アビックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アビックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。LED表示機の開発からコンテンツ運用まで一貫して提供するデジタルサイネージ関連事業と、地域密着型のエリアファンマーケティングを行うValue creating事業を展開しています。直近の業績は売上高が堅調に拡大し、親会社株主に帰属する当期純利益は増益を達成しています。


※本記事は、アビックス株式会社の有価証券報告書(第37期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アビックスってどんな会社?


デジタルサイネージのハード機器開発からソフト、コンテンツ運用までを一貫して提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1989年4月に設立され、2005年4月にジャスダック証券取引所に上場(現スタンダード市場)しました。2017年4月に連結子会社デジタルプロモーションを設立し、Value creating事業を開始しました。2021年11月にはプロテラスのデジタルサイネージ事業の一部を吸収分割により承継し、大口顧客への直販を強化しています。

現在の体制として、従業員数は連結で65名、単体で65名です。筆頭株主は事業会社のテラスホールディングスで、第2位は金融機関の上田八木短資、第3位は個人の山田恭氏となっています。

氏名 持株比率
テラスホールディングス 35.31%
上田八木短資 2.10%
山田恭 1.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は岩切敏晃氏が務めています。社外取締役比率は80%です。

氏名 役職 主な経歴
岩切敏晃 代表取締役社長 1986年リクルート入社。1995年コンテンツ(現テラスホールディングス)設立。2015年プロテラス代表取締役社長。2024年より現職。
谷聡雄 取締役 1997年テイン入社。2006年アビックス入社。事業本部副本部長等を経て、2026年6月より現職。


社外取締役は、中山絋太(ヴァンテージマネジメント代表取締役)、山根正裕(公認会計士)、神田泰行(弁護士)、木佐木之恵(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルサイネージ関連事業」および「Value creating事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

デジタルサイネージ関連事業


LED表示機などデジタルサイネージの製造、販売、リース、並びに映像コンテンツ配信サービス「DiSi cloud」などの販促支援やメンテナンスまでを一貫して提供しています。主な顧客としてスタジアム、大型商業施設、スポーツマーケットなどの多様な業界へ展開しています。

顧客から機器の販売代金やリース料、サブスクリプションモデルによる月額のシステム利用料を受け取る収益モデルです。運営は主にアビックスおよびSS Lab.が行っています。

Value creating事業


地域に係るエリアファンマーケティングを展開しています。自社運営のハイパーローカルメディア「タウンビジョン」やSNSを活用し、地域での企業PR、ファン作り、集客からブランディング、自治体のコンテンツ開発などを行っています。

ターゲットユーザー向けのコンテンツ(記事、動画、Web)制作や、継続的なSNS運用代行を通じたサブスクリプションモデルを中心に、顧客企業や自治体から料金を受け取っています。運営はデジタルプロモーションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。パチンコホール業界からスポーツマーケットや大型商業施設へと主力業界の変更を進めたことが奏功し、増収基調を維持しています。経常利益も直近数年間は黒字を定着させています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 18億円 33億円 37億円 43億円 54億円
経常利益 -0.6億円 0.1億円 1.0億円 2.4億円 2.3億円
利益率(%) -3.5% 0.3% 2.8% 5.6% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.8億円 -0.1億円 0.7億円 1.7億円 2.1億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も増加していますが、先行投資の実施により営業利益はやや減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 43億円 54億円
売上総利益 13億円 13億円
売上総利益率(%) 29.2% 24.8%
営業利益 2.7億円 2.3億円
営業利益率(%) 6.2% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.5億円(構成比31%)、のれん償却額が1.1億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のデジタルサイネージ関連事業は、案件獲得力の向上により増収となりましたが、先行投資の影響により減益となりました。一方、Value creating事業は、新規案件の受注が順調に推移し、増収増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
デジタルサイネージ関連事業 42億円 51億円 2.6億円 2.1億円 4.1%
Value creating事業 1.8億円 2.6億円 0.2億円 0.2億円 7.1%
連結(合計) 43億円 54億円 2.7億円 2.3億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を確保しつつ、借入等の財務活動による資金を元に積極的な投資を行う「積極型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.2億円 4.0億円
投資CF -0.6億円 -0.8億円
財務CF -2.0億円 1.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.3%で製造業の市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「価値創造企業」を企業理念として掲げています。「人の創造(起業家精神を有し、自分で自分を創造するスタッフの集まりとする)」と「事業の創造(常に多くの面から事業を捉え、独自の発想を実現化させることを目的とする)」により、関連するすべての方々に最大限の付加価値を創造することを会社経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


「自由な発想で多くの付加価値を創造する企業」として、起業家精神を持ち、自己実現を目指す自立した人材が集まる組織文化を重視しています。また、多様な人材の掛け合わせから新たな価値を生み出すため、知と経験のダイバーシティを積極的に取り込む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期計画は公表していませんが、持続的な経営の安定と成長を維持するため、株主資本に対する利益率を高める必要からROE(自己資本利益率)、資本の効率性を高める必要からROA(総資産利益率)を重要な経営指標として認識しています。資本コストを上回るROEの実現を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


安定的な収入を重視し、長期にわたるサブスクリプション型サービスの獲得を推進しています。「デジタルサイネージ業界No.1」を目指し、従来のパチンコホール業界からスポーツマーケットや大型商業施設への主力業界の変更、デジタルプラットフォーム「MiRAi PORT」へのAI技術活用による事業領域の拡大、およびITを活用した生産性向上を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全社員成長」をキーワードに、人材育成と社内環境整備を推進しています。各職位・グレードに求められる専門知識の習得支援に加え、多様な人材が意欲をもって活躍できる活力ある組織の構築を目指しています。また、従業員のエンゲージメント向上や健康経営、リモートワークへの対応などを通じて、ワークライフ・バランスの取れた働きやすい環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.6歳 6.2年 6,935,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、一部指標については有報に記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 屋外広告物条例等の法的規制

製品であるLED表示機の屋外設置にあたっては、各都道府県の屋外広告物条例による規制や屋外広告業の届出が必要です。これらの法的規制に変更が生じた場合、同社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 映像配信のシステム障害

映像コンテンツや情報の配信、SNSの運営は通信ネットワークに依存しています。自然災害や事故によるネットワークの切断、あるいは管理・運営するシステムに不具合が発生した場合、サービス提供が阻害されるリスクがあります。

(3) 仕入取引における為替変動・調達リスク

LED表示機は主に中国から外貨建てで仕入れているため、為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、仕入先国における政治体制の変化や労働コストの上昇によって、安定的な調達が困難となるリスクを抱えています。

(4) のれんの減損損失

過去の事業承継(吸収分割)に伴い計上されたのれんが総資産の一定割合を占めています。今後の事業計画の進捗状況や市場環境の悪化により、減損の兆候が認められ減損損失が発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。