ゼット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼットは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、スポーツ用品の製造、卸売、小売、物流などスポーツ事業を幅広く展開する企業です。直近の業績では、主力の卸売部門を中心に堅調な需要を捉え、売上高は増収、経常利益も増益となり過去最高を更新しました。一方、投資有価証券売却益の減少により最終利益は減益となっています。


※本記事は、ゼット株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼットってどんな会社?


同社はスポーツ用品の卸売を主力とし、製造や小売、物流までを一貫して手掛けるスポーツの総合企業です。

(1) 会社概要


同社は1920年に渡辺梁三商店として創業し、スポーツ用品の製造販売を開始しました。1980年に現在のゼットに社名を変更し、1981年に株式上場を果たしました。1990年には製品事業本部をゼットクリエイトとして分離独立させたほか、近年ではスポーツ用品卸売事業のM&Aによる業容拡大も進めています。

同社の従業員数は連結で578名、単体で422名です。筆頭株主は有限会社眞徳で、第2位には金融機関であるみずほ銀行、第3位には同社の取引先会社で構成されるゼット共栄会が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社眞徳 19.73%
みずほ銀行 4.96%
ゼット共栄会 4.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は渡辺裕之氏が務めており、社外取締役比率は18.2%となっています。

氏名 役職 主な経歴
渡辺裕之 代表取締役社長 1989年日本IBM入社、1995年同社入社。経営企画室長や総務本部長などを歴任し、2010年代表取締役副社長に就任。2013年より現職。
和田耕一 取締役副社長 1975年伊藤忠商事入社。オリゾンティ社長などを経て、2012年同社に入社。2014年常務取締役などを経て、2018年より現職。
髙橋智一 取締役営業統括本部長 1981年同社入社。第五事業本部長、執行役員第二営業部長などを歴任。2017年常務取締役を経て、2023年より現職。
宇都宮仁 取締役営業統括本部営業本部長 1978年同社入社。MD仕入アルカネット部長などを歴任し、2016年執行役員第一営業部長に就任。2024年より現職。
植田和昌 取締役営業統括本部MD・商品本部長 1984年同社入社。IT戦略統括本部システム部長などを経て、2014年執行役員に就任。2025年より現職。
田中洋司 取締役管理統括本部長 2001年みずほ信託銀行入社。同社証券代行部長などを経て、2024年同社に入社し顧問に就任。2025年より現職。
渡辺征志 取締役管理統括本部管理本部長 2002年同社入社。ブリリアンス代表取締役社長やIT統括本部長などを歴任し、2017年取締役。2021年より現職。
山中博 取締役営業統括本部営業本部製品事業部長 1989年同社入社。ゼットクリエイトMD部長などを経て、2020年執行役員に就任。2024年より現職。
岸田浩 取締役(監査等委員) 1982年同社入社。ライフスタイル営業部副部長、管理本部人事総務部長などを歴任。2020年内部監査室を経て、2021年より現職。


社外取締役は、衣目修三(公認会計士事務所開設)、桑山斉(弁護士法人御堂筋法律事務所入所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スポーツ事業」の単一セグメントにおいて事業を展開しています。

卸売部門


スポーツ用品全般についての卸販売を行っており、全国のスポーツ用品小売店や量販店等への商品供給を担っています。また、中国国内でも野球用品等の販売を行っています。

収益源は、小売店や量販店へのスポーツ用品の卸販売代金です。運営は同社のほか、中国における販売を広州捷多商貿有限公司が行っています。

製造部門


野球用品(バット、グラブ等)やスポーツウェア等の企画・開発・製造を担っています。自社工場での製造に加え、外注工場や商社からの商品仕入れも行っています。

収益源は、主に同社グループの卸売部門へ製造・仕入れた商品を販売することによる代金です。運営はゼットクリエイトが行っています。

小売部門


一般顧客に対して、店頭でのスポーツ用品の直接販売を主力として展開しています。専門性の高い品揃えと質の高い接客サービスの提供を特徴としています。

収益源は、直営店舗における一般顧客へのスポーツ用品の販売代金です。運営はロッジが行っています。

物流部門


同社グループの卸売部門および製造部門にかかわる商品の物流業務全般を担っています。さらに、グループ外からの物流業務受託も行っています。

収益源は、グループ内およびグループ外からの物流業務の受託手数料です。運営は主にザイロとジャスプロが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は継続的な成長を遂げており、堅調に拡大しています。経常利益も売上の拡大に連動して増加傾向にあり、安定した収益性を維持しています。当期利益については、前期に投資有価証券売却益を計上した反動等により変動が見られますが、本業の儲けは着実に成長している状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 448億円 499億円 520億円 553億円 587億円
経常利益 9億円 12億円 10億円 13億円 15億円
利益率(%) 2.0% 2.4% 2.0% 2.3% 2.5%
当期純利益 5億円 7億円 6億円 30億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は安定した水準を維持しつつ、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 553億円 587億円
売上総利益 96億円 102億円
売上総利益率(%) 17.3% 17.4%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 1.9% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が25億円(構成比28%)、倉庫委託料が19億円(同21%)、運賃及び荷造費が9億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


卸売部門は、健康志向の高まりや観戦・参加型イベントの多様化を背景に各カテゴリーで需要が拡大し増収を牽引しました。製造部門も堅調に推移した一方、小売部門や物流部門の売上はやや減少しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
卸売部門 537億円 571億円
製造部門 3億円 3億円
小売部門 5億円 5億円
物流部門 8億円 7億円
連結(合計) 553億円 587億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で借入金の返済を進めつつ、設備投資等も手元資金で賄う「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 20億円 3億円
投資CF 9億円 -1億円
財務CF -4億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念である「スポチュニティ(スポーツを通じて、地域社会に喜びと健康やふれあいの機会を提供し、調和をもたらす)」のもと、「社会に新しい価値を創造するスポーツ&ライフスタイル企業」をビジョンに掲げています。スポーツを通じた社会への奉仕と持続的な成長の両立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社是である「個人の幸福と人格の向上」や、社訓に掲げる「サービス精神に徹する」「機を尊ぶ」「計画して行う」「自己啓発」「困難に挑戦する」を価値観として重視しています。事業を通じて社会に奉仕するとともに、従業員一人ひとりが向上心を持ち、環境変化に機敏に対応しながら困難に挑む組織文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、安定した収益基盤の確立および財務基盤の強化を経営上の重要課題と位置づけ、以下の数値を中長期的な目標として掲げています。これらの指標の継続的な改善を通じて、収益性および財務健全性の向上に努めています。

・連結売上高営業利益率2.5%以上
・自己資本当期純利益率(ROE)7%以上
・自己資本比率50%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は利益を伴う売上拡大を目指し、スポーツ流通におけるシェア拡大やライフスタイル事業の育成、EC市場の取り込みを推進しています。また、適正な在庫流動管理や物流の効率化といった構造改革により収益性を高めるとともに、DX化の推進や従業員エンゲージメントの向上を通じて経営基盤の強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「会社も個人もより高みを目指す」組織の実現を基本方針とし、好奇心旺盛で課題解決意欲が高く、スポーツへの熱意を持つ人材を求めています。「個の力×組織力=総合力」という考えのもと、専門知識やマネジメント力の育成に注力するとともに、評価の透明性向上やワークライフバランスの推進による定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.9歳 14.9年 6,192,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.5%
男性育児休業取得率 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 81.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 79.8%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 77.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員女性比率(31.0%)、月平均残業時間(8.2時間)、年次有給取得率(37.4%)、離職率(4.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内消費マーケットの変化


同社の売上の大部分は日本国内における営業活動から生み出されています。少子高齢化の進行や消費者の購買行動の変化、自然災害、気候変動などによりスポーツ用品の消費マーケットが想定以上に変化した場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(2) 生産および仕入環境の悪化


一部の自社製品は中国やベトナム、台湾などの海外協力工場で生産されています。これら海外生産国における政治・社会情勢の変化や感染症の発生により、製品供給の遅延や原材料・エネルギー価格が高騰した場合、製造原価の上昇につながるリスクがあります。

(3) 為替相場の変動


同社の取扱商品には海外生産品が多く含まれており、自社製品も主に海外生産に依存しています。実需の範囲内で為替予約取引を行うなど変動リスクの低減に努めていますが、想定を超える為替変動が生じた場合、仕入価格や製造原価が上昇し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) ライセンス契約の見直し


一部のブランドについては、他社とのライセンス契約に基づいて国内で製造販売を行っています。また、仕入先がナショナルブランドメーカーと結ぶライセンス契約に基づく商品供給も存在します。販売戦略の変更等によりこれらの契約が打ち切られた場合、商品供給に支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。