ハチバン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハチバン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。「8番らーめん」のフランチャイズチェーン本部として、直営店運営や外販事業、タイを中心とした海外展開を行う。当期の連結売上高は74億円(前期比7.8%増)、経常利益は5億円(同26.8%増)と増収増益。人流回復やインバウンド需要の増加が業績に寄与している。


※本記事は、株式会社ハチバン の有価証券報告書(第55期、自 2024年3月21日 至 2025年3月20日、2025年06月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハチバンってどんな会社?


石川県発祥のラーメンチェーン「8番らーめん」を展開。北陸地方を地盤に、海外でも高い知名度を誇ります。

(1) 会社概要


1967年に石川県加賀市でラーメン店を開業し、1971年に法人を設立しました。1986年に現社名へ変更後、2004年に日本証券業協会への店頭登録を取り消し、JASDAQ(現スタンダード市場)に上場しました。海外展開にも早期から取り組み、1992年にタイへ進出、2005年にはタイ現地法人を設立しています。

現在の従業員数は連結167名、単体158名です。筆頭株主はハチバン取引先持株会で、第2位は地銀の北陸銀行、第3位は大手飲料メーカーの麒麟麦酒です。

氏名 持株比率
ハチバン取引先持株会 4.90%
北陸銀行 4.85%
麒麟麦酒 4.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は長丸昌功氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長丸 昌功 代表取締役社長 1984年同社入社。営業本部副本部長、和食事業本部長、常務取締役、代表取締役専務などを歴任し、2020年3月より現職。
吉村 由則 専務取締役執行役員事業本部長 1984年同社入社。商品開発部長、8番らーめん事業部長、常務取締役、生産部長などを経て、2024年6月より現職。
清治 洋 取締役執行役員海外事業部長 青木建設、タイ現地法人勤務を経て2002年同社入社。海外運営部長などを経て、2020年6月より現職。
杉本 貴史 取締役執行役員ブランド戦略部長 1996年同社入社。業態開発部長、ブランド戦略室長などを経て、2022年6月より現職。
後藤 晋一 取締役執行役員8番らーめん事業部長 金沢コンベンションサービス等を経て2016年同社入社。外販事業部長などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、石川正則(元プリマハム専務)、橋本佳苗(ドリームランチャー代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「外食事業」「外販事業」「海外事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 外食事業

「8番らーめん」フランチャイズチェーンの本部機能および直営店の運営、和食飲食店の経営を行っています。主な顧客は一般消費者およびフランチャイズ加盟店です。
収益は、直営店における一般顧客からの飲食代金、加盟店からのロイヤリティ収入や食材卸売による売上などから構成されています。運営はハチバンが行っています。

(2) 外販事業

「8番らーめん」ブランドを活用した中華生めん製品、冷凍餃子などの外販商品を開発・販売しています。主な顧客は生活協同組合、小売・量販店、およびECサイトの利用者です。
収益は、取引先への商品卸売代金および消費者への直接販売による代金から得ています。運営はハチバンが行っています。

(3) 海外事業

タイ、ベトナム、カンボジアなどにおいて「8番らーめん」を展開するほか、食材等の輸出入を行っています。主な顧客は現地の一般消費者や提携企業です。
収益は、現地での飲食代金、食材等の販売収入、ライセンス収入などから構成されています。運営はハチバンおよびHACHIBAN TRADING (THAILAND) CO.,LTD.等の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、第51期の53億円から第55期には74億円まで拡大しています。利益面では第51期、第52期と損失を計上していましたが、第53期以降は黒字転換し、経常利益・当期利益ともに回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 53億円 54億円 64億円 68億円 74億円
経常利益 -5.1億円 -0.7億円 2.2億円 3.7億円 4.6億円
利益率(%) -9.7% -1.3% 3.5% 5.3% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -6.7億円 -1.9億円 0.4億円 1.1億円 1.5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の68億円から74億円へ増加し、売上総利益も27億円から29億円へと伸長しています。営業利益率も前期の3.4%から3.6%へ改善しており、増収効果が利益の拡大に繋がっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 68億円 74億円
売上総利益 27億円 29億円
売上総利益率(%) 40.1% 39.1%
営業利益 2.4億円 2.6億円
営業利益率(%) 3.4% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比38%)、その他経費が11億円(同31%)を占めています。売上原価は45億円で、売上高に対する構成比は61%です。

(3) セグメント収益


外食事業は、期間限定商品の販売や観光需要の回復により増収増益となりました。外販事業は売上が減少しましたが、赤字幅は縮小しています。海外事業はタイでの店舗拡大や調味料販売が好調で、大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
外食事業 58億円 62億円 7億円 8億円 12.3%
外販事業 6.5億円 6.0億円 -0.4億円 -0.0億円 -0.5%
海外事業 12億円 14億円 4億円 4億円 29.3%
連結(合計) 76億円 82億円 4億円 5億円 5.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「食生活の味わいをネットワークするシステム産業 Tasty Innovation」をコーポレートシンボルとして掲げています。「低価格」で「本当においしいもの」を「どの店においても常に同じ状態で提供」できるフランチャイズシステムを軸に、多くの人々に「最高の味わい」を提供し、革新に挑戦し続けることを方針としています。

(2) 経営文化


「『食』と『おもてなしの心』で人やまちを笑顔に、元気に。」を経営目標に掲げています。日々の事業活動を通じて、地域社会の顧客、加盟店、ビジネスパートナー、そして従業員の幸せを実現できる経営に努め、日本だけでなく世界でも信頼される企業を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


ラーメン業態や和食業態等の安定的な事業拡大と効率的な経営を行い、企業価値の向上を図ることを目標としています。客観的な経営指標として、営業収益(売上高と営業収入の合計)および経常利益を重要視しており、これらを高める経営を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「チェーンストア・マネジメント」と「サプライチェーン・マネジメント」を軸としたブランドマーケティング戦略を展開します。外食事業では既存店の活性化やDX推進、新業態開発を進め、外販事業では商品開発とネット通販の強化を行います。海外ではタイ等でのエリアライセンス先との連携強化と事業基盤の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


組織改革と人財の育成・教育研修に重点を置き、働き甲斐のある職場環境を整備する方針です。コンプライアンス遵守や働きやすい環境づくり、ロボット活用による作業負荷軽減などを進めるとともに、中途採用者の登用や優秀な人財の獲得により多様性を確保し、適材適所の人員配置を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 13.1年 5,771,727円


※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 5.3%
男性労働者の育児休業取得率 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 61.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 74.6%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 99.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) フランチャイズ加盟店の展開について


国内外で「8番らーめん」のフランチャイズ事業を展開していますが、加盟店の募集が計画通り進まない場合や、加盟店における不祥事等によりブランドイメージが悪化した場合、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 直営出店について


新規出店が計画通り進まない場合や、出店後の環境変化等で収益が確保できない可能性があります。また、店舗の賃貸借契約の解約・更新拒絶による退店時の損失や、不採算店舗の減損損失、撤退に伴う違約金等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 商標権について


新業態や海外展開において商標権の取得・保護に努めていますが、第三者による類似商標の使用でブランドが毀損されるリスクや、他者の商標権を侵害していると判断され使用差止や損害賠償を求められるリスクがあり、これらは業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競合について


ラーメン店を含む同業者や他業態の外食店、コンビニ等の中食産業との間で激しい競争状態にあります。競合店の出現による売上減少や、競争激化に伴う品質向上・サービス改善のためのコスト増加が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。