※本記事は、株式会社サックスバー ホールディングスの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サックスバー ホールディングスってどんな会社?
国内に多様な店舗網を持ち、メイドインジャパンの鞄や服飾雑貨を提供する専門小売企業グループです。
■(1) 会社概要
サックスバー ホールディングスの起源は1938年開業の荒物雑貨店に遡ります。1974年に東京デリカを設立し、1994年に店頭登録を行いました。2014年には持株会社体制へ移行し、現在の社名へ変更しています。近年では、2019年に三香堂、2022年にギアーズジャムを完全子会社化するなど、事業領域の拡大を進めています。
同社グループの従業員数は連結で590名、単体で28名です。筆頭株主は創業者や代表取締役等の資産管理会社であるディーアンドケーで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位も創業家関連の資産管理会社であるエムケー興産となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ディーアンドケー | 19.73% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 7.40% |
| エムケー興産 | 6.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は木山剛史氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木山剛史 | 代表取締役社長執行役員 | 1990年同社入社。第3販売部長、常務取締役などを経て、2012年に代表取締役社長に就任。現在はサックスバー ホールディングスおよび東京デリカの代表取締役社長執行役員を務める。 |
| 木山茂年 | 代表取締役会長 | 三井造船入社後、丸二商会(前身)を経て1974年に東京デリカを設立し代表取締役に就任。2012年にサックスバー ホールディングス代表取締役会長に就任。東京デリカ代表取締役会長も兼任。 |
| 山田陽 | 取締役専務執行役員 | 1983年入社。社長室長、管理部長を経て、2004年に常務取締役へ就任。現在はサックスバー ホールディングスおよび東京デリカの取締役専務執行役員を務める。 |
| 小島康弘 | 取締役常務執行役員 | 1995年入社。第3販売部長等を経て、現在はサックスバー ホールディングスおよび東京デリカの取締役常務執行役員兼東日本統括部長兼商品部統括部長を務める。 |
| 田代博泰 | 取締役執行役員 | 1997年入社。第5販売部長等を経て、現在はサックスバー ホールディングスおよび東京デリカの取締役執行役員兼西日本統括部長兼第5販売部長を務める。 |
社外取締役は、丸山文夫(丸山文夫税理士事務所所長)、遠藤恭彦(元みずほ証券常務執行役員)、水野純(元パスポート代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、報告セグメントとして「鞄・袋物を核とする商品販売」事業を展開しています。
■(1) 小売事業
「SAC'S BAR」や「GRAN SAC'S」「日乃本帆布」などのショップブランドを通じ、メイドインジャパンの鞄からトレンド感のある服飾雑貨やアクセサリーまで幅広い商品を一般消費者に提供しています。全国のショッピングセンターや駅ビルなどにテナント出店するほか、自社ECサイトやECモールでの販売も展開しています。
主な収益源は、直営店舗およびオンラインストアを通じた一般消費者への商品販売代金です。主力となる小売店舗の運営は主に東京デリカが行うほか、帆布製バッグを扱う三香堂、メンズバッグや雑貨をリーズナブルな価格帯で扱うギアーズジャムが、それぞれのブランドで小売事業を展開しています。
■(2) 製造・卸売事業
メンズバッグやトラベルバッグなどの機能性・デザイン性に優れた自社企画商品や、有力ブランド・キャラクター等とのコラボレーション商品の企画および製造を行っています。また、自社グループの小売店舗のほか、全国の大型量販店や専門店、東南アジアをはじめとする海外市場への商品の卸売も展開しています。
商品の企画・製造は主にアイシン通商や三香堂が行っています。卸売販売については、アイシン通商から商品を仕入れたスカイルが、東京デリカや三香堂といったグループ内の小売会社や外部の大型量販店等に対して販売し、代金を受け取るビジネスモデルとなっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、新型コロナウイルスの影響を受けた2022年3月期の減収・赤字決算から、その後は行動制限の緩和やインバウンド需要の回復により黒字転換と増収増益基調が続きました。一方、当期は生活防衛意識の高まりによる国内需要の弱含みなどから、減収減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 368億円 | 472億円 | 521億円 | 523億円 | 513億円 |
| 経常利益 | -8億円 | 27億円 | 38億円 | 41億円 | 33億円 |
| 利益率(%) | -2.1% | 5.6% | 7.4% | 7.9% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 5億円 | 4億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
当期は売上高の減少に加えて、粗利益率の低い商品の販売比率増加や販売促進策などにより売上総利益率が低下しました。さらに、人件費等の上昇により販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期比で減益となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 523億円 | 513億円 |
| 売上総利益 | 260億円 | 254億円 |
| 売上総利益率(%) | 49.7% | 49.5% |
| 営業利益 | 40億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 7.7% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が73億円(構成比33%)、店舗などの賃借料が65億円(同29%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「鞄・袋物を核とする商品販売」の単一セグメントであるため、事業区分別の詳細な利益情報は開示されていません。ただし、販売チャネル別に見ると、キャラクター雑貨などの販売が好調に推移した一方、高価格帯商品の値上げによる販売点数減や不採算店舗の退店が影響し、全体として売上高は減少しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鞄・袋物を核とする商品販売 | 523億円 | 513億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で安定的に資金を生み出し、その資金の範囲内で設備投資や借入金の返済、株主還元などの財務活動を行っている健全な状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 27億円 |
| 投資CF | -4億円 | -19億円 |
| 財務CF | -11億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%でプライム市場の平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.1%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「感動クリエーションカンパニー」を企業理念として掲げています。お客様に感動を提供し続けることを事業活動の根幹とし、サービス・商品・店舗体験を通じて新たな価値を提供することで、お客様、株主、取引先、従業員をはじめとするすべてのステークホルダーに感動をもたらし、持続的成長と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
企業理念の実現に向け、「感動接客」「感動商品」「感動売場」の3つをミッションとして定めています。お客様一人ひとりのライフスタイルに寄り添う姿勢を大切にし、ファッショングッズ業界の常識にとらわれない新しいビジネスモデルの構築に向けた「チャレンジ&チェンジ」をテーマに、挑戦を促す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、売上高、営業利益、売上高営業利益率、自己資本利益率(ROE)を重要な経営指標と位置づけています。中長期的には、安定的な収益性と資本効率の向上を目指し、以下の目標を掲げています。
* 営業利益率:8%以上
* 自己資本利益率(ROE):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の競争力向上と新たな事業領域への進出を進めるとともに、東南アジアをはじめとする海外市場への展開を加速し、業容の拡大を図ります。
* プレミアムストアおよびニュースタンダードストアの店舗価値向上
* 洋菓子などを扱う新業態「キャラトラ&スイーツ」の展開
* PBやキャラクターコラボ商品の海外卸売事業の強化
* 商品企画やEC事業、マーケティング部門を統合した「クリエイティブセンター」の開設
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは「人財」を重要な経営基盤と位置づけ、従業員を「商人(あきんど)」として育成する方針を掲げています。競争力の源泉である各店仕入(ショップセレクトシステム)と感動接客を支えるため、OJTを中心とした販売教育や管理職育成に注力しています。また、健康経営や柔軟な働き方ができる職場環境の整備も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.9歳 | 18.9年 | 6,877,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.7% |
| 男性育休取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 105.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内市場の動向
少子高齢化や実質賃金の伸び悩み、生活防衛志向の高まりなどにより、鞄や雑貨などへの支出が長期的には縮小するリスクがあります。これに対し、PB(プライベートブランド)の強化やターゲット層の拡大、EC事業および海外市場への展開により、収益基盤の多角化を進めてリスクの低減に努めています。
■(2) ファッション・ライフスタイルの変化
取扱商品が流行やトレンドの影響を強く受けるため、消費者の嗜好の多様化を捉えきれない場合、販売不振や滞留在庫の発生が生じるリスクがあります。販売動向データの活用や部門間連携による商品開発、ブランドポートフォリオの多様化により、流行変化に伴うリスクの緩和を図っています。
■(3) 出店政策および店舗ポートフォリオ
ショッピングセンターなどの商業施設へのテナント出店を中心としているため、条件に合う物件の不足や出店後の売上未達が収益に影響するリスクがあります。出店・退店基準の明確化や定期的な店舗ポートフォリオの見直しに加え、EC等の多様な販売チャネルを活用することでリスクの低減に努めています。



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