うかい 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

うかい 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の外食企業。「うかい鳥山」「うかい亭」等の高級レストラン経営、洋菓子店「アトリエうかい」の物販事業、箱根ガラスの森美術館の運営を行う。2025年3月期の業績は、売上高が増加したものの、コスト増や固定資産売却損等の計上により、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも減益となった。


※本記事は、株式会社うかい の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. うかいってどんな会社?


高級鉄板料理店「うかい亭」や和食店を運営するほか、人気のクッキー缶を手掛ける洋菓子事業や美術館運営も展開する企業です。

(1) 会社概要


1964年に東京都八王子市で「うかい鳥山」を創業し、1974年に「八王子うかい亭」を開店しました。1996年には「箱根ガラスの森」を開設し文化事業へ進出。2004年にジャスダック証券取引所(現・東証スタンダード)へ上場を果たしました。2013年には洋菓子店「アトリエうかい」を開店し、物販事業を拡大しています。

同社(単体)の従業員数は658名です。筆頭株主は創業家資産管理団体の一般社団法人鵜飼家持株会で、第2位は同社沿革において第三者割当増資を引き受けている事業会社の京王電鉄、第3位は事業会社のキッコーマンとなっています。

氏名 持株比率
一般社団法人鵜飼家持株会 24.27%
京王電鉄 13.71%
キッコーマン 8.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は紺野俊也氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
紺野 俊也 代表取締役社長 1991年入社。洋食事業部総料理長、営業本部長、事業本部長兼経営企画室担当などを経て2021年より現職。UKAIzm corporation取締役を兼務。
松崎 城康 専務取締役 2000年入社。横浜うかい亭店長、和食事業部長、企画推進部長、統括本部長などを歴任。2025年4月より本社管理部門管掌として現職。
笹野 雄一郎 常務取締役 2000年入社。銀座うかい亭総料理長、洋食事業部総料理長、レストラン事業部長などを歴任。2025年4月より事業開発担当として現職。
峰尾 亨 取締役 1976年入社。洋食事業部長、常務取締役管理本部長、専務取締役文化事業部担当兼渉外担当などを歴任。2025年4月より事業運営部門管掌として現職。


社外取締役は、永田正(元京王電鉄代表取締役会長)、荒ヶ田和也(元アサヒビール専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レストラン事業部」「物販事業部」「文化事業部」事業を展開しています。

レストラン事業部


和食および洋食のディナーレストランを経営しています。和食店は「うかい鳥山」「とうふ屋うかい」など6店舗、洋食店は「うかい亭」「グリルうかい」など8店舗を展開し、高付加価値な料理とサービスを提供しています。

収益は、来店客からの飲食代金および店頭での商品販売代金です。運営は株式会社うかいが行っています。

物販事業部


洋菓子店「アトリエうかい」を展開し、クッキーなどの物販商品の開発・製造および販売を行っています。店舗は「エキュート品川」「髙島屋京都店」「髙島屋大阪店」「グランスタ東京」など5店舗を展開しています。

収益は、顧客への商品販売代金です。運営は株式会社うかいが行っています。

文化事業部


神奈川県箱根町にて「箱根ガラスの森」を運営しています。ヴェネチアン・グラスの美術工芸品の展示を行う美術館に加え、ミュージアム・ショップやレストランを併設しています。

収益は、来館者からの入館料、およびショップでの商品販売代金、レストランでの飲食代金です。運営は株式会社うかいが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍からの回復により増加傾向にあり、第43期には135億円に達しました。一方、利益面では第41期に黒字転換を果たした後、第43期は人件費増や固定資産売却損等の計上により減益となりました。特に当期純利益は大幅な減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 86億円 98億円 127億円 133億円 135億円
経常利益 -12億円 -5億円 9億円 9億円 7億円
利益率(%) -13.5% -4.9% 6.7% 6.5% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -17億円 -9億円 9億円 9億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は微増となりましたが、売上原価率の改善にもかかわらず、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減益となりました。営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 133億円 135億円
売上総利益 74億円 76億円
売上総利益率(%) 55.8% 56.8%
営業利益 9億円 7億円
営業利益率(%) 6.7% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が23億円(構成比34%)、その他が13億円(同19%)、賃借料が10億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


レストラン事業部は客単価上昇により微増収となりましたが、店舗閉鎖等の影響もあり減益でした。物販事業部は新店舗出店等により増収増益を達成しました。文化事業部はインバウンド需要等により増収でしたが、利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
レストラン事業部 105億円 106億円 15億円 15億円 14.4%
物販事業部 17億円 18億円 2億円 2億円 11.2%
文化事業部 11億円 11億円 1億円 1億円 8.7%
調整額 - - -10億円 -11億円 -
連結(合計) 133億円 135億円 9億円 7億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業に必要な資金を安定的に維持確保することを基本方針としています。

営業活動では、税引前利益や固定資産売却損の計上等により、資金が増加しました。投資活動では、有形固定資産の売却による収入が大きく、資金が大幅に増加しました。財務活動では、借入金の返済等により、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12億円 12億円
投資CF -2億円 29億円
財務CF -14億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は基本理念として「利は人の喜びの陰にあり」、経営精神として「同社にかかわるすべての人々を大切にし、そしてそのすべての人々により大切にされる企業でありたい」を掲げています。また、店舗理念として「100年続く店づくり」を掲げ、事業活動を通じて多くの人々に喜びや感動を提供し、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、創業60周年を機に創業第2章として「未来に向かって前に進む」を行動指針に掲げています。伝統と革新を内に秘め、既存の手段や仕組みに囚われず自由に発想し、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する姿勢を重視しています。また、社内外に志を共にできる同士を作り、共創を心掛ける文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「長期経営構想2035」および「中期経営計画2030」を策定しています。2030年度および2035年度における数値目標として以下を設定しています。

* 2030年度:売上高140億円、営業利益8.5億円、営業利益率6.1%、ROE 5.0%、新規事業創出件数5件
* 2035年度:売上高160億円、営業利益12億円、営業利益率7.5%、ROE 8.0%、新規事業創出件数10件

(4) 成長戦略と重点施策


長期経営構想実現のため、「収益力の向上」と「人材力の強化・現場環境の充実」を重点施策としています。子会社を中心とした新規事業「UKAIzm」によるブランドプロデュースや新業態開発、物販事業での製造キャパシティ拡大(新工房設立)を推進します。また、既存レストラン事業ではブランド価値の維持と段階的な拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材力の強化」を最重要課題の一つと位置づけ、プロフェッショナル人材の育成を推進しています。具体的には、社内教育制度「UKAI Academy」の開校、他店舗研修制度、職種変更の柔軟化などを実施しています。また、従業員満足度向上のため、時代に合わせた現場環境の充実や評価制度の再構築を行い、優秀な人材の確保と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.2歳 8.1年 4,938,313円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.1%
男性育児休業取得率 64.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用) 71.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 109.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性


レストラン店舗での食中毒や、物販事業における食品表示法・食品衛生法違反等の事故が発生した場合、ブランドイメージの低下や対応費用の負担により、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はHACCPに沿った衛生管理やISO22000の取得などにより、安全性確保に努めています。

(2) 人材の確保及び育成


「おもてなし」と「最高の料理」を提供するためには優秀な人材が不可欠ですが、採用環境の悪化や人件費の高騰、育成・定着の遅れが生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は積極的な採用活動や「UKAI Academy」等の教育制度、職場環境の改善により対応しています。

(3) コンプライアンスについて


役職員による法令違反や不適切な行為が発生した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はリスク管理委員会やコンプライアンス分科会を設置し、研修等を通じて意識の浸透と定着を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。