AOKIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AOKIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、ファッション事業、エンターテイメント事業、ブライダル事業を展開しています。直近の業績は、ファッション事業での特定マーケットの好調や、エンターテイメント事業およびブライダル事業の増収により、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、株式会社AOKIホールディングス の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AOKIホールディングスってどんな会社?


ファッション事業を祖業とし、複合カフェやフィットネス、ブライダル事業など多角的なサービスを展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1976年にアオキファッション販売として設立され、紳士服販売を開始しました。1989年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1991年には同第一部へ指定替えとなりました。1998年にブライダル事業のアニヴェルセル表参道開設、2000年には複合カフェ事業を分社化するなど多角化を進め、2008年に持株会社体制へ移行しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は3,098名、単体従業員数は147名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の株式会社アニヴェルセルHOLDINGSで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も創業家関連企業と推測されます。

氏名 持株比率
アニヴェルセルHOLDINGS 38.54%
日本マスタートラスト信託銀行 株式会社(信託口) 7.07%
トレイデアーリ 5.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は田村春生氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
青木 彰宏 代表取締役会長 1994年入社。オリヒカ事業創業を経て、2010年代表取締役社長に就任。2022年6月より現職。
田村 春生 代表取締役社長 1980年横浜銀行入行。2003年アニヴェルセル入社。2006年同社入社後、財務担当等を歴任し2022年12月より現職。
照井 則男 取締役副社長執行役員グループ事業戦略・デジタル管掌 日本マクドナルド等を経て2015年入社。情報システム等を担当し2023年6月より現職。
青木 柾允 取締役専務執行役員グループブランド管掌 1993年入社。アニヴェルセル社長・会長等を歴任し2023年6月より現職。
投元 谿太 取締役専務執行役員グループ人事・総務・コンプライアンス管掌 1985年入社。社長室長、アニヴェルセル会長等を歴任し2023年6月より現職。
川口 佳子 取締役執行役員グループ広報管掌 ベネッセ、サマンサタバサジャパンリミテッド等を経て2022年入社。2025年2月より現職。


社外取締役は、尾原蓉子(元旭化成工業マーケティング部FB人財開発部長)、髙橋光夫(元パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス専務執行役員CFO)、中村英一(元日鉄物産取締役専務執行役員)、菅野園子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファッション事業」、「エンターテイメント事業」、「アニヴェルセル・ブライダル事業」、「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ファッション事業


「AOKI」および「ORIHICA」の店舗ブランドで、紳士服、婦人服、服飾品並びにファッション商品を販売しています。郊外ロードサイドやショッピングセンターを中心に展開し、ビジネスおよびビジカジスタイルを提案しています。

個人顧客への商品販売代金が主な収益源です。運営は連結子会社の株式会社AOKIが行っています。

(2) エンターテイメント事業


複合カフェ「快活CLUB」、カラオケルーム「コート・ダジュール」、24時間型フィットネスジム「FiT24」等を運営しています。「快活CLUB」では鍵付完全個室やシェアリングスペースなど、時代のニーズに合った空間を提供しています。

顧客からの施設利用料や飲食代金等が主な収益源です。運営は主に株式会社快活フロンティアが行っており、複合カフェ「自遊空間」等は株式会社ランシステムが運営しています。

(3) アニヴェルセル・ブライダル事業


ゲストハウススタイルの挙式披露宴施設を展開しています。「アニヴェルセル表参道」をはじめとする施設で、チャペルやパーティースペース、カフェなどを提供し、記念日をコンセプトとしたサービスを行っています。

挙式・披露宴の施行に伴うサービス料や飲食代金等が収益源です。運営はアニヴェルセル株式会社が行っています。

(4) 不動産賃貸事業


主にグループの閉店店舗をグループ内および外部へ賃貸するほか、各事業だけでは使用が難しい大型物件を賃借し、グループ内外へ賃貸する事業を行っています。

テナントからの賃貸料収入が収益源です。運営は主にAOKIホールディングスが行っています。

(5) その他の事業


上記報告セグメントに含まれない事業として、有価証券の保有や損害保険の代理店事業などを行っています。

収益源は配当金や手数料などです。運営は株式会社アニヴェルセルHOLDINGS(その他の関係会社)や青木情報開発株式会社(関連会社)等が関与しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は回復基調にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高の1,927億円に達しました。利益面でも、2021年3月期は赤字でしたが、その後はV字回復を果たし、経常利益および当期利益ともに増加傾向が続いています。利益率も改善が進んでいます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,432億円 1,549億円 1,762億円 1,877億円 1,927億円
経常利益 -66億円 44億円 84億円 132億円 148億円
利益率(%) -4.6% 2.8% 4.8% 7.1% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -119億円 26億円 56億円 76億円 96億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は前年の41.0%から41.9%へと改善しました。販管費も増加しましたが、増収効果により営業利益は156億円となり、営業利益率は8.1%に向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,877億円 1,927億円
売上総利益 769億円 807億円
売上総利益率(%) 41.0% 41.9%
営業利益 139億円 156億円
営業利益率(%) 7.4% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が183億円(構成比28%)、賃借料が116億円(同18%)、広告宣伝費が95億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。主力であるファッション事業は堅調に推移し、エンターテイメント事業も増収を確保しました。特にアニヴェルセル・ブライダル事業は前期比で売上が大きく伸びています。不動産賃貸事業も増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ファッション事業 1,000億円 1,026億円
エンターテイメント事業 755億円 760億円
アニヴェルセル・ブライダル事業 103億円 117億円
不動産賃貸事業 18億円 21億円
その他 1億円 2億円
調整額 -43億円 -48億円
連結(合計) 1,877億円 1,927億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、自己資金及び営業活動によるキャッシュ・フローで資金需要に対応し、大型投資については金融機関からの借入れも活用しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは増加しており、事業活動から得られる資金は潤沢です。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資のための有形固定資産の取得が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払い等により、資金の使用が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 176億円 217億円
投資CF -109億円 -85億円
財務CF -93億円 -140億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会性の追求」「公益性の追求」「公共性の追求」の3つの経営理念を追求することを基本としています。「人々の喜びを創造する」を事業コンセプトに掲げ、年齢・性別に関係なくすべての個人消費者を対象に、時代に合った様々な商品とサービスをお値打ちな価格で提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、各事業会社が自主自立で業務運営を行う企業構造をとっています。これにより、お客様のニーズへの対応と効率的な経営を推進する体制を構築しています。また、グループ全体でのポートフォリオ経営を通じて安定的な成長を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期を初年度とする中期経営計画2024-2026年度を策定しており、最終年度の目標として以下を掲げています。また、10年後のありたい姿として営業利益300億円、ROE10%以上等を目指しています。

* 売上高:2,000億円
* 営業利益:180億円
* 営業利益率:9.0%
* ROE:7.0%
* EPS:120.00円

(4) 成長戦略と重点施策


市場環境やライフスタイルの変化に対応した商品・サービスの提供と、グループシナジーによる企業価値向上を図ります。ファッション事業ではビジネススタイルの変化に対応した業態進化やEC強化、エンターテイメント事業では新規出店と新コンテンツ導入、ブライダル事業ではブランド向上と周辺事業開発を推進します。

* ファッション事業:ビジネス40%、レディース30%、カジュアル30%の商品構成を目指す
* 新規出店計画:ファッション事業17店舗、エンターテイメント事業30店舗(2026年3月期予定)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成方針として、各人が能力に応じてやりがいを持ってチャレンジできる舞台を用意し、教育環境を整備しています。新卒・中途を問わず適材適所の配置を行い、独自のライセンス制度や教育体系を通じて能力開発を支援しています。また、多様性を尊重し、女性、外国人、障がい者等すべての人々が活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 7.5年 7,483,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.8%
男女賃金差異(正規雇用) 67.0%
男女賃金差異(非正規) 59.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(59%)、1店舗当たりCO2排出量削減率(15.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境について


全事業が国内展開であるため、国内景気や個人消費の影響を受けます。ファッション事業は景気後退やビジネススタイルの変化、エンターテイメント事業は顧客志向の変化、ブライダル事業は婚姻組数の減少や挙式スタイルの変化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、各事業で新商品・サービスの開発や業態の進化に取り組んでいます。

(2) 大規模災害・感染症等による影響


国内拠点、特に関東地区でのドミナント出店を行っているため、首都圏直下型地震等の大規模災害が発生した場合、業績に大きな影響を受ける可能性があります。また、新たな感染症の発出時には売上の減少や商品供給への影響が懸念されます。これに対し、感染症の影響を受けにくい業態への進化や新たな働き方への対応を進めています。

(3) 情報セキュリティについて


事業運営において情報システムを使用しており、システム障害やサイバー攻撃、個人情報の漏洩等が発生した場合、社会的信用の低下や業績悪化の可能性があります。直近では2025年1月に子会社で不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性が判明しました。外部専門機関と連携し、セキュリティ対策と監視体制の強化に取り組んでいます。

(4) 当社グループの店舗展開について


チェーンストア方式でドミナント出店戦略をとっていますが、立地確保の困難化や市場縮小による自社競合の発生が業績に影響する可能性があります。特にファッション事業では市場縮小への対応として店舗網の見直しを進め、エンターテイメント事業では消費者の動向に合わせた業態進化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。