※本記事は、株式会社アトム の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アトムってどんな会社?
ステーキ、回転寿司、焼肉などの飲食店を東北・北関東・中部地方中心に展開するコロワイドグループ企業です。
■(1) 会社概要
1972年に株式会社徳兵衛寿司として設立され、1980年に「アトムボーイ」の商標を使用開始し店舗展開を本格化しました。1994年の店頭登録、2000年の東証二部上場を経て、2009年に株式会社ジクトを吸収合併し現在の事業基盤を確立しました。2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行し、2025年には居酒屋・カラオケ事業を分社化しています。
2025年3月31日時点の従業員数は単体で523名です。筆頭株主は事業会社である株式会社コロワイドで、発行済株式の41.19%を保有する親会社です。第2位はカストディアン業務を行う信託銀行、第3位は地方銀行である株式会社足利銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社コロワイド | 41.19% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 0.34% |
| 株式会社足利銀行 | 0.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性4名の計8名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は田中公博氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 公博 | 代表取締役社長 | トリドールホールディングス常務取締役COO等を経て、2024年4月アトム執行役員副社長、同年6月より現職。 |
| 今井 忠継 | 取締役 | アムゼ(現アトム)入社後、ステーキ宮営業本部長等を歴任。2023年取締役第一営業本部本部長、2025年4月より現職。 |
| 佐藤 真一郎 | 取締役 | ケイテック専務取締役等を経て、2022年アトム入社。経理部・管理部部長を経て、2024年4月より現職。 |
| 土田 正和 | 取締役(監査等委員) | アトム北海道執行役員、アトム中京営業本部長等を歴任。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、池田清華(Rita Brands代表取締役社長)、大和加代子(大和・松本法律事務所所長)、大藏さいら(大藏さいら公認会計士事務所所長)、山崎操(山崎公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レストラン事業」、「居酒屋事業」、「カラオケ事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) レストラン事業
「ステーキ宮」(ステーキ)、「にぎりの徳兵衛」(回転寿司)、「カルビ大将」(焼肉)、「かつ時」(とんかつ)、「小さな森珈琲」(カフェ)などの飲食チェーン店舗を、ロードサイドを中心に展開しています。ファミリー層を主要顧客とし、高品質な料理とサービスを提供しています。
店舗での飲食サービス提供による対価を顧客から受け取る収益モデルです。運営はアトムが行っています。不採算店舗の整理や業態転換を積極的に進めており、当期末時点での店舗数は237店舗となっています。
■(2) 居酒屋事業
「寧々家」「いろはにほへと」「暖や」「やきとりセンター」などの居酒屋業態を展開しています。駅前立地や郊外において、アルコール飲料や料理を提供し、サラリーマンやグループ客などを主要顧客としています。
店舗での飲食サービス提供による対価を顧客から受け取る収益モデルです。当期まではアトムが運営していましたが、2025年2月1日付でコロワイドグループの株式会社コロワイドダイニングに会社分割により事業承継されました。
■(3) カラオケ事業
「時遊館」のブランドでカラオケ店を展開しています。最新のカラオケ機器と飲食メニューを提供し、若年層からファミリー、シニア層まで幅広い顧客にアミューズメント空間を提供しています。
店舗利用料および飲食代金を顧客から受け取る収益モデルです。当期まではアトムが運営していましたが、2025年3月1日付で株式会社シン・コーポレーションに会社分割により事業承継されました。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、フランチャイズ事業などを展開しています。フランチャイズ加盟店に対する経営指導や店舗運営のノウハウ提供を行っています。
フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や加盟金などを受け取る収益モデルです。運営はアトムが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台前半から半ばで推移しており、2024年3月期に369億円まで回復しましたが、2025年3月期は事業譲渡等の影響もあり355億円となりました。利益面では、経常損失が続いており苦戦していますが、2025年3月期は事業譲渡益の計上により最終損益が5億円の黒字に転換しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 322億円 | 311億円 | 352億円 | 369億円 | 355億円 |
| 経常利益 | -13.3億円 | -9.8億円 | -11.3億円 | 0.1億円 | -6.4億円 |
| 利益率(%) | -5.8% | 2.4% | -6.1% | -4.0% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -18.6億円 | 7.5億円 | -21.7億円 | -14.7億円 | 5.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は369億円から355億円へ減少し、売上総利益率も65.3%から63.8%へ低下しました。営業損益は前期の0.7億円の赤字から6.7億円の赤字へと悪化しており、本業の収益性改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 369億円 | 355億円 |
| 売上総利益 | 241億円 | 226億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.3% | 63.8% |
| 営業利益 | -0.7億円 | -6.7億円 |
| 営業利益率(%) | -0.2% | -1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、その他の販売費が84億円(構成比36%)、その他の人件費が69億円(同29%)を占めています。売上原価は売上高に対して約36%で推移しています。
■(3) セグメント収益
当期は事業譲渡や不採算店の閉鎖を進めた影響により、全セグメントで減収となりました。特に居酒屋事業は期中の事業譲渡により前期比で大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| レストラン | 306億円 | 301億円 |
| 居酒屋 | 45億円 | 37億円 |
| カラオケ | 17億円 | 16億円 |
| その他 | 0.5億円 | 0.6億円 |
| 連結(合計) | 369億円 | 355億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アトムは、事業譲渡による収入が投資活動での資金獲得を大きく後押ししました。営業活動では、税金等の支払いにより資金が流出しましたが、投資活動では事業譲渡収入が主な要因となり、大幅な資金増加に繋がりました。財務活動では、借入と返済が同時に行われましたが、全体としては資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.4億円 | -7.8億円 |
| 投資CF | -18.7億円 | 37.5億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | -9.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「すべてはお客様と従業員のために」という企業理念を掲げています。この理念に基づき、家庭では体験できない料理や高レベルのサービスを提供し、顧客に「楽しかった、おいしかった」という喜びを感じてもらうことで企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
ブランドコンセプト及びQSCA(品質、サービス、清潔、雰囲気)を重視し、その本質を深化させることを行動の基本としています。また、コンプライアンスポリシーを策定し、全従業員が社会的良識に基づいた行動を心がける文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
直営店舗数237店舗の既存店売上高を重要な指標と位置づけ、毎期既存店売上高前期比100%以上を経営指標としています。新規出店と合わせて増収・増益を継続することにより、企業価値の継続的な拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コロワイドグループのシナジーを活かしたメニュー開発による原価低減や、地方・郊外ロードサイドを中心とした新規出店、経年店舗の改装、不採算店舗の業態転換を推進しています。また、本部コストの最適化やDXによる業務効率化により収益性の改善を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」の育成を持続的な企業成長の基盤と認識し、人材の確保と育成を最重要課題としています。従業員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境の構築を目指し、コンプライアンスポリシーの徹底やESGを意識した経営、サステナビリティの推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 12.5年 | 4,591,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | 157.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 108.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品に関するリスク
食中毒などの食品事故が発生した場合、ブランドイメージの低下や社会的信用の失墜、損害賠償、営業停止処分等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、産地偽装など食材の安全性確保に疑義が生じた場合も同様のリスクがあります。同社はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理や厳正な品質管理を徹底しています。
■(2) 事業に関するリスク
原材料価格やエネルギーコストの高騰、人手不足による人件費の上昇が経営を圧迫するリスクがあります。また、消費者の節約志向や嗜好の変化、競合他社との競争激化により、計画通りの収益が得られない可能性があります。同社はグループシナジーを活かした調達やDX推進による生産性向上で対応を図っています。
■(3) 財務に関するリスク
直営店舗の収益性が低下し赤字が継続した場合や、保有する固定資産の市場価格が著しく下落した場合には、減損損失の計上が必要となり、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来の課税所得計画の変更により繰延税金資産の回収可能性が低下した場合も、業績に影響を与える可能性があります。



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