バローホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バローホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター等を展開する流通グループです。食品の製造から販売までを一貫して行う製造小売業への進化を推進しており、直近の業績は営業収益が30期連続の増収となり、各段階利益も増益と好調に推移しています。


※本記事は、株式会社バローホールディングス の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バローホールディングスってどんな会社?


食品スーパーを中核に、ドラッグストアやホームセンター、スポーツクラブなど多様な事業を展開する流通企業グループです。

(1) 会社概要


1958年に岐阜県恵那市で株式会社主婦の店として設立され、スーパーマーケット1号店の営業を開始しました。2005年には東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第一部に指定されています。2015年に持株会社体制へ移行し、現社名へ変更しました。2019年にはアレンザホールディングスを子会社化してホームセンター事業を統合するなど、積極的なM&Aにより事業規模を拡大しています。

連結従業員数は10,537名、単体では183名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は公益財団法人伊藤青少年育成奨学会、第3位は株式会社子雲社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.88%
公益財団法人伊藤青少年育成奨学会 5.50%
株式会社子雲社 5.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表者は代表取締役会長兼CEOの田代正美氏です。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
田代正美 代表取締役会長兼CEO 1977年同社入社。1994年代表取締役社長就任。中部薬品、アクトス等の代表を経て、2022年6月より現職。バロー代表取締役会長、犬の家代表取締役会長も兼務。
小池孝幸 取締役社長流通技術本部長 1995年同社入社。物流部長、IT戦略室長等を歴任。2023年6月より現職。中部興産、バローフィナンシャルサービス代表取締役社長を兼務。
森 克幸 専務取締役 1992年マルダイタチヤ(現タチヤ)入社。タチヤ社長、食鮮館タイヨー社長等を歴任。2022年6月より現職。タチヤ会長、バロー代表取締役社長を兼務。
篠花 明 常務取締役管理本部長 2006年同社入社。SM営業部長、総務人事部長、財務部長等を歴任。2015年4月より常務取締役、2024年3月より現職。中部アグリ社長、岐東ファミリーデパート会長を兼務。
和賀登盛作 取締役 1983年富士屋入社。同社HC営業部長、ホームセンターバロー社長等を歴任。2011年6月より現職。アレンザホールディングス代表取締役社長を兼務。
高巣基彦 取締役 1996年中部薬品入社。同社事業本部長、常務取締役等を歴任。2017年6月より現職。中部薬品代表取締役社長を兼務。
纐纈直孝 取締役 1987年同社入社。中部フーズ商品開発部長、デリカ事業部長等を歴任。2023年6月より現職。中部フーズ代表取締役社長を兼務。
浅倉俊一 取締役 1976年アサクラ(現ダイユーエイト)設立、社長就任。ダイユー・リックホールディングス社長を経て、2019年6月より現職。ダイユーエイト及びアレンザホールディングス会長兼CEOを兼務。
安孫子寿夫 取締役常勤監査等委員 1991年農林中央金庫入庫。大阪支店支配人、全国農業協同組合中央会JA経営対策部担当部長を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、高橋俊行(元カルピス取締役専務執行役員)、山下陽子(今池法律事務所パートナー弁護士)、増田陸奥夫(元農林中央金庫代表理事副理事長)、秦博文(元新日本有限責任監査法人代表社員)、伊藤時光(元名古屋中税務署長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スーパーマーケット(SM)事業」、「ドラッグストア事業」、「ホームセンター(HC)事業」、「ペットショップ事業」、「スポーツクラブ事業」、「流通関連事業」および「その他」事業を展開しています。

スーパーマーケット(SM)事業

バロー、タチヤ、食鮮館タイヨーなどのブランドでスーパーマーケットを展開し、食品の販売を行っています。また、中部フーズなどのグループ会社を通じて食品の製造・加工も手掛けています。地域の食生活を支える中核事業として、生鮮食品や惣菜などの商品力を強化しています。

収益は一般消費者への商品販売による売上が中心です。運営は主に株式会社バロー、株式会社タチヤ、株式会社食鮮館タイヨーなどの連結子会社が行っており、食品加工や卸売などの機能子会社も含まれます。

ドラッグストア事業

中部薬品株式会社が運営する「V・drug」等の店舗で、医薬品、化粧品、日用雑貨、食品などを販売しています。また、調剤薬局の併設を進め、地域のヘルスケアニーズに対応しています。

収益は一般消費者への商品販売および調剤報酬等が主な源泉です。運営は連結子会社である中部薬品株式会社等が行っています。

ホームセンター(HC)事業

ホームセンターバロー、ダイユーエイト、タイムなどの店舗を展開し、DIY用品、園芸用品、生活雑貨などを販売しています。プロ向けの資材販売やリフォーム事業も手掛けており、住環境の向上に寄与する商品・サービスを提供しています。

収益は一般消費者および事業者への商品販売、リフォーム工事代金等が中心です。運営は株式会社ホームセンターバロー、株式会社ダイユーエイト、株式会社タイムなどの連結子会社が行っています。

ペットショップ事業

ペットショップ「アミーゴ」「犬の家」などを展開し、ペット生体やペットフード、用品の販売を行っています。また、トリミングやペットホテルなどのサービスも提供しており、ペットとの共生をサポートしています。

収益はペット生体・用品の販売およびサービス料が中心です。運営は株式会社アミーゴ、株式会社犬の家などの連結子会社が行っています。

スポーツクラブ事業

「アクトス」ブランドでスポーツクラブを運営し、フィットネスジムやスイミングスクールなどを提供しています。健康増進や体力づくりを目的とした施設運営を行っています。

収益は会員からの会費収入やスクール受講料等が主な源泉です。運営は連結子会社である株式会社アクトス等が行っています。

流通関連事業

グループ全体の物流機能や卸売機能、設備メンテナンスなどを担っています。食品や雑貨の卸売、物流センターの運営、店舗設備の保守管理などを行い、グループの効率的な事業運営を支えています。

収益はグループ会社および外部顧客からの業務受託料や商品販売収入等が中心です。運営は中部流通株式会社、中部興産株式会社などの連結子会社が行っています。

その他

不動産賃貸業、クレジットカード事業、衣料品販売、クリーニング事業などを展開しています。商業施設の運営や決済サービスの提供を通じて、グループ全体の価値向上に寄与しています。

収益はテナントからの賃貸料、クレジットカードの手数料収入等が主な源泉です。運営は株式会社バローマックス、株式会社バローフィナンシャルサービスなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、営業収益は堅調に増加しており、30期連続の増収を達成しています。経常利益も安定して推移しており、直近では増益基調にあります。当期利益についても増加傾向にあり、収益性が維持・向上されていることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 7,302億円 7,325億円 7,600億円 8,078億円 8,544億円
経常利益 284億円 241億円 230億円 256億円 262億円
利益率(%) 3.9% 3.3% 3.0% 3.2% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 126億円 90億円 76億円 119億円 137億円

(2) 損益計算書


売上高および営業総利益は増加しており、事業規模の拡大が続いています。売上総利益率も改善傾向にありますが、営業利益率は横ばいで推移しています。これは販売費及び一般管理費の増加などが影響している可能性があります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,078億円 8,544億円
売上総利益 2,092億円 2,219億円
売上総利益率(%) 25.9% 26.0%
営業利益 228億円 232億円
営業利益率(%) 2.8% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が844億円(構成比37%)、賃借料が353億円(同16%)を占めています。売上原価については、商品仕入高等が主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となっており、特に流通関連事業の伸びが顕著です。主力であるスーパーマーケット事業も堅調に推移し、利益面でも最大の貢献をしています。ドラッグストア事業やホームセンター事業は増収ながらも減益となっており、コスト増や利益率の変化が影響していると考えられます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
スーパーマーケット事業 4,542億円 4,834億円 186億円 195億円 4.0%
ドラッグストア事業 1,709億円 1,773億円 54億円 40億円 2.3%
ホームセンター事業 1,240億円 1,274億円 38億円 36億円 2.8%
ペットショップ事業 287億円 305億円 13億円 11億円 3.5%
スポーツクラブ事業 101億円 105億円 -8億円 -5億円 -4.4%
流通関連事業 163億円 212億円 37億円 42億円 19.8%
その他 36億円 41億円 -19億円 -8億円 -19.3%
調整額 -458億円 -538億円 -73億円 -79億円 -
連結(合計) 8,078億円 8,544億円 228億円 232億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

バローホールディングスは、財務活動により使用した資金は、ファイナンス・リース債務の返済や配当金の支払いによるものです。
営業活動では、主に税金等調整前当期純利益や減価償却費により資金を得ています。
投資活動では、有形固定資産の取得や子会社株式の取得により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 384億円 378億円
投資CF -261億円 -399億円
財務CF -46億円 -47億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「創造・先取り・挑戦」を経営理念として掲げています。これは1958年の創業時から共有され、企業経営の礎となっています。全社員が実業人としての自覚を持ち、地域社会の繁栄と社会文化の向上に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


「誠」をモットーとして業務にあたることを綱領で定めています。創造、先取り、挑戦の姿勢で目標を高く掲げ、強い団結の下に英知と努力をもって徹底的に力闘するという行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた中長期経営方針「バローグループ・ビジョン2030」を策定し、「バロー経済圏」の構築と「デスティネーション・カンパニー」を目指しています。また、2027年3月期を最終年度とする中期3ヵ年経営計画では、以下の数値目標を掲げています。

* 営業収益:9,100億円
* 営業利益:272億円
* 経常利益:300億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:140億円
* ROE:6.4%
* ROIC:7.7%

(4) 成長戦略と重点施策


「成長戦略」「収益性戦略」「持続性戦略」「差別化戦略」の4つを柱としています。主要事業において来店目的を明確化させた「デスティネーション・ストアモデル」を確立し、関西エリアへの出店強化や新業態の確立を目指します。また、グループ再編による基礎体力向上、DX投資による生産性向上、人材戦略やサステナビリティ活動への注力、独自電子マネー「Lu Vit」を活用したマーケティングなどを推進し、「製造小売業」としてのビジネスモデルを進化させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人をつくる会社」を掲げ、成長志向かつ挑戦し続ける人材を求めています。人材開発センターや「淵叢学舎」での幹部教育など、教育機会を充実させるとともに、次世代リーダーの育成に注力しています。また、多様な人材の活躍支援や働きやすい環境構築も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 12.7年 7,048,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 20.5%
男女賃金差異(全労働者) 65.6%
男女賃金差異(正規) 71.7%
男女賃金差異(非正規) 83.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数目標(2030年までに10%)、女性管理職数実績(5.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 小売業の外部環境について

景気動向、価格競争の激化、異業種との競合、消費税制の変更、気候変動などが業績に影響を及ぼす可能性があります。消費者の生活防衛意識の高まりやコスト上昇など、経営環境の変化に対応する必要があります。

(2) 出店政策について

ドミナントエリア化を推進し、M&Aによる拡大も検討していますが、適切な物件の確保が困難な場合や、大規模小売店舗立地法などの法的規制により計画通りの出店ができない場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 食品の安全性について

製造小売業として品質管理や衛生管理を徹底していますが、万が一食中毒などの食品安全に関わる問題が発生した場合、社会的信用の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。