サックスバーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サックスバーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、鞄・袋物等の専門店の経営管理等を行っています。主要事業会社である東京デリカを中心に全国の商業施設等に店舗を展開し、PB商品の開発も強化しています。直近の連結業績は、売上高523億円(前期比0.4%増)、経常利益41億円(同7.3%増)と増収増益でした。


※本記事は、株式会社サックスバー ホールディングス の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サックスバー ホールディングスってどんな会社?

同社は、鞄・袋物、財布・雑貨類の専門店を展開する東京デリカ等を傘下に持つ持株会社です。「SAC'S BAR」などのブランドで全国展開しています。

(1) 会社概要

1974年に株式会社東京デリカとして設立され、1994年に店頭登録、2004年にジャスダックへ上場しました。2012年に東証一部銘柄指定を受け、2014年には持株会社体制へ移行して現商号に変更しました。その後もM&Aによりアイシン通商や三香堂などを子会社化し、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結582名、単体26名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるディーアンドケーで、第2位・第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家およびその資産管理会社が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
ディーアンドケー 19.73%
日本マスタートラスト信託銀行 9.10%
日本カストディ銀行 6.99%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は木山剛史氏です。社外取締役比率は約36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
木山剛史 代表取締役社長 1990年同社入社。2012年より代表取締役社長。東京デリカ、三香堂、ギアーズジャムの代表取締役などを兼任し、グループ経営を牽引。
木山茂年 代表取締役会長 1974年同社設立とともに代表取締役に就任。2012年より代表取締役会長。東京デリカ代表取締役会長も兼任。
山田陽 常務取締役管理部長 1983年同社入社。1992年より管理部長。2004年より常務取締役。アイシン通商、スカイル等の取締役も兼任。
田村純男 取締役総務部長 1980年同社入社。2009年より総務部長。2015年より取締役。東京デリカ取締役も兼任。
小島康弘 取締役 1995年同社入社。販売部、商品部を経て2015年より取締役。東京デリカ取締役東日本統括部長兼商品部統括部長を兼任。
田代博泰 取締役 1997年同社入社。販売部を経て2019年より取締役。東京デリカ取締役西日本統括部長兼第5販売部長を兼任。
嶋村毅 取締役監査等委員(常勤) 1979年同社入社。販売部長を経て2021年より常勤監査役。2023年より取締役(常勤監査等委員)。


社外取締役は、丸山文夫(税理士)、苅部世津子(セツプランニング主宰)、遠藤恭彦(元みずほ証券常務執行役員)、水野純(パスポートライフ代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、鞄・袋物を核とする「商品販売」事業を展開しています。

(1) 小売事業

鞄・袋物、財布、雑貨類の小売販売を行っています。主力の「SAC'S BAR」「GRAN SAC'S」など多様なブランドで、全国のショッピングセンターや駅ビル等にテナント出店しています。顧客層や地域特性に合わせた店舗展開を行い、PB(プライベートブランド)商品やNPB(ナショナルプライベートブランド)商品の販売にも注力しています。

収益は、一般消費者への商品販売による代金です。運営は主に株式会社東京デリカが担い、帆布製バッグを扱う株式会社三香堂や、メンズバッグ・雑貨を扱う株式会社ギアーズジャムもそれぞれのブランドで店舗運営を行っています。EC事業では、自社サイト等を通じて商品を販売しています。

(2) 製造・卸売事業

メンズバッグやトラベルバッグの企画・製造および卸売を行っています。機能性やデザイン性に優れた商品開発を進めるとともに、有力ブランドとの提携により市場競争力の高い商品を提供しています。また、小売事業を行うグループ会社や大型量販店等への卸売販売も行っています。

収益は、グループ会社や外部の大型量販店等への商品卸売による販売代金です。製造部門はアイシン通商株式会社が担い、卸売部門は株式会社スカイル(旧ロジェールジャパン株式会社)が担当しています。グループ内での製販一貫体制の強化に寄与しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は回復傾向にあります。特に2023年3月期以降は売上高が大幅に増加し、利益面でも経常利益および当期利益が黒字転換して拡大しています。2025年3月期は増収増益を維持し、利益率は過去5期で最高水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 348億円 368億円 472億円 521億円 523億円
経常利益 -18億円 -8億円 27億円 38億円 41億円
利益率(%) -5.3% -2.1% 5.6% 7.4% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -18億円 -9億円 13億円 25億円 25億円

(2) 損益計算書

売上高は微増ながら、売上総利益率の改善や販管費の抑制により、各利益段階で増益となりました。営業利益率は前期から向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 521億円 523億円
売上総利益 259億円 260億円
売上総利益率(%) 49.6% 49.7%
営業利益 38億円 40億円
営業利益率(%) 7.2% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が71億円(構成比32%)、賃借料が65億円(同30%)を占めています。人件費と店舗賃料が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益

同社は単一セグメントですが、品目別の売上動向を見ると、PB(プライベートブランド)およびNPB(ナショナルプライベートブランド)が好調で、売上が伸長しました。一方、ハンドバッグやインポートバッグは円安や消費動向の変化等の影響を受け、売上が減少しました。全体としては微増収を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ハンドバッグ 21億円 17億円
カジュアルバッグ 22億円 21億円
インポートバッグ 24億円 19億円
財布・雑貨 118億円 117億円
メンズ・トラベルバッグ 212億円 211億円
PB+NPB 123億円 135億円
不動産賃貸収入 2億円 2億円
連結(合計) 521億円 523億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

サックスバーホールディングスは、手元資金を潤沢に確保し、安定した財務基盤を構築しています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少がプラス要因となった一方、棚卸資産の増加や法人税等の支払いが支出要因となりました。投資活動では、新規出店や改装に伴う設備投資が主な支出要因となりました。財務活動では、リース債務の返済や配当金の支払いが支出要因となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 49億円 31億円
投資CF -5億円 -4億円
財務CF -27億円 -11億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは「感動クリエーションカンパニー」を標榜しています。メーカー分野では「感動する商品」の企画・製造に取り組み、ファッショングッズリテール分野では、最高レベルの商品セレクトや店舗環境、接客を通じて、顧客に「感動体験」を提供することを使命としています。

(2) 企業文化

企業の最大の資本は人であり、従業員を「人財」かつ「商人(あきんど)」と捉えています。「商人」とは、仲間と共に周囲を巻き込み、創意工夫をして、商いを通じて関わるすべての人に感動体験を届ける者と定義されています。この考えのもと、現場でのOJTや独自の仕入れシステムを通じた人材育成を重視しています。

(3) 経営計画・目標

「2025年3月期~2027年3月期 中期経営計画」を策定しており、最終年度となる2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:587億4,900万円
* 営業利益:48億8,800万円
* 売上高営業利益率:8.3%
* 自己資本利益率(ROE):9.4%

(4) 成長戦略と重点施策

「ニュー・センセーション」をテーマに、リアル店舗の再編や新市場の開拓を進めます。「プレミアムストアグループ」と「ニュースタンダードグループ」への店舗2グループ化、キャラクター商品とのコラボ強化による売上拡大、SNS等を活用した若年層へのアプローチを重点施策としています。また、M&Aによるメーカー機能の拡充や周辺業界への進出も図ります。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

小売業を「人間産業」と捉え、従業員を「人財」として育成する方針です。現場でのOJTを通じた販売教育を重視し、各店が商品を仕入れる「ショップセレクトシステム」により市場変化に対応できる人材を育てています。また、年齢や属性に関わらず平等な登用機会を提供し、新人事評価制度の導入等により能力発揮を促進する環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 53.8歳 20.0年 6,552,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.8%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 77.5%
男女賃金差異(正規雇用) 99.8%
男女賃金差異(非正規) 83.6%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店政策について

ショッピングセンター等へのテナント出店を行っており、希望条件に合う物件数の変動や、出店後の業績不振による退店数が計画と乖離した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 流行について

販売するバッグや雑貨類は流行の影響を受けやすいため、流行の変化により売上が低下したり、在庫が陳腐化して損失が発生したりする可能性があります。

(3) 敷金及び保証金について

テナント出店に際してデベロッパー等に敷金・保証金を差し入れていますが、差入先の倒産等によりこれらが回収できなくなる可能性があります。

(4) 売上債権について

多くの店舗で売上金をデベロッパー等に預託しているため、預託先が倒産した場合、売上金(デベロッパー預け金)を回収できなくなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。