※本記事は、株式会社ワットマン の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ワットマンってどんな会社?
神奈川県を中心に総合リユースショップを展開し、ホビー商材のEC事業も手掛ける小売企業です。
■(1) 会社概要
1978年に家電販売会社として設立され、1990年に現社名へ変更しました。2004年に家電事業から撤退しリユース事業へ業態転換、2013年にはハードオフとのFC契約を解消し自社ブランド「ワットマン」を確立しました。2021年には株式会社ホビーサーチを完全子会社化し、新品EC事業へ参入しています。
連結従業員数は141名、単体では88名です。筆頭株主は社長の川畑泰史氏で、第2位はリユース事業大手であり同社の元フランチャイザーでもあるハードオフコーポレーションです。第3位は個人の渡邉未来氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 川畑泰史 | 20.50% |
| ハードオフコーポレーション | 14.73% |
| 渡邉未来 | 3.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は川畑泰史氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川畑泰史 | 取締役社長(代表取締役) | アクセンチュア株式会社を経て2014年同社取締役。2018年より現職。株式会社ホビーサーチ代表取締役社長も兼任。 |
| 小松創 | 常務取締役 | 株式会社ゼロエミッション、株式会社ムラウチ電気を経て2008年同社入社。2014年常務取締役就任。2016年より営業本部本部長。 |
| 渡邉匡 | 取締役 | 監査法人を経て2011年同社入社。執行役員経理総務グループ長などを歴任し、2020年より経理IRグループ長として現職。 |
社外取締役は、片岡宏介(片岡公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リユース事業」および「新品EC事業」を展開しています。
■(1) リユース事業
神奈川県を中心に展開する実店舗およびECサイトを通じて、一般消費者から買い取ったリユース品の販売を行っています。「ワットマンテック(家電)」「ワットマンスタイル(服飾雑貨)」「ワットマンカメラ」など複数の専門業態を展開し、タイ王国でも事業を行っています。
収益は、一般消費者への商品販売による代金が主な源泉です。運営は、国内事業を同社が担い、海外事業はタイ王国の連結子会社WATT MANN(THAILAND) CO.,LTD.が行っています。
■(2) 新品EC事業
フィギュア、プラモデル、鉄道模型などのホビー商材を中心とした新品商品を、自社ECサイトを通じて国内外の顧客に販売しています。豊富な品揃えと商品情報を強みとし、グローバルな販売網を構築しています。
収益は、自社ECサイトを通じた商品販売による代金が源泉となります。運営は、連結子会社である株式会社ホビーサーチが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大を続け、直近5期間で増加傾向にあります。一方、利益面では第48期に過去最高益を達成した後、当期は減益となりました。経常利益率は依然として7%台を維持しており、一定の収益性を確保していますが、成長投資や特別損失の影響により当期純利益は減少しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 54億円 | 74億円 | 79億円 | 84億円 |
| 経常利益 | 2.8億円 | 2.9億円 | 5.1億円 | 6.6億円 | 5.9億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 5.4% | 6.8% | 8.4% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | 1.9億円 | 2.6億円 | 3.3億円 | 2.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は販管費の増加により減益となっています。成長に向けた先行投資や体制強化に伴うコスト増が利益を圧迫している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 84億円 |
| 売上総利益 | 36億円 | 38億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.3% | 45.3% |
| 営業利益 | 6.5億円 | 5.8億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 7.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が13億円(構成比40%)、賃借料が6億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
リユース事業、新品EC事業ともに売上高は前期を上回りましたが、利益面では明暗が分かれました。リユース事業は増収により微増益を確保した一方、新品EC事業は売上増にもかかわらず大幅な減益となり、利益率も低下しています。全社的な利益減少の一因となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| リユース事業 | 49億円 | 53億円 | 8.0億円 | 8.1億円 | 15.2% |
| 新品EC事業 | 29億円 | 31億円 | 1.8億円 | 1.3億円 | 4.3% |
| 連結(合計) | 79億円 | 84億円 | 6.5億円 | 5.8億円 | 7.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で稼いだ現金を投資と借入返済・配当に充てている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.1億円 | 4.0億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -1.4億円 |
| 財務CF | -2.5億円 | -2.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、リユース事業を通じて「環境と調和した企業活動」「環境型経済社会への貢献」を果たすことを掲げています。また、中期的な企業価値の向上を目指し、経営の透明性・健全性の確保を重要課題と捉えています。
■(2) 企業文化
同社は「トコトン買取」を強みとし、商品の幅と深さを追求する姿勢を重視しています。また、人材においては「PAY for VALUE」の原則に基づき、高い付加価値を提供する人材に高い報酬を支払う方針を掲げており、成果や価値提供を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年3月期の業績予想として、以下の数値を公表しています。
* 連結売上高:90億50百万円
* 営業利益:7億40百万円
* 経常利益:7億38百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:4億98百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「オーガニック成長戦略」と「インオーガニック成長戦略」の2軸で成長を目指しています。オーガニック戦略では、リユース事業における大型店出店や「トコトン買取」による競争力強化、ホビーサーチ事業でのマーケティング強化を推進します。インオーガニック戦略では、シナジーが見込めるM&Aを積極的に検討します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は成長戦略遂行のため、ポジション要件と現有人材のスキルギャップを明確化し、採用・育成・評価・配置を行っています。特に採用では企業文化とのマッチングを重視し、「evidence book」を活用しています。報酬・処遇においては「PAY for VALUE」を原則とし、年齢に関係なく高い報酬を支払う仕組みを導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 12.7年 | 4,659,000円 |
※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.9% |
※女性管理職比率および男性育児休業取得率は、公表を行っていないため記載を省略しております。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) M&Aによる成長リスク
同社はM&Aを成長戦略の柱の一つとしていますが、対象企業の財務・人事リスクや、のれん等の無形固定資産の減損処理が発生した場合、財政状態や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、「確実なバリューアップ」が見込める案件を厳選し、社外取締役の知見活用や経営陣によるPMIへの直接関与を進めています。
■(2) 海外事業の成長とカントリーリスク
タイ王国でのリユース事業展開において、現地の政治・経済・社会情勢の変化や為替変動、法規制の変更などが事業に影響を与える可能性があります。同社は親会社経営陣が直接現地に関与することで意思決定の迅速化を図りつつ、"Small Start, Quick Win"の方針でリスクを最小化しています。
■(3) ネット型リユースの成長
ロードバイク等を扱うネット型リユース事業の拡大を目指していますが、想定通りに成長しない場合、業績に影響する可能性があります。市場規模や競争環境を見極めつつ、出品作業の効率化などを通じて基盤構築を進めています。
■(4) 重要人材のリテンション低下
成長戦略の遂行には高度なスキルを持つ人材が不可欠ですが、これら重要人材が流出した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、成果に応じた報酬体系「PAY for VALUE」の導入や、経営陣によるビジョン共有などを通じてエンゲージメント向上に努めています。



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