※本記事は、株式会社AOKIホールディングスの有価証券報告書(第50期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. AOKIホールディングスってどんな会社?
同社はファッションやエンターテイメント、ブライダルなど、多様な事業を多角的に展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1976年にアオキファッション販売として設立され、紳士服のチェーン展開を開始しました。1989年に東証二部へ上場し、1991年には東証一部へ指定替えされました。1998年のブライダル事業開始等を経て、2006年に現社名へ変更し純粋持株会社体制に移行。2022年にはランシステムを子会社化しました。
現在の従業員数は連結で3,226名、単体で127名です。筆頭株主はその他の関係会社であるアニヴェルセルHOLDINGSで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はトレイデアーリとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アニヴェルセルHOLDINGS | 38.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.11% |
| トレイデアーリ | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は田村春生氏が務めており、社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木彰宏 | 代表取締役会長 | 1994年入社。オリヒカ事業創業などを経て、2010年に代表取締役社長に就任。2022年より現職。 |
| 田村春生 | 代表取締役社長 | 横浜銀行等を経て2006年入社。執行役員グループ財務担当などを経て、2022年より現職。 |
| 照井則男 | 取締役副社長執行役員グループ事業戦略・デジタル・広報管掌 | スターバックス等を経て2015年入社。常務取締役等を経て、2025年より現職。 |
| 青木柾允 | 取締役専務執行役員グループブランド管掌 | 1993年入社。アニヴェルセルの役員などを経て、2022年専務取締役。2023年より現職。 |
| 投元谿太 | 取締役専務執行役員グループ人事・総務・コンプライアンス管掌 | 1985年入社。社長室長等を経て2022年専務取締役。2025年より現職。 |
| 峯村光治 | 取締役(監査等委員) | 1983年入社。経営管理室長やコンプライアンス室長を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、髙橋光夫(元パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス専務執行役員)、中村英一(元日鉄物産取締役専務執行役員)、笹尾敬子(元日本テレビ放送網)、宮本進(元かんぽ生命保険執行役)、横見瀬薫(元花王)、上平洋輔(元あらた監査法人)、金井暁(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファッション事業」、「エンターテイメント事業」、「アニヴェルセル・ブライダル事業」、「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ファッション事業
スーツを中心としたメンズおよびレディース衣料の販売を行っています。郊外のロードサイドを中心に展開する小売専門店「AOKI」や、ショッピングセンターを中心に新たなスタイリングを提案する「ORIHICA」を通じて、幅広い年代の個人顧客向けに衣料品を提供しています。
顧客である一般消費者からの商品販売代金が主な収益源です。当事業の運営は、主にAOKIが主体となって行っており、直営の店舗展開やオンラインショップの強化を通じて、時代のニーズに合わせた商品開発とサービス提供を進めています。
■(2) エンターテイメント事業
複合カフェやフィットネスジム、カラオケルームの運営を行っています。バリ島をイメージした複合カフェ「快活CLUB」や24時間型フィットネスジム「FiT24」、南仏をテーマにしたカラオケルーム「コート・ダジュール」などを展開し、多様な顧客に空間とサービスを提供しています。
施設やサービスの利用料、飲食代金などが主な収益源となっています。当事業の運営は、主に快活フロンティアおよびランシステムが行っており、鍵付完全個室の導入や省人化による店舗オペレーションの効率化など、業態の進化と新規出店を推進しています。
■(3) アニヴェルセル・ブライダル事業
ゲストハウススタイルの挙式披露宴施設の運営を行っています。貸切感のある施設での結婚式や披露宴のほか、記念日をコンセプトにしたカフェの運営、さらには企業の展示会や法人宴会など、多様化する価値観やニーズに応じた幅広いサービスを提供しています。
結婚式や披露宴の施行代金、衣装のレンタル料、カフェでの飲食代などが主な収益源です。当事業の運営は、主にアニヴェルセルが主体となって行っており、アニヴェルセル表参道などの基幹店を中心に、ブランド価値の向上と新規需要の開拓を進めています。
■(4) 不動産賃貸事業
多店舗展開しているグループの閉店店舗などを活用し、不動産賃貸サービスを行っています。グループ内だけでなく、外部企業への賃貸や、単独事業での使用が難しい大型物件を一括して賃借し、それを再賃貸する事業などを展開しています。
賃貸先企業からの不動産賃貸料が主な収益源となっています。当事業の運営は、主に同社が行っており、グループ全体の資産の有効活用を図るとともに、安定的な収益の確保とグループ内外への賃貸拡大を目指して事業を推進しています。
■(5) その他
報告セグメントに含まれない事業として、その他の関係会社による有価証券の保有や、関連会社による損害保険の代理事業などを行っています。
金融収益や代理店手数料などが主な収益源となっています。当事業の運営は、主にアニヴェルセルHOLDINGSや青木情報開発などのグループ会社が行っており、グループ全体の経営をサポートする役割を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が順調に拡大傾向をたどっており、収益性も着実に向上しています。経常利益率は2.8%から8.4%へと大幅に改善し、利益規模も成長を続けています。各事業における環境変化への対応や効率化策が成果を上げ、安定した収益基盤の強化が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,549億円 | 1,762億円 | 1,877億円 | 1,927億円 | 1,945億円 |
| 経常利益 | 44億円 | 84億円 | 132億円 | 148億円 | 164億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 4.8% | 7.1% | 7.7% | 8.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 32億円 | 17億円 | 33億円 | 68億円 | 68億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となり、売上総利益率および営業利益率ともに改善を見せています。原価コントロールや販売費の効率的運用が進展したことで、増収効果以上に利益水準の向上が図られていることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,927億円 | 1,945億円 |
| 売上総利益 | 807億円 | 829億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.9% | 42.6% |
| 営業利益 | 156億円 | 169億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が194億円(構成比29.4%)、賃借料が118億円(同18.0%)、広告宣伝費が97億円(同14.7%)を占めています。また、売上原価は1,117億円であり、売上高に対する構成比は57.4%となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上高は全般的に増加傾向にあります。主力のファッション事業は堅調に推移し、エンターテイメント事業も店舗網の拡大やサービス強化により増収を達成しました。また、ブライダル事業は顧客単価の上昇などで伸びを示しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ファッション事業 | 1,026億円 | 1,029億円 |
| エンターテイメント事業 | 760億円 | 768億円 |
| アニヴェルセル・ブライダル事業 | 117億円 | 124億円 |
| 不動産賃貸事業 | 21億円 | 22億円 |
| その他 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 1,927億円 | 1,945億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 217億円 | 176億円 |
| 投資CF | -85億円 | -106億円 |
| 財務CF | -140億円 | -149億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社会性の追求」、「公益性の追求」、「公共性の追求」の3つの経営理念を追求することを基本に据えています。これを実現するため、「人々の喜びを創造する」という事業コンセプトのもと、年齢や性別に関係なくすべての個人消費者を対象として、時代に合った多様な商品とサービスをお値打ちな価格で提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は従業員一人ひとりが主役となり、会社とともに成長し合える「イコールパートナー」としての関係性を重んじています。多様性を尊重し、従業員がやりがいを持って輝ける環境づくりを重視するとともに、風通しの良い組織文化の醸成に努め、互いの強みを活かす実践的な越境学習などの取り組みを通じた人材育成の体制を整えています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期を初年度とする中期経営計画において、10年後のありたい姿として営業利益300億円などの目標を掲げています。また、事業ポートフォリオ経営によりグループ全体で安定的な成長を目指し、株主還元についても配当性向の基準を設けるなど明確な指標のもとで経営を推進しています。
* 2027年3月期売上高 2,000億円
* 営業利益 300億円
* ROE 10%以上
* EPS 180円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
各事業のシナジーを高めながら安定成長を図る戦略を推進しています。ファッション事業ではライフスタイルの変化に対応した商品開発と店舗形態の見直しを進め、エンターテイメント事業では新コンテンツ導入と積極的な出店で市場拡大を狙います。また、ブライダル事業ではブランド向上と周辺事業の拡充を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的な企業価値向上の源泉である「資本」と位置付け、各事業の特性に最適化した育成と登用を推進しています。多様な人材がグループの枠を超えて活躍できるよう、繁忙期応援制度による実践的な越境学習などを通じて従業員のキャリア自律を支援し、安心して長く働ける生活基盤の確保と成長へのインセンティブを両立させています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.8歳 | 7.8年 | 7,359,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 49.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(62%)、正社員一人当たり教育訓練費(104,000円)、ストレスチェックによる高ストレス率(8.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気動向や市場変化による事業環境のリスク
同社の事業はすべて国内で展開されており、国内の景気や個人消費の動向に大きく影響を受けます。スーツ等ビジネス衣料の需要減少や、ブライダル市場の縮小、エンターテイメント市場の競争激化など、ビジネスモデルと市場動向の間に乖離が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 固定資産の減損会計によるリスク
同社グループは多店舗展開を行っており、各事業において多額の固定資産を保有しています。事業環境の変化により各店舗の営業損益が連続してマイナスとなる場合や、固定資産の時価が著しく下落した場合などには減損損失を計上する必要が生じ、業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 大規模災害・感染症等による影響
関東・関西・東海地区を中心にドミナント出店を行っているため、これらの地域で大規模な自然災害が発生した場合、業績への影響が大きくなる可能性があります。また、新たな感染症の発生に伴う営業制限やサプライチェーンの混乱が生じた際にも、収益が大幅に減少するリスクを抱えています。
■(4) 新規出店や店舗展開に関するリスク
同社の成長はチェーンストア方式による直営店舗の展開に依存しており、計画通りの新規出店が行えない場合には業績に影響が及ぶ可能性があります。また、地域での知名度向上を狙うドミナント出店戦略において、好立地の確保が困難になることや自社競合が発生するリスクも存在しています。



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