松屋フーズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋フーズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の松屋フーズホールディングスは、牛めし「松屋」やとんかつ「松のや」等の外食チェーンを展開しています。直近決算では、既存店売上の好調や新規出店により大幅な増収となった一方、原材料費やエネルギーコストの高騰等が響き、経常利益、純利益ともに減益となりました。


※本記事は、株式会社松屋フーズホールディングス の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松屋フーズホールディングスってどんな会社?


同社は牛めし定食店「松屋」を主力とし、とんかつ、鮨、カレーなど多角的な業態を展開する外食企業です。

(1) 会社概要


同社は1966年に中華飯店「松屋」として創業し、1980年に法人化されました。2001年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、社会的信用を高めながら事業を拡大しました。2018年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

現在の連結従業員数は2,180名、持株会社単体では21名体制です。筆頭株主は創業者の瓦葺利夫氏で、第2位、第3位には同氏の親族資産管理会社と思われる有限会社が名を連ねています。創業家が主要株主として経営に深く関与している点が特徴です。

氏名 持株比率
瓦葺 利夫 20.18%
有限会社ティケイケイ 15.63%
有限会社トゥイール 9.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は瓦葺一利氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
瓦葺 一利 代表取締役社長 東食(現カーギルジャパン)を経て同社入社。財務経理、商品開発、経営管理等の要職を歴任し、2016年に松屋フーズ社長、2018年より現職。
瓦葺 利夫 取締役会長 1975年に松屋商事(現同社)を設立し社長に就任。長年にわたり経営を牽引し、2009年に会長就任。2023年より現職。
薄井 芳人 取締役 1984年入社。商品開発部長、製造部長、生産物流本部長などを歴任し、松屋フーズ常務取締役生産物流本部長を兼務。2018年より現職。
中村 洋一 取締役 商工組合中央金庫を経て2021年に入社。内部監査部長、財務経理部長、総務部長などを歴任し、松屋フーズ取締役執行役員経営管理本部長を兼務。


社外取締役は、藤原英理(あおば社会保険労務士法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 牛めし定食事業(松屋)


主力である牛めし・カレー・定食などを提供する「松屋」を展開しています。安全・安心で美味しさを追求した商品を、高い付加価値のサービスとともに提供することを基本としています。

同事業の収益は、一般消費者からの飲食代金が主な源泉となります。運営は主に事業子会社の松屋フーズが行っています。

(2) とんかつ事業(松のや)


とんかつ定食や丼メニューを提供する「松のや」を展開しています。牛めしに次ぐ第二の柱として店舗数を拡大し、コストパフォーマンスの高い商品を提供しています。

収益は店舗での飲食販売による売上が中心です。運営は事業子会社の松屋フーズが担っています。

(3) その他事業


鮨業態「すし松」、カレー業態「マイカリー食堂」、中華、ステーキ、カフェ等の多様な飲食ブランドや、海外事業、外販事業などを展開しています。

収益は各店舗での飲食売上や、フランチャイズ加盟店からのロイヤルティ収入、食材・消耗品の販売収入などから構成されます。運営は松屋フーズのほか、海外現地法人などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりを続けており、特に直近では1500億円を突破しました。利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰等の影響を受けつつも黒字を維持していますが、利益率は3%台から6%台の間で変動しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 944億円 945億円 1,066億円 1,276億円 1,542億円
経常利益 0.3億円 64億円 39億円 60億円 51億円
利益率(%) 0.0% 6.8% 3.7% 4.7% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -24億円 11億円 13億円 29億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高は約21%の増収となりましたが、売上総利益率はほぼ横ばいから微減傾向にあります。増収効果により売上総利益の額自体は増加しましたが、販管費の増加なども影響し、営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,276億円 1,542億円
売上総利益 840億円 986億円
売上総利益率(%) 65.8% 63.9%
営業利益 53億円 44億円
営業利益率(%) 4.2% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、雑給が323億円(構成比34%)、地代家賃が108億円(同11%)を占めています。売上原価については詳細な内訳データがありませんが、原材料費や労務費が含まれます。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、形態別の販売実績を見ると、主力の牛めし定食事業が前期比で大きく伸長しました。とんかつ事業や鮨事業、その他事業も軒並み増収となっており、全般的に事業規模が拡大しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
牛めし定食事業 985億円 1,200億円
とんかつ事業 179億円 206億円
鮨事業 15億円 22億円
その他 13億円 17億円
外部販売売上 84億円 96億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


積極型(営業プラス、投資マイナス、財務プラス)。営業活動で得た資金に加え、資金調達も行いながら、新規出店や設備投資へ積極的に資金を投じています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 132億円 83億円
投資CF -119億円 -177億円
財務CF 27億円 71億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「店はお客様の満足を得るために存在する」という考えを経営理念としています。「安全・安心で、おいしさを追求した価値観のある商品」と「高い付加価値のサービス」を提供することを基本方針とし、食のグローバル企業として限りない美味しさと共感を人と社会に贈ることを目指しています。

(2) 企業文化


「みんなの食卓でありたい」をスローガンに掲げています。目まぐるしい変化を遂げる外食シーンにおいて、変革を取り入れ、経営効率・企業価値・ブランド力の向上に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益性の指標として売上高経常利益率やROE(自己資本利益率)を、安全性の指標として自己資本比率を重視しています。また、店舗採算上重要な指標として、FLコスト(売上原価と人件費の合計)の売上比の適正化を掲げています。

* 売上高経常利益率:3.3%
* ROE(自己資本利益率):4.9%
* 自己資本比率:43.8%
* FLコスト比率:66.9%

(4) 成長戦略と重点施策


「新規出店」「既存店改装」「人材投資」を持続的成長投資の重点としています。お客様の利便性向上のため券売機システムの改良やリモデルを進めるほか、原価率適正化のための調達分散化や工場稼働率向上に取り組みます。また、牛めし・とんかつ・カレーに加え、パスタや石焼鍋などの新業態確立、台湾・香港・中国など海外展開も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


環境変化に対応し成長を続けるため、教育・人材確保への投資を拡充する方針です。人材を企業価値向上の源泉と捉え、戦略的適材適所配置や積極的なジョブローテーションを実施しています。また、健康経営の推進や、階層別・職能別の研修、自己啓発支援など、個の成長を会社の成長につなげる取り組みを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.7歳 20.0年 6,740,843円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.2%
男女賃金差異(正規) 81.2%
男女賃金差異(非正規) -%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途入社社員比率(67.5%)、外国人社員比率(10.6%)、障がい者雇用率(2.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食材調達リスク


原産地の異常気象や疫病、法規制の変更により、安定的な食材調達が困難になるリスクや、為替変動による価格上昇リスクがあります。同社は在庫の適正化や産地・取引先の分散化により、これらの影響を最小限に抑えるよう努めています。

(2) 衛生管理と食品安全


飲食店運営において食中毒等の事故が発生した場合、営業停止処分やブランドイメージの毀損により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。食品衛生法に基づく管理体制を敷いていますが、万が一の事態に備えたリスク管理が重要課題です。

(3) 人件費の上昇リスク


労働関連法令の改正や労働市場の需給逼迫により、人件費が増加する可能性があります。これは利益を圧迫する要因となり得ます。同社はセルフサービス店舗の推進やオペレーションの効率化により、生産性向上を図っています。

(4) 海外事業展開リスク


中国、台湾、香港、ベトナムなどで事業を展開しており、現地の法規制変更、政治・経済情勢の悪化、為替変動などのリスクがあります。これらが顕在化した場合、海外事業の業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。