※本記事は、株式会社NEW ART HOLDINGS の有価証券報告書(第31期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NEW ART HOLDINGSってどんな会社?
ブライダルジュエリー「銀座ダイヤモンドシライシ」等の運営を主力に、アート、食品、エステ、リゾート開発等を展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1994年に株式会社ダイヤモンドシライシとして設立し、銀座本店を開設しました。2000年に株式を店頭登録し、2016年には持株会社体制へ移行しました。その後、台湾や上海、香港への出店など海外展開を加速させるとともに、2022年に軽井沢のリゾート開発会社を子会社化しました。2024年には香港の食品会社Wah Full Group Limited(現New Art Wah Full Limited)を子会社化し、事業の多角化を進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は911名、単体では67名です。筆頭株主は創業者の白石幸生氏で、第2位は美術品販売を行う株式会社ホワイトストーン、第3位は白石勝代氏となっており、創業者およびその関連企業・個人が大株主の上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| YUKIO SHIRAISHI | 21.00% |
| ホワイトストーン | 9.25% |
| 白石 勝代 | 8.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性4名の計17名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役会長は白石幸生氏です。社外取締役比率は17.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 白石 幸生 | 代表取締役会長 | 1967年ギャラリー白石(現Whitestone Gallery)創業。1994年ダイヤモンドシライシ(現同社)創業。2014年より同社代表取締役会長。2025年6月より現職。 |
| 吉森 章 | 取締役社長 | 住友化学工業、日本アーンストアンドヤングコンサルティングを経て、Lush Inc.副社長、コトブキホールディングス社長等を歴任。2018年同社入社。2025年6月より現職。 |
| 白石 哲也 | 取締役 | 1996年ダイヤモンドシライシ(現同社)取締役就任。ニューアート・スポーツ社長、ニューアート・ヘルス&ビューティー社長等を歴任。2023年同社取締役社長を経て、2024年6月より現職。 |
| 小崎 愼一郎 | 取締役 | 西鉄シティホテルを経て、2007年シーマ(現同社)入社。九州営業部部長、執行役員西日本営業部部長、社長室室長等を歴任。2022年6月より現職(総務部長兼務)。 |
| 福田 悟士 | 取締役 | クレオ、リアル、AOSテクノロジーズを経て2014年同社入社。WEB集客部部長、執行役員等を歴任。2024年9月より現職(IT・マーケティング本部本部長兼務)。 |
| 濵野 えり | 取締役 | 2007年シーマ(現同社)入社。銀座ダイヤモンドシライシ銀座本店店長、ニューアート・シーマ常務取締役等を経て、2024年6月より現職(NEW ART社長兼務)。 |
| 芥川 宏一郎 | 取締役 | 肥後銀行にて上海駐在員事務所所長、市場金融部グループ長等を歴任。2024年同社入社、成功企業パートナー連合海外事業推進室室長。2024年6月より現職。 |
| CHAN Fei | 取締役 | Jet SpeedFoods Limited Director、Fourseas HongKong Investment Limited Director等を現任。2024年6月より現職。 |
| 石田 直也 | 取締役 | みずほ銀行を経て2022年同社入社。経営企画部兼会長秘書、NEW ART貴金属総合研究所社長を歴任。2025年6月より現職。 |
| 塚本 モニカ | 取締役 | 2001年ラ・パルレ入社。各店店長、エリア長マネージャーを経て、2025年ニューアート・ヘルス&ビューティー社長就任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、妙見聡子(三鈴代表取締役)、小山政彦(風土代表取締役会長)、法木安城(あかし総合会計事務所所属)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ジュエリー・アート・オークション事業」「食品事業」「ヘルス&ビューティー事業」「リゾート開発事業」および「その他」事業を展開しています。
■ジュエリー・アート・オークション事業
「銀座ダイヤモンドシライシ」「エクセルコ ダイヤモンド」のブランドでブライダルジュエリー(婚約指輪・結婚指輪)を製造・販売するほか、美術品の販売やアートオークションの企画・運営を行っています。顧客は主に結婚を予定するカップルや美術品コレクター、投資家などです。
収益は、ジュエリーや美術品の販売代金、オークションの手数料収入などから得ています。運営は、ジュエリー事業を主にNEW ART、NEW ART HOLDINGS、海外現地法人が担い、アート・オークション関連はニューアート・エストウェストオークションズ等が担当しています。
■食品事業
主に香港において、加工冷凍肉・加工冷蔵肉、魚介類製品の販売を行っています。日本の食材を中心とした高品質な食品を提供し、現地の飲食店や小売店、消費者などを顧客としています。
収益は、食肉や魚介類製品の販売代金から得ています。運営は、2024年にグループ入りしたNew Art Wah Full Limited(旧商号:Wah Full Group Limited)およびその関係会社が行っています。
■ヘルス&ビューティー事業
エステティックサロン「ラ・パルレ」の運営に加え、化粧品や健康食品等の製造・販売を行っています。美容や健康に関心のある一般消費者を主な顧客としています。
収益は、エステティックサービスの施術料や関連商品の販売代金から得ています。運営は、ニューアート・ヘルス&ビューティーおよび台湾帕蕾拉有限公司が行っています。
■リゾート開発事業
軽井沢エリアを中心に、ホテルの運営や結婚式場の運営、リゾート開発事業を行っています。観光客やリゾートウェディングの利用者、リゾート物件の購入者などを顧客としています。
収益は、宿泊料、挙式・披露宴の利用料、不動産の販売代金などから得ています。運営は、軽井沢エレガンスカンパニーおよびニューアート・リゾートが行っています。
■その他事業
クレジット事業、ゴルフ用品の製造・販売、関連スポーツ用品の開発・製造などを行っています。
収益は、クレジット手数料やゴルフ用品等の販売代金から得ています。運営は、ニューアート・フィンテックおよびニューアート・スポーツが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益、当期利益ともに増加基調を維持しており、高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 189億円 | 187億円 | 215億円 | 211億円 | 276億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 29億円 | 34億円 | 29億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 12.9% | 15.7% | 15.7% | 13.8% | 13.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 15億円 | 20億円 | 11億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しましたが、原価率の上昇により売上総利益率は低下しました。一方、営業利益は増加し、高い利益率を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 211億円 | 276億円 |
| 売上総利益 | 137億円 | 168億円 |
| 売上総利益率(%) | 64.9% | 60.7% |
| 営業利益 | 29億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 13.6% | 14.1% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が32億円(構成比25%)、給与手当が26億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のジュエリー・アート・オークション事業が増収増益を牽引しました。また、新たに連結された食品事業が売上高に大きく寄与しました。ヘルス&ビューティー事業は損失が縮小しましたが、リゾート開発事業とその他事業は損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ジュエリー・アート・オークション事業 | 193億円 | 211億円 | 39億円 | 48億円 | 22.7% |
| 食品事業 | - | 47億円 | - | 0.9億円 | 1.9% |
| ヘルス&ビューティー事業 | 13億円 | 14億円 | -5.2億円 | -3.2億円 | -22.6% |
| リゾート開発事業 | 2.9億円 | 2.8億円 | 0.0億円 | -0.5億円 | -18.1% |
| その他事業 | 1.4億円 | 1.2億円 | -1.0億円 | -0.5億円 | -43.5% |
| 調整額 | -0.4億円 | -0.5億円 | -4.2億円 | -5.8億円 | - |
| 連結(合計) | 211億円 | 276億円 | 29億円 | 39億円 | 14.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得たキャッシュを元に、投資活動や借入金の返済を行っている健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | 18億円 |
| 投資CF | -14億円 | -5億円 |
| 財務CF | -15億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「みんなの夢の企業グループ NEW ARTはアートの持てるすべての力であなたを美と健康と幸せに導きます」という企業理念を掲げています。美しいものや新しいアイデアの商品・サービスを提供することで社会に貢献し、株主、投資家、顧客をはじめとする関係者から信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、常に革新的な企業を目指し、今までにない新しい文化の創造を図ることを重視しています。創業時からのブライダルジュエリー販売を通じて培った、満足いただける商品とサービスの提供による社会貢献の精神を基盤としつつ、持株会社体制のもとで積極的に新規事業に取り組み、事業の多角化を進める挑戦的な風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
株主利益および企業価値の最大化を観点に、事業規模の拡大と収益力の向上に取り組んでいます。収益力の指標としては営業利益率を重視しており、売上原価率を低く抑えながら売上増を図り、営業利益率20%の早期実現を目指しています。また、株主重視の観点からEPS(1株当たり当期純利益)とROE(自己資本利益率)の向上を意識した経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力のブライダルジュエリー事業では、ブランドの浸透と価値向上を図り、シェア拡大を目指します。また、成功企業パートナー連合として進出した香港食品事業をはじめ、新規分野へのアプローチを進め、複数事業化による安定経営とシナジー効果の最大化を図ります。店舗展開では、国内外での効率的なネットワーク構築と収益性重視の運営を徹底します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性を確保し、女性が長期的に安心して働ける環境づくりを重視しています。女性役員の積極的な登用や、育児休業後の復職支援制度(時短勤務の拡充など)を推進しています。また、国籍や年齢に関係ない能力重視の採用・登用を行い、海外人材の活用や高齢者の雇用も進めています。これらにより、多様な視点を取り入れた経営と組織の活性化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.0歳 | 5.1年 | 5,226,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 34.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は従業員規模が300人以下のため、賃金差異については有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ブライダルジュエリー市場の縮小
主力のブライダルジュエリー事業は、国内の少子化・晩婚化による婚姻組数の減少の影響を受けます。市場規模の縮小傾向が続く中、競合他社の増加や低価格競争の激化が進めば、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は海外展開やブライダル以外の商材開発を進めています。
■(2) 原材料価格および為替変動の影響
ダイヤモンド・ルースや地金(プラチナ等)、食品原材料の価格は、国際相場や為替レートの変動の影響を強く受けます。特に円安の進行や地政学的リスクによる供給不安は仕入価格の上昇要因となり、販売価格への転嫁が困難な場合、利益を圧迫するリスクがあります。
■(3) 海外展開および地政学的リスク
イスラエルや香港など海外での事業展開や仕入を行っているため、国際情勢の変化や各国の政治・経済動向の影響を受けます。紛争や政情不安、法規制の変更などが生じた場合、仕入の停滞や事業運営の制限などにより、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) リゾート開発事業に関するリスク
リゾート開発事業において、開発適地の選定や取得には不確実性が伴います。地権者との交渉難航や規制対応などにより計画が見直しとなれば、事業進捗や投資回収に影響が出る可能性があります。また、販売対象となる国内外の富裕層の需要は景気動向や国際市況に左右されやすいため、販売活動におけるリスクも存在します。



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