※本記事は、株式会社松屋フーズホールディングスの有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 松屋フーズホールディングスってどんな会社?
国内外で牛めし・定食店「松屋」を中心に、とんかつ、ラーメン、鮨など多様な飲食業態を展開する企業です。
■(1) 会社概要
昭和41年に現取締役会長の瓦葺利夫氏が中華飯店「松屋」を個人経営で創業しました。昭和55年に松屋商事を設立後、平成元年に松屋フーズへ商号変更し、平成11年に東京証券取引所市場第二部へ上場、平成13年に市場第一部へ指定されました。平成30年に持株会社体制へ移行し、現在の社名となりました。近年はM&Aを活用し、ラーメン業態などをグループ化しています。
現在の同社グループの従業員数は、連結で2,617名、単体で24名です。筆頭株主は創業者であり現取締役会長の瓦葺利夫氏で、第2位は有限会社ティケイケイ、第3位は有限会社トゥイールとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 瓦葺 利夫 | 18.68% |
| 有限会社ティケイケイ | 14.47% |
| 有限会社トゥイール | 8.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は瓦葺一利氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瓦葺 一利 | 代表取締役社長 | 東食(現カーギルジャパン)入社後、同社入社。財務経理部長、商品本部長、松屋フーズ代表取締役社長などを経て平成30年より現職。 |
| 瓦葺 利夫 | 取締役会長 | 松屋商事(現・同社)設立、代表取締役社長。青島松屋食品やMatsuya Foods USAなどの会長を経て、令和5年より現職。 |
| 中村 洋一 | 常務取締役 | 商工組合中央金庫入庫後、同社入社。内部監査部長、総務部長、松屋フーズ取締役執行役員経営管理本部長などを経て令和7年より現職。 |
| 薄井 芳人 | 取締役 | 同社入社後、中国駐在員事務所長、商品開発部長、生産物流本部長などを経て平成30年より現職。 |
社外取締役は、藤原英理(あおば社会保険労務士法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 飲食事業(国内)
牛めし・定食等を提供する和風ファーストフード店「松屋」を中心に、とんかつ業態「松のや」、カレー業態「マイカリー食堂」、すし業態「すし松」、ステーキ業態「ステーキ屋松」などの多ブランドを展開しています。幅広い顧客層に対して、安全・安心でおいしさを追求した商品を提供しています。
収益は、直営店における顧客からの飲食代金が主な柱であり、フランチャイズ店への食材等の販売収益も得ています。事業の運営は、主に松屋フーズ、松富士、松富士食品などの事業子会社が行っています。
■(2) 飲食事業(海外)
食のグローバル企業として、東アジアを中心に飲食店舗を展開しています。台湾や香港などで「松屋」ブランドの新規出店を推進し、現地の顧客ニーズに合わせたメニュー開発とサービス提供を行っています。
収益は、海外直営店舗での顧客からの飲食代金によって構成されています。運営は、台湾松屋餐飲や上海松屋餐飲管理などの現地法人が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は堅調に推移しており、直近の5期間で持続的な増収を達成しています。利益面については、原材料価格やエネルギーコストの変動による影響を受けつつも、積極的な新規出店や価格改定、各種効率化の取り組みが奏功し、増益基調を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 945億円 | 1066億円 | 1276億円 | 1542億円 | 1845億円 |
| 経常利益 | 64億円 | 39億円 | 60億円 | 51億円 | 83億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 3.7% | 4.7% | 3.3% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 8億円 | 5億円 | 4億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。原価率や販管費比率の適正化が進み、営業利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1542億円 | 1845億円 |
| 売上総利益 | 986億円 | 1165億円 |
| 売上総利益率(%) | 63.9% | 63.2% |
| 営業利益 | 44億円 | 76億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、雑給が378億円(構成比34.7%)、地代家賃が118億円(同10.8%)、給与手当が90億円(同8.3%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 83億円 | 153億円 |
| 投資CF | -177億円 | -265億円 |
| 財務CF | 71億円 | 256億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「店はお客様の満足を得るために存在する」という考えを経営理念として掲げています。また、「安全・安心で、おいしさを追求した価値観のある商品」と「高い付加価値のサービス」を提供することを基本方針としており、食のグローバル企業として限りない美味しさと共感を、人と社会に贈ることを目指しています。
■(2) 企業文化
多様化する「食」を取り巻く環境の中で、“みんなの食卓でありたい”というスローガンを掲げています。目まぐるしい変化を遂げている外食シーンを見据え、変革を取り入れながら、積極的な新規出店や既存店改装、そして従業員の労働環境改善など人材への投資を重視する持続的な成長文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループでは、収益性の指標として売上高経常利益率や自己資本利益率(ROE)を、安全性の指標として自己資本比率を参考としています。また、店舗採算上重要となるFLコスト(FOODとLABORに係るコスト)の売上比適正化や、新規出店の基準として投資利益率(ROI)の改善に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の牛めし業態やとんかつ業態に加え、ラーメン業態、鮨業態、カフェ業態などの磨き込みと新業態確立により、多角的な成長を図ります。また、券売機システムの改良による利便性向上や、仕入先の分散化などによる原価率の適正化も推進します。さらに、台湾・香港・シンガポールなど東アジアを中心とした海外展開とM&Aを重要施策として位置付けています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の成長が企業価値を高めると考え、戦略的適材適所配置を実施し、積極的なジョブローテーションを行っています。また、ダイバーシティマネジメントを推進し、多様性を生かす組織づくりを目指すとともに、階層別・機能別の研修やウェルビーイングを意識したキャリアデザインなど、「個」の成長を会社の成長に繋げる取り組みを強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.5歳 | 18.5年 | 7,075,248円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | - |
※非正規雇用の労働者が該当しないため、パート・有期労働者の男女賃金差異は記載されていません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途入社社員比率(68.3%)、外国人社員比率(13.6%)、障がい者雇用率(2.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食材調達に関する価格変動と供給リスク
同社グループは良質な食材の調達に努めていますが、原産地の異常気象や疫病、為替変動等により調達価格の上昇や安定供給が困難になるリスクがあります。これに対し、在庫水準の適正化や産地・取引先の分散化、直接購買の推進により影響の回避を図っています。
■(2) 人材確保および人件費負担の増加
飲食店舗の運営には多くの従業員が必要ですが、少子高齢化に伴う人手不足や求人競争の激化により、計画的な人材確保が困難になる可能性があります。また、賃金水準や労働法令の改正による人件費の上昇が、店舗の営業時間短縮や業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 牛めし定食事業への高い依存度
国内直営店売上高のうち牛めし定食事業が大きな割合を占めています。とんかつ事業や鮨事業などの拡大を通じて事業ポートフォリオの多様化を進めていますが、消費者志向の変化や競合の激化、牛肉を中心とした原材料価格の高騰が生じた場合、グループ全体の業績に悪影響を与える可能性があります。



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