※本記事は、株式会社ニチリョクの有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチリョクってどんな会社?
総合シニアライフサポート企業として、お墓事業および葬祭事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1966年にダイレクトメール発送代行を目的として設立され、1980年に墓石の販売・施工業を開始しました。1998年に株式を店頭登録し、2000年には葬祭事業を本格稼動させました。直近では2025年に大型葬祭会館に関する事業を譲渡し、収益構造の見直しを図るなど、終活プラットフォーマーへの進化を進めています。
現在の従業員数は単体で80名です。大株主については、筆頭株主が同社の親会社であるバリューアップ・ファンド投資事業有限責任組合で、第2位は金融機関のMLI FOR CLIENT GENERAL NON TREATY-PB、第3位は東海東京証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| バリューアップ・ファンド投資事業有限責任組合 | 34.65% |
| MLI FOR CLIENT GENERAL NON TREATY-PB | 5.75% |
| 東海東京証券 | 2.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長営業サポート本部長は渡邊将志氏が務めており、取締役9名のうち4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邊 将志 | 代表取締役社長営業サポート本部長 | 1994年日興證券入社。松井証券事業開発部長等を経て、2021年同社取締役就任。2025年7月より現職。 |
| 篠田 丈 | 取締役会長 | 1985年小松製作所入社。アリスタゴラ・アドバイザーズ代表取締役会長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 服部 聡昌 | 取締役経営統括本部長 | 2002年ニッセン入社。日本管理センター(現JPMC)取締役グループCFO等を経て、2025年7月より現職。 |
| 尾上 正幸 | 取締役 | 1978年東邦チタニウム入社。東京葬祭取締役を経て、2021年同社入社。常務取締役等を経て2025年6月より現職。 |
| 白石 哲 | 取締役 | 1987年日本旅行入社。SOUシニアケア代表取締役社長等を経て、2025年11月同社営業本部長。2026年6月より現職。 |
社外取締役は、古内耕太郎(元燦ホールディングス代表取締役社長)、勝又夕紀(有限会社Office9代表取締役社長)、藪田晃彰(元日光水産代表取締役会長)、三宅哲夫(アリスタゴラ・アドバイザース取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「お墓事業(屋外墓地)」、「お墓事業(納骨堂)」および「葬祭事業」の報告セグメントを展開しています。
■お墓事業(屋外墓地)
一般顧客を対象に、屋外の墓地(永代使用権)の募集代行や、それに付随する墓石の製造・販売および施工を提供しています。また、霊園の経営主体から受託する霊園維持管理業務や、故郷のお墓を引っ越す改葬のサポート業務、安心できるお寺と消費者を繋ぐ境内墓地の取り扱いなども行っています。
収益源は、顧客からの墓石工事代金や墓地の募集手数料、ならびに経営主体である宗教法人等から受け取る霊園管理費などです。事業の運営は同社が行っており、霊園経営主体である宗教法人等と業務提携契約を締結し、提携する全国の石材業者等のパートナー企業と協同してサービスを提供しています。
■お墓事業(納骨堂)
宗教法人等が開発する自動搬送式納骨堂に関する企画開発から募集・販売代行、維持管理までを支援する事業です。骨壷が入った厨子と墓石が一体となり、参拝カードを翳すことで自動搬送される近代的設備を備え、主要駅から徒歩圏内という利便性を顧客に提供しています。
収益源は、経営主体である宗教法人から受託する使用者の募集代行業務に係る手数料や、納骨堂の管理運用業務に伴う受取手数料などです。事業の運営は同社が行っており、募集代行や施設の管理、デジタルサイネージ機能を兼ね備えた情報の提供など、多角的な支援を行っています。
■葬祭事業
生花祭壇葬を得意とし、一般葬や家族葬施設を併設した独自ブランド「ラステル」などを展開しています。事前相談や生前契約を通じた顧客との関係構築を図り、単身高齢者向けの死後手続きや生活サポートを手配する「ニチリョク安心パック」なども提供しています。
収益源は、顧客からの葬儀・法要の施行代金や、会員制度を通じたサービスの提供に対する対価などです。事業の運営は同社が行っており、従来は大型葬祭会館も保有していましたが、現在は資産ポートフォリオの見直しを進め、価格競争に依存しない付加価値型のビジネスモデルへの転換を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は減少傾向にあり、経常利益および当期純利益も赤字が継続しています。特に直近では成約件数の減少や事業譲渡の影響により減収となり、経常損失が拡大しましたが、特別利益の計上により当期純損失の幅は改善しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 32億円 | 28億円 | 22億円 | 17億円 |
| 経常利益 | -0.4億円 | 0.8億円 | 1.5億円 | -2.9億円 | -6.9億円 |
| 利益率(%) | -1.4% | 2.6% | 5.3% | -13.2% | -40.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.0億円 | 0.6億円 | 2.1億円 | -4.2億円 | -1.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益は減少しており、それに伴い営業損失の幅が拡大しています。固定費負担や競争環境の激化が利益を圧迫する要因となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 22億円 | 17億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.5% | 68.2% |
| 営業利益 | -1.0億円 | -4.2億円 |
| 営業利益率(%) | -4.5% | -24.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比30%)、支払手数料が2億円(同12%)、広告宣伝費が2億円(同11%)を占めています。また、売上原価の内訳では外注費や材料費などが主要なコストとなっています。
■(3) セグメント収益
お墓事業(屋外墓地)は販売可能な霊園在庫の減少等により減収減益となりました。お墓事業(納骨堂)も集客効率改善の過程で来苑者数が減少し減収となっています。葬祭事業は大型会館の売却や単価下落により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| お墓事業(屋外墓地) | 7億円 | 6億円 | 1.1億円 | 0.0億円 | 0.8% |
| お墓事業(納骨堂) | 2億円 | 1億円 | -0.6億円 | -0.6億円 | -43.6% |
| 葬祭事業 | 14億円 | 10億円 | 4.9億円 | 1.4億円 | 13.5% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -6.5億円 | -5.0億円 | - |
| 連結(合計) | 22億円 | 17億円 | -1.0億円 | -4.2億円 | -24.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはマイナス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスとなっており、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況(事業検討型)を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.1億円 | -4.5億円 |
| 投資CF | 1.5億円 | 12.3億円 |
| 財務CF | -2.1億円 | -6.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、終活に関連するあらゆるサービスを提供する「総合シニアライフサポート企業」としての事業基盤を活かし、多様なサービスを統合する「終活プラットフォーマー」への進化を図っています。顧客の終活から供養、葬儀に至るまでの一連のニーズに対し、継続的かつ包括的な価値提供を行うことで、長期的な関係構築と新たな収益機会の創出を目指しています。
■(2) 企業文化
人が会社にとって最大の資産であるとの考えのもと、多様な人材が集い、社員一人ひとりが持つ無限の可能性を引き出すことにより生まれた大きな活力を、組織として最大限に活かす人的資本経営を推進しています。また、豊かなシニアライフを創出することが広い世代の幸せに繋がるとの考えから、供養を通じた心の安寧支援に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、営業利益、当期純利益および株主利益重視の観点から、収益の拡大に伴ったEPS(1株当たり当期純利益)を掲げています。また、終活プラットフォーマーとしての事業モデルの進展に伴い、会員数、顧客接点数および各サービスへの送客状況等についても重要な指標として継続的にモニタリングしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の資産・負債圧縮を中心とした「守り」の経営から、成長に向けた投資および施策を強化する「攻め」の経営への転換を図っています。具体的には、終活支援を起点としたプラットフォーム型ビジネスの構築、墓じまいニーズの取り込みと納骨堂事業の連動強化、おひとりさま層を中心とした顧客戦略の強化などを進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「終活ビジネスにおける新たなプラットフォーマー」への進化に向け、内部育成と外部採用を適切に組み合わせることで、必要な人財を計画的に確保しています。各事業領域に応じた専門知識の習得に加え、DX推進やコンプライアンス教育の充実を図ることで、従業員のスキル向上とキャリア開発を支援し、持続的な人財基盤の構築を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.6歳 | 4.9年 | 4,624,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性マネジメント職比率(29%)、女性社員比率(43%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業構造の転換に関するリスク
既存事業の枠を超えた成長機会の獲得を目的とし、終活支援サービスを基軸とした新たな事業モデルへの転換を進めています。しかし、新規事業の収益化や事業間シナジーの創出が計画どおりに進まない場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資金調達および資本政策に関するリスク
成長投資および財務基盤の強化を目的として、第三者割当による資金調達を実施しています。当該資金調達は一定の資金確保に寄与する一方で、株式価値の希薄化や、資本市場の環境変化により計画どおりの資金調達が行えないリスクを内包しています。
■(3) 固定資産等の減損に関するリスク
事業用固定資産および各種投資資産を保有しており、直近の業績動向等を踏まえた収益性の見直しにより減損損失を計上しています。今後も事業構造の転換や新規投資に伴い、当初想定した収益が確保できない場合には、追加的な減損損失が発生する可能性があります。
■(4) 開発資金の回収および債務保証等に関するリスク
霊園や納骨堂の開発において、同社が一時的な資金負担や債務保証を行うことがあります。販売完了には長期間を要し、計画通りに進捗しない場合には資金負担が発生するほか、金融機関の融資姿勢の変化等により債務保証の履行を余儀なくされ、資金繰りを圧迫する可能性があります。



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