トラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の中古車輸出、レンタカー、海外自動車ディーラー事業を展開する企業です。主力のレンタカー事業や海外ディーラー事業が好調に推移し、直近決算では売上高22.3%増、経常利益16.4%増と大幅な増収増益を達成しました。親会社はVTホールディングスです。


※本記事は、株式会社トラスト の有価証券報告書(第37期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トラストってどんな会社?


中古車輸出を祖業とし、現在は国内でのレンタカー事業や南アフリカでの自動車ディーラー事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


1988年に設立され中古車輸出を開始しました。2003年にVTホールディングスの子会社となり、2004年にマザーズへ上場しました。その後、事業多角化を進め、2009年にJ-netレンタリースを、2011年に南アフリカの自動車ディーラーを相次いで子会社化し、現在の事業基盤を構築しています。

連結従業員数は633名、単体では36名です。筆頭株主は、自動車ディーラー事業などを展開する親会社のVTホールディングスです。第2位は証券会社のJPモルガン証券です。

氏名 持株比率
VTホールディングス 72.20%
JPモルガン証券 1.66%
山下 良久 1.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は川村賢司氏です。社外取締役比率は33.3%(監査役含む)です。

氏名 役職 主な経歴
川村 賢司 代表取締役社長 VTキャピタル入社後、グループ各社の代表取締役等を歴任。2019年より現職。
松田 泰二 取締役 ホンダクリオ関西を経てJ-netレンタリース入社。同社車輌管理部長、統括本部副本部長兼営業部長を経て、2023年より現職。
野木森 直樹 取締役 VTホールディングス入社後、同社へ出向し管理部長に就任。2024年より現職。
伊藤 誠英 取締役 VTホールディングス専務取締役、アーキッシュギャラリー代表取締役社長、J-netレンタリース代表取締役会長等を兼任。
伊藤 和繁 取締役 VTホールディングス入社後、同社営業部長等を歴任。現在は南アフリカ子会社のManaging Director等を務める。


社外取締役は、藤澤昌隆(リーダーズ法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「中古車輸出事業」「レンタカー事業」「海外自動車ディーラー事業」を展開しています。

中古車輸出事業


Webサイトを利用して、主に海外の個人顧客向けに中古車を輸出販売しています。国内での販売需要が少ない中古車を仕入れ、世界各国へ供給する越境ECモデルです。

顧客からの車両販売代金が主な収益源です。運営は同社(トラスト)が行っています。

レンタカー事業


「Jネットレンタカー」ブランドでのレンタカーサービスおよび自動車リースを全国で展開しています。直営店に加え、フランチャイズシステムによる店舗網も構築しています。

利用者からのレンタカー貸渡料やリース料が収益源です。運営は主に連結子会社のJ-netレンタリースおよびJネットレンタカー北海道が行っています。

海外自動車ディーラー事業


南アフリカ共和国において自動車ディーラーを運営し、新車・中古車の販売および自動車の修理サービスを提供しています。

顧客からの車両販売代金や修理・メンテナンス代金が収益源です。運営は現地連結子会社のTRUST ABSOLUT AUTO (PROPRIETARY) LIMITEDなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では500億円を突破しています。経常利益も順調に拡大し、利益率は6〜7%台で安定的に推移しています。当期純利益については、変動があるものの黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 201億円 276億円 343億円 411億円 503億円
経常利益 5億円 19億円 25億円 28億円 33億円
利益率(%) 2.7% 6.9% 7.2% 6.8% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -1億円 2億円 3億円 2億円 -3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく伸長し、それに伴い売上総利益も増加しています。営業利益率も改善傾向にあり、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 411億円 503億円
売上総利益 93億円 117億円
売上総利益率(%) 22.7% 23.3%
営業利益 28億円 35億円
営業利益率(%) 6.8% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が41億円(構成比50%)、賃借料が9億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。主力のレンタカー事業は店舗網拡大や個人顧客獲得策が奏功し大幅な増収増益を達成しました。海外自動車ディーラー事業も新車・中古車販売ともに好調で増収となりましたが、利益は微減となりました。中古車輸出事業は売上高が増加したものの、利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
中古車輸出事業 116億円 123億円 3億円 0.1億円 0.1%
レンタカー事業 196億円 252億円 23億円 33億円 12.9%
海外自動車ディーラー事業 99億円 127億円 2億円 2億円 1.8%
その他 0億円 0億円 - - -
調整額 -4億円 -2億円 -0.4億円 -0.1億円 -
連結(合計) 411億円 503億円 28億円 35億円 6.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済を進めつつ、設備投資も自己資金の範囲内で行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 108億円 141億円
投資CF -48億円 -54億円
財務CF -56億円 -85億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「CLOSER TO YOU お客様のために」という経営理念を掲げています。この理念のもと、質の高いサービスと商品の提供を通じて、顧客と社会から信頼される企業を目指しています。

(2) 企業文化


「Trust(信頼)」「Responsibility(責任)」「Usefulness(有用性)」「Satisfaction(満足)」「Thanks(感謝)」の5つのキーワードを経営方針として掲げています。ステークホルダーとの信頼関係構築、社会貢献、自己変革への挑戦、感謝の気持ちを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


継続的な収益確保を目的とし、既存事業による収益拡大を図っています。経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、以下の2点を重要な経営指標として位置づけています。

* 成長性:シェア率
* 収益性:売上高経常利益率

(4) 成長戦略と重点施策


各事業において以下の課題に対処し、成長を目指しています。中古車輸出事業では提携による販売網強化や仕入価格の抑制、レンタカー事業ではWeb予約強化や新サービスによる個人顧客獲得と店舗網の拡大、海外ディーラー事業では不採算店舗の整理と新規出店による収益力強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中長期的な視点を持ち、外部・内部研修の活用や定期的なジョブローテーションを通じて、変化する環境に対応できる人材の育成に取り組んでいます。また、多様性を尊重し公正さを重視した人事制度への刷新を行い、女性役員や管理職、外国籍管理職の育成も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 8.0年 5,401,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 87.6%
男女賃金差異(正規雇用) 72.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 137.7%


※上記は連結子会社であるJ-netレンタリース株式会社のデータです。提出会社のデータは、常時雇用する労働者の数が300人を超えないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、EV販売比率(24.5%)、有給休暇取得率(79.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害および個人情報漏洩


事業においてインターネットやイントラネットへの依存度が高まっており、システム障害が発生した場合は業務に支障をきたす可能性があります。また、顧客の個人情報を保有しているため、万が一情報漏洩が発生した場合は、信用の低下や損害賠償請求等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 中古車輸出事業における競合とカントリーリスク


中古車輸出市場では同業他社との競争が激化しています。主力市場であるアフリカ地域では、政情不安や経済不振のリスクがあります。また、古物営業法や輸出規制、販売先国の輸入規制等の法的規制の影響を受けるほか、為替相場の変動や海上輸送における船舶確保の問題もリスク要因となります。

(3) レンタカー事業の競争と事故リスク


レンタカー事業は道路運送法の許可が必要であり、法令違反時には行政処分の可能性があります。また、競合他社との競争激化や、レンタカー事故による保険料・修理代の増加が利益を圧迫するリスクがあります。さらに、売上の多くを損害保険会社や自動車ディーラーに依存している側面があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。