※本記事は、株式会社バローホールディングスの有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. バローホールディングスってどんな会社?
食品スーパーマーケットを中心に、ドラッグストアやホームセンターなど多彩な事業を展開する流通グループです。
■(1) 会社概要
1958年に岐阜県で主婦の店として設立しスーパーマーケット1号店を開業しました。1974年にバローへ社名変更し、1984年に中部薬品を設立してドラッグストア事業を開始しています。2005年に上場を果たし、2015年には持株会社体制へ移行して現在のバローホールディングスへ社名変更しました。近年はM&Aや資本業務提携により事業基盤を拡大しています。
現在の従業員数は連結で11,227名、単体で192名です。大株主の筆頭は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位は公益財団法人伊藤青少年育成奨学会、第3位は子雲社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.49% |
| 公益財団法人伊藤青少年育成奨学会 | 5.50% |
| 子雲社 | 5.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役会長兼CEOは田代正美氏が務めており、社外取締役比率は38.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田代正美 | 代表取締役会長兼CEO | 1977年入社。1994年代表取締役社長、2005年中部フーズ代表取締役社長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 小池孝幸 | 取締役社長 | 1995年入社。物流部長、中部興産代表取締役社長等を経て2019年取締役就任。2023年6月より現職。 |
| 森克幸 | 専務取締役 | 1992年マルダイタチヤ入社。同社代表取締役社長、バロー代表取締役社長等を経て2022年6月より現職。 |
| 篠花明 | 常務取締役管理本部長 | 2006年入社。SM営業部長等を経て2015年常務取締役就任。2024年3月より現職。 |
| 和賀登盛作 | 取締役 | 1983年富士屋入社。ホームセンターバロー代表取締役社長等を経て2023年5月アレンザホールディングス代表取締役社長。2011年より現職。 |
| 高巣基彦 | 取締役 | 1996年中部薬品入社。同社事業本部長等を経て2018年同社代表取締役社長。2017年より現職。 |
| 纐纈直孝 | 取締役 | 1987年入社。中部フーズ商品開発部長等を経て2019年同社代表取締役社長。2023年より現職。 |
| 安孫子寿夫 | 取締役常勤監査等委員 | 1991年農林中央金庫入庫。全国農業協同組合中央会JA経営対策部担当部長等を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、高橋俊行(元味の素執行役員東京支社長)、山下陽子(今池法律事務所パートナー弁護士)、小島泰道(学校法人駒沢大学理事長)、秦博文(公認会計士秦博文事務所所長)、伊藤時光(伊藤時光税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スーパーマーケット事業」「ドラッグストア事業」「ホームセンター事業」「ペットショップ事業」「スポーツクラブ事業」「流通関連事業」および「その他の事業」を展開しています。
■スーパーマーケット事業
食品スーパーマーケットを中核として展開し、生鮮食品や惣菜、ベーカリーなどの製造小売を強みとしています。自社で調達・製造・加工機能を持つプロセスセンターを活用し、専門性と品質にこだわった商品を提供しています。
消費者への食品等の小売販売によって収益を得ています。運営は主にバローが行うほか、タチヤ、食鮮館タイヨーなどが担い、食品の製造加工は中部フーズなどが担当しています。
■ドラッグストア事業
調剤薬局を併設したドラッグストアを展開し、医薬品やヘルスケア・ビューティー用品、日用雑貨などを提供しています。地域医療インフラとしての機能強化と在宅医療・介護支援を一体的に進めています。
来店客への医薬品や生活用品の小売販売、および処方箋に応じた調剤報酬などによって収益を得ています。運営は主に中部薬品が担当しています。
■ホームセンター事業
資材や工具、園芸用品、日用品などを幅広く提供するホームセンターを展開しています。プロ向け業態やリフォームサービスなども手掛け、プライベートブランド商品の拡充を図っています。
一般消費者やプロの業者への商品販売、リフォームの施工代金などから収益を得ています。運営はホームセンターバローやダイユーエイト、タイムなどが担当しています。
■ペットショップ事業
犬・猫などの生体販売をはじめ、ペットフードや関連用品の提供、トリミングやペットホテル、しつけ教室などの付加価値サービスを総合的に展開しています。
ペット生体や関連商品の販売代金、およびトリミングなどのサービス利用料から収益を得ています。運営はアミーゴや犬の家が担当しています。
■スポーツクラブ事業
総合フィットネスクラブや低価格帯のスポーツクラブを運営しています。また、子供向けのスイミングスクールや自治体と連携した公共運動施設の指定管理業務なども提供しています。
会員からの月額会費やスクール受講料、および自治体からの指定管理料・受託料などから収益を得ています。運営はアクトスなどが担当しています。
■流通関連事業
グループ内の物流機能を担うほか、店舗で使用する資材や消耗品の卸売、設備保守メンテナンス、広告代理店業などを展開しています。他社との共同配送など物流網の効率化も進めています。
グループ各社や外部企業からの物流受託料、資材の卸売代金、設備保守料などから収益を得ています。運営は中部興産や中部流通、メンテックスなどが担当しています。
■その他の事業
自社電子マネーやクレジットカードを発行する金融・決済サービスのほか、不動産賃貸業、衣料品の販売、保険代理業などを展開しています。
クレジットカードのショッピング利用に伴う加盟店手数料や、テナントからの不動産賃貸料などから収益を得ています。運営はバローフィナンシャルサービスやバローマックスなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
営業収益は着実な店舗拡大や既存店の好調により、直近5年間で連続して増収を達成しています。経常利益も一時的な踊り場はあったものの、製造小売りの強化や商品力の向上といった施策が奏功し、直近では過去最高の300億円に達するなど収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 7,325億円 | 7,600億円 | 8,078億円 | 8,544億円 | 9,241億円 |
| 経常利益 | 241億円 | 230億円 | 256億円 | 262億円 | 300億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 3.0% | 3.2% | 3.1% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 52億円 | 24億円 | 13億円 | 33億円 | 38億円 |
■(2) 損益計算書
主力のスーパーマーケット事業におけるプライベートブランド商品の拡充などにより、売上高の成長とともに売上総利益率も着実に向上しています。各種コストの増加を増収効果と粗利率の改善で吸収し、営業利益も拡大傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,275億円 | 8,962億円 |
| 売上総利益 | 2,219億円 | 2,459億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.8% | 27.4% |
| 営業利益 | 232億円 | 276億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が929億円(構成比38%)、賃借料が375億円(同15%)を占めています。売上原価は6,503億円で、売上原価合計の大部分が商品仕入高によって構成されています。
■(3) セグメント収益
スーパーマーケット事業は新規出店やM&A、製造小売りの強化が寄与し大幅な増収増益となりました。ホームセンター事業は客数減により減収となったものの、利益率改善により増益を確保しています。一方、ドラッグストア事業やペットショップ事業は人件費や出店費用などのコスト増が影響し減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| スーパーマーケット事業 | 4,834億円 | 5,408億円 | 195億円 | 221億円 | 4.1% |
| ドラッグストア事業 | 1,773億円 | 1,845億円 | 40億円 | 38億円 | 2.1% |
| ホームセンター事業 | 1,274億円 | 1,241億円 | 36億円 | 48億円 | 3.9% |
| ペットショップ事業 | 305億円 | 355億円 | 10億円 | 5億円 | 1.4% |
| スポーツクラブ事業 | 105億円 | 113億円 | -5億円 | 2億円 | 1.8% |
| 流通関連事業 | 212億円 | 225億円 | 42億円 | 47億円 | 20.9% |
| その他 | 41億円 | 56億円 | -8億円 | 2億円 | 3.6% |
| 連結(合計) | 8,544億円 | 9,241億円 | 232億円 | 276億円 | 3.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態を示す「積極型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 378億円 | 502億円 |
| 投資CF | -399億円 | -450億円 |
| 財務CF | -47億円 | 46億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「創造・先取り・挑戦」を経営理念として掲げています。1958年の創業時から「実業人としての自覚を持ち、地域社会の繁栄と社会文化の向上に寄与する」という綱領の下、グループ全社員で理念を共有し、持続可能な社会の発展を目指して事業活動を展開しています。
■(2) 企業文化
綱領に掲げられた「誠」をモットーに業務へ当たる姿勢が重視されています。「創造、先取り、挑戦の姿勢で目標を高く掲げ、強い団結の下に英知と努力をもって徹底的に力闘する」ことを行動の基本としています。また、「人をつくる会社」であることを掲げ、次世代リーダーの育成や、専門性の高いプロフェッショナルを育てるマイスター制度など、人材育成に注力しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営方針「バローグループ・ビジョン2030」において、商品・サービス・決済で地域を繋ぐ「バロー経済圏」の構築と「デスティネーション・カンパニー」への移行を目指しています。
* 営業収益:1兆円超
* 営業利益:480億円超
* 経常利益:500億円超
* ROIC(投下資本利益率):9%
■(4) 成長戦略と重点施策
製造小売業としてのビジネスモデルを進化させ、関西エリアでのドミナント形成や関東エリアへの出店を強化します。また、自社電子マネー「Lu Vit」などを活用した顧客接点の強化や、物流機能のグループ横断的な活用、企業間連携による調達基盤の強化を推進します。
* 3ヵ年累計営業キャッシュ・フロー:1,200億円以上
* 3ヵ年累計設備投資額(M&A除く):1,000億円程度
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業理念「創造・先取り・挑戦」に基づき、成長志向かつ挑戦し続ける人材を求めています。「人をつくる会社」として、人材開発センターの開設や経営幹部育成プログラムなどを通じて、事業拡大に必要なリーダーや専門人材の育成を図っています。また、ライフステージの変化に対応した多様な働き方の支援も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東証プライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 13.1年 | 7,357,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.2% |
| 男性育児休業取得率 | 31.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 84.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の実績(8.4%)、年次別・階層別研修の一般社員受講人数(2,845名)、同管理職受講人数(1,127名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 小売業の外部環境の変化
景気動向や価格競争の激化、同業種や異業種との競合進展、消費者に係る税制の変更などにより、小売事業の収益性が低下し、グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新規出店等の計画未達
ドミナントエリア化やM&A、関西および関東エリアへの展開を進めていますが、条件に合致する物件の確保が困難な場合や法的規制により計画通りに出店できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 食品の安全性に関わる問題
調達から販売までを一貫して担う「製造小売業」として品質管理を徹底していますが、万が一、食中毒等の食の安全に関わる問題が発生した場合、企業への信頼が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報システムおよび個人情報漏洩のリスク
通信ネットワークを介した基幹システムや電子マネー決済などを利用しており、サイバー攻撃や不正アクセス、システム障害などによって業務が停止し、または個人情報が漏洩した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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