※本記事は、アビックス株式会社 の有価証券報告書(第36期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アビックスってどんな会社?
同社は、LED表示機の開発・販売を行うファブレスメーカーであり、サイネージを通じた販促支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
1989年にデジタル映像の研究開発を目的に設立され、1998年にフルカラーLED表示機を開発しました。2005年に株式上場を果たし、2017年にはデジタルプロモーションを設立して事業領域を拡大しました。2021年にはプロテラスの一部事業を承継し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は58名(単体58名)の体制です。筆頭株主は同社の親会社的地位にはないものの、純粋持株会社のテラスホールディングスであり、第2位株主は個人の山田恭氏、第3位は金融業を営む上田八木短資となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| テラスホールディングス | 35.31% |
| 山田恭 | 2.18% |
| 上田八木短資 | 2.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は岩切敏晃氏が務めています。社外取締役比率は80.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩切 敏晃 | 代表取締役社長 | リクルートを経て、コンテンツ(現テラスホールディングス)を設立。プロテラス代表取締役社長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中山絋太(ヴァンテージマネジメント代表取締役)、山根正裕(山根公認会計士事務所代表)、神田泰行(至高法律事務所パートナー弁護士)、木佐木之恵(合同会社Kajiboshi CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルサイネージ関連事業」および「Value creating事業」を展開しています。
■(1) デジタルサイネージ関連事業
店舗や施設向けに、LED表示機等のデジタルサイネージ機器の提供、および映像コンテンツの配信やメンテナンス等のサービスを行っています。主な顧客は、商業施設、パチンコホール、スポーツ施設、オフィスビルなどで、ハードウェアの設置から運用までをトータルでサポートしています。
収益は、機器の販売代金やリース料、および映像配信サービス「DiSi cloud」等の月額利用料、メンテナンス料から得ています。運営は主にアビックス、SS Lab.、エクスポルトが行っています。
■(2) Value creating事業
地域密着型のエリアファンマーケティングとして、地域企業のPR、ファン作り、集客、ブランディング支援や、地方自治体のコンテンツ開発などを行っています。ハイパーローカルメディア「タウンビジョン」やSNSを活用した情報発信を展開しています。
収益は、マーケティング支援やコンテンツ制作、メディア運営等に係る対価として顧客から受け取るサービス料が主な源泉です。運営は主に子会社のデジタルプロモーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な右肩上がりで推移しており、利益面でも直近では大幅な改善が見られます。特に当期は、経常利益が前期比で倍増以上となっており、利益率も大きく向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12億円 | 18億円 | 33億円 | 37億円 | 43億円 |
| 経常利益 | 0.2億円 | -0.6億円 | 0.1億円 | 1.0億円 | 2.4億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | -3.5% | 0.3% | 2.8% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | -0.8億円 | -0.1億円 | 0.7億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益および営業利益率も大きく改善しており、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 37億円 | 43億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.2% | 29.2% |
| 営業利益 | 1.1億円 | 2.7億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.0億円(構成比30%)、のれん償却額が1.1億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
デジタルサイネージ関連事業が全体の売上の大半を占めており、当期は売上・利益ともに大きく伸長しました。Value creating事業も規模は小さいながら増収増益となり、成長を見せています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| デジタルサイネージ関連 | 36億円 | 42億円 |
| Value creating | 1.3億円 | 1.8億円 |
| 連結(合計) | 37億円 | 43億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、中長期的な成長に向けた機動的な開発投資に備え、相応の現預金を保有する方針です。
当連結会計年度は、税金等調整前当期純利益やのれん償却等により、営業活動によるキャッシュ・フローは収入となりました。投資活動では、有形固定資産の取得等により、支出となりました。財務活動では、長期借入金の返済等により、支出となりました。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 営業CF | -5.1億円 | 6.0億円 | 2.2億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | -0.4億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | 1.9億円 | -2.8億円 | -2.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「価値創造企業」を企業理念として掲げています。自由な発想で多くの付加価値を創造する企業として、「人の創造(起業家精神を有し、自己実現するスタッフの集まり)」と「事業の創造(独自の発想を実現化)」を通じて、株主、顧客、取引先など関連するすべての人々に最大限の付加価値を提供することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、ハードウェアの技術開発だけでなく、映像コンテンツやサービスを一体化したシステムとして提供することを重視しています。「起業家精神」を持ち、自分で自分を創造するスタッフが集まる組織を目指しており、常に多くの面から事業を捉え、独自の発想を実現化させることを目的としています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、株主資本に対する利益率を高めるためROE(株主資本利益率)、資本の効率性を高めるためROA(総資産利益率)を重要な経営指標として認識しています。具体的な数値目標を含む中期計画は公表していませんが、資本コストを上回るROEを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「デジタルサイネージ業界No.1」を掲げ、安定的な収入の確保と事業領域の拡大を目指しています。具体的には、サブスクリプションサービスである映像配信サービス「DiSi cloud」を軸に、AI技術等を連携したデジタルプラットフォーム「MiRAi PORT」を展開します。
また、主力業界をパチンコホールからスポーツマーケットや大型商業施設へと多角化させ、顧客ポートフォリオの構築を進めています。さらに、デジタルマーケティングによる営業効率向上やIT活用による業務効率化を通じて、生産性の向上にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は成長に不可欠な「人材」の育成に注力しており、各職位・グレードに応じた研修やキャリア構築支援を実施しています。また、知と経験のダイバーシティを取り込み、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。採用においては新卒に加え、即戦力となる中途採用も積極的に行い、従業員エンゲージメントやウェルビーイングの向上にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.4歳 | 6.2年 | 6,935,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
同社の製品であるポールビジョンやサイバービジョンを屋外に設置する際、各都道府県の屋外広告物条例の規制を受けます。また、屋外広告業を運営する場合には届出が必要です。これらの法的規制に変更があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) システム障害について
デジタルサイネージ事業におけるコンテンツ配信やSNS運営は通信ネットワークシステムに依存しています。自然災害や事故によるネットワーク切断、またはハードウェア・ソフトウェアの不具合など、システム障害が発生した場合、事業活動が阻害され、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 仕入取引について
中国製LED表示機の仕入取引は外貨建てで行っており、為替相場の変動が業績に影響する可能性があります。また、中国の政治体制変更や労働コスト上昇、仕入先との関係悪化などにより調達が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) のれんの減損損失のリスク
同社は2021年の事業承継により多額ののれんを計上しており、総資産の一定割合を占めています。減損の兆候が認められ、減損処理が必要となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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