※本記事は、株式会社ショクブン の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ショクブンってどんな会社?
食材宅配サービスのパイオニアとして、東海・関西エリアを中心に家庭へ夕食材料を届ける食品企業です。
■(1) 会社概要
1977年に夕食材料の宅配を目的としてヨシケイ愛知を設立し、1987年に現在の商号へ変更しました。2001年に東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第二部へ上場を果たしています。2017年には神明(現・神明ホールディングス)と資本業務提携を行い、2021年の第三者割当増資により同社の連結子会社となりました。現在は神明グループの一員として事業を展開しています。
同社の従業員数は連結・単体ともに326名です。筆頭株主は事業会社で親会社の神明ホールディングス(50.43%)で、第2位は従業員等で構成されるショクブン取引先持株会(7.70%)、第3位は事業会社の愛知スズキ販売(0.59%)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 神明ホールディングス | 50.43% |
| ショクブン取引先持株会 | 7.70% |
| 愛知スズキ販売 | 0.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は吉田朋春氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉田 朋 春 | 代表取締役社長 | 住友銀行、ロプロ、丸和運輸機関を経て、2017年に神明(現神明ホールディングス)入社。同社上席執行役員などを経て2021年6月より現職。 |
| 加 藤 康 洋 | 取締役事業推進本部長兼購買調達部長 | 1988年同社入社。仕入製造部長、製造購買本部長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 寺 地 孝 之 | 取締役 | 関西学院大学商学部教授。アンカーアソシエイツ代表取締役などを務め、2023年6月より現職。 |
| 林 一 伸 | 取締役(監査等委員) | 公認会計士。林会計事務所入所後、2007年に同社監査役に就任。2016年6月より現職。 |
社外取締役は、恒川穣(トランコムシニアアドバイザー)、荒木正史(マック・アドバイザーズ代表取締役)、永井聖子(SkyDrive入社)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 食品事業
一般家庭向けに夕食材料セット等の食材を宅配により販売しています。主なエリアは中部圏(愛知、岐阜、三重)と関西圏(滋賀、京都、大阪)です。独自の総菜宅配システムを確立しており、販売員が配送・販売・集金を一体で行う体制をとっています。また、フランチャイズ加盟会社へのメニュー企画提供や経営指導も行っています。
収益は、主に一般消費者への食材販売代金から得ています。また、フランチャイズ加盟会社からのロイヤリティ収入もあります。運営は、小売・FC本部機能を担うショクブンと、メニュー開発や通販・卸売を行う子会社の食文化研究所が行っています。食文化研究所は食料品や雑貨の卸売も営んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期の業績は以下の通りです。売上高は60億円台で推移していましたが、直近では減少傾向にあります。利益面では、2023年3月期までは黒字を維持していましたが、2024年3月期以降は当期純損失を計上するなど厳しい状況が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 68億円 | 69億円 | 70億円 | 64億円 | 61億円 |
| 経常利益 | 1.9億円 | 2.5億円 | 1.9億円 | 0.5億円 | 0.0億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 3.7% | 2.7% | 0.8% | 0.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 2.2億円 | 2.7億円 | -0.2億円 | -0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しました。原材料価格の高騰などが響き、売上総利益率も低下しています。販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収の影響を補いきれず、営業利益は縮小しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 64億円 | 61億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.0% | 37.2% |
| 営業利益 | 0.5億円 | 0.2億円 |
| 営業利益率(%) | 0.8% | 0.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比48%)、福利厚生費が2億円(同9%)を占めています。売上原価においては、具体的な内訳データはありませんが、原材料や包装資材、油燃料費の高騰により原価率が上昇しています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、商品別の販売実績にて動向を確認します。主力であるメニュー商品は、商品性を高める施策を実施したものの、消費者の節約意識の高まり等により減収となりました。特売商品も同様に前年を下回る結果となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| メニュー商品 | 56億円 | 56億円 |
| 特売商品 | 5億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 61億円 | 61億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ショクブン社の当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度末に比べ減少しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上等により増加しましたが、退職給付に係る資産の増加や未払金の減少等により、前連結会計年度に比べて伸び悩みました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済やリース債務の返済等により減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.2億円 | 0.1億円 |
| 投資CF | -0.6億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | -3.3億円 | -2.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は社是として「私たちは大地の恵みに感謝をし、食文化と健康づくりに貢献します。」を掲げています。また、経営の基本として「安全で安心な食材」により顧客に「健康とおいしさ」を届け、常に顧客第一で満足度の高いサービスを提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
役員および社員が一体となり、感謝の気持ちを忘れず、前向きで明るい企業風土づくりに励み行動することを重視しています。企業価値を高めることによって、株主や社会に貢献する企業として永久に存在し続けることが重要であると認識しています。
■(3) 経営計画・目標
株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとして位置づけています。これを高めるために、売上高・収益基盤・財務基盤の強化を図ることを目標としています。具体的な数値目標としての記載はありませんが、売上高の増加や利益率の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「新鮮食材の宅配」を企業概念とし、個人客向け宅配を柱に食品販売の総合企業としての展開を図ります。既存エリアでの配送効率や販売体制強化による販路拡大、魅力的なメニュー充実に取り組みます。また、同業他社との提携やPB商品強化、関西地区への拡大など新規事業にも挑戦します。
* 事業構造の大幅な見直しによる「稼ぐ力」の醸成
* 製造現場でのシフト制・多能工化導入による作業工程見直しと自動化
* 配送現場での効率化システムの活用と「自由な働き方」への対応
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材は主に中途採用で確保してきましたが、中長期戦略に基づき新卒採用も開始しています。採用窓口を拡大し、多様な経験・スキルを持つ人材の確保に努めています。人材育成ではカリキュラムに沿った研修を実施し、多様な能力を活用できる環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 49.1歳 | 12.4年 | 3,444,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.5% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 61.4% |
※男性育児休業取得率の「-」は対象者がいなかったことを示します。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(目標:2026年3月までに26.5%)、女性労働者の平均勤続年数(目標:2026年3月までに13年、実績:12.3年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合について
同社の事業は「総菜宅配業界」ですが、実質的には「生鮮食品類の小売事業」です。そのため、ファミリーレストランや持ち帰り総菜店、スーパーマーケットなど幅広い業態と競合します。品質や価格、サービスレベルで上回る競合が出現し顧客数が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 販売人員の確保と育成について
顧客数増加には、販売ルートの拡大とそれに伴う適正規模の販売社員の確保が不可欠です。人材確保が困難な場合や、商品開発・宅配オペレーション構築が進まない場合、業容拡大や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は求人強化や研修、システム活用による効率化に取り組んでいます。
■(3) 生鮮野菜、精肉及び魚介類等の調達について
主要仕入品である野菜、精肉、魚介類の調達状況が業績に影響します。異常気象や災害による野菜相場の変動、飼料価格高騰や疫病等による食肉・魚介類の価格変動、また災害による調達困難などが生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 借入金の依存度について
必要資金を金融機関からの借入で調達しているため、総資産に占める有利子負債の割合が高い水準(39.6%)にあります。有利子負債は減少傾向にありますが、金利情勢や金融市場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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