※本記事は、株式会社ノジマ の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノジマってどんな会社?
首都圏を中心にデジタル家電専門店を展開するほか、通信事業やインターネット事業など多角的に事業を行う企業です。
■(1) 会社概要
1959年に創業し、1991年にノジマへ商号変更しました。2016年に東証一部(現プライム)へ指定替えを果たし、2017年にはニフティを子会社化してインターネット事業を強化しました。その後も2019年の海外進出、2023年のコネクシオ子会社化、2025年のVAIO子会社化など、積極的なM&Aにより事業を拡大しています。
従業員数は連結11,868名、単体2,904名です。筆頭株主は代表執行役社長の資産管理会社である野島廣司株式会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位は資産管理会社のティーエヌホールディングス株式会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野島廣司株式会社 | 15.13% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.03% |
| ティーエヌホールディングス株式会社 | 5.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性3名の計19名で構成され、女性役員比率は15.8%です。代表執行役社長(CEO)は野島廣司氏です。取締役14名のうち社外取締役は8名で、社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野 島 廣 司 | 取締役 代表執行役社長(CEO) | 1973年入社。1994年社長就任。ITX、ニフティ等の取締役を歴任し、グループCEOとして経営を牽引。 |
| 温 盛 元 | 取締役 | 1996年入社。執行役人事総務部長、営業開発部長等を歴任。現在は家電・季節AVソリューション推進等を担当。 |
| 國 井 弘 文 | 取締役 常務執行役販買推進部長 | 2011年入社。販買推進部第一部長等を経て、2024年より現職。 |
| 山 根 純 一 | 取締役 執行役ITシステム部長 | 2010年入社。2020年ITシステム部長。2022年より現職。 |
| 石 原 彩 子 | 取締役 執行役M&Cソリューション推進部長兼サービスイノベーション部長 | 2005年入社。サービスイノベーション部長を経て、2025年2月より現職。 |
| 幡 野 裕 明 | 取締役 執行役財務経理部長 | 2009年監査法人入所。公認会計士。2022年入社。2024年より現職。 |
社外取締役は、平本和生(元BS-TBS会長)、髙見和徳(元パナソニック副社長)、山田隆持(元NTTドコモ社長)、堀内文子(公認会計士・税理士)、池田匡紀(元ニトリHD副社長)、柴原多(弁護士)、林文子(元横浜市長)、井上幸夫(元東芝テック常務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタル家電専門店運営事業」、「キャリアショップ運営事業」、「インターネット事業」、「海外事業」、「金融事業」、「プロダクト事業」および「その他」事業を展開しています。
■デジタル家電専門店運営事業
薄型テレビ等のデジタルAV関連機器、家庭用電化製品、IT・情報関連機器等の販売に加え、これらに付帯する配送・工事・修理業務やソリューションサービスを提供しています。一般消費者を主な顧客としています。
商品の販売代金やサービス料等が主な収益源です。運営は主にノジマが行っています。
■キャリアショップ運営事業
携帯電話を中心とした通信関連機器の販売や、通信サービスの契約取次等の付帯サービスを提供しています。
通信キャリアからの手数料や端末販売代金等が主な収益源です。運営は主にノジマ、アイ・ティー・エックス、ITXコミュニケーションズ、アップビート、コネクシオ、ハスコムモバイルが行っています。
■インターネット事業
ブロードバンド接続サービスの提供や、それに付帯するセキュリティ等のサービス、WEBコンテンツサービスの提供、通信販売事業などを行っています。
接続サービス利用料や広告料、商品販売代金等が主な収益源です。運営は主にニフティ、ニフティライフスタイル、ニフティコミュニケーションズ、セシールが行っています。
■海外事業
海外において、デジタルAV関連機器、IT・情報関連機器、家庭用電化製品および家庭用家具の販売、セットアップ等のサービス提供を行っています。
商品販売代金やサービス料等が主な収益源です。運営は主にNojima APAC Limitedが行っています。
■金融事業
店頭外国為替取引(FX)や取引所株価指数証拠金取引等の金融商品取引サービスを提供しています。
顧客からの取引手数料やスプレッド収益等が主な収益源です。運営は主にマネースクエアHD、マネースクエアが行っています。
■プロダクト事業
パソコンの企画、設計、開発、製造および販売と、それに関連するサービスの提供を行っています。
製品の販売代金やサービス料等が主な収益源です。運営は主にVAIOが行っています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、モール事業、スポーツ事業、研修事業、メガソーラー事業、有料衛星放送事業等を行っています。
各サービスの利用料や運営収益等が収益源です。運営は主にノジマ、ノジマステラスポーツクラブ、ヒューマン・アビリティ・デベロップメント、AXNが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近の第63期には8500億円を超え過去最高を更新しました。利益面でも、第62期に一時的な落ち込みが見られましたが、第63期には経常利益が500億円台に回復し、過去最高益を達成しています。M&Aなどの効果もあり、事業規模の拡大が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,233億円 | 5,650億円 | 6,262億円 | 7,613億円 | 8,534億円 |
| 経常利益 | 646億円 | 359億円 | 362億円 | 329億円 | 512億円 |
| 利益率(%) | 12.4% | 6.4% | 5.8% | 4.3% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 210億円 | 256億円 | 229億円 | 169億円 | 196億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しています。営業利益率も改善傾向にあり、収益性が向上しています。販売管理費も増加していますが、売上高の伸長がそれを上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,613億円 | 8,534億円 |
| 売上総利益 | 2,196億円 | 2,460億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.8% | 28.8% |
| 営業利益 | 306億円 | 484億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が701億円(構成比35%)、広告宣伝費が262億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上高が増加しました。特にキャリアショップ運営事業とデジタル家電専門店運営事業が売上・利益の柱となっています。新たに加わったプロダクト事業も利益貢献しています。金融事業や海外事業も黒字化または増益となり、全体として好調に推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタル家電専門店運営事業 | 2,652億円 | 2,992億円 | 160億円 | 201億円 | 6.7% |
| キャリアショップ運営事業 | 3,453億円 | 3,646億円 | 84億円 | 192億円 | 5.3% |
| インターネット事業 | 659億円 | 699億円 | 54億円 | 62億円 | 8.9% |
| 海外事業 | 694億円 | 814億円 | -3億円 | 10億円 | 1.2% |
| 金融事業 | 60億円 | 53億円 | 18億円 | 12億円 | 21.8% |
| プロダクト事業 | - | 175億円 | - | 9億円 | 4.9% |
| その他 | 94億円 | 156億円 | 18億円 | 28億円 | 17.9% |
| 調整額 | -52億円 | -74億円 | -2億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 7,613億円 | 8,534億円 | 329億円 | 512億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「積極型」です。本業の営業活動から得たキャッシュ・フローに加え、財務活動でも資金を調達し、将来の成長に向けた投資活動(M&Aや設備投資)を積極的に行っている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 582億円 | 441億円 |
| 投資CF | -141億円 | -372億円 |
| 財務CF | -458億円 | 239億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社会に貢献する」「オープンで公正な」「独創的で革新的な」「人間愛がある」「向上心がある」経営を方針として掲げています。従業員全てが一人の経営者として考え、判断し、行動する「全員経営理念」のもと、デジタル商品やサービスを通して社会に貢献することを志しています。
■(2) 企業文化
同社は「デジタル一番星」を称し、デジタル商品とそれに関わるサービスを「一番」早く、「一番」親切に、「一番」わかりやすくお届けすることを目指しています。お客様の心に寄り添った「コンサルティングセールス」を重視し、従業員一人ひとりがお客様のニーズに合わせて行動する文化があります。「出る杭は伸ばす」という考えのもと、社歴や役職に関係なく自由に発案できる風土も特徴です。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定的な収益力、効率的な投下資本の運用、業界トップの持続的な高い成長力を重要な経営目標としています。客観的な経営指標として以下の目標を掲げ、健全経営を目指しています。
* ROE15%以上
* 連結自己資本比率30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「コンサルティングセールス」の強化と、グループ各社のシナジー発揮による成長を目指しています。「店舗運営」「人材育成」「店舗展開」を重要項目とし、お客様の立場に立った売り場作りやDXの推進、専門知識を持つ人材の育成に注力します。店舗展開では、ドミナント展開に加え、小型店舗の出店やスクラップアンドビルドを進めます。海外事業では、現地状況に対応した店舗網の充実を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「全員経営理念」のもと、従業員一人ひとりが経営者として考え行動できる人材の育成を目指しています。専門知識を有する商品コンサルタントによる真心込めたサービス提供のため、独自のWEBツール「ノジマ学」「ノジマ稽古」を活用し、接客能力や商品知識の向上を図っています。「チャンスは平等、評価は公正」を掲げ、多様な人材が活躍できる環境整備や健康経営にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 35.3歳 | 9.3年 | 5,255,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.3% |
| 男性育児休業取得率 | 45.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 112.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断の受診の割合(98%)、労働者に占めるメンタル休職者の割合(1.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢および競争環境
経済のグローバル化や国内外の景気動向、消費動向の変化が業績に影響を与える可能性があります。また、同業他社との競争激化や異業種からの参入、新規出店などにより、価格・サービス競争が激化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。特にデジタル家電専門店事業では、天候不順による季節商品の需要変動リスクもあります。
■(2) 人材の確保および育成
多店舗展開とコンサルティングセールスを事業の柱としているため、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。これらが計画通りに進まない場合、サービス品質の低下や店舗運営への支障が生じ、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制およびコンプライアンス
デジタル家電専門店、キャリアショップ運営、金融事業などにおいて、大店立地法、景品表示法、電気通信事業法、金融商品取引法など多岐にわたる法的規制を受けています。法令違反が生じた場合の信頼性低下や行政処分、また将来的な法改正や新たな規制の導入が、事業活動や業績に影響を与える可能性があります。



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