年シャープ入社。2021年同社入社。管理部門長補佐、経営役管理部門長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、百瀬則子(元ユニー上席執行役員・ワタミ執行役員SDGs推進本部長)、小澤真(元ヤマキ取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コーヒー・茶類事業」「食品事業」「農産事業」および「海外事業」を展開しています。

(1) コーヒー・茶類事業


コーヒー生豆、レギュラーコーヒー、インスタントコーヒー、紅茶、コーヒー関連器具などの輸入・加工・販売を行っています。また、グループ会社のアライドコーヒーロースターズがコーヒー生豆の焙煎加工を担い、東西の焙煎工場機能を活用して顧客ニーズに対応しています。

収益は、全国のコーヒー焙煎業者、飲料メーカー、業務用食品問屋、量販店、外食チェーン店等への商品販売および加工受託により得ています。運営は主に石光商事、ユーエスフーズ、アライドコーヒーロースターズが行っています。

(2) 食品事業


業務用や中食向けの食材として、瓶・缶詰、小麦加工品、調味料、乳製品、油脂、酒類、素材加工品(水産・畜産・農産)、調理加工品などを取り扱っています。共働き世帯向けの食材や、高齢者向けの食材など、多様なニーズに対応した商品を展開しています。

収益は、業務用食品問屋、食品加工メーカー、量販店、外食チェーン店等への商品販売代金です。運営は主に石光商事が行っており、国内外の供給元や製造元と連携し、商品の安定供給を図っています。

(3) 農産事業


生鮮野菜、野菜缶詰、塩蔵野菜、農産加工品などを取り扱っています。安全安心かつサステナブルな農産物の提供を掲げ、海外および国内から付加価値のある野菜を調達・供給しています。

収益は、食品加工メーカー、量販店、外食産業等への商品販売から得ています。運営は主に石光商事が担当し、供給元との密接な連携により安定的な供給網を確立しています。

(4) 海外事業


コーヒー、食品、農産品などの同社取扱品目を海外市場向けに展開しています。中国、タイ、インド、英国などの海外拠点と連携し、日本食の輸出や現地での販売、三国間貿易を行っています。

収益は、現地の卸売業者や小売店への商品販売代金です。運営は、石光商事のほか、石光商貿(上海)有限公司、THAI ISHIMITSU CO.,LTD.、A.Tosh Ishimitsu Beverages India Private Limitedなどの海外グループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで増加傾向にあります。一方、利益面では2024年3月期にピークを迎えた後、直近の2025年3月期は減益となりました。原材料価格の高騰などが影響していますが、売上規模の拡大は続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 405億円 467億円 590億円 620億円 650億円
経常利益 8億円 8億円 13億円 17億円 13億円
利益率(%) 2.1% 1.7% 2.2% 2.8% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 8億円 10億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上総利益も増加していますが、販管費の増加などにより営業利益率は低下しています。収益性の維持・向上が課題といえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 620億円 650億円
売上総利益 82億円 85億円
売上総利益率(%) 13.2% 13.0%
営業利益 17億円 16億円
営業利益率(%) 2.7% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が20億円(構成比30%)、その他が15億円(同21%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入が大部分を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上を見ると、コーヒー飲料製品が最も大きく、次いで海外、加工食品と続いています。直近ではコーヒー飲料製品や農産、水産などが伸長していますが、海外事業は減少しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コーヒー飲料原料 90億円 86億円
コーヒー飲料製品 139億円 160億円
加工食品 95億円 94億円
水産 69億円 71億円
調理冷食 50億円 58億円
農産 64億円 72億円
海外 113億円 107億円
連結(合計) 620億円 650億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスの状態です。これは「勝負型(- - +)」に分類されます。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 38億円 -10億円
投資CF -8億円 -11億円
財務CF -29億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」を経営理念としています。また、事業活動のミッションとして「世界の食の幸せに貢献する」ことを掲げ、コーヒー等の飲料および食品の専門商社として、主に業務用の分野で事業を展開しています。

(2) 企業文化


1906年創業という長い歴史を持ちつつ、さらに「永く続く会社となること」を重視しています。そのために、社会、顧客、株主、従業員から必要とされ続けること、変化に対応し続けること、利益を安定継続して出し続けることを必要条件と規定し、様々な「仕組み化」を進める文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期より新たな中期経営計画「SHINE2027」をスタートさせ、「変革と実践」をテーマとしています。ROIC経営、温室効果ガス(GHG)削減、社会課題解決商品の開発に重点を置き、事業の持続的成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、ビジネスモデル変革、人財育成体制の再構築、グループ経営の深掘に取り組んでいます。具体的には、高利益率商品へのシフト、グローバル展開の加速、DXの推進、社会課題解決型商品の拡大などを進めます。また、グループ全体でのシナジー効果追求やインフラ統合による効率化も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を資本として捉え、その価値を高めることで企業の成長を目指しています。求める人財像を「自分ごとで考え、ともに変化を楽しみ、成長する人財」と設定し、専門性を高める専門職制度の導入や、キャリア自立を促す研修を実施しています。また、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な人材が活躍できる環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 12.6年 6,441,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.3%
男女賃金差異(正規雇用) 74.0%
男女賃金差異(非正規) 57.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用比率(2.3%)、年次有給休暇取得率(61.3%)、エンゲージメント回答率(96.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界的貿易体制と商品価格変動


同社は輸入商品を多く扱っており、国際商品相場や為替レートの変動の影響を受けます。為替予約や商品先物取引でリスク回避を図っていますが、急激な変動やコスト転嫁が困難な場合、業績に影響を与える可能性があります。また、主要国間の関税や貿易体制の変化もリスク要因となります。

(2) サプライチェーンリスク


世界的な需給バランスの変化、不作、調達国の政治的混乱などにより、商品の価格高騰や調達不足が生じるリスクがあります。また、サプライチェーンにおける人権問題(児童労働など)による社会的信用の低下も懸念されます。産地の分散化やリスク確認などの対策を講じています。

(3) 食の安全


海外からの調達が多いため、商品事故やトラブルが発生する可能性があります。専門部署による品質チェックや海外製造元への監査など、万全な品質管理体制を敷いていますが、偶発的な事象により大規模なトラブルが発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。