ゼット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所 スタンダード市場に上場しており、スポーツ用品の製造および卸売・小売事業を主力としています。直近の業績は、売上高が520億円(前期比4.1%増)と伸長した一方、経常利益は10億円(前期比16.3%減)となり、増収減益で着地しました。


※本記事は、ゼット株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼットってどんな会社?


スポーツ用品の卸売を中核に、製造から小売まで手がける総合スポーツ企業です。創業100年を超える歴史を持ちます。

(1) 会社概要


1920年に渡辺梁三商店として創業し、スポーツ用品等の製造販売を開始しました。1950年に渡辺運動用品へ組織変更後、1980年に現在のゼットへ社名を変更。1981年には大阪証券取引所市場第二部に上場を果たしました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に移行しています。

連結従業員数は584名、単体では426名です。筆頭株主は創業家の資産管理会社と思われる有限会社眞徳、第2位は取引先持株会であるゼット共栄会、第3位はメインバンクのみずほ銀行となっており、安定的な株主構成です。

氏名 持株比率
有限会社眞徳 19.73%
ゼット共栄会 7.51%
みずほ銀行 4.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は渡辺裕之氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
渡辺 裕之 代表取締役社長 日本IBM入社後、1995年に入社。総務本部長、常務取締役社長室長、代表取締役副社長営業統括本部長などを歴任し、2013年4月より現職。
和田 耕一 取締役副社長 伊藤忠商事入社後、ライカ代表取締役社長などを経て2012年に入社。製品事業本部長、ゼットクリエイト代表取締役社長などを歴任し、2018年4月より現職。
髙橋 智一 取締役営業統括本部長 1981年に入社。サッカー事業部副本部長、執行役員第二営業部長、取締役営業本部長などを歴任し、2023年4月より現職。
宇都宮 仁 取締役営業統括本部営業本部長 1978年に入社。第一営業部長、執行役員営業本部第一営業部長などを歴任し、2024年4月より現職。
渡辺 征志 取締役管理統括本部管理本部長 2002年に入社。ブリリアンス代表取締役社長、取締役IT統括本部長、MD・物流本部副本部長などを歴任し、2021年4月より現職。
植田 和昌 取締役営業統括本部MD・商品本部長 1984年に入社。IT戦略統括本部システム部長、執行役員MD・物流本部副本部長などを歴任し、2021年4月より現職。
山中 博 取締役営業統括本部営業本部製品事業部長 1989年に入社。ゼットクリエイトMD部長、製品事業本部ベースボール営業部長などを歴任し、2024年4月より現職。
岸田 浩 取締役(監査等委員) 1982年に入社。ライフスタイル営業部副部長、管理本部人事総務部長、内部監査室を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、衣目修三(公認会計士・税理士)、桑山斉(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スポーツ事業」の単一セグメントにおいて、以下の部門別事業を展開しています。

(1) 卸売部門


同社が主体となり、子会社および国内約300社から仕入れたスポーツ用品全般を、全国のスポーツ用品小売店や量販店等へ販売しています。また、中国においては広州捷多商貿有限公司が野球用品等の販売を行っています。

収益は主に小売店等への商品卸売による販売代金です。運営は同社および広州捷多商貿有限公司が担当しています。

(2) 製造部門


野球用品やスポーツウェア等の企画・開発を行い、自社工場での製造や外注工場・商社からの仕入れを通じて商品を提供しています。特に「ゼットベースボール」等の自社ブランド製品を展開しています。

収益は主に同社(卸売部門)への製品販売による対価です。運営は主にゼットクリエイトが行っています。

(3) 小売部門


直営店舗を通じて、一般顧客に対してスポーツ用品やアウトドア用品の店頭販売を行っています。専門性の高い品揃えと接客による顧客満足度の向上に注力しています。

収益は一般顧客からの商品販売代金です。運営はロッジが行っています。

(4) その他部門


グループ内外の物流業務や、スポーツ施設の運営などを行っています。物流拠点の運営によりグループ全体のサプライチェーンを支えています。

収益は物流業務受託料や施設運営収入等です。運営は主にザイロ、ジャスプロが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台から500億円台へと拡大傾向にあります。特に直近2期は500億円前後で推移しており、堅調です。経常利益については、2021年3月期に一時落ち込みましたが、その後回復し、直近では10億円を超える水準を確保しています。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 419億円 376億円 448億円 499億円 520億円
経常利益 4.0億円 1.5億円 8.9億円 12.2億円 10.2億円
利益率(%) 1.0% 0.4% 2.0% 2.4% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.6億円 0.3億円 5.0億円 6.8億円 6.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の499億円から520億円へ増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は微減となりました。販売費及び一般管理費が増加した影響もあり、営業利益は前期の10億円から9億円へと減少しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 499億円 520億円
売上総利益 92億円 91億円
売上総利益率(%) 18.4% 17.5%
営業利益 10億円 9億円
営業利益率(%) 2.0% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの人件費(役員報酬及び給料手当)が32億円(構成比39%)、倉庫委託料が13億円(同16%)を占めています。売上原価は売上高に対して82%程度の比率で推移しています。

(3) セグメント収益


部門別の売上高を見ると、主力の卸売部門が増収となり全体を牽引しました。一方、製造部門、小売部門、その他部門はいずれも減収となりました。特にその他部門は物流業務の取扱数量減少やスポーツ施設運営事業の譲渡により大きく減少しました。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期)
卸売部門 480億円 504億円
製造部門 3億円 3億円
小売部門 6億円 6億円
その他部門 10億円 8億円
連結(合計) 499億円 520億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済や配当支払いも実施(財務CFマイナス)しており、健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 15億円 7億円
投資CF -0.9億円 -3億円
財務CF -3億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.0%で市場平均(48.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業の永続と繁栄」「個人の幸福と人格の向上」「業を通じて社会に奉仕する」を社是としています。また、企業理念「スポチュニティ(スポーツを通じて、地域社会に喜びと健康やふれあいの機会を提供し、調和をもたらすこと)」のもと、「社会に新しい価値を創造するスポーツ&ライフスタイル企業」をビジョンに掲げ、持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社訓として「サービス精神に徹する」「機を尊ぶ」「計画して行う」「自己啓発」「困難に挑戦する」を定めています。これらの指針に基づき、変化する経営環境の中で、機会を逃さず計画的に行動し、自己研鑽に励みながら困難に立ち向かう姿勢を重視する企業風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、安定した収益基盤の確立および財務基盤の強化を目指し、経営上の目標を定めています。具体的には、以下の数値を経営目標として掲げています。

- 連結売上高営業利益率:2%以上
- 自己資本比率:50%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において「構造改革の更なる前進」と「ESG経営の推進」を具体的施策として掲げています。構造改革では、収益性向上、利益を伴った売上拡大、在庫・物流改革に取り組み、特に粗利率・在庫流動性・MD力の「3つのアップ」を目指しています。ESG経営では、環境対応やガバナンス強化を進めるとともに、人的資本の活性化やDX投資による生産性向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材(人的資本)の戦略的活性化」を基本方針の一つとして掲げています。ダイバーシティを推進し、多様な人材が能力を発揮できる風土の醸成や、働き方改革から働きがい改革への移行を目指しています。また、健康経営の推進や、自律的成長を促すための教育研修制度の充実に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 43.1歳 15.2年 596万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 73.3%
男女賃金差異(正規) 76.6%
男女賃金差異(非正規) 75.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)(11時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内消費マーケットの変化


同社グループの売上は日本国内が大部分を占めています。少子高齢化の進行や消費者の購買行動の変化、景気変動などが消費マーケットに想定を超える変化をもたらした場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。これに対し、販売先や取扱商品の拡大により対応力を高めています。

(2) 生産および仕入リスク


一部の自社製品を中国やベトナム等の海外協力工場で生産しています。生産国における政治・社会情勢の変化や感染症の発生等により、製品供給の停止・遅延やコスト上昇が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。リスク分散のため、生産国の分散や国内生産への切り替え等の対策を講じています。

(3) 為替相場の変動


取扱商品には海外生産品が多く、為替変動により仕入価格や製造原価が上昇する可能性があります。為替予約取引によりリスク低減を図っていますが、完全に排除することは困難であり、変動によっては業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 他社とのライセンス契約


一部ブランドについて他社とのライセンス契約に基づき製造販売を行っています。ライセンサーの戦略変更や契約打ち切りにより商品供給が不能になる場合や、契約条件の不一致が生じた場合、事業継続に支障をきたし、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。