サガミホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サガミホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミアに上場し、「和食麺処サガミ」などの飲食店経営およびFC店舗への食材供給・経営指導を主力事業としています。直近の業績は、売上高350億円、経常利益21億円と増収増益を達成しました。既存店の売上回復や訪日客需要の取り込みが進み、コスト増を吸収して堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社サガミホールディングス の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サガミホールディングスってどんな会社?


和食麺類レストランチェーンを全国展開する企業です。「和食麺処サガミ」を中心に、地域密着型の店舗運営と海外展開を進めています。

(1) 会社概要


1970年にサガミチェーンとして設立され、1991年に名証二部、1997年に東証・名証一部へ上場しました。2014年に味の民芸フードサービスを子会社化し、事業基盤を拡大しています。2018年には持株会社体制へ移行し、現社名へ変更しました。和食麺類を核としたブランド展開を推進しています。

同グループの従業員数は連結542名、単体9名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は製粉等の食品素材を扱う昭和産業、第3位は飲料メーカーのアサヒビールです。昭和産業とは食材仕入等の取引関係があり、事業パートナーとしての側面も持ち合わせています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.46%
昭和産業 3.94%
アサヒビール 3.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は大西尚真氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大西尚真 代表取締役社長 1982年入社。サガミレストランツ代表取締役社長、味の民芸フードサービス代表取締役社長等を歴任。2021年より現職。
鷲津年春 取締役専務執行役員 1985年入社。サガミマネジメントサポート代表取締役社長、サガミレストランツ代表取締役社長等を歴任。2023年より現職。
三ツ口質 取締役常務執行役員 1988年入社。サガミレストランツ監査役、サガミフード代表取締役社長等を歴任。2023年より現職。
中島康文 取締役執行役員 1996年入社。経営企画部情報戦略次長、サガミマネジメントサポート代表取締役社長等を歴任。2023年より現職。
川口奈央 取締役執行役員 1997年明星外食事業(現味の民芸フードサービス)入社。同社第一営業部部長等を経て、2023年より現職。
長谷川喜昭 取締役常勤監査等委員 1984年入社。サガミインターナショナル代表取締役社長、サガミフード代表取締役社長等を歴任。2023年より現職。


社外取締役は、有馬祥子(三菱UFJリサーチ&コンサルティングマネージャー)、遠山眞樹(ティー・サポート代表取締役)、神谷俊一(弁護士)、村上貴子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「外食事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 和食麺処サガミ部門


和食麺類店「和食麺処サガミ」を経営し、そば・うどん・みそ煮込などの麺料理を提供しています。主にファミリー層やシニア層を顧客とし、慶事や法事などの会食需要にも対応するフルサービス型のレストランです。

収益は、来店客からの飲食代金により構成されています。運営は主にサガミレストランツが行っています。全店舗に石臼を設置し、毎日店内で製麺する「挽きたて・打ちたて・湯がきたて」のそばを提供するなど、商品価値の向上に努めています。

(2) 味の民芸部門


手延べうどんと和食を提供する「味の民芸」等の店舗経営を行っています。手延べ製法によるうどんや「黄金だし」を特徴とし、関東地方を中心に展開しています。また、フランチャイズ店舗への材料提供や経営指導も行っています。

収益は、直営店の飲食代金のほか、加盟店からのロイヤリティや食材売上等が含まれます。運営は味の民芸フードサービスが行っています。また、手延べうどん「水山」などの小型店舗展開も進めています。

(3) どんどん庵部門


セルフサービス方式の麺類店「どんどん庵」を経営しています。低価格とスピーディーな提供を特徴とし、日常的な食事需要に対応しています。顧客が好みの麺や具材を選べるスタイルで、東海地方を中心に展開しています。

収益は、直営店舗での飲食代金およびフランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入等からなります。運営はサガミレストランツが行っています。効率的な店舗運営により、リーズナブルな価格設定を実現しています。

(4) その他部門


セルフそば専門店「二代目長助」や、海外での飲食店経営を行っています。「二代目長助」は十割そばを手頃な価格で提供する業態です。海外ではベトナムやイタリアなどで店舗展開やパートナーシップ構築を進めています。

収益は、各店舗での飲食売上等から構成されます。運営はサガミレストランツ、サガミインターナショナル、SINGAPORE SAGAMI PTE.LTD.、VIETNAM SAGAMI JOINT STOCK COMPANYなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に回復・成長傾向にあります。特に2023年3月期以降は売上高の増加が顕著で、利益面でも安定して黒字を計上しています。2025年3月期には売上高350億円、経常利益21億円となり、コロナ禍からの回復を超えて成長軌道に乗っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 203億円 213億円 264億円 310億円 350億円
経常利益 -16億円 23億円 16億円 17億円 21億円
利益率(%) -8.0% 10.6% 6.0% 5.6% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 5億円 1億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。原価率の上昇を抑制しつつ、売上総利益率は約68%の水準を維持または向上させています。営業利益率は5%台後半まで改善しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 310億円 350億円
売上総利益 209億円 238億円
売上総利益率(%) 67.5% 68.1%
営業利益 17億円 21億円
営業利益率(%) 5.3% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が111億円(構成比51%)、賃借料が25億円(同11%)を占めています。人件費が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


主力の和食麺処サガミ部門が売上高の約7割を占め、順調に成長しています。味の民芸部門も増収となっており、グループ全体の成長に寄与しています。その他の部門では、業態転換や海外展開などの影響により売上が変動していますが、全体としては増収基調を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
和食麺処サガミ部門 212億円 249億円
味の民芸部門 66億円 72億円
どんどん庵部門 10億円 10億円
その他の部門 22億円 19億円
連結(合計) 310億円 350億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

翌連結会計年度は、原材料費やエネルギーコストの上昇により、営業活動で得られるキャッシュ・フローは減少する見込みです。店舗の新規出店や既存店への設備投資を積極的に行う計画のため、投資活動による資金需要は増加する見通しです。借入金の返済などの支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは減少する見込みです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 22億円
投資CF -38億円 -27億円
財務CF -13億円 -12億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、「食」と「職」の楽しさを創造し、地域社会に貢献します~すべてはみんなのゆたかさと笑顔のために~」を経営理念として掲げています。株主、顧客、従業員、取引先など全てのステークホルダーに繋がる取り組みを経営の基本としています。

(2) 企業文化


グループビジョンとして「No.1 Noodle Restaurant Company」を掲げ、各店舗が地域で一番店になるような活力溢れる企業集団を目指しています。規模の追求だけでなく、地道なNo.1を目指すことで、「そば」「なごやめし」「手延べうどん」といった和食文化を世界に広げることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を最終年度とする中期経営計画「Management Plan 2025『Together』」を推進しています。2025年度の目標値を見直し、引き続き重要な経営指標として位置付けています。

* 2026年3月期 売上高:370億円
* 2026年3月期 営業利益:22.5億円
* 2026年3月期 経常利益:23億円
* 2026年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:12.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


「持続可能性の追求」と「再成長の実現」をテーマに掲げています。既存事業ではポジショニングの再定義と見直しを行い、「そば」などの強みを活かした展開を加速します。国内では個食ニーズに対応した小型店舗モデルの確立と展開を促進し、海外ではイタリアでのFC展開やベトナム事業の強化に取り組む方針です。また、省力化設備の導入等による生産性向上も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人財こそ最大の経営資源であると考え、「従業員の物心両面のゆたかさ」の実現を目指しています。多様な人材が活躍できるよう、パートナーからの社員登用や女性活躍推進、外国人社員向け研修などを実施しています。また、労働環境改善に向け、省力化設備の導入や長時間労働の抑制、休日取得の促進など、従業員が意欲的に働ける環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 52.1歳 32.4年 7,134,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 48.4%
男女賃金差異(正規雇用) 72.6%
男女賃金差異(非正規) 126.2%


※男性育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定等に基づき算出しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(68.7%)、外国人比率(1.3%)、中途採用者比率(33.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 売上高の変動について


飲食店の経営を主要事業としているため、大規模な自然災害、疫病、異常気象などにより消費者の外食動機が大幅に減少した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 出店について


和食・麺類レストランのチェーン展開を行っていますが、適切な出店用地が確保できない場合や、出店地周辺の環境変化、競合店の出店等により立地環境が大きく変化した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 仕入の変動要因について


食材の仕入れにおいて、疫病や自然災害、為替変動等による価格高騰や、供給量の変動が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、複数ルートの確保や仕入先との連携強化でリスク最小化に努めています。

(4) 生産の変動要因について


冷凍保存麺やかえし類を製造する生産拠点において、自然災害や食品の安全性に関する問題が発生し、生産活動や店舗への供給に支障をきたした場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。