※本記事は、デリカフーズホールディングス株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. デリカフーズホールディングスってどんな会社?
青果物加工流通分野のリーディングカンパニーとして、日本の農業と食を支える事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1979年に外食産業向けカット野菜の製造販売を目的にデリカフーズを設立しました。その後、全国規模でのチェーン展開に伴い事業を拡大し、2003年にはグループ各社を束ねる純粋持株会社として設立されました。2005年の上場を経て、近年では農業法人の設立やミールキット事業など領域を広げています。
同社グループの連結従業員数は850名、単体では25名です。筆頭株主は創業者一族の舘本篤志氏で、第2位は事業会社であるエア・ウォーター、第3位も創業者一族の舘本勲武氏となっており、創業者一族と資本関係のある事業会社が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 舘本 篤志 | 12.55% |
| エア・ウォーター | 10.59% |
| 舘本 勲武 | 5.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は大﨑善保氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大﨑 善保 | 代表取締役社長 | 小原入社後、ユキモード代表取締役社長を経てデリカフーズに入社。メディカル青果物研究所代表取締役社長や楽彩代表取締役社長等を歴任し、2017年2月より現職。 |
| 舘本 勲武 | 取締役会長 | カーラ等を経てデリカフーズ代表取締役社長に就任。長年にわたりグループ各社の社長を歴任し、デリカフーズホールディングス代表取締役社長を経て、2013年4月より現職。 |
| 小林 憲司 | 取締役 | 丸紅プラント等を経て東京デリカフーズ(現デリカフーズ)に入社。同社営業部長や取締役副社長を経て、デリカフーズ代表取締役社長を務め、2016年6月より現職。 |
| 仲山 紺之 | 取締役 | 三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、支店長等を歴任。デリカフーズホールディングスに入社後、管理部部長や執行役員管理本部長を経て、2020年6月より現職。 |
| 市野 真理子 | 取締役 | 泉万醸造等を経てデザイナーフーズに入社。メディカル青果物研究所代表取締役社長やデザイナーフーズ代表取締役社長を務め、同社執行役員を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、尾崎弘之(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター研究院教授)、柴田美鈴(司法研修所民事弁護教官)、高力美由紀(新潟食料農業大学食料産業学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「青果物事業」「物流事業」「研究開発・分析事業」および「持株会社」事業を展開しています。
■青果物事業
外食産業や中食産業向けに、ホール野菜の販売、カット野菜や真空加熱野菜、およびミールキットの製造・販売を行っています。全国をカバーする物流網を活用し、野菜だけでなく卵や豆腐などの日配品も配送し、顧客の商品管理の効率化に貢献しています。
収益は、青果物や加工済み製品などの販売対価から得ています。事業の運営は、主にデリカフーズや楽彩、農業法人デリカファームが担っており、外部の提携先にも製造や配送を委託しながら供給体制を維持しています。
■物流事業
青果物などの新鮮な食品を、チルド物流網により外食・中食産業の顧客へ届ける配送支援サービスを提供しています。厳格な温度管理とマネジメントシステムに基づき、品質維持に責任を持つスーパーコールドチェーンを実現しています。
収益は、配送サービスの提供完了に伴う役務提供対価から得ています。事業の運営は主にエフエスロジスティックスが行っており、グループ内の配送業務だけでなく、グループ外からの新規の荷主開拓による売上拡大にも注力しています。
■研究開発・分析事業
外食や中食、小売流通業界に向けて、新規ビジネスのサポートやメニュー提案、衛生教育指導などのコンサルティング業務を行っています。また、保有する膨大な青果物データベースを基に、野菜の中身評価や分析を行う受託分析サービスも提供しています。
収益は、コンサルティングや受託分析サービスの役務提供完了に伴う対価から得ています。事業の運営は主にデザイナーフーズが担っており、野菜の鮮度保持技術や消費期限の延長技術など、グループ全体の業務に関わる研究開発も行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して成長を続けており、毎期順調な拡大傾向が見られます。利益面については、一時的に赤字や伸び悩みを経験した時期があったものの、直近では大きく改善しており、収益性を高めながら事業成長を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 398億円 | 479億円 | 528億円 | 588億円 | 622億円 |
| 経常利益 | -2億円 | 8億円 | 13億円 | 9億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | -0.6% | 1.6% | 2.4% | 1.5% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | -1億円 | 1億円 | 1億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、粗利率も着実に改善しています。さらに営業利益が前期間から大きく跳ね上がり、営業利益率も向上していることから、本業の稼ぐ力が一段と強化されていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 588億円 | 622億円 |
| 売上総利益 | 144億円 | 163億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.4% | 26.3% |
| 営業利益 | 8億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 1.4% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が44億円(構成比31%)、給料手当が43億円(同30%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の青果物事業が売上高の大部分を占めており、堅調な外食需要等を背景に全体を牽引しています。また、物流事業もグループ内外の配送需要を取り込み、規模は小さいながら着実に売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 青果物事業 | 578億円 | 610億円 |
| 物流事業 | 8億円 | 12億円 |
| 研究開発・分析事業 | 0.8億円 | 0.5億円 |
| 連結(合計) | 588億円 | 622億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しながら、借入等によって積極的な投資を行う積極型の状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 32億円 |
| 投資CF | -8億円 | -18億円 |
| 財務CF | -34億円 | 1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社会的な存在価値と目指す未来に向け、PurposeやMission等の「MVV」を定めています。「日本の農業の発展」と「国民の健康増進」への貢献を目的に、未来に向けた「持続可能な農業」と「食を通じた健康増進」を実現する付加価値創造企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
MVVを実現するための社員の行動指針として、全20項目からなる「Credo」を定めています。全従業員が高い志を持ち、「損得の前に善悪」で考える公正かつ堅確な企業運営の実践を重視し、挑戦やイノベーションを果敢に起こす組織文化の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョンとして「野菜の総合加工メーカーとしてのポジション確立」「持続可能な農業の実現」「個人の幸福と会社の繁栄の両立」を掲げ、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」を推進しています。事業、顧客、商品の各ポートフォリオ変革により、収益性の向上と安定成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
気候変動に左右されない持続可能な安定供給体制の構築を最大の経営課題としています。農業への参入や輸入野菜の国産化、長期貯蔵技術の開発などを進めるとともに、物流面のソリューションを進化させて新たな事業展開に挑み、日本の食を支えるインフラ事業者への進化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個人の幸福」と「会社の繁栄」をつなぐ人材育成環境の構築を目指し、キャリアプランに沿った研修制度を整備しています。多様な価値観を持つ人材の活躍が持続的な成長に不可欠と考え、次世代リーダーや女性管理職の育成、多様な働き方への制度拡充を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.0歳 | 8.3年 | 8,608,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.4% |
| 男性育児休業取得率 | 22.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 99.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 青果物の生産・収穫に影響を及ぼす天候要因
同社グループは主に国内産青果物を買い付け販売していますが、異常気象などにより生産・収穫が著しく減少した場合、仕入価格の高騰や販売機会の喪失を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 食品の安全性に関する事故発生リスク
製・商品の品質や安全性を最重要課題として衛生管理に努めていますが、万一、異物混入や健康被害を与える欠陥製品の発生、あるいは社会全体的な食品衛生問題による風評被害が起きた場合、業績に甚大な悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 新型感染症等の蔓延による操業停止リスク
新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルス等の感染が従業員に拡大した場合、一時的に操業を停止せざるを得なくなる可能性があります。予防や感染拡大防止の体制を構築していますが、想定以上の事態となれば業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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