※本記事は、株式会社はせがわの有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. はせがわってどんな会社?
仏壇仏具・墓石の販売から終活領域まで、供養と生活を総合的に支援する企業です。
■(1) 会社概要
1929年に創業し、1966年に長谷川仏壇店として法人化されました。1976年にはせがわに商号を変更し、1988年に福岡証券取引所、2013年には東京証券取引所市場第一部に上場しました。1997年に墓石事業に本格参入し、2024年には現代仏壇を完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で834名、単体で757名です。筆頭株主は事業会社の長谷川興産で、第2位は創業家等の長谷川裕一氏、第3位も個人の吉野泰雄氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 長谷川興産 | 20.85% |
| 長谷川 裕一 | 12.01% |
| 吉野 泰雄 | 6.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は新貝三四郎氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新貝 三四郎 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。物流管理部長や東京営業部長などを歴任し、2021年より現職。 |
| 中谷 泰文 | 専務取締役 執行役員経営企画グループ長 | 1983年富士銀行入行。2012年同社入社。営業企画グループ長などを経て、2025年より現職。 |
| 榎本 哲治 | 常務取締役 執行役員商品・聖石グループ長 | 1984年同社入社。聖石開発部長や寺社聖石グループ長などを経て、2025年より現職。 |
| 田村 岳二 | 取締役 執行役員営業グループ長 | 1993年同社入社。東京営業部長や聖石部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、茶木正安(元日本不動産銀行専務)、軒名彰(元日興証券常務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「はせがわ 仏壇仏具・墓石」「屋内墓苑」「飲食・食品・雑貨」「ピースフルライフサポート」「現代仏壇 仏壇仏具」および「その他」事業を展開しています。
■(1) はせがわ 仏壇仏具・墓石
東日本および西日本地域の直営店舗にて、仏壇仏具の小売販売や墓石建立などの受注販売を行っています。伝統的な様式に基づく商品から、多様化する価値観に対応したデザイン性の高いオリジナル商品まで幅広く提供しています。
顧客に対する仏壇仏具や墓石の販売代金を主な収益源としています。自社基準に基づく高品質な商品開発や霊園の企画提案を進めており、運営は同社が行っています。
■(2) はせがわ 屋内墓苑
販売業務委託契約により、寺院が有する屋内墓苑の受託販売を行っています。都市部のニーズに合わせた自動搬送式の納骨堂などを提供し、墓石事業とともに遺骨供養全体の受注件数増加を目指しています。
寺院と屋内墓苑使用者が永代使用に関する契約を締結し、永代使用料が支払われた時点で受託販売手数料を受け取る収益モデルです。運営は同社が行っています。
■(3) はせがわ 飲食・食品・雑貨
飲食および食品・雑貨の小売販売を行っています。「田ノ実」ブランドによる店舗運営に加え、返礼品や手土産にふさわしい食のギフトや生活雑貨などを顧客に提供しています。
顧客に対する料理の提供やギフト商材の販売代金を主な収益源としています。新たな顧客接点の創出と事業の健全な成長を目的としており、運営は同社が行っています。
■(4) はせがわ ピースフルライフサポート
死後事務委任、身元保証、介護施設紹介、遺産相続、遺品整理、不動産整理などの相談対応を行っています。ご逝去前後のライフイベントにおいて発生する終活や相続領域の悩みを、専門家と連携してワンストップで支援するサービスです。
顧客に対して各種相談支援サービスを提供した時点で対価を受け取る収益モデルです。供養事業を起点とした継続的な関係構築により顧客生涯価値の最大化を目指しており、運営は同社が行っています。
■(5) 現代仏壇 仏壇仏具
直営店舗およびECサイトにて、モダンで洗練されたデザインの高品質な仏壇仏具を販売しています。提携取引先による専門店「ギャラリーメモリア」を全国に展開し、多様な手元供養ニーズに応えています。
顧客に対する仏壇仏具の小売販売代金や、提携販売店に対する卸売代金を収益源としています。同社グループ内のシナジー創出を目指し、運営は子会社の現代仏壇が行っています。
■(6) その他
報告セグメントに含まれない事業として、EC販売および卸売販売を行っています。自社サイトを通じたオンライン販売のほか、店舗商圏外の仏壇販売店を対象とした展開が中心です。
顧客に対する商品のオンライン販売代金や、取引先に対する卸売代金を主な収益源としています。実店舗との相互送客を推進しており、運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去の業績推移を見ると、売上高は概ね200億円前後で推移していますが、直近では顧客の供養に対する価値観の変化や商品の小型化・低価格化の影響を受け、減収減益となっています。特に利益面では、人件費の上昇や原材料高騰などが影響し、利益率が低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 198億円 | - | - | 212億円 | 211億円 |
| 経常利益 | 12億円 | - | - | 13億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | - | - | 6.0% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 12億円 | 11億円 | 9億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成を見ると、売上総利益率は約64%で安定的に推移していますが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益率が低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 212億円 | 211億円 |
| 売上総利益 | 135億円 | 135億円 |
| 売上総利益率(%) | 63.4% | 63.9% |
| 営業利益 | 12億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与手当が52億円(構成比41%)、賃借料が14億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の収益を見ると、主力である「はせがわ 仏壇仏具・墓石」が売上の大部分を占めていますが、販売基数の減少により減収となっています。一方、「ピースフルライフサポート」や「現代仏壇 仏壇仏具」は増収となっており、新規領域の成長がみられます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| はせがわ 仏壇仏具・墓石(東日本) | 149億円 | 142億円 | 10億円 | 9億円 | 6.0% |
| はせがわ 仏壇仏具・墓石(西日本) | 36億円 | 35億円 | 3億円 | 2億円 | 7.1% |
| はせがわ 屋内墓苑 | 6億円 | 3億円 | 2億円 | 1億円 | 22.2% |
| はせがわ 飲食・食品・雑貨 | 3億円 | 4億円 | -0億円 | -0億円 | - |
| はせがわ ピースフルライフサポート | 1億円 | 3億円 | -0億円 | -0億円 | - |
| 現代仏壇 仏壇仏具 | 8億円 | 17億円 | -0億円 | -1億円 | - |
| その他 | 9億円 | 9億円 | -1億円 | -1億円 | - |
| 調整額 | -0億円 | -2億円 | -2億円 | -2億円 | - |
| 連結(合計) | 212億円 | 211億円 | 12億円 | 8億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業CFと資金調達で事業転換のための投資を行う「再建・転換型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 4億円 |
| 投資CF | -17億円 | 2億円 |
| 財務CF | 10億円 | 4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業の精神である「信用本位」「感謝報恩」「よろこびのあきない」を基本理念と位置づけています。この精神に基づく持続的な企業活動を通じて「心の平和と生きる力」を実現することを使命と捉え、歴史ある日本文化を伝承することで、ともに調和し、輝きあい、喜びあえる世界を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
これまで長年取り組んできた「供養」の領域を深めるとともに、お客様の「穏やかで心豊かな生活(ピースフルライフ)」を支援することを重視しています。「敬い・感謝・礼儀を重んじる”和”の企業文化」が根付いており、あらゆるご縁への感謝の想いを体現しながら、一人ひとりが専門的な教養やスキルを身につけて成長する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新たな3ヵ年の中期経営計画において「売り切り型からの脱却」「手を合わせる機会の創造」を通じた、お客様の「穏やかで心豊かな生活(ピースフルライフ)」の実現をテーマに掲げています。主要な経営指標として以下を目標としています。
* ROEの向上
* 売上高伸張率の向上
* 売上高営業利益率の向上
* 自己資本比率の向上
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の宗教用具の小売業から、終活やご逝去後の生活までを包括的に支援するビジネスモデルへの転換を目指しています。現代仏壇とのシナジー最大化による既存事業の進化に加え、ピースフルライフサポート事業を新たな収益の柱として確立させます。
* 既存事業の進化発展
* 新規事業の成長
* 戦略的投資の実行
* 利益体質への転換
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「会社は人間形成の場」と捉え、従業員が専門的なスキルを身につけて「個の力」を高め、自主性・自律性を発揮することを重視しています。一人ひとりが働きやすく活躍できる環境を整備するため、多様なキャリアや勤務体系を選択できる仕組みを提供し、従業員の心身の健康増進や多様性の確保を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.7歳 | 17.8年 | 5,389,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 87.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(63.8%)、社内資格の取得率(89.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) お客様の供養に対する価値観の変化
生活様式や価値観の変化に伴い、従来の概念に捉われない新しい供養へのニーズが高まっています。商品の小型化・低価格化の進行や、樹木葬・合葬墓といった新しいサービスへの移行など、お客様の意識の変化に適切に対応できない場合、同社の今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 優良な霊園・墓所の確保
墓石売上の確保には、生活圏に近くて立地の良い優良な霊園や墓所を確保することが重要です。しかし、地方自治体の規制強化や近隣住民とのトラブル等により、宗教法人による新規開発は困難な状況にあります。将来に向けて優良な霊園が十分に確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 営業保証金・販売保証金の回収リスク
建墓権取得のための営業保証金や、屋内墓苑の受託販売に伴う販売保証金を宗教法人等に差し入れています。霊園の経営悪化や販売不振、地方自治体の許可取消しなどにより、これらの保証金の回収が長期化または困難になった場合、貸倒引当金の計上等により業績や資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。



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