ニチリョク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチリョク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する総合シニアライフサポート企業です。霊園や納骨堂の販売代行を行うお墓事業と、葬儀施行を行う葬祭事業を主軸としています。2025年3月期は、主力のお墓事業・葬祭事業ともに苦戦し減収となりました。利益面では営業損失、経常損失、当期純損失を計上しています。


※本記事は、株式会社ニチリョク の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチリョクってどんな会社?


お墓事業と葬祭事業を柱に、終活全般を支援するシニアライフサポート企業です。

(1) 会社概要


1966年に設立され、1980年に墓石の販売・施工業を開始しました。1998年に株式を店頭公開し、2000年には葬祭事業へ参入しています。2013年に「ラステル」ブランド等の展開を進めつつJASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

同社は連結子会社を持たない単独体制で事業を行っており、従業員数は101名です。筆頭株主は投資ファンドの運営を行う事業組合で、第2位は個人株主です。第3位には信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
バリューアップ・ファンド投資事業有限責任組合 43.84%
阪田 和弘 1.24%
日本生命保険相互会社 1.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は渡邊将志氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
渡邊 将志 代表取締役社長営業サポート本部長 日興證券を経て松井証券に入社し取締役等を歴任。渡邊将志オフィスを設立し代表取締役に就任。2021年より同社取締役を務め、2025年6月より現職。
篠田 丈 取締役会長営業本部長 小松製作所、日興證券、外資系証券会社を経て、T&Rホールディングス代表取締役やアリスタゴラ・アドバイザーズ代表取締役会長等を務める。2025年6月より現職。
服部 聡昌 取締役経営統括本部長 ニッセン、監査法人M&G、日本管理センター(現JPMC)取締役グループCFOなどを経て、2025年6月より現職。
尾上 正幸 取締役 東邦チタニウム、東京葬祭取締役を経て同社に入社。常務取締役マーケティング本部長兼葬祭事業本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
三浦 理砂 取締役 西武・プリンスホテルズワールドワイド、生命保険会社各社を経て同社に入社。執行役員終活事業部長などを務め、2025年6月より現職。


社外取締役は、古内耕太郎(元燦ホールディングス社長)、勝又夕紀(Office9代表取締役社長)、藪田晃彰(JFI代表取締役社長)、三宅哲夫(アリスタゴラ・アドバイザーズ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「お墓事業(屋外墓地)」「お墓事業(納骨堂)」「葬祭事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) お墓事業(屋外墓地)


霊園の開発支援、墓地・墓石の販売および施工、霊園管理業務を行っています。宗教法人等と業務提携契約を結び、墓地の募集代行や墓石の販売を行います。一般顧客が主な顧客となります。

収益は、顧客からの墓石工事代金、霊園管理料、宗教法人からの募集手数料などで構成されています。運営は主に同社が行っています。

(2) お墓事業(納骨堂)


自動搬送式納骨堂(堂内陵墓)の企画開発、販売代行、管理運営を行っています。都心部を中心に展開し、参拝カードで遺骨が参拝ブースまで運ばれるシステムを提供しています。

収益は、契約者からの入金時に計上される販売手数料や、施設の管理料などが中心です。運営は同社が行っており、建設資金について宗教法人の債務保証を行う場合もあります。

(3) 葬祭事業


「ラステル」ブランドを中心とした葬儀会館の運営や、寺院での本堂葬儀などを提供しています。生花祭壇葬を特徴とし、家族葬から一般葬まで幅広く対応しています。

収益は、葬儀や法要の施行に伴う代金、仏壇・仏具の販売代金などから得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は30億円前後で推移していましたが、直近の2025年3月期は22.4億円へと大きく減少しました。利益面では黒字と赤字を繰り返しており、直近は営業損益、経常損益、当期純損益がいずれも赤字に転落しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26.2億円 29.8億円 32.2億円 28.5億円 22.4億円
経常利益 -1.4億円 1.8億円 1.4億円 2.2億円 -1.5億円
利益率(%) -5.3% 6.2% 4.3% 7.7% -6.6%
当期純利益 -2.9億円 1.3億円 1.2億円 2.8億円 -2.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が減少し、売上総利益率は低下しています。販管費は抑制傾向にあるものの減収幅をカバーできず、営業損益は赤字に転落しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 28.5億円 22.4億円
売上総利益 19.9億円 15.6億円
売上総利益率(%) 69.8% 69.6%
営業利益 2.8億円 -1.0億円
営業利益率(%) 10.0% -4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.3億円(構成比32%)、広告宣伝費が2.9億円(同17%)を占めています。売上原価については、外注費が1.0億円(同14%)、材料費が0.7億円(同10%)となっています。

(3) セグメント収益


お墓事業(屋外墓地)は主要霊園の在庫減少等により大幅な減収減益となりました。お墓事業(納骨堂)も販売件数が伸び悩み減収となり、赤字が継続しています。葬祭事業は単価・件数ともに減少し、減収および赤字転落となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
お墓事業(屋外墓地) 10.6億円 6.8億円 2.7億円 1.1億円 16.6%
お墓事業(納骨堂) 1.8億円 1.6億円 -0.5億円 -0.5億円 -33.1%
葬祭事業 16.1億円 14.0億円 6.4億円 4.9億円 35.0%
連結(合計) 28.5億円 22.4億円 2.8億円 -1.0億円 -4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ニチリョクは、葬儀単価向上と提携寺院開発による売上増加を目指しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、営業収支や利息支払いにより使用超過となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、保険積立金の解約や固定資産売却による収入があったものの、差入保証金の増加等により得られた資金は減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や短期借入金の減少により使用超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 0.9億円 -1.1億円
投資CF 3.5億円 1.5億円
財務CF -8.3億円 -2.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、終活に関連するあらゆるサービスを提供する「総合シニアライフサポート企業」として発展し続けることを目指しています。消費者に寄り添ったサービスの向上を第一に取り組み、法令遵守や経営効率性の向上を通じて企業価値の最大化を図る方針です。

(2) 企業文化


社会と事業の持続的な発展に向け、「人」「環境」「社会」の3つを主要テーマに掲げています。社員一人ひとりの可能性を引き出す人的資本経営や、霊園開発を通じた環境整備、豊かなシニアライフの創出による社会貢献を重視し、サステナビリティ委員会を通じて推進しています。

(3) 経営計画・目標


経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、売上高、営業利益、当期純利益に加え、株主利益重視の観点から収益拡大に伴うEPS(1株当たり当期純利益)を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


手元流動性の確保や継続企業の前提に関する疑義の解消に向け、都市型納骨堂の安定収益化、販売戦略の改革、財務の安定化などに注力しています。具体的には、既存霊園の改造や境内墓地の取り扱い強化、会員組織を通じた葬儀受注の拡大などを進め、収益力の再構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最大の資産と位置づけ、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。フレックスタイム制度の導入など柔軟な働き方を推進するとともに、採用競争力の維持や離職防止による組織力維持に努め、人的資本経営の実践を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 5.8年 4,548,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表を行っていないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性マネジメント職比率(28%)、女性社員比率(47%)、男性社員の育児休業取得率(1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続企業の前提に関する重要事象


2025年3月期に営業損失を計上し、依然として手元流動性資金の確保に支障が生じる可能性があることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。増資や収益改善策を進めていますが、実施途上であり不確実性が認められます。

(2) 開発資金の回収及び債務保証


宗教法人が霊園や納骨堂を開発する際、同社が資金負担や債務保証を行う場合があります。販売が計画通り進捗しない場合、保証金の回収長期化や債務保証の履行により、同社の資金繰りを圧迫する可能性があります。

(3) 少子超高齢化と市場変化


少子超高齢化により葬儀の簡素化や低価格帯の樹木葬への需要シフトが進んでいます。同業者間の価格競争や消費者の価値観の変化に対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。