記事タイトル:ツツミ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ツツミ の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ツツミってどんな会社?
同社は、宝石の買い付けから宝飾品の製造、卸売、直営店での販売までを一貫して手がける「製販一貫体制」を持つ宝飾品総合企業です。
■(1) 会社概要
1973年に埼玉県蕨市で前身となる企業を設立し、宝飾品の製造を開始しました。同年に小売事業も開始し、1991年に株式を店頭登録、1996年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
現在、単体で878名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業家の堤倭子氏で、第2位は創業家親族と思われる互夕希子氏、第3位も同親族の石花千花氏となっており、創業家が株式の過半数を保有するオーナー系企業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 堤 倭子 | 51.21% |
| 互 夕希子 | 9.84% |
| 石花 千花 | 9.73% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は互智司氏が務めています。取締役5名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 互 智司 | 代表取締役社長 | 三井住友銀行を経て同社入社。管理本部長、営業本部長等を歴任し、2011年より現職。 |
| 岡野 勝美 | 取締役商品本部長 | 1981年同社入社。店舗運営本部第二運営部長、第一運営部長を経て2007年より現職。 |
| 渡邉 新一郎 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年同社入社。製造部長、参与を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、柿沼佑一(弁護士、髙篠・柿沼法律事務所パートナー)、上村敦(税理士、税理士法人朝日会計社社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「宝飾品事業」を展開しています。
■(1) 宝飾品事業
ネックレス、ブレスレット、指輪、ピアス、イヤリングなどの宝飾品全般を企画・製造し、全国のショッピングセンターや駅ビルなどに出店する直営店「ジュエリーツツミ」等で一般消費者に販売しています。また、一部は卸売も行っています。原材料の調達から製造、販売まで自社グループ内で完結させる垂直統合型モデルが特徴です。
収益は主に店舗での商品販売による対価として一般消費者から得ています。また、卸売先への販売代金も収益源となります。運営は主に同社が行っており、製造部門の一部工程については、非連結子会社である有限会社大分ツツミ貴金属が委託加工を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は145億円から248億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も7億円から25億円へと大きく伸長しており、利益率も4.8%から10.1%へ改善傾向にあります。特に直近は大幅な増収増益を達成しており、業績は好調に推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 145億円 | 165億円 | 181億円 | 199億円 | 248億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 12億円 | 15億円 | 17億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 7.2% | 8.3% | 8.7% | 10.1% |
| 当期純利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 7億円 | 9億円 | 12億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は約50億円増加し、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約50%から46%へと低下していますが、営業利益率は8.4%から9.7%へと改善しており、販売管理費のコントロール等により収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 199億円 | 248億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 114億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.1% | 45.8% |
| 営業利益 | 17億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 9.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が31億円(構成比35%)、賃借料が21億円(同23%)を占めています。店舗運営に伴う人件費と地代家賃が主なコスト要因です。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、製品別の販売実績を見ると、主力のネックレス・ブレスレットが前期比約4割増と大きく伸長し、業績を牽引しました。指輪や小物も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ネックレス・ブレスレット | 97億円 | 137億円 |
| 指輪 | 61億円 | 64億円 |
| 小物 | 42億円 | 49億円 |
| その他 | 0.3億円 | 0億円 |
| 売上控除等 | -2億円 | -2億円 |
| 連結(合計) | 199億円 | 248億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなっていますが、これは豊富な手元資金(現金及び預金336億円)を活用して、在庫投資、設備投資、株主還元(配当)を行っているためです。実質的には「積極型(または在庫投資型)」に近い状態と言えます。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -10億円 | -13億円 |
| 投資CF | -2億円 | -5億円 |
| 財務CF | -8億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は97.4%で市場平均を大きく上回っています。無借金経営に近い極めて強固な財務基盤を持っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「常に技術の向上を目指し、お客様に美と夢と満足を提供する」を社是として定めています。ジュエリーやアクセサリー等の企画・開発から製造、販売に至るまでの各プロセスにおいて技術力を高めることで、顧客への価値提供を目指しています。
■(2) 企業文化
教育研修等を通じて技術力を向上させることを重視する文化があります。企画・開発、原材料買い付け、製造、販売のすべての過程において社員の技術レベルを高め、顧客満足につなげる姿勢を持っています。また、顧客満足度の向上と魅力溢れる店舗づくりに全力で取り組む方針を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
経営指標として、収益力を示す営業利益および営業キャッシュ・フローを重視しており、これらの拡大を目指しています。具体的な数値目標は記載されていませんが、顧客に美と夢と満足を提供することで持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を達成することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の経済情勢や市場競争の激化を踏まえ、お客様満足度の向上をさらに推進し、魅力ある店舗づくりに取り組む方針です。具体的には、ハウスブランド「Pure Planets」「Blessed Rain」等の新作投入、ホームページでの動画公開やSNSを活用したプロモーション、既存店のリニューアルによる活性化を重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働きやすい環境の整備」を掲げ、多様な人材が活躍できる柔軟な労働環境の構築を目指しています。所定外労働時間の削減や有給休暇の取得促進によるワーク・ライフ・バランスの実現、新入社員や店長向けの教育研修制度の充実、女性が活躍できる環境整備(旧姓使用、育児・介護休暇の取得促進等)に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.5歳 | 10.2年 | 4,246,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 65.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 57.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における外国籍比率(0.1%)、本社部門の管理職における中途採用者比率(12.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の変動
同社が扱うジュエリー等の主原材料である金、プラチナ等の貴金属や宝石は国際市況製品であり、流通価格や為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。同社は適正な数量の在庫維持や、価格変動に対応した商品企画・開発により対応する方針です。
■(2) 店舗展開に伴うリスク
多くの店舗をショッピングセンター等へ賃貸借契約にて出店しているため、入居先の経営環境の変化により、売掛債権や営業保証金、敷金などの未返還リスクが生じ、業績に影響を与える可能性があります。市場調査等による慎重な店舗展開でリスク低減を図っています。
■(3) 人材確保
宝飾品の企画・開発、買い付け、製造、販売には優秀な社員が必要であり、人材確保や教育研修が不十分な場合、業務遂行に支障が生じる可能性があります。同社は人材の確保・教育に対して常に相当の投資を行うことで対応するとしています。



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