※本記事は、アールビバン株式会社の有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アールビバンってどんな会社?
アート関連事業を中心に金融サービスや健康産業を展開し、豊かな生活文化に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1984年に現代版画の販売を目的に設立されました。1996年に業界初の株式公開(店頭登録)を果たし、資金の有効活用とクレジットニーズに応えるため子会社を設立し金融サービスに進出しました。2004年には健康産業事業へ参入し、その後市場再編に伴い2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は連結で296名、単体で208名です。筆頭株主は金融商品取引業者である立花証券で、第2位は創業者の野澤克巳氏が代表を務める資産管理会社のカツコーポレーション、第3位は事業会社のMAGO CREATIONとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 立花証券 | 39.93% |
| カツコーポレーション | 33.76% |
| MAGO CREATION | 7.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は野澤克巳氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野澤克巳 | 代表取締役会長兼社長 | 1984年同社設立、代表取締役社長に就任。関連子会社の代表等を歴任後、2015年代表取締役会長、2016年より現職。 |
| 岩本一也 | 取締役 | オリコ等を経て1996年同社入社。2013年代表取締役社長に就任後、特別顧問を経て2017年より現職。 |
| 樋口弘司 | 取締役管理部長 | 監査法人や事業会社を経て2007年に入社。管理部長や経営企画室長を務め、2014年より現職。 |
| 野澤竹志 | 取締役 | リンクアンドモチベーション等を経て2013年同社入社。2016年取締役人事部長兼社長室長に就任し、2020年より現職。 |
社外取締役は、郷倉正人氏(コンサルティングオフィスG代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アート関連事業」、「金融サービス事業」、「健康産業事業」および「その他」事業を展開しています。
■アート関連事業
国内外の現代アーティストや新進アーティストの版画、イラストレーターの版画を主要商品として取り扱っています。全国各地のホテルやイベントホールなどでの催事販売や、店舗での販売を通じて、一般の顧客にアート作品を提供しています。
収益源は、版画や絵画、関連グッズなどの商品販売代金です。アーティスト名や技法、総摺刷枚数などを明示した販売を行っており、事業の運営は主にアールビバンと連結子会社のダブルラックなどが担当しています。
■金融サービス事業
消費者向けの割賦販売あっせん業務(クレジット事業)を展開しています。アート関連事業で高額な版画や絵画を購入する顧客の決済手段として利用されるほか、一般加盟店の顧客に対しても信用購入あっせんを行っています。
収益源は、割賦販売の契約に伴う会員からの分割手数料や、加盟店からの手数料です。各種の業務規制や消費者保護のルールを遵守した審査・管理体制を構築しており、本事業は主に連結子会社のダブルラックが運営しています。
■健康産業事業
地域の顧客の心と身体の健康づくりをサポートすることを目的としたフィットネス施設を展開しています。主に女性をターゲットとしており、ホスピタリティ精神を大切にした質の高いサービスの提供を目指しています。
収益源は、施設の利用者から受け取る月会費などの利用料や入会金です。東京都、千葉県、神奈川県などを中心に溶岩ホットヨガスタジオ「アミーダ」やマシンピラティススタジオを、連結子会社のTSCホリスティックが運営しています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、イラストを中心とした雑誌やコミックの出版、グッズの販売を行っています。また、海外からの仕入業務の一部を海外の非連結子会社に委託する事業などを展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が概ね100億円台で安定して推移したのち、当期は大幅な増収を記録しました。経常利益も20億円台で安定して利益を創出しており、当期は経費削減効果も寄与して増益となっています。収益性を示す利益率も常に20%前後の高い水準を維持しており、強固なビジネスモデルに基づく安定した収益基盤と高い利益創出力を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 103億円 | 107億円 | 110億円 | 107億円 | 127億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 21億円 | 29億円 | 23億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 23.5% | 19.6% | 26.5% | 21.1% | 21.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 8億円 | 13億円 | 13億円 | 59億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益が増加しています。利益率の高いビジネスモデルを維持しており、原価や販売経費のコントロールも適切に行われているため、営業利益も堅調に伸びており、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 127億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.8% | 63.9% |
| 営業利益 | 21億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 19.7% | 21.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与手当が14億円(構成比26%)、広告宣伝費が10億円(同19%)、会場費が7億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のアート関連事業は、新規顧客の獲得や取扱アーティストのブランド化等の施策が奏功し、高額美術品や版画の販売が大きく伸びて全体を牽引しました。金融サービス事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| アート関連事業 | 81億円 | 100億円 |
| 金融サービス事業 | 16億円 | 17億円 |
| 健康産業事業 | 10億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 107億円 | 127億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.3%で市場平均をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たちは、絵を通じてひとりでも多くの人々に夢と希望をもたらし、豊かな生活文化に貢献します。」という経営理念を掲げています。「絵のある豊かな生活(くらし)」を提案することで、人間本来の生きる力を強め、喜びを深め、創造性を高めて幸福を広げる会社となることを社会的意義としています。
■(2) 企業文化
創業以来変わることなく「心の豊かさ」を提案し続ける姿勢を重視しています。また、アート市場を切り拓いてきた開拓者としての自負を持ち、「日本の文化水準を上げる」「日本全国に心の灯りをともす」「日本発のアーティストを世界に発信する」といったビジョンに向け、過去にとらわれない新たなチャレンジを重んじる文化があります。
■(3) 経営計画・目標
新規顧客獲得に主眼をおいた営業活動により売上高を伸ばすとともに、継続的な組織の効率化やコスト削減に努めています。収益力を高めながら、株主へ安定的な配当を行うことを基本方針としています。
* 営業利益率20%
■(4) 成長戦略と重点施策
主力のアート関連事業では、新規会場の開拓や新企画催事の開催により新規顧客を獲得し、取扱アーティストのブランド化や新作家開発を進めます。金融事業では加盟店審査の強化と低コスト運営を徹底し、健康事業では質の高いサービス提供による新規会員獲得と退会防止に努め、多様なニーズに応える新プログラムを導入します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材の育成と従業員の活躍が持続的な成長に不可欠と考え、自己変革に挑戦する社員を尊重し、成長や活躍の場を提供する方針です。社員の人生設計を促進する教育機会の提供や、昇格昇進の早期化で将来の経営層を育成します。また、多様化する価値観に応じた柔軟な働き方を実現する仕組みを整備し、適材適所の人材配置を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 31.9歳 | 7.4年 | 6,124,871円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 26.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 0.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 73.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 71.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 114.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全体における女性の割合(45.1%)、育児しながら勤務している従業員数(22名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不採算店舗閉鎖等に伴う影響
店舗政策の一環として収益改善のためのスクラップ&ビルドを実施しており、不採算店舗の閉鎖に伴って損失が発生した場合、同社グループの業績やキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 個人情報の漏洩リスク
友の会会員や催事・店舗の販売顧客に関する多くの個人情報を保有しており、情報の利用や保管に関する社内ルールを設け管理を徹底しています。しかし、不測の事態により外部へ漏洩した場合、信用失墜による売上減少や損害賠償費用の発生が懸念されます。
■(3) 経済情勢や為替の変動
国内外の現代アーティスト等の版画を主要商品とし、将来の販売を目的とした美術品の購入も行っています。経済情勢の不安定化による落札価格の下落や為替の変動が生じた場合、事業の多角化や業績に影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。