ディーブイエックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディーブイエックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するディーブイエックスは、循環器疾病分野を中心とする医療機器の販売代理店・輸入総代理店です。不整脈事業と虚血事業を主力とし、心臓ペースメーカなどの販売を手掛けています。直近の業績は、販売数量増により増収を達成した一方で、償還価格の引き下げ等により減益となっています。


※本記事は、ディーブイエックス株式会社の有価証券報告書(第40期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ディーブイエックスってどんな会社?


循環器疾病分野の医療機器を中心に、販売代理店および輸入総代理店として事業を展開しています。

(1) 会社概要


1986年4月に心臓ペースメーカの販売等を目的としてヘルツを設立しました。2004年2月にディーブイエックスジャパンを吸収合併し、現在のディーブイエックスに商号変更しています。2007年4月にジャスダック証券取引所に上場し、2014年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2025年4月には総合医療サービスを子会社化し、事業領域の拡大を図っています。

従業員数は連結で378名、単体で361名です。筆頭株主は資産管理業務等を行うMSSで、第2位はUH6となっています。上位株主には投資事業有限責任組合なども名を連ねており、安定的な経営体制の構築が図られています。

氏名 持株比率
MSS 33.71%
UH6 7.69%
UH Partners2投資事業有限責任組合 7.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は柴﨑浩氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
柴﨑浩 代表取締役社長 1991年8月ヘルツ入社。2004年2月同社取締役。2019年6月より現職。
波多野剛 取締役 2004年4月同社入社。2019年4月執行役員中日本第一営業部長。2023年6月より現職。
内田好則 取締役 1998年4月同社入社。2017年4月執行役員。2024年6月より現職。
諏訪聡志 取締役執行役員 1995年6月同社入社。2021年4月執行役員業務部長。2025年6月より現職。
宮本聡 取締役 2013年8月同社入社。2018年4月執行役員。2025年6月より現職。
宮川猛 取締役(監査等委員) 2001年4月同社入社。2021年4月執行役員内部監査室長。2022年6月より現職。


社外取締役は、杉山純男(元ソーリン・ジャパン代表取締役)、野島透(元有限責任あずさ監査法人代表社員)、田上昭子(コスモス法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不整脈事業」「虚血事業」および「その他」事業を展開しています。

不整脈事業


徐脈、頻脈、期外性収縮の治療に用いる心臓ペースメーカ、アブレーションカテーテル、植込み型除細動器などの医療機器を販売しています。関東地域を中心に、国内外の医療機器メーカー等から仕入れ、主に医療施設に対して提供しています。

収益源は、医療施設に対する医療機器の卸売による販売代金です。同事業は主にディーブイエックスが販売代理店として運営しており、既存の営業網と連携しながら営業エリアの全国拡大を推進しています。

虚血事業


心筋梗塞や狭心症といった虚血性疾患の検査および治療に用いる医療機器を販売しています。国内外の医療機器メーカーから直接仕入れ、全国の医療機器販売代理店を経由して医療施設に幅広く提供しています。

収益源は、医療機器の国内総代理店および販売代理店としての販売代金です。同事業も主にディーブイエックスが運営しており、自社で製造販売業者の認証を取得した自動造影剤注入装置なども取り扱い、収益基盤の強化を図っています。

その他


構造的心疾患商品、脳神経外科関連商品、一般外科関連商品などの医療機器の販売を行っています。また、ホルター心電図の解析業務なども本セグメントに含まれ、主力事業の周辺領域をカバーしています。

収益源は、関連商品の販売代金や臨床検査業務の手数料などです。ディーブイエックスが商品販売を行うほか、子会社の総合医療サービスが臨床検査業務などを運営し、グループ全体でシナジーを創出しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は455億円から560億円へと拡大傾向にあります。一方で、経常利益は医療施設からの値下げ要請や競争環境の激化などを背景に減少傾向が続いており、利益率も2.8%から0.5%へと低下しています。事業規模の拡大と並行して、収益性の改善が大きな課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 455億円 475億円 459億円 503億円 560億円
経常利益 13億円 14億円 7億円 5億円 3億円
利益率(%) 2.8% 2.8% 1.4% 1.1% 0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 9億円 2億円 4億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は503億円から560億円へと増加しましたが、営業利益は5億円から3億円へと減少しています。売上総利益率は緩やかな低下傾向にあり、販売数量の増加に伴うコスト負担が利益を圧迫している状況が見受けられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 503億円 560億円
売上総利益 50億円 54億円
売上総利益率(%) 9.9% 9.6%
営業利益 5億円 3億円
営業利益率(%) 1.1% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が18億円(構成比36%)、賞与及び賞与引当金繰入額が7億円(同13%)を占めています。売上原価においては商品仕入高が大部分を占める構造となっており、仕入コストのコントロールが重要となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、不整脈事業が全体の大部分を占めており、主力としての役割を果たしています。次いで「その他」事業、虚血事業の順となっており、今後は虚血事業などの取扱商品拡充によるポートフォリオの強靭化が目指されています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
不整脈事業 - 457億円
虚血事業 - 40億円
その他 - 63億円
連結(合計) - 560億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFのすべてがマイナスとなる「末期型」のキャッシュ・フロー状況です。本業での資金流出に加え、積極的な設備投資や財務活動での支出が重なっているため、今後の資金繰りの改善が求められる局面といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 -12億円
投資CF -6億円 -10億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「生命と健康を守る」ことをパーパス(存在理由)として掲げています。また、ミッション(なすべきこと)として「患者・医師・医療関係者にとって有益な製品・サービスを提供し、最適な医療の普及に貢献する」ことを定め、人に優しい医療への貢献を目指した経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、バリューズ(共有する価値観)として「人に優しい医療の実現に貢献する」「ニーズを捉え、最適なサービスを考える」「相互に理解し合い、相互に助け合う」「自己の目標を定め、常に能力の向上を目指す」「適正な利益を確保した公正な取引を行う」「人の『心』をもって正直に行動する」という行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、安定的な業容拡大と継続的かつ効率的な販売拡大を目指し、以下の客観的な資本効率性・収益性の目標を掲げています。

・自己資本当期純利益率(ROE)6.5%以上
・売上高営業利益率1.6%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「当社の製品やサービスが日本のみならず世界中の生命と健康を守る」ことを目指し、DX推進による物流・事務の効率化や独自製品の拡充により利益率の向上を図っています。また、関東地区への売上依存度を低減するため全国展開を推進し、虚血事業における取扱商品の充実など、ポートフォリオの強靭化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「企業は人なり」という人事基本方針のもと、多様な人材がパーパスを共有し、安心して能力を発揮できる企業文化の醸成を目指しています。長期的に活躍できる優秀な人材の獲得・育成を通じた企業成長を実現するため、社員一人ひとりの能力や役割に合わせた教育研修を継続的に実施し、多様な価値観を尊重する職場環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 8.1年 6,809,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性労働者の育児休業取得率 2.8%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 46.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 54.2%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 25.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の割合(30.2%)、新規採用者に占める女性社員の割合(42.6%)、退職率(7.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療行政の動向による償還価格の引き下げ

現行の医療保険制度において、特定保険医療材料の保険償還価格が定められており、医療費抑制を目的とした引き下げが継続する見通しです。これにより医療機関からの値下げ要請が高まり、同社の利益率を押し下げる要因となる可能性があります。

(2) 医療機器業界における競争の激化

医療機器業界では競争が激化しており、想定以上の競争激化による競争力の低下や取引関係の変更が生じた場合、業績に影響を及ぼす恐れがあります。また、革新的な治療技術の急速な進歩に対し、適切に対応できないリスクも抱えています。

(3) 仕入先の状況変化に伴う供給遅延・停止

同社は国内外の医療機器メーカーなどから商品を仕入れていますが、仕入先の買収や合併等の事情により契約が解約・更新不可となる場合があります。代替不能な商品において供給が停止・遅延した場合、事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。