ディーブイエックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディーブイエックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する同社は、心臓ペースメーカなどの不整脈治療領域を主力とする医療機器商社です。虚血事業や自社製品開発も展開しています。直近の業績は、主力事業および虚血事業の販売が好調に推移し、売上高は前期比9.8%増、当期純利益は137.2%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ディーブイエックス の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ディーブイエックスってどんな会社?


不整脈領域に強みを持つ医療機器商社であり、独自の製品開発や海外展開も進める「医療現場のパートナー」です。

(1) 会社概要


同社は1986年に株式会社ヘルツとして設立され、心臓ペースメーカの販売を開始しました。2004年に子会社を吸収合併し現社名へ変更、2007年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2014年の東証一部指定を経て、2025年には総合医療サービス株式会社を完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結334名、単体334名です。筆頭株主は同社代表取締役社長が会長を務める株式会社MSSで、第2位は株式会社UH5、第3位は光通信となっています。光通信およびその関連会社が大株主上位に名を連ねており、その他の関係会社として位置づけられています。

氏名 持株比率
MSS 33.80%
UH5 7.48%
光通信 7.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は柴﨑浩氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
柴﨑 浩 代表取締役社長 1991年同社入社。営業本部長、不整脈事業部長等を歴任し、営業部門を統括。2019年6月より現職。MSS取締役会長を兼任。
波多野 剛 取締役 2004年同社入社。営業部長、中日本営業部長を経て、2023年6月より現職。販売代理店事業を担当。
宮本 聡 取締役執行役員 野村證券を経て2013年同社入社。内部監査室長、業務部長等を歴任。経営管理、経営戦略及び人事を担当。
内田 好則 取締役 1998年同社入社。営業部長、市場開拓部長等を歴任。総代理店事業、営業推進及び開発製品事業を担当。
諏訪 聡志 取締役執行役員 1995年同社入社。業務部長、財務経理部長を経て、2024年6月より現職。財務経理及び業務を担当。


社外取締役は、堂垣内重晴(元たち吉代表取締役専務)、杉山純男(元ソーリン・ジャパン代表取締役)、野島透(公認会計士)、田上昭子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不整脈事業」「虚血事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 不整脈事業


心臓のリズム障害である不整脈の検査・治療に使用される医療機器を主力としています。具体的には、徐脈治療用の心臓ペースメーカ、頻脈治療用のICD(植込み型除細動器)、検査用の電極カテーテル、治療用のアブレーションカテーテルなどを取り扱っています。

これらの商品は、海外の医療機器輸入商社や国内メーカーから仕入れ、主に医療施設に対して販売しています。収益は医療施設への商品販売代金であり、同社が販売代理店として運営を行っています。関東地域を中心に展開してきましたが、現在は営業エリアの全国拡大を推進しています。

(2) 虚血事業


心筋梗塞や狭心症などの虚血性疾患の検査・治療に使用される医療機器を取り扱っています。血管造影やインターベンション治療などで使用される製品に加え、自社開発の自動造影剤注入装置「RAQUOSインジェクションシステム」の販売も行っています。

収益は医療施設への商品販売代金です。国内外のメーカーから直接仕入れ、全国の販売代理店を経由して販売する「国内総代理店業」と、不整脈事業と同様に仕入先から商品を仕入れ医療施設へ直接販売する「販売代理店業」の両形態で運営しており、同社が主体となって全国展開しています。

(3) その他


脳神経外科、一般外科、消化器、放射線防護用品など、主力である循環器分野以外の医療機器・消耗品を販売しています。

収益はこれらの関連商品の販売代金です。不整脈事業や虚血事業で培った販路を活用し、同社が医療施設等へ販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に増加傾向にあり、直近500億円を突破しました。利益面では、償還価格の引き下げや競争激化の影響を受け一時期落ち込みましたが、当期は大幅な増益となり回復基調にあります。当期純利益も前期の低水準から大きく回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 410億円 455億円 475億円 459億円 503億円
経常利益 9億円 13億円 14億円 7億円 5億円
利益率(%) 2.1% 2.8% 2.8% 1.4% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 9億円 9億円 2億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率はほぼ横ばいです。一方、販管費の増加などにより営業利益率は低下傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 459億円 503億円
売上総利益 48億円 50億円
売上総利益率(%) 10.4% 9.9%
営業利益 7億円 5億円
営業利益率(%) 1.4% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が16億円(構成比35%)、賞与及び賞与引当金繰入額が6億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不整脈事業は新商品の発売効果等により増収増益となりました。虚血事業は止血材料の販売好調により大幅な増収増益を達成しています。その他事業もストラクチャー関連製品の好調により堅調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
不整脈事業 393億円 425億円 40億円 41億円 9.7%
虚血事業 25億円 32億円 3億円 4億円 11.7%
その他 41億円 46億円 5億円 5億円 10.8%
連結(合計) 459億円 503億円 48億円 50億円 9.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ディーブイエックスは、営業活動により資金を獲得し、投資活動および財務活動で資金を支出する財務構造となっています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の増加や税引前当期純利益などにより、前事業年度の支出から獲得へと転換しました。一方、投資活動では、有形固定資産や投資有価証券の取得などにより、資金の支出が継続しています。財務活動では、配当金の支払いなどにより、資金の支出が生じています。

同社は、運転資金や設備投資資金を主に営業活動から得られる内部資金で賄う財務方針です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -4.2億円 7.3億円
投資CF -4.0億円 -6.3億円
財務CF -3.1億円 -5.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「生命と健康を守る」ことをパーパス(存在理由)として掲げています。ミッション(なすべきこと)として、患者・医師・医療関係者に有益な製品・サービスを提供し、最適な医療の普及に貢献することを定めています。ビジョン(未来像)として、医療現場や社会から求められるリーダーを目指し、多様な個性で変化を捉え新たな事業を開拓することを目指しています。

(2) 企業文化


「人に優しい医療」への貢献を掲げ、6つのバリューズ(価値観)を共有しています。これには、最適なサービスの考案、相互理解と助け合い、自己目標による能力向上、適正利益を確保した公正な取引、そして「人の『心』をもって正直に行動する」という倫理観が含まれます。コンプライアンスを重視し、社会から信頼される経営を推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画では、「同社の製品やサービスが日本のみならず世界中の生命と健康を守る」「1秒に一人の生命と健康を守る」ことを目指し、持続的成長のための変革に取り組んでいます。経営上の目標として、以下の指標を掲げています。

* 自己資本当期純利益率(ROE):20%以上
* 売上高営業利益率:4%以上

(4) 成長戦略と重点施策


持続的成長を実現するため、「利益率・生産性向上」「地域的依存度低減」「強靭な事業ポートフォリオ」「新たな成長基盤の強化(市場・組織)」を戦略テーマとしています。独自製品の拡充やDXによる効率化、不整脈事業の全国展開、輸入総代理店機能や自社製品開発の強化を進めています。

特に以下の施策に注力しています。
* 自社開発製品「RAQUOSインジェクションシステム」の国内普及および海外輸出準備
* 不整脈シミュレーター「EPSトレーナー」の輸出拡大
* マーケティング・薬事・研究開発部門の強化による新商品導入

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業は人なり」という考えのもと、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。女性活躍推進やダイバーシティを重点戦略とし、ライフイベントによる離職防止や管理職比率向上に取り組んでいます。また、能力や役割に合わせた教育研修を継続的に実施し、長期的に活躍できる優秀な人材の獲得・育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.5歳 8.1年 6,476,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 38.5%
男女賃金差異(全労働者) 46.4%
男女賃金差異(正規) 55.0%
男女賃金差異(非正規) 28.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育訓練費(17,152千円)、退職率(6.7%)、全社員に占める女性社員の割合(31.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 仕入価格の値上げ


原材料価格の高騰等により仕入先からの値上げ圧力が高まった際、顧客への価格転嫁が困難な場合、利益率が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、価格変動の小さい商品群の充実やシェア拡大による交渉力強化等の対策を講じています。

(2) 医療行政の動向


医療費抑制策の一環として保険償還価格の引き下げ傾向が継続しており、医療施設の購買方針や販売価格に直結するため、業績に影響を与える可能性があります。独自商品の開発・販売や、償還価格に左右されないビジネスの開拓を進めています。

(3) 競争環境(商流変更、新技術等)


医療機器業界の競争激化や新技術の台頭により、同社の競争力が低下した場合、取引関係の変更や既存商品の使用頻度低下を招く恐れがあります。自社企画品による差別化や最新技術情報の収集、顧客関係の強化に努めています。

(4) 仕入・供給リスク


主要仕入先の買収・合併による契約解除や、サプライチェーンの停滞による商品供給遅延が発生した場合、事業活動に支障が出る可能性があります。複数仕入先の確保や取引先の信用調査、製造計画の管理等によりリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。