ハチバン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハチバン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハチバンは東証スタンダード市場に上場し、国内での「8番らーめん」や和食店の運営に加え、タイやベトナムなどの海外事業、外販事業を展開する企業です。直近の業績では、価格改定や国内外での需要増により増収を達成したものの、従業員の給与手当や設備投資に伴う減価償却費の増加が影響し、大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社ハチバンの有価証券報告書(第56期、自 2025年3月21日 至 2026年3月20日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハチバンってどんな会社?


「8番らーめん」を主力とした外食事業と、食品の製造・卸売を行う外販事業、東南アジアでの海外事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1971年に前身となる八番フードサービスが設立され、1986年に現在のハチバンへ社名変更しました。1993年に株式を店頭登録し、2004年にはジャスダックへ上場を果たしました。2005年にはタイに現地法人を設立して海外展開を本格化し、現在では東南アジア地域への事業拡大も積極的に推進しています。

現在の従業員数は連結で174名、単体で163名体制です。主要な株主構成を見ると、筆頭株主は事業パートナーなどで構成されるハチバン取引先持株会で、第2位には主要取引銀行である北陸銀行、第3位には提携関係にある事業会社の麒麟麦酒が名を連ねており、取引先を中心とした安定的な資本関係が特徴です。

氏名 持株比率
ハチバン取引先持株会 4.86%
北陸銀行 4.85%
麒麟麦酒 4.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は長丸昌功氏が務めており、社外取締役の比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長丸昌功 代表取締役社長 1984年同社入社。八兆屋事業部長、和食事業本部長、常務取締役、代表取締役専務などを経て、2020年3月より現職。
清治洋 取締役執行役員海外事業部長 青木建設などを経て2002年同社入社。タイ現地法人社長や海外運営部長を歴任し、2018年より現職、2020年取締役就任。
杉本貴史 取締役執行役員事業本部長 1996年同社入社。和食事業部やらーめん事業部の店舗・業態開発担当部長を経て、2021年執行役員、2022年より現職。


社外取締役は、石川正則(元プリマハム専務取締役)、橋本佳苗(ドリームランチャー代表取締役社長)、木村岳二(木村経営ブレーン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「外食事業」、「外販事業」、「海外事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 外食事業


国内を中心に「8番らーめん」フランチャイズチェーンや、和食料理店などの飲食店を展開しています。一般の消費者を対象に、期間限定メニューの投入やテイクアウト・デリバリーの強化、配膳ロボットの導入など、接客サービスの向上や利便性向上を通じた集客を図っています。

飲食店舗の運営を通じた顧客からの飲食代金が主な収益源です。また、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入も含まれます。事業の運営は親会社であるハチバンが行っており、食材の自社工場での製造と店舗への供給を一元化するサプライチェーンマネジメントを強みとしています。

(2) 外販事業


飲食店チェーンで培ったノウハウを活かし、付加価値の高い商品を開発・提案する事業です。主に地元のスーパーマーケットや国内各地の生活協同組合、量販店などの小売業者に対し、中華生麺やラーメンのタレ、冷凍餃子などの業務用食品を卸売りしています。

スーパーや量販店等への食品卸売代金や、自社ネット通販サイト「ハチバンeSHOP」を通じた一般消費者からの直接販売による売上が主な収益源です。これらの商品の製造と販売は、外食事業と同様に親会社であるハチバンが主体となって展開しています。

(3) 海外事業


タイやベトナムなどの東南アジアを中心に「8番らーめん」のフランチャイズ展開や、食材・調味料の輸出入、販売を行っています。また、現地の合弁工場でラーメン用スープやエキスの製造を行い、現地の加盟店や取引先に対して供給を行っています。

海外のエリアライセンス契約先企業からのフランチャイズロイヤリティ収入や、現地での食材販売代金が主な収益源です。事業運営はハチバンに加えて、タイのHACHIBAN TRADING (THAILAND) 、ベトナムのHACHIBAN BELL TRADINGなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりの成長を続けています。一方、利益面では経常利益・当期利益ともに黒字転換後に一度増加したものの、直近ではコスト上昇の影響などにより減益に転じており、利益率の改善が今後の課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 54億円 64億円 68億円 74億円 77億円
経常利益 -0.7億円 2億円 4億円 5億円 2億円
利益率(%) -1.3% 3.5% 5.3% 6.3% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 0.4億円 1億円 2億円 0.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高が着実に伸びている一方で、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。しかし、営業利益は前期から大きく減少し、営業利益率も低下しており、事業拡大に伴う各種費用の増加が利益を圧迫している状況が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 74億円 77億円
売上総利益 29億円 30億円
売上総利益率(%) 39.1% 38.4%
営業利益 3億円 0.0億円
営業利益率(%) 3.6% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比37%)、運賃が3億円(同7%)、支払手数料が3億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの増減要因を見ると、主力事業や海外展開が順調に推移し、全社的な増収を牽引しました。特に海外事業は商品とサービスの見直しにより大きく売上を伸ばしましたが、コスト増加の影響で外食・海外事業ともに利益面では前期を下回る結果となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
外食事業 62億円 65億円
外販事業 6億円 6億円
海外事業 14億円 15億円
連結(合計) 82億円 86億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資と借入金の返済を賄う「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 4億円
投資CF -7億円 -5億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「食生活の味わいをネットワークするシステム産業 Tasty Innovation」をコーポレートシンボルに掲げています。「低価格」で「本当においしいもの」を「どの店においても常に同じ状態で提供」できるフランチャイズシステムを柱に、より多くの人々に最高の味わいを提供するため、革新に挑戦し続けることを理念としています。

(2) 企業文化


同社は、「『食』と『おもてなしの心』で人やまちを笑顔に、元気に。」を経営目標としています。日々の事業活動を通じて、地域社会の顧客、加盟店、ビジネスパートナー、そして従業員の幸せを実現できる経営に努める文化があり、日本国内のみならず、世界でも信頼される企業を目指す行動様式を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、地域社会との調和を図りながら事業拡大を進める「中期経営計画2028」を策定しています。2029年3月期を最終年度として、国内外での店舗網拡大と業績向上を目指しており、具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 営業収益:125億円
* 経常利益:5億円
* 店舗数:378店(国内160店、海外218店)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、飲食業としての「チェーンストア・マネジメント」と、食品製造卸売業としての「サプライチェーン・マネジメント」の二軸でブランドマーケティングを展開しています。具体的には、配膳ロボット導入やキャッシュレス決済拡張による店舗営業の活性化、自社工場での生産性向上や安全管理の徹底、そして東南アジアを中心とした海外展開の拡大を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人財への投資を重要課題と位置づけ、育児休暇や短時間勤務の導入、ロボット活用による作業負荷軽減などを通じて、安全で安心して働ける職場環境の整備を進めています。また、急激なビジネス環境の変化に対応するため、中途採用者の登用や多様な人材の確保に注力しており、適材適所な人員配置によって男女を問わず個性と能力を発揮できる組織づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 12.7年 5,942,316円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 65.1%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 99.7%


※男性育児休業取得率については、有報に数値の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(20%以上)、時間外労働時間削減目標(20%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) フランチャイズ加盟店の展開
同社の主力事業である「8番らーめん」の国内外でのフランチャイズ展開において、加盟店の確保が計画通りに進まない場合や、加盟店での不祥事などによりブランドイメージが毀損された場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 直営出店における収益確保
新規出店において条件に合致する物件の確保が困難な場合や、出店後の立地環境の変化、競合他社との競争激化により計画された収益が確保できない場合のリスクです。また、店舗の撤退に伴う減損損失や中途解約違約金が発生することも懸念されます。

(3) 食品の生産体制・物流網への依存
フランチャイズ加盟店および直営店、外販事業向けの中核食材である麺やタレ、餃子を本社工場1ヶ所に集約して製造しているほか、物流も特定の運送業者1社に委託しています。自然災害等による設備の損壊や物流の混乱が生じた場合、事業に支障をきたす恐れがあります。

(4) 食材の調達と価格変動
同社は良質な食材の安定確保に努めていますが、天候不順や疫病、異常気象などの影響による農作物の不作、国際的な需給バランスの崩れにより、仕入価格の高騰や調達そのものが困難になるリスクがあります。食材コストの急激な上昇は収益を圧迫する要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。