#記事タイトル:デリカフーズホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、デリカフーズホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. デリカフーズホールディングスってどんな会社?
外食・中食産業向けに業務用野菜を供給する「野菜のプロフェッショナル」です。調達から加工、物流、研究開発までを一貫して手掛け、食の安全と健康を支えています。
■(1) 会社概要
同社の源流は、外食産業向けカット野菜事業を目的に1979年に設立されたデリカフーズです。2003年に持株会社体制へ移行し、2005年に東証二部に上場、2014年には東証一部へ指定されました。2017年の組織再編を経て現商号となり、2021年にはBtoC事業を強化するためミールキットを手掛ける楽彩を設立するなど、事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結794名、単体23名です。筆頭株主は個人大株主の舘本篤志氏で、第2位は同社の主要仕入先であり資本業務提携関係にある産業ガス大手のエア・ウォーターです。第3位には会長の舘本勲武氏が名を連ねており、創業家や提携先が安定的に株式を保有する構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 舘本 篤志 | 12.58% |
| エア・ウォーター | 10.61% |
| 舘本 勲武 | 5.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は大﨑善保氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大 﨑 善 保 | 代表取締役社長 | 1997年デリカフーズ入社。東京デリカフーズ社長等を経て2017年より同社代表取締役社長。楽彩社長等を兼務。 |
| 舘 本 勲 武 | 取締役会長 | 1979年デリカフーズ社長就任。2003年同社代表取締役社長を経て、2013年より現職。 |
| 小 林 憲 司 | 取締役 | 2003年東京デリカフーズ入社。同社常務等を経て2016年より同社取締役。デリカフーズ社長を兼務。 |
| 仲 山 紺 之 | 取締役 | 三菱UFJ銀行出身。2018年同社入社。管理本部長を経て2020年より現職。 |
| 市 野 真 理 子 | 取締役 | 1999年デザイナーフーズ入社。メディカル青果物研究所社長等を経て2023年より現職。デザイナーフーズ社長を兼務。 |
社外取締役は、尾崎弘之(神戸大学大学院教授)、柴田美鈴(弁護士)、高力美由紀(新潟食料農業大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「青果物事業」「物流事業」「研究開発・分析事業」および「持株会社」事業を展開しています。
■青果物事業
外食産業や中食産業(持ち帰り弁当・惣菜等)向けに、ホール野菜(丸ごとの野菜)、カット野菜、真空加熱野菜およびミールキットの製造・販売を行っています。また、野菜だけでなく卵や豆腐などの日配品も合わせて納品するサービスも提供しています。
この事業の収益は、顧客である飲食店や惣菜店等への商品販売代金です。運営は主にデリカフーズが行い、ミールキットに関してはデリカフーズ長崎および楽彩が製造・販売を担っています。
■物流事業
外食・中食産業に対し、小型チルド車による個別ルート配送等の物流サービスを提供しています。独自のコールドチェーン(低温物流網)を構築し、温度管理や配送効率化を実現しています。
収益源は、顧客からの物流業務受託に伴う配送料収入等です。運営はエフエスロジスティックスが担当し、グループ内の配送だけでなくグループ外への販路拡大も進めています。
■研究開発・分析事業
外食・中食産業向けのメニュー提案や衛生教育等のコンサルティング、野菜の機能性研究、および青果物の成分分析等の受託サービスを提供しています。「野菜の健康診断」としての抗酸化力研究などに強みを持ちます。
収益は、コンサルティング料や分析受託料等です。運営はデザイナーフーズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大傾向にあり、直近では588億円に達しています。一方、利益面では経常利益率が低下傾向にあり、直近の当期純利益も前期比で減少しました。売上成長を維持しつつ、コストコントロールによる利益率の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 317億円 | 398億円 | 479億円 | 528億円 | 588億円 |
| 経常利益 | -10億円 | -2億円 | 8億円 | 13億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | -3.3% | -0.6% | 1.6% | 2.4% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.0億円 | 1.1億円 | -0.6億円 | 1.1億円 | 1.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価および販管費の増加により営業利益は減少しました。特に原価率の上昇が見られ、利益率を圧迫しています。営業利益率は2.1%から1.4%へ低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 528億円 | 588億円 |
| 売上総利益 | 132億円 | 144億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.0% | 24.4% |
| 営業利益 | 11億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 1.4% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が42億円(構成比31%)、給料手当が40億円(同30%)を占めています。物流コストと人件費が販管費の主要素となっています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりましたが、主力の青果物事業と持株会社事業で減益となりました。青果物事業は野菜価格高騰の影響を受け、持株会社は費用増などが影響しました。一方、物流事業と研究開発・分析事業は増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 青果物事業 | 521億円 | 578億円 | 12億円 | 8億円 | 1.4% |
| 物流事業 | 6億円 | 8億円 | 0.9億円 | 1億円 | 16.7% |
| 研究開発・分析事業 | 0.9億円 | 0.8億円 | 0.0億円 | 0.1億円 | 15.1% |
| 持株会社 | - | - | 1億円 | 1億円 | - |
| 調整額 | -45億円 | -49億円 | -1億円 | -2億円 | - |
| 連結(合計) | 528億円 | 588億円 | 13億円 | 9億円 | 1.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
デリカフーズホールディングスグループは、事業運営に必要な資金の安定確保を基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産の取得・売却による資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 38億円 |
| 投資CF | -49億円 | -8億円 |
| 財務CF | 19億円 | -34億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「日本の農業の発展」と「国民の健康増進」への貢献を目的に事業を展開しています。青果物加工流通分野において価値を追求し、「持続可能な農業」と「食を通じた健康増進」を実現する付加価値創造企業として、企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
社会的な存在価値と目指す未来に向けた「Purpose」「Mission」「Vision」「Value(MVV)」を定めており、これらを実現するための社員の行動指針として、全20項目からなる「Credo」を掲げています。新たな価値観に基づき、挑戦を続ける風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2024年5月に第五次中期経営計画「keep on trying 2027」を策定しました。「野菜の総合加工メーカーとしてのポジション確立」「持続可能な農業の実現」「個人の幸福と会社の繁栄の両立」を長期ビジョンとし、新たな成長フェーズへの転換を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「各種ポートフォリオの変革」「青果物サプライチェーンの構造改革」「研究部門・開発部門への投資拡大」を基本方針としています。具体的には、事業・顧客・商品の各ポートフォリオを見直し収益性を高めるほか、輸入野菜の国産化や調達インフラの再構築、野菜の健康効果研究や貯蔵技術開発などを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個人の幸福」と「会社の繁栄」をつなぐ人財育成環境の構築を目指し、「キャリア推進室」を中心に研修制度を拡充しています。「優しさと強さを兼ね備えた人財育成」を理念とし、社会的課題解決組織の醸成、女性管理職の育成、専門人財やグローバル人財の採用など、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.4歳 | 8.2年 | 7,171,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.6% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 107.6% |
※連結子会社(デリカフーズ株式会社)の数値です。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 青果物の生産・収穫リスク
事業の根幹である青果物の生産・収穫は、天候や気象、自然災害に大きく左右されます。異常気象等により著しい不作となった場合、仕入価格の高騰や販売機会の逸失を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、輸入や代替商品の提案、産地の分散化などでリスク軽減を図っています。
■(2) 食品の安全性リスク
異物混入や健康被害、表示違反などの事故が発生した場合、製品回収やブランド毀損により業績に影響を与える可能性があります。全工場でのISO22000認証取得や一部拠点でのFSSC22000取得など、徹底した衛生管理と品質向上に努めていますが、万全のリスク回避を保証するものではありません。
■(3) 有利子負債依存度
工場や物流センターへの設備投資資金を主に金融機関からの借入で調達しているため、総資産に占める有利子負債の割合が比較的高水準にあります。金利上昇局面においては支払利息の負担が増加し、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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