※本記事は、株式会社はせがわ の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. はせがわってどんな会社?
東証スタンダード市場に上場する仏壇仏具・墓石販売の最大手。伝統的な供養から現代的な祈りまで幅広く提案しています。
■(1) 会社概要
1929年に創業し、仏壇仏具の行商を開始。1966年に法人化、1976年に現社名へ変更しました。1988年に福岡証券取引所へ上場し、2013年には東京証券取引所市場第一部へ上場(現在はスタンダード市場)。2024年10月に株式会社現代仏壇を完全子会社化し、仏壇仏具事業の強化を図っています。
連結従業員数は845名、単体では758名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の長谷川興産で、第2位は創業者の長谷川裕一氏、第3位は吉野泰雄氏となっており、創業家および個人株主が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 長谷川興産 | 20.85% |
| 長谷川裕一 | 12.01% |
| 吉野泰雄 | 6.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は新貝三四郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新貝 三四郎 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。営業グループ長等を経て2021年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 中谷 泰文 | 専務取締役 | 1983年富士銀行入行。2012年同社入社。商品グループ長等を経て2025年4月より現職。 |
| 榎本 哲治 | 常務取締役 | 1984年同社入社。寺社聖石グループ長等を経て2025年4月より現職。 |
| 田村 岳二 | 取締役 | 1993年同社入社。執行役員営業グループ長を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、茶木正安(元福岡リアルティ代表取締役社長)、軒名彰(元SMBC日興証券専務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「はせがわ」ブランドの仏壇仏具・墓石、屋内墓苑、飲食・食品・雑貨、「現代仏壇」ブランドの仏壇仏具および「その他」事業を展開しています。
■(1) 仏壇仏具・墓石事業(はせがわ)
仏壇仏具の小売販売と、墓石建立および施工の受注販売を行っています。東日本および西日本地域に直営店舗を展開し、伝統的な様式から現代の生活様式に合わせた商品まで幅広く提供しています。
顧客への商品販売による代金が収益源です。運営は主にはせがわが行っています。
■(2) 屋内墓苑事業(はせがわ)
寺院が有する屋内墓苑の受託販売を行っています。天候に左右されない参拝環境や利便性の高さが特徴です。
寺院と顧客との契約成立に基づく受託販売手数料が主な収益源です。運営ははせがわが行っています。
■(3) 飲食・食品・雑貨事業(はせがわ)
「田ノ実」ブランドで飲食および食品・雑貨の小売販売を行っています。「食」を通じた日常の祈りや感謝の提案を行っています。
顧客への飲食提供および商品販売による代金が収益源です。運営ははせがわが行っています。
■(4) 仏壇仏具事業(現代仏壇)
直営店舗および全国の提携専門店「ギャラリーメモリア」にて、モダンなデザインの仏壇仏具の小売・卸売販売を行っています。
顧客への商品販売および提携店への卸売販売による代金が収益源です。運営は現代仏壇が行っています。
■(5) その他事業
ECサイトでの仏壇仏具販売、全国の販売店への卸売、および相続・遺品整理などを支援するピースフルライフサポート事業を展開しています。
商品販売代金やサービスの相談対応・紹介による手数料等が収益源です。運営ははせがわが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2025年3月期より連結決算に移行したため、過去との単純比較はできませんが、当期の売上高は212億円、経常利益は13億円となりました。単体業績では売上高が減少傾向にありますが、現代仏壇の子会社化により連結ベースでの事業規模を拡大させています。利益率は6%台を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 178億円 | 198億円 | 212億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 12億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 6.2% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 7億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
当期(2025年3月期)の連結業績は、売上高212億円に対し、売上総利益は135億円、営業利益は12億円となりました。売上総利益率は63.4%と高い水準を維持しています。販管費の抑制や効率的な経営が求められる中、営業利益率も5.7%を確保しており、安定した収益構造が見て取れます。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 212億円 |
| 売上総利益 | 135億円 |
| 売上総利益率(%) | 63.4% |
| 営業利益 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与手当が47億円(構成比39%)、賃借料が13億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の仏壇仏具・墓石事業が売上の大半を占めていますが、墓石販売の減少などにより減収傾向です。一方、現代仏壇事業が新たに加わり収益に貢献しています。屋内墓苑事業は堅調ですが、飲食・食品・雑貨事業やその他事業は赤字または低収益となっており、収益性の改善が課題です。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| はせがわ 仏壇仏具・墓石 | 185億円 | 13億円 | 6.8% |
| はせがわ 屋内墓苑 | 6億円 | 2億円 | 40.8% |
| はせがわ 飲食・食品・雑貨 | 3億円 | -0.1億円 | -2.8% |
| 現代仏壇 仏壇仏具 | 8億円 | -0.1億円 | -1.1% |
| その他 | 11億円 | -0.6億円 | -5.6% |
| 調整額 | -0.3億円 | -2億円 | - |
| 連結(合計) | 212億円 | 12億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**
営業CFで得た資金に加え、財務CFでも資金を調達し、投資CFへ積極的に振り向けています。特に当期は現代仏壇の子会社化に伴う支出や設備投資が大きく、将来の成長に向けた投資を優先している状況です。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 営業CF | 1.5億円 |
| 投資CF | -17.2億円 |
| 財務CF | 9.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業の精神である「信用本位」「感謝報恩」「よろこびのあきない」を基本理念としています。この精神に基づき、「心の平和と生きる力」を実現することを使命とし、日本文化の伝承を通じて、ともに調和し、輝きあい、喜びあえる世界の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「敬い・感謝・礼儀を重んじる”和”の企業文化」を大切にしています。会社を「人間形成の場」と捉え、従業員一人ひとりが自主性・自律性を発揮し、専門的な教養やスキルを身につけながら、日本の心に根差した奥深い精神性を養うことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から新たな中期経営計画をスタートさせ、「売り切り型からの脱却」「手を合わせる機会の創造」をテーマに掲げています。数値目標としては、主に以下の指標の向上を目指しています。
* ROE
* 売上高伸張率
* 売上高営業利益率
* 自己資本比率
■(4) 成長戦略と重点施策
「供養」の領域を深めつつ、ライフステージに寄り添った周辺領域へ拡大し、「心豊かな生活(ピースフルライフ)」を支援する企業グループを目指しています。具体的には、終活や相続等の相談に対応する「ピースフルライフサポート事業」の拡大、現代仏壇とのシナジー創出、デジタルマーケティングの強化、樹木葬墓地の開発・受託販売の強化などを重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
会社を「人間形成の場」とし、従業員が「個の力」を高め「自己」を確立することを育成の本質としています。また、「健康」と「多様性」を重視し、多様なキャリア・勤務体系の選択肢を提供することで、多様な属性を持つ従業員が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.5歳 | 17.5年 | 5,265,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 90.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社内資格(ベーシック資格)取得率(98.3%)、年間有給休暇取得率(64.2%)、係長職(店長・所長)に占める女性従業員の比率(17.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客の価値観の変化
生活様式の変化により、供養に対するニーズが多様化しています。商品の小型化・低価格化が進むほか、樹木葬などの新しい供養形態への需要が高まっており、こうした市場変化への対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外における社会情勢の変化
販売商品の大半や原材料は中国等アジア各国からの輸入に依存しています。海外の政治・経済情勢の変化、為替変動、物流の混乱などにより、調達コストの高騰や供給遅延が発生した場合、利益率の悪化や機会損失を招く可能性があります。
■(3) 営業保証金の評価
霊園開発の主体となる宗教法人等に対し、建墓権取得のために営業保証金を差入れています。霊園開発の遅延や頓挫、開園後の販売不振などにより回収が困難となった場合、貸倒引当金の計上などにより業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 屋内墓苑受託販売物件の販売保証
屋内墓苑の受託販売において、一定の販売目標金額を保証する契約を締結しています。販売実績が目標を下回った場合の保証金預託が発生し、さらに販売不振が長期化して保証金の回収が困難と判断された場合、業績および資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。