※本記事は、株式会社京都きもの友禅ホールディングスの有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京都きもの友禅ホールディングスってどんな会社?
振袖等を中心とした和装事業を展開し、販売・レンタルから撮影までトータルで提供する企業です。
■(1) 会社概要
1967年に創業し、1971年に設立されました。1989年に京都きもの友禅へ商号を変更し、2000年に東証二部、2002年に東証一部へ上場しました。その後、2021年に持株会社体制へ移行し、2024年に現在の京都きもの友禅ホールディングスへ商号を変更し、継続的な組織再編と事業基盤の強化を進めています。
現在の従業員数はグループ全体で335名、単体で18名体制です。筆頭株主は主要な商品仕入先であり事業会社のナガホリで、第2位および第3位は証券会社が名を連ねています。主力事業と関係の深い事業会社とのつながりを維持しつつ、安定的な事業運営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ナガホリ | 3.86% |
| 楽天証券共有口 | 2.48% |
| SBI証券 | 2.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は浅香竜也氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浅香竜也 | 代表取締役社長 | 2001年東京通運入社。トーセイ、曽我、エポックジャパンを経て2017年に同社入社。総務人事部長などを経て2024年に代表取締役社長に就任。京都きもの友禅の代表取締役社長も兼務。 |
| 橋本和之 | 常務取締役 | 2000年に同社入社。営業一部長などを歴任し2013年に取締役就任。その後、京都きもの友禅の代表取締役社長などを経て、2024年より常務取締役に就任。 |
| 服部雅親 | 取締役 | 1982年かざん入社。西日本和裁を経て1995年に同社入社。営業三部長などを経て2013年に代表取締役社長に就任。2024年に常務取締役となり、2025年より取締役。 |
社外取締役は、有川勉(有川公認会計士事務所開業)、宮澤佐和子(赤坂有限責任監査法人)、漆原梢(みそら法律事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「和装事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 和装事業
振袖や一般呉服などの和装関連商品の販売およびレンタルを中心に、顧客の人生の節目に関わるサービスを提供しています。また、宝飾品の販売や、振袖成約者に向けた着付・ヘアメイク、写真撮影スタジオの運営、オンラインストアでの関連商品販売も展開しています。
収益源は、顧客からの振袖等の商品販売・レンタル代金や写真撮影料などです。さらに、会員積立業務を通じた販売促進の助成も行っています。運営は主に京都きもの友禅と京都きもの友禅友の会が担い、京都きもの友禅ホールディングスが持株会社としてグループ全体の経営管理を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は長らく減少傾向にありましたが、直近の期間において回復の兆しを見せています。利益面では数期にわたり経常損失を計上する厳しい状況が続いていましたが、構造改革と販売改革の成果が表れ、直近では経常利益および当期利益ともに黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 83億円 | 70億円 | 52億円 | 60億円 |
| 経常利益 | 0.2億円 | -3億円 | -11億円 | -7億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 0.2% | -3.2% | -15.0% | -14.5% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | -5億円 | -13億円 | -9億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の回復に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率が改善していることに加え、徹底したコスト削減の効果もあり、営業損失から営業利益へと大きく改善を遂げ、本業の収益力が回復していることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 60億円 |
| 売上総利益 | 30億円 | 37億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.7% | 61.5% |
| 営業利益 | -7億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | -14.2% | 4.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比38%)、賃借料が6億円(同18%)、広告宣伝費が4億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは和装事業の単一セグメントですが、各種プロジェクトによる安定した受注確保や、振袖販売・レンタルにおける集客施策の見直しが奏功しました。また、オンラインストアの伸長等も寄与し、全体の収益改善に大きく貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 和装事業 | 52億円 | 60億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「記憶に、そして心に。」というMissionを、同社グループの存在意義及び判断・行動の基準と位置づけています。商品そのものの品質に加え、接客、提案、顧客理解及びアフターフォロー等を通じて、顧客や家族の記憶と心に残る価値を提供することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
Missionを経営の軸とし、顧客の喜び・満足、社員の成長と働きがい、収益力向上、並びに株主への還元を同時に実現するという価値観を重視しています。また、多様な価値観を尊重し合い、社員一人ひとりが自分らしく力を発揮して、安心して長く働ける組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期を「再生フェーズ」、2026年3月期を「実行フェーズ」と位置づけ、構造改革及び販売改革を通じて営業黒字を達成しました。2027年3月期以降は「成長フェーズ」として、黒字化を一過性の成果にとどめず、持続的に利益を創出できる経営基盤への移行を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の収益基盤強化として、振袖・一般呉服・写真・ECなどの各事業を個別最適ではなく顧客導線全体で捉え直し、顧客接点の強化とLTV(顧客生涯価値)の最大化を図ります。また、Missionを中核とした人的資本の強化や販売品質の向上を推進し、持続的な成長モデルを構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本の強化を重要な経営課題と位置づけ、店舗人材から経営人材までを含めた全社的な育成、適正配置、およびマネジメント力の向上を図ります。性別や年齢に隔たりのない人材登用を推進するとともに、テレワークやフレックスタイム制度を導入し、多様な働き方を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 13.9年 | 3,733,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 57.1% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 0.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化による市場縮小リスク
売上全体に占める振袖の販売およびレンタルの割合が3割近くを占めています。少子化の進行に伴って新成人が減少しており、今後も継続して同様の傾向が続く場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 販売人材の確保と育成に関するリスク
同社グループが営む呉服販売業務においては、高い接客技術と商品知識を持つ優秀な人材を適時に確保し、育成していくことが重要です。要員計画数を下回る採用状況等が生じた場合、同社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 個人情報の管理とセキュリティリスク
顧客データベースへのアクセス環境やセキュリティシステムの改善に努め、社員教育や内部管理体制の強化を徹底しています。しかし、万が一顧客の個人情報が流出するような事態が発生した場合、同社グループの業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。



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