アールビバン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アールビバン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、版画や絵画等の販売を行うアート関連事業を主力とする企業です。ホットヨガスタジオ運営や金融サービス事業も展開しています。直近の業績は、売上高が前期比2.5%減、経常利益が22.3%減となり、減収減益で着地しました。


※本記事は、アールビバン株式会社 の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アールビバンってどんな会社?


現代版画やイラスト系アートの販売を主力とし、ホットヨガや金融サービスも展開する企業です。

(1) 会社概要


1984年に現代版画の販売を目的として設立され、1996年に株式を店頭登録しました。その後、2001年にリゾート事業へ進出(後に譲渡)、2004年には健康産業事業へ進出するなど多角化を推進しています。2010年にはJASDAQ(スタンダード)へ上場しました。現在は版画販売に加え、金融サービスやホットヨガスタジオ運営を行っています。

連結従業員数は304名、単体では202名です。筆頭株主は代表取締役会長兼社長の資産管理会社である有限会社カツコーポレーションで、第2位は個人株主です。

氏名 持株比率
有限会社カツコーポレーション 31.84%
栗田実 3.95%
みずほ信託銀行株式会社退職給付信託オリエントコーポレーション口 2.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名(監査役含む)の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は野澤克巳氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
野澤克巳 代表取締役会長兼社長 1984年同社設立代表取締役社長。タラサ志摩スパアンドリゾート代表取締役社長等を経て、2022年より現職。
岩本一也 取締役 1982年オリエントコーポレーション入社。同社営業本部長、リバース代表取締役会長等を経て、2017年より現職。
樋口弘司 取締役管理部長 2005年プリモ・ジャパン財務経理部長。2007年e・ジュネックス管理部長を経て、2016年より現職。
野澤竹志 取締役 2006年リンクアンドモチベーション入社。2013年同社入社。人事部長兼社長室長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、郷倉正人(コンサルティングオフィスG代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アート関連事業」、「金融サービス事業」、「健康産業事業」を展開しています。

アート関連事業


アメリカ、ヨーロッパ、日本などの現代アーティストやイラストレーターの版画(シルクスクリーン、ミックスドメディア等)、絵画、美術品を主要商品とし、展示会等の催事販売や店舗販売を行っています。また、イラストを中心とした出版やグッズ販売も手掛けています。

顧客からの商品代金の受領は主に信販会社のクレジット契約を利用しており、商品の発送をもって売上を計上しています。運営は主にアールビバンが行い、子会社の一部が美術品の購入・販売を担っています。

金融サービス事業


同社をはじめとする加盟店の顧客に対し、販売代金等の個別信用購入あっせん業務(クレジット事業)を行っています。また、融資事業も手掛けています。

割賦販売あっせん業務からの手数料収入が主な収益源です。運営は主に子会社のダブルラックが行っています。

健康産業事業


ホットヨガスタジオ「アミーダ」を東京都、千葉県、神奈川県を中心に全国各地で運営しています。2025年3月末現在で25店舗を展開しています。

会員からの利用料等が主な収益源です。運営は主に子会社のTSCホリスティックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2024年3月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、2025年3月期は減収となりました。利益面では、2024年3月期に経常利益が大きく伸長しましたが、2025年3月期は減益となり、利益率は低下しました。全体として高い利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 79億円 103億円 107億円 110億円 107億円
経常利益 16億円 24億円 21億円 29億円 23億円
利益率(%) 20.2% 23.5% 19.6% 26.5% 21.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 8億円 8億円 13億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減しましたが、売上総利益は微増しており、売上総利益率は上昇しました。一方、営業利益は減益となり、営業利益率も低下しています。販管費の増加などが営業利益を圧迫した要因と考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 110億円 107億円
売上総利益 71億円 72億円
売上総利益率(%) 64.5% 66.8%
営業利益 24億円 21億円
営業利益率(%) 21.5% 19.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与手当が12億円(構成比24%)、広告宣伝費が8億円(同17%)、会場費が8億円(同15%)を占めています。売上原価においては、商品等の仕入および製造にかかる費用が計上されています。

(3) セグメント収益


アート関連事業は前期に高額美術品の販売があった反動で減収減益となりました。金融サービス事業は売上高が増加しましたが、貸倒引当金の計上増により減益となりました。健康産業事業は一部店舗の閉店により減収となりましたが、不採算店舗の整理等により営業黒字に転換しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
アート関連事業 81億円 81億円 12億円 9億円 11.6%
金融サービス事業 16億円 16億円 11億円 10億円 62.6%
健康産業事業 13億円 10億円 -1億円 1億円 8.9%
連結(合計) 110億円 107億円 24億円 21億円 19.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を借入返済や株主還元に充てつつ、投資も自前の資金で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -5.0億円 20.2億円
投資CF 5.6億円 -4.5億円
財務CF -7.8億円 -5.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%でスタンダード市場平均(7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.0%で同市場平均(非製造業48.5%)をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、絵を通じてひとりでも多くの人々に夢と希望をもたらし、豊かな生活文化に貢献します。」という経営理念を掲げています。「絵のある豊かな生活(くらし)」によって一人でも多くのお客様に夢や希望を感じていただけるよう経営を行っています。

(2) 企業文化


創業以来変わることなく「心の豊かさ」を提案し続けることを重視しています。アートやヨーガ、ファイナンス事業を通じて、顧客が生きる力を強め、喜びを深め、創造性を高めて人間本来の本質・原点に立ち戻る手助けをし、幸福を広げる会社でありたいという価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は新規顧客獲得に主眼をおいた営業活動により売上高を伸ばしつつ、組織の効率化やコスト削減に努めています。具体的な数値目標として、以下の指標を掲げています。

* 営業利益率:20%

(4) 成長戦略と重点施策


「アート関連事業」では新規会場開拓や新企画催事による顧客開拓、グッズ・出版事業の強化を進めます。「金融サービス事業」では加盟店管理の徹底と消費者保護を最優先とし、「健康産業事業」ではサービスの質向上による会員獲得と退会防止に注力します。また、中長期的には人材・組織の基盤固めと新たな収益基盤の創造に挑戦します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


自己変革に挑戦する社員を尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供することを方針としています。教育機会の提供、昇格昇進の拡大と早期化による次世代リーダーの育成、適材適所の人材配置、および多様な働き方を実現する仕組みの整備を通じて、新たな価値創造と持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 32.0歳 7.3年 5,372,841円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.9%
男女賃金差異(正規雇用) 79.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 153.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(47.1%)、係長級に占める女性労働者の割合(22.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 財政状態等の変動リスク


同社グループは店舗政策としてスクラップ&ビルドを行うため、不採算店舗の閉鎖に伴う損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。また、主力商品の版画等の仕入において、海外経済情勢や為替変動の影響を受ける可能性があります。

(2) 個人情報の管理リスク


友の会会員や催事・店舗販売顧客などの多くの個人情報を保有しており、情報管理には万全を期していますが、不測の事態により外部へ漏洩した場合には、信用の失墜や損害賠償費用の発生により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の取引先・製品等への依存


主要商品である版画は、摺刷枚数が限定された作品を取り扱っており、商品を安定的に確保することが重要です。仕入れにおいてはアーティストとの直接契約や他の版元・代理店からの仕入れを行っていますが、これら仕入先との継続的な商品供給契約は締結していない場合があり、商品確保に支障が出る可能性があります。

(4) 感染症に関するリスク


緊急事態宣言等により催事の開催制限や施設の使用制限が再度発生した場合には、版画展示販売会の中止やホットヨガ店舗の休業等により、売上高が減少する可能性があります。これまでの影響は限定的でしたが、今後の状況によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。