アトム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アトム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アトム(東証スタンダード・名証メイン市場)は、ステーキ、回転寿司、焼肉などの飲食店を直営・フランチャイズ展開する企業です。直近の業績は、居酒屋等の事業譲渡や不採算店舗の整理により減収となり、原材料高や人件費上昇の影響も受けて最終赤字を計上するなど、減収減益の厳しいトレンドとなっています。


※本記事は、株式会社アトムの有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アトムってどんな会社?


アトムは、ステーキや回転寿司などの飲食店を多展開するコロワイドグループの外食チェーン企業です。

(1) 会社概要


1972年に元禄寿司(現アトム)として設立され、1998年に名証二部、2000年に東証二部へ上場しました。その後、焼肉や洋食業態へ事業を拡大し、2005年にコロワイドの傘下に入りました。近年はレストラン事業への集中を進め、2025年には居酒屋事業やカラオケ事業をグループ企業へ譲渡しています。

従業員数は単体で550名です。筆頭株主は親会社のコロワイドで、議決権の約41%を保有しています。第2位は信託業務を行う金融機関のクライアント口座、第3位は取引金融機関である足利銀行となっており、親会社との強固な資本関係を基盤としつつ、金融機関からの安定的な支援を受ける株主構成となっています。

氏名 持株比率
コロワイド 41.19%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 0.97%
足利銀行 0.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性4名の計8名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は植田剛史氏が務めています。社外取締役比率は50.0%(8名中4名)です。

氏名 役職 主な経歴
植田剛史 代表取締役社長 コロワイド取締役、ダブリューピィージャパン代表取締役社長等を経て2025年6月より現職。
佐藤真一郎 取締役 ケイテック専務取締役等を経て2022年7月に同社へ入社。2024年6月より現職。
三平昌弘 取締役 レインズインターナショナル等を経てコロワイドへ転籍。2025年6月より現職。


社外取締役は、池田清華(Rita Brands代表取締役社長)、大藏さいら(大藏さいら公認会計士事務所所長)、山崎操(山崎公認会計士事務所代表)、熊王斉子(島村法律会計事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レストラン事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) レストラン事業


「ステーキ宮」や「にぎりの徳兵衛」「カルビ大将」などの洋食、寿司、焼肉業態を中心に、多彩な外食チェーン店舗を東北から関西地域で展開しています。幅広い顧客層に対して、食の楽しさや安全・安心な料理といった体験価値を提供しています。

収益源は、各店舗を訪れる一般顧客からの飲食代金です。店舗運営は親会社であるアトムが直営店として主体的に実施しており、地域特性に応じた商品やサービスの展開を通じて、ローカルチェーンとしての競争優位性確立と収益の獲得を図っています。

(2) その他事業


直営店展開のノウハウを活かし、アトムが展開する外食ブランドを用いたフランチャイズ事業などを手掛けています。独立を目指すオーナーや既存の飲食事業者に対して、店舗運営の仕組みやブランド力を提供しています。

収益源は、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や加盟金などです。事業運営はアトムが行っており、直営事業と並行してフランチャイズネットワークを拡大することで、資本負担を抑えながらブランドの認知度向上と安定的な収益基盤の構築を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はコロナ禍からの回復により一時増収傾向にありましたが、直近は事業譲渡や不採算店舗の閉鎖などにより減収となっています。利益面では、原材料価格や光熱費の高騰が重しとなり、経常赤字が続く厳しい状況です。最終利益も店舗の減損損失計上などが影響し、赤字を計上する期が多くなっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 310.8億円 352.4億円 369.5億円 354.8億円 304.1億円
経常利益 -9.8億円 -11.3億円 0.1億円 -6.4億円 -0.2億円
利益率(%) -3.1% -3.2% 0.0% -1.8% -0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.5億円 -21.7億円 -14.7億円 5.3億円 -15.1億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益も減少しています。一方で、不採算店舗の整理や事業譲渡による固定費削減効果に加え、徹底したコストコントロールを進めた結果、営業利益は黒字転換を果たしており、収益構造の改善が進みつつある状況が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 354.8億円 304.1億円
売上総利益 226.5億円 188.7億円
売上総利益率(%) 63.8% 62.1%
営業利益 -6.7億円 0.3億円
営業利益率(%) -1.9% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他の販売費が65.1億円(構成比35%)、その他の人件費が57.5億円(同31%)を占めています。また、売上原価は全額が食材売上原価の115.4億円(構成比100%)となっています。

(3) セグメント収益


当期は居酒屋事業およびカラオケ事業をグループ会社へ譲渡したことに伴い、レストラン事業の単一セグメントへ移行しました。これにより、前期の各事業の売上が当期は計上されず、全体の減収要因となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
レストラン事業 301.5億円 -
居酒屋事業 36.7億円 -
カラオケ事業 16.0億円 -
その他事業 0.6億円 -
連結(合計) 354.8億円 304.1億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる「末期型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -7.8億円 -4.6億円
投資CF 37.5億円 -5.0億円
財務CF -9.1億円 -21.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-27.4%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も25.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「すべてはお客様と従業員のために」という企業理念を掲げています。飲食業としての原点回帰を基本方針とし、食の安全・安心を事業活動の基盤と位置づけながら、多様な料理と心地よいサービスの提供を通じて、お客様に体験価値を創出することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、「食を通じて地域に貢献する」というローカルチェーンとしての役割を重視する文化を持っています。また、人材を競争力の源泉と捉え、「働く仲間の成長と多様性の尊重」をマテリアリティ(重要課題)の一つに掲げ、多様な人材が活躍できる働きがいのある職場環境づくりを重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は環境への配慮に関する目標として、2030年までにCO2排出量を2020年度対比で原単位50%削減することを掲げています。また、人材の多様性確保に向けて、2026年度までに女性社員比率を30%、女性管理職比率を20%に引き上げる数値目標を設定し、各種施策を推進しています。

* 2030年までにCO2排出量を原単位50%削減(2020年度対比)
* 2026年度までに女性社員比率を30%へ向上
* 2026年度までに女性管理職比率を20%へ向上

(4) 成長戦略と重点施策


収益基盤の強化と持続的成長の確立に向け、レストラン事業の質的向上に取り組んでいます。価格依存を脱却する付加価値型の業態づくりや、新規・複合業態の開発による店舗ポートフォリオの最適化を進めるとともに、継続的なコストコントロールを通じて強固な収益基盤の構築を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員一人ひとりが働きがいを感じ成長することが企業価値の向上に繋がると考え、自律的な自己成長を促す人材育成を行っています。また、多様な人材がライフステージに合わせて働き方を選択できるよう、「フレキシブル社員制度」などの導入を通じて、働きやすい社内環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 12.0年 4,625,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 125.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規雇用) 76.9%
男女賃金差異(パート・有期) 111.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全性と食品事故リスク


飲食事業の基盤となる食材の安全性確保や衛生管理に問題が生じ、食中毒などの事故が発生した場合、ブランドイメージの低下や社会的信用の失墜、営業停止処分などにより、同社の経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 外食業界の動向と競合激化


消費者の節約志向や価値選別消費の進行、ライフスタイルの変化に適切に対応できない場合、市場での優位性が低下するリスクがあります。また、同業他社との競争が激化し、ブランドコンセプトや商品が顧客の支持を得られない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料調達とコスト上昇リスク


天候不順や地政学的リスクによる資源不足、為替相場の変動により、使用する食材の安定調達が困難になるリスクがあります。また、原材料価格やエネルギーコスト、人件費の高騰分を十分に価格転嫁できない場合、収益を圧迫し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保および育成リスク


店舗運営に不可欠な優秀な人材の確保は最重要課題です。労働市場の人手不足による採用環境の悪化で必要な人材が集まらない場合や、人件費が想定以上に上昇した場合、または人材育成が順調に進まない場合、店舗の運営能力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。