※本記事は、株式会社マキヤ の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マキヤってどんな会社?
マキヤは、静岡県を地盤に総合ディスカウント店、食品スーパー、業務スーパー、リユースショップなど多角的な店舗展開を行う小売チェーンです。
■(1) 会社概要
1895年に静岡県沼津市で「まきや金物店」として創業し、1953年に法人化しました。1990年に株式を店頭登録し、2003年には「業務スーパー」事業を開始して業容を拡大しています。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結で495名、単体で422名です。筆頭株主は創業家一族の資産管理会社である株式会社マキリで、第2位はマキヤ取引先持株会、第3位は公益財団法人マキヤ奨学会となっており、創業家および関係団体が安定的に株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マキリ | 43.50% |
| マキヤ取引先持株会 | 7.33% |
| 公益財団法人マキヤ奨学会 | 7.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は早川紀行氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川原﨑 康雄 | 代表取締役会長 | 1990年同社入社。常務、専務を経て2008年より代表取締役社長。2022年より現職。 |
| 早川 紀行 | 代表取締役社長執行役員兼営業本部長 | 2009年同社入社。NF商品部長、専務取締役等を経て2022年より現職。 |
| 竹島 剛 | 専務取締役執行役員管理本部長兼経理財務部長 | 2010年同社入社。経理部長、常務取締役等を経て2024年より現職。 |
| 篠原 忠夫 | 取締役執行役員企画開発部長 | 1993年同社入社。営業企画部長、取締役執行役員販売・企画統括部長等を経て現職。 |
| 佐藤 学 | 取締役執行役員人事部長兼総務部長 | 2008年同社入社。エスポット店長、執行役員人事部長兼総務部長等を経て現職。 |
| 鈴木 慎司 | 取締役執行役員FD商品統括部長兼生鮮・日配商品部長 | 2004年同社入社。エスポット店長、生鮮商品部長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、阪口裕司(元壱番屋専務)、戸野谷宏(元静岡ガス社長)、向眞生(公認会計士)、竹川英辰(弁護士)、志方和歌子(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売業」、「不動産賃貸事業」および「EC事業」を展開しています。
■小売業
総合ディスカウント店「エスポット」、食品スーパー「ポテト」「マミー」、業務用食料品販売店「業務スーパー」、リユースショップ「ハードオフ」、100円均一ショップ「ダイソー」等の店舗運営を行っています。一般消費者を対象に、食品から日用品、家電まで幅広い商品を提供しています。
収益は、各店舗における一般顧客への商品販売代金です。運営は主にマキヤが行い、連結子会社の株式会社MK・サービスが物流や精肉加工、惣菜製造などで支援しています。
■不動産賃貸事業
同社グループが所有する不動産等の賃貸を行っています。主に商業施設内のテナントスペース等を貸与しています。
収益は、テナント等からの賃貸料収入です。運営はマキヤおよび関係会社の株式会社マキリが行っています。
■EC事業
インターネットモール等において商品を販売しています。近年、事業拡大を図っている分野です。
収益は、インターネットを通じた一般顧客への商品販売代金です。運営はマキヤおよび連結子会社の株式会社ユージュアル等が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は堅調に推移しており、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。経常利益は20億円前後で安定的に推移しています。当期純利益も10億円台を維持しており、安定した黒字経営が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 758億円 | 692億円 | 716億円 | 773億円 | 894億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 18億円 | 18億円 | 24億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 2.6% | 2.5% | 3.1% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 13億円 | 12億円 | 15億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の767億円から888億円へと大きく増加しました。これに伴い売上総利益も増加していますが、販管費の増加もあり、営業利益の伸びは微増にとどまっています。営業利益率は2.6%と前期からやや低下しており、収益性の改善が課題といえそうです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 767億円 | 888億円 |
| 売上総利益 | 172億円 | 211億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.5% | 23.7% |
| 営業利益 | 22億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が56億円(構成比29%)、広告宣伝費が27億円(同14%)を占めています。また、売上原価は売上高に対して76%程度で推移しています。
■(3) セグメント収益
主力の小売業は、食品部門や業務スーパーなどが好調で増収増益となりました。不動産賃貸事業は安定的に推移しています。新たに報告セグメントとなったEC事業は売上規模が拡大していますが、人材投資やのれん償却の影響により営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売業 | 769億円 | 819億円 | 25億円 | 27億円 | 3.3% |
| 不動産賃貸事業 | 4億円 | 4億円 | 2億円 | 1億円 | 36.6% |
| EC事業 | - | 71億円 | - | -1億円 | -1.7% |
| 連結(合計) | 773億円 | 894億円 | 22億円 | 23億円 | 2.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、本業で現金を稼ぐ力があります。投資キャッシュ・フローはマイナスで、店舗改装や新規出店への投資を行っています。財務キャッシュ・フローはマイナスで、借入金の返済を進めています。全体として、本業の利益で投資と借入返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フローと言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 31億円 |
| 投資CF | -29億円 | -14億円 |
| 財務CF | 7億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、『お客様の「毎日の生活」を、より豊かに、楽しく、健康で、快適にする、「より良い商品」を、「安心の価格(価値価格の安さ)」と「温かいサービス」でご提供し、社会に貢献する、「働き易い、高収益企業」になる!』ことを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、サステナビリティに関する課題解決に向けて「マキヤ・グループ行動規程」を定め、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指す文化を持っています。また、人材においては基本的人権の尊重を前提に多様性の確保や社内環境整備に取り組み、働きがいのある職場づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、資本効率の向上と持続的な成長による「高収益企業」を目指しています。具体的には、「2025年3月期~2027年3月期 中期経営取組施策」において、2027年3月期の目標数値を以下の通り設定しています。
* 売上高:1,000億円
* 経常利益率:4%
* ROE(自己資本利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益性と資本効率の拡大」を目指し、ノンフード部門の再構築、EC事業とのシナジーによる販路拡大、ダイソー部門の出店拡大などを重点施策としています。また、「磨き上げ5項目」として、EDLP(エブリディロープライス)の徹底、PB商品の強化、品切れ撲滅、品揃え強化、作業効率化に注力しています。
* EDLPの徹底と仕入調達コスト改善による荒利率改善
* PB商品・重点販売商品の販売力強化
* 品切れ撲滅とフェイスアップ・ボリューム陳列
* EC事業とのシナジー強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「働き易い、高収益企業」を目指し、人材投資や働き方改革を推進しています。具体的には、社員の働きがい向上、人材採用戦略・教育体制の整備、女性が活躍できる雇用環境の整備、新人事制度(雇用区分・賃金制度・教育制度・評価制度)の計画推進などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.3歳 | 15.8年 | 5,457,904円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 93.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 規制・制度変更リスク
売場面積が1,000㎡を超える新規出店や増床については「大規模小売店舗立地法」の規制を受けます。これにより、出店には多くの時間と費用が必要となり、計画通りに出店が進まない場合、経営成績に影響が出る可能性があります。
■(2) 災害リスク
静岡県を中心とした東海地方に多くの店舗を展開しているため、大規模地震が発生した場合、財政状態や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、旧耐震基準の店舗が存在し、補強工事等を進めていますが、被災時には損壊のリスクがあります。
■(3) 競合出店によるリスク
事業エリアである静岡県や神奈川県等において、自社店舗周辺に競合他社が出店することで売上・利益が低下する可能性があります。影響が甚大な場合は店舗撤退を余儀なくされる可能性もあり、経営成績に影響を与えるリスクがあります。



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