※本記事は、株式会社ノジマの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノジマってどんな会社?
デジタル家電専門店やキャリアショップの運営を中心に展開し、独自のコンサルティングセールスを強みとする企業です。
■(1) 会社概要
1959年8月に野島電気工業社として創設され、1994年に株式を店頭登録しました。2007年には通信機器販売部門を分割し、2015年にアイ・ティー・エックス、2017年にニフティを子会社化して事業領域を拡大しました。2022年に東証プライム市場へ移行し、直近では2025年にVAIOを子会社化しています。
現在の従業員数は連結で12,112名、単体で2,912名となっています。筆頭株主は創業家の資産管理会社である野島廣司で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はティーエヌホールディングスとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野島廣司 | 14.77% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.47% |
| ティーエヌホールディングス | 5.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性3名の計18名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表執行役社長(CEO)は野島廣司氏が務めています。取締役14名のうち8名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野島廣司 | 取締役 代表執行役社長(CEO) | 1973年有限会社野島電気商会(現同社)入社。1994年代表取締役社長、2002年代表取締役社長(CEO)就任。ニフティやVAIO等の取締役を歴任し、2008年より現職。 |
| 温盛元 | 取締役 執行役副社長A&AVソリューション推進部長兼関連事業推進部長 | 1996年同社入社。人事総務部長や営業開発部長などを経て、2024年に取締役兼代表執行役専務に就任。2025年6月より現職。 |
| 國井弘文 | 取締役 常務執行役人事部長 | 2011年同社入社。販買推進部第一部長や販買推進部長などを歴任し、2024年より取締役兼常務執行役販買推進部長。2026年1月より現職。 |
| 石原彩子 | 取締役 常務執行役M&Cソリューション推進部長兼サービスイノベーション部長 | 2005年同社入社。サービスイノベーション部長を経て、2024年に取締役兼執行役サービスイノベーション部長就任。2025年6月より現職。 |
| 山根純一 | 取締役 執行役ITシステム部長 | 2010年同社入社。2020年にITシステム部長となり、2021年に執行役ITシステム部長へ就任。2022年6月より現職。 |
| 幡野裕明 | 取締役 執行役財務経理部長 | 2009年新創監査法人入所、後に公認会計士登録。2022年同社入社、執行役財務経理部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、平本和生(元東京放送(現TBSホールディングス)専務取締役)、山田隆持(元NTTドコモ代表取締役社長)、堀内文子(公認会計士・税理士)、柴原多(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士)、林文子(元横浜市長)、岡崎双一(元イオンリテール代表取締役社長)、岩見博之(元三井住友銀行常務執行役員)、堀福次郎(元大和ハウス工業取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、7つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■デジタル家電専門店運営事業
デジタルAV関連機器、情報関連機器、家庭用電化製品の販売、それに付帯する配送・工事・修理業務やソリューション、セットアップサービスを提供しています。一般消費者を主な顧客としています。
顧客への商品販売やサービス提供から収益を得ています。運営は主にノジマが行っています。
■キャリアショップ運営事業
携帯電話を中心とした通信関連機器の販売および付帯するサービスの提供を行っています。一般消費者を主な顧客として事業を展開しています。
通信事業者への契約取次に対する手数料や商品販売から収益を得ています。運営はノジマ、アイ・ティー・エックス、ITXコミュニケーションズ、アップビート、コネクシオなどが担っています。
■インターネット事業
ブロードバンド接続サービスやコミュニケーション、セキュリティサービスのほか、インターネットを利用した情報サービスや総合通信販売を提供しています。
サービスの利用料や販売代金として顧客から継続的な収益を得ています。運営は主にニフティ、ニフティライフスタイル、セシールなどが行っています。
■プロダクト事業
パソコンの企画、設計、開発、製造および販売と、それに関連するサービスの提供を行っています。個人顧客および法人顧客の双方が対象です。
製品の販売やサービス提供の対価として収益を得ています。事業の運営はVAIOが行っています。
■メディア事業
有料衛星放送事業や、ダイレクトマーケティングを主軸としたデジタルマーケティング事業、およびデジタルトランスフォーメーション事業を行っています。
放送枠の販売や広告・サービス提供の対価として顧客から収益を得ています。運営はAXNやストリートが行っています。
■海外事業
海外市場において、家電製品、IT製品、家具の販売やソリューション、セットアップなどのサービスを提供しています。現地消費者のライフスタイルに合わせた提案を行っています。
現地での商品販売およびサービス提供の対価として収益を得ています。運営はNojima APAC Limitedが中心となって行っています。
■金融事業
店頭外国為替取引や取引所株価指数証拠金取引等の金融商品取引サービスを提供していました。
外国為替証拠金取引等のサービス対価から収益を得ていましたが、2025年8月にマネースクエアHD等の全株式を譲渡し、連結範囲から除外されています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、モール事業、スポーツ事業、研修事業、メガソーラー事業などを展開しています。
各サービスの利用料などから収益を得ています。運営はノジマ、ノジマステラスポーツクラブ、ヒューエイドなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は右肩上がりで成長を続け、直近では9828億円に達しています。経常利益も一時的な落ち込みを経て回復傾向にあり、利益率も6.3%まで向上するなど、着実な増収増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5650億円 | 6262億円 | 7613億円 | 8534億円 | 9828億円 |
| 経常利益 | 359億円 | 362億円 | 329億円 | 512億円 | 623億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 5.8% | 4.3% | 6.0% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 256億円 | 229億円 | 169億円 | 196億円 | 249億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益が増加しており、利益率は約28%台で安定しています。営業利益も581億円へと成長し、本業における着実な収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8534億円 | 9828億円 |
| 売上総利益 | 2460億円 | 2793億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.8% | 28.4% |
| 営業利益 | 484億円 | 581億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が270億円、地代家賃が151億円、広告宣伝費が89億円を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるキャリアショップ運営およびデジタル家電専門店運営の2事業が全体の約7割を牽引しています。また、M&Aの効果等によりプロダクト事業やメディア事業が大幅な増収を記録しており、多角化による事業基盤の強化が進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| キャリアショップ運営事業 | 3646億円 | 3917億円 |
| デジタル家電専門店運営事業 | 2992億円 | 3366億円 |
| インターネット事業 | 699億円 | 724億円 |
| 海外事業 | 814億円 | 867億円 |
| プロダクト事業 | 175億円 | 650億円 |
| メディア事業 | 120億円 | 248億円 |
| 金融事業 | 53億円 | 19億円 |
| その他 | 36億円 | 37億円 |
| 連結(合計) | 8534億円 | 9828億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業でしっかりと利益を生み出し、その資金を借入金の返済や事業投資に充てる健全な財務状態を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 441億円 | 576億円 |
| 投資CF | -372億円 | -37億円 |
| 財務CF | 239億円 | -240億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.8%でいずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社会に貢献する経営、オープンで公正な経営、独創的で革新的な経営、人間愛がある経営、向上心がある経営を基本方針として掲げています。「全員経営理念」という、従業員全てが一人の経営者として考え、判断し、行動する姿勢を重視しており、デジタル商品やサービスを通じて社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
失敗を許容し挑戦を促す「出る杭は伸ばす」という文化が根付いています。また、AIを活用しつつ、愛情を持った指摘や携わりによる人材育成を大切にしており、「AI、愛、アイデアでNo.1チームへ」というスローガンのもと、お客様の立場に立った日々の気づきをアイデアに変える組織風土を形成しています。
■(3) 経営計画・目標
安定的な収益力や効率的な投下資本の運用、持続的な高い成長力を重要な経営目標と位置付けています。健全な経営を推進するため、具体的な数値目標を設定し事業を展開しています。
* ROE15%以上
* 連結自己資本比率30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
専門知識を有するコンサルタントによる接客やDXの活用により、顧客のニーズに寄り添った付加価値の提供を推進しています。国内ではドミナント展開や既存店舗のスクラップアンドビルドを効率的に実施し、海外では現地状況に応じた店舗網の充実を図り、事業全体でのシナジー創出を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
メーカーの派遣店員に頼らず、自社の従業員が主体的に提案を行う「コンサルティングセールス」を支えるため、人材を最大の資産と位置付けています。「キャリアグラウンド」と呼ばれる独自の人事制度を通じ、年齢や経歴に関わらず意欲ある人材が挑戦できる環境を整備し、自ら考え行動する経営者人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.0歳 | 9.3年 | 5,573,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.7% |
| 男性育児休業取得率 | 77.3% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 82.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 84.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 115.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、省エネコンサルタント資格取得者(2,182名)、65歳以上のシニア従業員数(ノジマチーム全体で100名以上)、2026年度の新入社員数(ノジマチーム全体で約1,100名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保及び育成に関する課題
同社はコンサルティングセールスを強みとして事業運営を行っているため、専門知識を持った優秀な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、サービス品質の低下を招き、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) プライベートブランド商品の品質問題
同社は独自色の強いプライベートブランド「ELSONIC」商品の企画・販売を積極的に進めています。十分な品質管理を実施しているものの、万が一、製品に起因する欠陥や事故等が発生した場合には、ブランド価値の毀損や対応コストの発生に繋がるリスクがあります。
■(3) 競合他社との激しい価格・サービス競争
同社の出店エリア内には同業他社の店舗が多数存在し、激しい価格およびサービス競争が行われています。市場の変化は早く、他社の新規出店や異業種からの参入、新商品の取り扱い開始などが、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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