※本記事は、株式会社京都きもの友禅ホールディングス の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京都きもの友禅ホールディングスってどんな会社?
振袖を中心とした呉服販売・レンタルを行う全国チェーン専門店を展開し、持株会社体制で事業再建を進める企業です。
■(1) 会社概要
1971年に株式会社マルカワとして設立され、1989年に京都きもの友禅株式会社へ商号変更しました。2002年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えを果たしました。2021年10月に持株会社体制へ移行し、商号を株式会社YU-WA Creation Holdingsに変更。その後、2024年8月に現在の株式会社京都きもの友禅ホールディングスへ商号変更しています。
2025年3月31日時点で、連結従業員数は361名、単体従業員数は18名です。筆頭株主は常任代理人の東海東京証券株式会社であり、第2位は資産管理を行う野村證券株式会社(常任代理人)となっています。第3位には個人株主が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Tokai Tokyo Securities (Asia) Limited | 21.60% |
| NOMURA INTERNATIONAL PLC A/C JAPAN FLOW | 3.20% |
| 河村 英博 | 2.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は浅香 竜也氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浅香 竜也 | 代表取締役社長 | 東京通運(現 SBSロジコム)、トーセイ、曽我、エポックジャパン(現 きずなホールディングス)を経て同社入社。総務人事部長、経営管理本部長等を歴任し、2025年3月より現職。 |
| 橋本 和之 | 常務取締役 | 2000年同社入社。営業一部長、営業副本部長、営業部長等を歴任。2024年4月より同社常務取締役、京都きもの友禅取締役営業本部長。 |
| 服部 雅親 | 取締役 | かざん、西日本和裁(現 プルミエール)を経て同社入社。営業本部長等を歴任し、2011年より代表取締役社長。2024年より京都きもの友禅代表取締役社長兼商品本部長等を務め、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、有川 勉(公認会計士)、宮澤 佐和子(公認会計士)、漆原 梢(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「和装事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 和装事業
振袖を中心とした呉服の販売およびレンタルを主軸とし、関連する宝飾品等の販売も行っています。全国チェーン展開による小売業を営んでおり、顧客に対しては販売代金等の割賦販売業務も提供しています。また、呉服に付随した写真撮影スタジオの運営や、オンラインストアでの呉服関連商品の販売も手掛けています。
主な収益源は、一般消費者への商品販売代金やレンタル料、写真撮影料などです。運営は主に連結子会社である株式会社京都きもの友禅が行っています。
■(2) その他(友の会事業)
割賦販売法に基づき会員積立業務を行っています。入会会員から毎月一定額を積み立ててもらい、「お買物カード」を発行します。積立金利用時にはボーナス分を付与することで、呉服販売の促進を助成しています。
収益モデルとしては、会員からの積立金管理に伴う運用益等が挙げられますが、主たる目的は販売促進の助成です。運営は連結子会社である株式会社京都きもの友禅友の会が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は2022年3月期をピークに減少傾向にあります。利益面では、2021年3月期は黒字でしたが、その後は赤字に転落し、損失計上が続いています。直近の2025年3月期は前期と比較して赤字幅は縮小しましたが、依然として厳しい状況が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 77億円 | 85億円 | 83億円 | 70億円 | 52億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | 0.2億円 | -2.7億円 | -10.6億円 | -7.5億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | 0.2% | -3.2% | -15.0% | -14.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.9億円 | -2.6億円 | -4.5億円 | -13.4億円 | -9.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益も減少しています。一方で、コスト構造の見直し等の施策により、販売費及び一般管理費は削減されましたが、売上の減少分を補うには至らず、営業損失が継続しています。ただし、営業損失および経常損失の額は前期より縮小しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 52億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.0% | 58.7% |
| 営業利益 | -10.4億円 | -7.3億円 |
| 営業利益率(%) | -14.8% | -14.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が15億円(構成比39%)、賃借料が7億円(同19%)を占めています。売上原価については、商品仕入高や加工費等が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは、「和装事業」の単一セグメントであり、個別サービス領域の利益は開示していません。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナスである一方、投資CFはプラス、財務CFはマイナスとなっており、本業の収益力が低下し、資産の回収や売却等で資金を得ながら借入金の返済を進めている「事業検討型」の状況と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6.4億円 | -2.7億円 |
| 投資CF | 0.8億円 | 0.1億円 |
| 財務CF | -1.9億円 | -5.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-39.4%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「日本の女性の美と夢と心のやすらぎを創造することを永遠のテーマとする」、「それを実現するために互いに協調し、自己の向上をはかることを最大の喜びとする」を基本理念としています。日本古来の伝統文化である「きもの」の普及に貢献し、お客様の喜びと社員の幸せを一体として実現することに存在意義があると考えています。
■(2) 企業文化
基本理念に基づき、お客様の喜び・満足、会社の利益確保、株主への還元の3つを同時に充足させることを重視しています。また、コンプライアンス体制の強化や、社員が多様な働き方を選択できる環境整備を通じて、ステークホルダーからの信頼構築と社員の定着率向上を図る文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期を抜本的な収益性確保のための再生フェーズと位置付け、コスト構造の見直しや販売戦略等を中心に業績回復に向けた施策に取り組んでいます。2025年3月期は営業損失の計上となりましたが、改善施策の効果発現により、2026年3月期以降の黒字化達成を見込んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
業績回復に向け、主にコスト構造の見直しと販売戦略の再構築に注力しています。店舗収益性の改善として不採算店舗の閉店や固定費削減を進めるほか、写真スタジオ等の周辺事業を縮小・再編し、選択と集中を図ります。また、振袖広告戦略においては、デジタルマーケティングへの移行や組織体制の見直しを行い、新規顧客の集客強化に取り組みます。
さらに、営業販売体制においては、大型店外催事から店舗内催事へのシフトによる経費削減や、販売コンプライアンス体制の強化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
販売業務において顧客との継続的な関係維持が重要であるため、人材の定着を不可欠としています。高い接客技術と商品知識を習得できる教育体制の整備や、中途採用者へのサポート体制構築に取り組んでいます。また、性別や年齢を問わない多様な人材登用を推進し、テレワークやフレックスタイム制などの働き方改革を通じて、社員が長く安心して働ける環境作りを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.6歳 | 14.8年 | 3,906,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 50.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者)については、該当者がいないため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結子会社における正社員の女性比率(76.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化による市場縮小
売上全体の約3割を振袖販売・レンタルが占めているため、少子化の進行による新成人の減少が継続する場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 継続企業の前提に関する事象
和装店舗運営事業における売上の大幅減少により多額の損失を計上し、借入金の財務制限条項に抵触しました。これにより継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在していますが、資金繰りの検討結果等から重要な不確実性は認められないと判断しています。
■(3) 人材の確保および育成
呉服販売業務においては優秀な人材の確保と育成が重要です。要員計画を下回る採用状況等が生じた場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 個人情報保護法の規制および改正
個人情報保護法の規制強化により、従来の販売促進手法であるダイレクトメール用の個人情報入手が困難になっています。デジタルマーケティングへの移行を進めていますが、広告宣伝費の増加等が業績に影響を与える可能性があります。



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