星医療酸器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

星医療酸器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する星医療酸器は、医療用ガスの製造販売や在宅医療機器のレンタル、医療用ガス設備工事、介護福祉事業などを展開する企業です。直近の業績は、在宅酸素療法機器のレンタルが堅調に推移し増収を達成した一方、原材料や物流費などコスト増加の影響を受け減益となっています。


※本記事は、星医療酸器の有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 星医療酸器ってどんな会社?


星医療酸器は、医療用ガスの製造・販売や在宅医療機器のレンタルを通じ、医療と介護の現場を支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1974年に設立され、1979年に医療用ガス配管設備工事を開始しました。1988年には自社で酸素充填工場を新設し、2000年に店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。その後、在宅酸素事業や看護学校事業を譲り受け、介護福祉関連事業にも参入するなど事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で527名、単体で453名です。筆頭株主は星医療酸器取引先持株会で、第2位はUH Partners 2、第3位は光通信です。

氏名 持株比率
星医療酸器取引先持株会 18.50%
UH Partners 2 7.50%
光通信 6.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性0名の計16名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は星幸男氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
星幸男 代表取締役社長 1988年7月同社入社。1994年6月取締役東京事業所長、2000年4月常務取締役、2001年10月専務取締役などを経て、2005年6月より現職。
星昌成 取締役会長 1969年9月星医療酸器入店。1974年4月取締役、1987年6月代表取締役専務、1994年6月代表取締役社長などを経て、2014年6月より現職。
星昌浩 専務取締役社長室長 1988年4月同社入社。1994年6月取締役、1999年6月常務取締役を経て、2005年6月より現職。
茂垣行雄 専務取締役千葉・松戸・北関東・南東京・京浜・横浜・神奈川・西東京・甲府地区統括兼管理本部長兼購買部長 1984年6月同社入社。2004年6月取締役、エイ・エム・シー代表取締役、2006年4月常務取締役などを経て、2024年10月より現職。
額狩光男 常務取締役営業本部長兼札幌・岩手・東北・郡山・栃木・茨城地区統括兼北海道・九州地区担当 1987年10月同社入社。2004年6月アイ・エム・シー代表取締役、2006年6月取締役、2011年5月常務取締役などを経て、2024年6月より現職。
星徹 取締役経営戦略本部長 2017年4月同社入社。2023年4月経営戦略本部長、2024年4月上席執行役員を経て、2026年4月より現職。
星輝 取締役財務部長兼社長室 2018年5月同社入社。2023年4月財務部長兼社長室、2024年4月上席執行役員を経て、2026年4月より現職。
鈴木康之 取締役 1995年4月同社入社。2010年7月名古屋支店長、2014年6月取締役、2023年9月テイ・エム・シー代表取締役社長を経て、2024年4月より現職。
徳永大輔 取締役兼関西地区担当兼中四国地区担当 1995年4月同社入社。2014年6月星医療酸器関西代表取締役、2016年6月取締役などを経て、2024年6月より現職。
早水和博 取締役医療設備事業部長 1986年5月同社入社。1995年10月星エンジニアリング取締役、2015年4月同社医療設備事業部長などを経て、2017年6月より現職。


社外取締役は、八木雄一氏(八木税理士事務所所長)、飯塚孝徳氏(飯塚総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用ガス関連事業」「在宅医療関連事業」「医療用ガス設備工事関連事業」「介護福祉関連事業」「施設介護関連事業」および「その他事業」を展開しています。

医療用ガス関連事業


医療機関向けに、患者の生命維持に直結する医療用酸素や麻酔用ガスなどの製造・販売を行っています。また、医療用ガス関連商品の企画と販売も展開しています。

医療機関からの医療用ガスの販売代金が主な収益源です。運営は同社が販売や企画を行い、エイ・エム・シー、アイ・エム・シー、ケイ・エム・シー、テイ・エム・シーの製造子会社4社がガスの製造を担っています。

在宅医療関連事業


呼吸器疾患や睡眠時無呼吸症候群などの在宅患者向けに、在宅酸素発生器や持続陽圧呼吸療法(CPAP)用機器のレンタルおよび販売を行っています。

患者や医療機関からの機器レンタル料や販売代金が主な収益源です。運営は同社が機器の仕入れからレンタル業務、販売までを一貫して手掛けています。

医療用ガス設備工事関連事業


医療施設向けに、医療用ガス配管設備や空調・電源関連工事の設計・施工を行っています。また、設備の定期的な保守点検や消火設備工事も担っています。

医療機関からの工事請負代金や保守メンテナンス料が主な収益源です。運営は同社が単独で行っています。

介護福祉関連事業


高齢者や要介護者向けに、介護福祉関連用品や機器のレンタルおよび販売を行っています。また、訪問看護や居宅介護支援事業所も運営し、地域医療と介護の連携を図っています。

利用者からの福祉用具レンタル料、販売代金、および訪問看護などのサービス利用料が主な収益源です。運営は同社および虎彰が行っています。

施設介護関連事業


看護師が24時間常駐する体制を整えた介護付有料老人ホームや、地域密着型の通所介護施設(デイサービス)の運営を行っています。

入居者からの施設入居一時金や月額利用料、デイサービスの利用料が主な収益源です。運営は同社が行っています。

その他事業


看護学校向けの商品販売や、医療現場で必要とされる医療器具関連商品の仕入れ・販売を行っています。

顧客からの商品販売代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は128億円から155億円へと継続的に拡大しています。一方、経常利益は20億円前後で安定して推移していますが、直近ではコスト上昇の影響等によりわずかに減益となりました。利益率も12%〜13%台を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 128億円 138億円 148億円 151億円 155億円
経常利益 16億円 18億円 20億円 21億円 20億円
利益率(%) 12.7% 13.2% 13.8% 13.6% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 11億円 12億円 22億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、仕入価格や物流費の高騰により売上総利益率は低下しています。これに人件費などの増加が加わり、営業利益および営業利益率も前期を下回る結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 151億円 155億円
売上総利益 76億円 77億円
売上総利益率(%) 50.1% 49.5%
営業利益 20億円 19億円
営業利益率(%) 13.1% 12.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が22億円(構成比39%)、減価償却費が3億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である在宅医療関連事業はレンタル台数の増加により増収を達成しました。一方、医療用ガス設備工事関連事業は建築費高騰による設備投資減少の影響を受け減収となるなど、事業ごとの収益動向にばらつきが見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医療用ガス関連事業 40億円 39億円
在宅医療関連事業 67億円 72億円
医療用ガス設備工事関連事業 19億円 17億円
介護福祉関連事業 12億円 12億円
施設介護関連事業 3億円 4億円
その他事業 10億円 11億円
連結(合計) 151億円 155億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で創出した安定的なキャッシュを元手に設備投資を行い、余剰資金で借入金の返済や株主還元を進める優良な財務体質を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 25億円
投資CF -53億円 -15億円
財務CF -7億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均とほぼ同水準ですが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たち星医療酸器グループは生命(いのち)を守る最前線で社会に貢献しつづけます」という経営理念のもと、医療現場を支える社会インフラ企業として事業を展開しています。患者の生命維持に直結する医療用酸素の安定供給を確保することが、同社グループの重要な社会的責務であると認識しています。

(2) 企業文化


従業員一人ひとりの日々の業務に真摯に向き合う誠実な姿勢が、顧客からの厚い信頼につながっています。同社は「人的資本」を基盤とした組織力を強みとしており、医療機関や患者にサービスを届けるエッセンシャルワーカーとして、強い責任感を持って社会課題の解決に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


経営の効率性および収益性を示す重要な経営指標として、「売上高営業利益率」を最重要KPIに位置付けています。同指標は各事業セグメントや営業拠点単位でも月次で継続的にモニタリングされています。自己資本比率の向上による財務体質の強化や、継続的な株主還元にも取り組み、企業価値の向上を目指しています。

* 売上高営業利益率:12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


高齢化の進展や地域包括ケアシステムの推進を成長機会と捉え、医療・介護の連携によるサービス提供体制の強化を図ります。M&Aによる事業基盤の拡充や販路の拡大に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務プロセスの効率化を重点施策としています。各事業では、酸素充填機能の内製化やICT導入による業務効率化を進め、収益基盤の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材こそが企業価値の源泉であると位置づけ、安定的な人材確保とスキル向上の両立を推進しています。採用面ではSNSや動画の活用、労働条件の見直しを通じて「選ばれる職場」づくりに注力し、経営理念に共感できる人材の獲得を目指しています。育成面では、業務に関連する資格取得支援や研修プログラムを充実させ、従業員の定着化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.9歳 10.3年 5,622,249円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 60.8%
男女賃金差異(全労働者) 57.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 94.1%


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 薬価の改定に伴う収益変動リスク


同社の売上高において医療用ガスの割合は3割を超えており、これらは薬価基準に収載されています。薬価基準は販売価格の上限として機能するため、今後の薬価改定の内容によっては医療用ガスなどの販売価格に影響が及び、同社の経営成績や財務状況にマイナスの影響を与える可能性があります。

(2) 法的規制や許認可の変更リスク


同社の事業は医療用ガスの製造販売や配管設備の施工、介護福祉関連機器のレンタルなど多岐にわたり、監督官庁の許可や登録を受けて活動しています。法令違反や訴訟が生じた場合、あるいは関連する法令や制度の改正が行われた場合には、事業の継続や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 燃料・物流費の高騰と原材料調達リスク


世界的なエネルギーコストや物流費の高騰が続いており、メーカーからの仕入れ価格上昇が利益率を圧迫する要因となっています。また、天災や事故により原材料メーカーの生産活動が停止し、安定した原材料の調達が困難になった場合、顧客への供給責任を果たせなくなるリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。