※本記事は、株式会社銀座ルノアールの有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 銀座ルノアールってどんな会社?
同社は「喫茶室ルノアール」を主力ブランドとし、くつろぎの空間とホスピタリティを提供する喫茶店チェーンです。
■(1) 会社概要
1964年に東京都中央区で「ルノアール日本橋店」を開店し創業しました。その後、1989年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所(現・東証スタンダード市場)へ上場を果たしました。2013年にはキーコーヒー株式会社と資本・業務提携を締結するなど、事業基盤の強化を進めています。
連結従業員数は152名、単体では151名です。筆頭株主は創業家の資産管理会社である有限会社オーギュストで、第2位は創業母体である不動産会社の株式会社花見煎餅、第3位は資本業務提携先であるキーコーヒー株式会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社オーギュスト | 21.79% |
| 花見煎餅 | 19.12% |
| キーコーヒー | 12.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は岡崎 裕成氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 猪狩 安往 | 代表取締役会長 | 1972年入社。総務部長、管理本部長、取締役副社長、代表取締役会長兼社長を経て2024年6月より現職。 |
| 岡崎 裕成 | 代表取締役社長 | 1989年入社。営業本部長、取締役開発本部長、専務取締役などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 高野 好隆 | 取締役営業本部長兼マーケティング部長 | 1989年入社。営業本部スーパーバイザー、営業部長、営業本部副本部長を経て2021年8月より現職。 |
| 森田 正一 | 取締役管理本部長兼財務部長兼経営企画部長 | 1996年入社。経理部長、財務部長などを歴任し、2024年3月より現職。 |
社外取締役は、小澤 信宏(キーコーヒー取締役副社長)、福田 厚(キーコーヒー執行役員)、中谷 ゆかり(弁護士)、荒 剛史(元ニチレイバイオサイエンス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「喫茶等事業」を展開しています。
■喫茶等事業
首都圏を中心に「喫茶室ルノアール」や「Cafeルノアール」、「ミヤマ珈琲」などの喫茶店を経営しています。ビジネスマンや買い物客など幅広い層を顧客とし、独自の「昭和モダン」などをコンセプトにしたくつろぎの空間を提供しています。
収益は主に店舗を利用する顧客からの飲食代金および商品販売代金です。また、フランチャイズ契約に基づき、加盟店からのロイヤリティ収入なども得ています。運営は主に株式会社銀座ルノアールおよび連結子会社の有限会社銀座ルノアールが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は回復傾向にあり、直近では増収が続いています。利益面では、経常利益は黒字を確保し回復基調にありますが、当期純利益に関しては減損損失の影響等により損失計上が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 42億円 | 46億円 | 61億円 | 74億円 | 78億円 |
| 経常利益 | -19億円 | -0.5億円 | -2億円 | 0.7億円 | 1億円 |
| 利益率(%) | -46.2% | -1.0% | -3.1% | 0.9% | 1.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -24億円 | 3億円 | -3億円 | -0.6億円 | -0.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、営業利益率は改善しています。コストコントロールと売上回復により、本業の収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 74億円 | 78億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 63億円 |
| 売上総利益率(%) | 80.9% | 80.7% |
| 営業利益 | 0.2億円 | 0.8億円 |
| 営業利益率(%) | 0.2% | 1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が24億円(構成比38%)、賃借料が19億円(同30%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は喫茶等事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な増減分析は省略します。全社的な売上高は、人流の回復やインバウンド需要の取り込み、商品価格改定などにより前期比で増加しています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済や投資を行っており、財務体質の健全化と成長投資のバランスを取っている「健全型」の状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 3億円 |
| 投資CF | -5億円 | -3億円 |
| 財務CF | -2億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されませんが市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、東京を中心に喫茶業を展開し、くつろぎと憩いの場をより多くのお客様に提供することを企業理念としています。また、「喫茶室ルノアール」を中心とし、「ホスピタリティサービスの充実」をテーマとしたブランドイメージの確立を目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来、迅速かつ正確な情報の把握と意思決定を最重要課題とし、少数精鋭による管理形態を重視する文化があります。また、経営理念に基づき、社会貢献、人材教育、適正利潤の追求を掲げ、お客様にやすらぎを感じていただけるホスピタリティサービスの提供に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、現在の中期計画については検討中としていますが、業績改善を最優先課題としています。具体的な数値目標としては、不採算店舗の見直しや撤退による利益構造改革を進め、企業価値の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は「銀座ルノアール」の価値観を認識してもらうため、顧客視点に立った店舗づくりに注力する方針です。具体的には、ホスピタリティサービスの充実と商品開発による顧客満足度の向上、新規出店の推進、不採算店舗の見直しによる利益構造改革、そして次世代を担う人材の育成に重点的に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材の採用と育成を最重要課題の一つと位置づけています。多様な人材が活躍できる組織を目指し、業界・経験を問わない中途採用や組織活性化のための新卒採用を行っています。また、社内研修とOJTによる理念教育を通じて、柔軟な発想力を持つ人材を育成し、意欲ある社員に成長機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 12.0年 | 5,456,674円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 101.8% |
※男性育児休業取得率の「-」は、育児休業取得の対象となる男性労働者がいないため算出できないことを示しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 喫茶業への依存について
同社グループの売上高の大半は喫茶事業によるものであり、同事業を取り巻く環境変化の影響を受けやすい構造にあります。低価格帯の競合他社との競争激化の中で、コスト削減や価格競争への対応が奏功しない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 出店政策について
関東地区を中心に全国展開も視野に入れた新規出店を進めていますが、競合の出店や他業種との競合により、来店客数や単価が低下するリスクがあります。また、出店条件に合致する物件が確保できず計画通りの出店ができない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 店舗展開について
店舗の収益性は立地環境に大きく依存するため、競合店の出店などの環境変化や、賃貸契約の終了により、業績好調な店舗でも閉鎖を余儀なくされる場合があります。また、賃貸人の破綻等により差し入れた保証金等が回収できなくなるリスクもあります。
■(4) 衛生管理について
食の安全に対する関心が高まる中、食中毒などの衛生上の問題が発生した場合、社会的信用の失墜や営業停止などにより、グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。同社は各種検査やマニュアルに基づく管理を行っていますが、リスクを完全に排除することは困難です。



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