※本記事は、中央自動車工業株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中央自動車工業ってどんな会社?
自動車のボディコーティング剤等から全損車両の処分まで、自動車関連の幅広い商材を扱う開発型商社です。
■(1) 会社概要
1946年に中央自動車工業として発足し、自動車部品の製造販売を開始しました。1960年に製造部門を分離し、1977年に大証二部(現東証スタンダード市場)へ上場しました。1980年代よりシンガポールや米国などへの海外展開を進め、2019年にはABTを完全子会社化し自動車処分事業を本格化させています。
現在、同社グループは連結従業員数348名、単体282名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は海外機関投資家のノ-ザン・トラスト・カンパニーであり、第2位には自動車販売事業を展開する日産東京販売ホールディングス、第3位には三菱UFJ銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC)RE FIDELITY FUNDS | 6.10% |
| 日産東京販売ホールディングス | 5.72% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は坂田信一郎氏が務めており、社外取締役の比率は42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂田 信一郎 | 代表取締役社長 | 1987年4月同社入社。常務取締役大阪支社長、国内営業本部長兼名古屋支社長を経て、2012年4月より現職。 |
| 鳥野 善文 | 取締役副社長国内営業本部長 | 1980年4月同社入社。国内営業本部副本部長兼特販部長、常務取締役、専務取締役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 近藤 雅之 | 常務取締役 | 1987年4月同社入社。大阪支社長、東京支社長を経て2022年4月より現職。フラッグス代表取締役社長も務める。 |
| 住吉 哲也 | 常務取締役総務本部長兼総務部長兼経営企画室長 | 三菱東京UFJ銀行中津川支社長等を経て、2017年10月同社入社。執行役員総務部長などを経て、2021年6月より現職。 |
| 柿野 雅文 | 取締役海外営業本部長 | 1987年4月同社入社。海外営業本部第一部長、CAPCO PTE LTD取締役会長等を経て、2018年6月より現職。 |
| 廣内 学 | 取締役大阪支社長 | 1995年4月同社入社。執行役員関東支社副支社長、取締役東京支社長等を経て、2017年4月より現職。 |
| 増田 文弘 | 取締役東京支社長 | 1988年4月同社入社。執行役員商品開発部長、執行役員福岡支社長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 酒井 規光 | 取締役商品開発統括部長兼営業開発統括部長 | 1991年4月同社入社。執行役員営業開発部長などを経て、2020年4月より現職。中国子会社の董事長も務める。 |
社外取締役は、久保井聡明(久保井総合法律事務所代表パートナー)、AHMED SAJJAD(山梨学院大学准教授)、具足彰治(元三菱東京UFJ銀行リテール人事部長)、堀内武文(元東京海上ビジネスサポート社長)、大澤秀美(デライト・マインド顧問)、小西華子(竹林・畑・中川・福島法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品・用品等販売事業」および「自動車処分事業」を展開しています。
■(1) 自動車部品・用品等販売事業
同社の中核事業であり、国内外において自動車部品、用品および付属品ならびに関連サービス・新商品の開発、販売、輸出入を行っています。カーディーラーや一般企業、官公庁などを顧客とし、ボディコーティング剤やアルコール検知器などの高付加価値商材を幅広く展開し、世界約60ヵ国のバイヤーにも商品を供給しています。
収益源は、顧客であるディーラー等への自動車用品の卸売代金や輸出販売代金です。運営は同社のほか、自動車用品製造を担うセントラル自動車工業、商品企画開発のフラッグス、海外販売を担うCAPCO PTE LTDやケー・エム・エンタープライズ、森田産業などの連結子会社が連携して行っています。
■(2) 自動車処分事業
損害保険会社が全損と認定した車両の処分に関わる業務を代行する事業です。事故等により全損となった車両を損害保険会社から受け入れ、中古車市場や鉄スクラップ市場、解体業者などに向けて適切に処理・売却を行うサービスを提供しています。
収益源は、全損車両の中古車市場等における売却代金および処理代行に伴う手数料です。運営は連結子会社のABTが行っており、変動する中古車市場環境の中で効率的かつ安定的な業務遂行と、環境に配慮した持続可能なリサイクルスキームの構築を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高および経常利益は一貫して右肩上がりの成長を続けています。高付加価値商材の拡販やM&Aによる新規事業開拓の効果が寄与し、利益率も20%台後半の高水準を安定して維持しています。継続的な増収増益により、同社の収益基盤は着実に強化されています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 307億円 | 359億円 | 393億円 | 416億円 | 467億円 |
| 経常利益 | 70億円 | 90億円 | 113億円 | 124億円 | 129億円 |
| 利益率(%) | 22.7% | 25.0% | 28.6% | 29.9% | 27.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 43億円 | 56億円 | 69億円 | 72億円 | 72億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は前年比で約51億円の増収となりました。原材料費等の増加による売上原価の上昇を受け、売上総利益率はわずかに低下したものの、増収効果により売上総利益および営業利益は順調に拡大し、本業における高い稼ぐ力を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 416億円 | 467億円 |
| 売上総利益 | 184億円 | 196億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.3% | 42.0% |
| 営業利益 | 110億円 | 114億円 |
| 営業利益率(%) | 26.6% | 24.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が21億円(構成比25%)と最も大きな割合を占めており、次いで福利厚生費が5億円(同6%)、のれん償却額が5億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車部品・用品等販売事業は、地域密着型営業による深耕やアルコール検知器などの拡販により順調に売上・利益を伸ばしました。また、自動車処分事業についても、中古車市場の活況を追い風に取扱件数が大幅に増加し、両セグメントともに前年を上回る好調な推移を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車部品・用品等販売事業 | 324億円 | 359億円 | 101億円 | 103億円 | 28.7% |
| 自動車処分事業 | 92億円 | 108億円 | 9億円 | 11億円 | 10.0% |
| 連結(合計) | 416億円 | 467億円 | 110億円 | 114億円 | 24.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ十分なキャッシュを原資として成長投資を行いながら、借入金の返済や株主還元等の財務活動を賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 85億円 | 91億円 |
| 投資CF | -26億円 | -4億円 |
| 財務CF | -26億円 | -32億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も88.4%と市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界のネットワークを通じて環境にやさしく、安全と豊かなカーライフを創造して、社会に貢献する。」という企業理念を掲げています。また、2030年に向けたパーパスとして「未来のモビリティ社会における最良のパートナー」を設定し、モビリティ社会全体の課題解決に貢献する存在を目指しています。
■(2) 企業文化
グループブランドスローガンとして「インテグリティと感謝を文化に」を掲げています。誠意をもって正道を歩む姿勢(インテグリティ)と、ステークホルダーへの感謝の心を行動指針としています。社員一人ひとりがこれらを率先励行し、お客様との強固な信頼関係を築くことで企業価値の向上を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値を高め株主の期待に応えるための重要な中長期の経営指標として、高い収益性と資本効率、ならびに安定的な株主還元を目標に設定しています。
・売上高営業利益率:20%以上
・ROE(自己資本利益率):15%以上
・連結配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、既存事業の基盤強化と新規領域の開拓を両輪で進めています。地域密着型営業による高付加価値商材の拡販を進めると同時に、M&Aや社内ベンチャーを通じた異業種への展開も推進しています。また、人的資本、IT、ブランディングへの積極的な投資により「開発型企業」としての足腰を強固にする戦略を描いています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材」を最優先すべき経営資本と位置付け、社員が最大限に能力を発揮できる職場環境の構築を目指しています。経営戦略に基づく適正な人材配置や健康経営の推進、全社員を対象とした研修による「学びなおし」の機会提供などを通じて、エンゲージメントの向上と多様な人材の活躍を促進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。基本給と業績連動賞与の構成に加え、従業員持株会への奨励金拡充など中長期的なモチベーション向上を図る報酬設計を取り入れています。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 15.0年 | 9,224,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 13.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 54.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 85.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 85.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | -% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全労働者に占める女性労働者の割合(25.3%)、有給休暇取得率(65.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外情勢や為替の変動リスク
同社は世界約60ヵ国に自動車部品等を供給しており、対象国の政治・経済情勢の変化や為替変動の影響を受けやすい構造にあります。また、国内自動車業界の市場環境の激変やサプライチェーンの停滞による自動車生産への影響などが、同社の経営成績に波及する可能性があります。
■(2) 市場変化に伴う商品開発の遅延
開発型企業として潜在需要を調査し新商品の開発を行っていますが、市場の変化にスピーディーに対応できず、新たな基幹商品の開発や新規顧客の開拓が遅れた場合、収益性に悪影響を及ぼすリスクがあります。これに対し、研究開発センターを活用して開発のスピードと精度の向上を図っています。
■(3) M&Aに伴うのれんの減損リスク
同社はM&Aを成長戦略の一つとしており、企業買収に伴い発生したのれんを連結貸借対照表に計上しています。事業環境の変化等によって買収先の収益性が低下し、事業計画通りの成果が得られない場合、のれんの減損損失を計上することになり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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