焼肉坂井ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

焼肉坂井ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

焼肉坂井ホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、焼肉、寿司、居酒屋などの外食チェーンを展開する企業です。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.1%増の235億円と増収を確保しました。一方、食品加工事業からの撤退に伴う損失計上などが響き、最終損益は6億円の赤字となりました。


※本記事は、株式会社焼肉坂井ホールディングス の有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 焼肉坂井ホールディングスってどんな会社?

焼肉坂井ホールディングスは、焼肉「肉匠坂井」「焼肉屋さかい」を主力に、寿司、居酒屋など多様な業態を全国展開する外食チェーン企業です。

(1) 会社概要

1959年に株式会社教育用品センターとして設立され、1997年に平禄株式会社へ商号変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2013年には株式会社ジー・ネットワークス及び株式会社さかいを吸収合併して事業規模を拡大しました。2021年7月に現在の商号へ変更し、多角的な外食事業を展開しています。

連結従業員数は679名(単体482名)です。筆頭株主は親会社であり外食・教育関連事業等を統括するジー・コミュニケーションで、過半数の株式を保有しています。第2位は個人株主の沼田昭二氏です。ジー・コミュニケーションの傘下で、複数の事業会社と共にグループを形成しています。

氏名 持株比率
ジー・コミュニケーション 50.35%
沼田 昭二 9.61%
焼肉坂井ホールディングス取引先持株会 1.08%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は髙橋仁志氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋 仁志 代表取締役社長 三重銀行入行後、コイサンズやテンフォーなどの代表取締役を歴任。2023年6月より現職。
杉本 英雄 代表取締役会長 ベンチャー・リンク常務等を経て、ジー・コミュニケーション社長、焼肉屋さかい会長等を歴任。2018年4月より現職。
稲吉 史泰 取締役第二営業本部長 蒲郡信用金庫入庫後、ジー・コミュニケーションを経て同社入社。副社長等を歴任し、2021年4月より現職。
山下 淳 取締役管理本部長兼戦略支援本部長 ジー・コミュニケーション入社後、さかい取締役管理本部長、社長等を歴任。2020年6月より現職。


社外取締役は、畑中裕(エムアンドシーコンサルティング代表取締役)、星谷哲男(元ING Bank N.V在日代表)です。

2. 事業内容

同社グループは、「焼肉・寿司・居酒屋事業」および「専門料理事業」等を展開しています。

(1) 焼肉・寿司・居酒屋事業(直営・FC)

同社は、焼肉業態の「肉匠坂井」「焼肉屋さかい」、寿司業態の「平禄寿司」、居酒屋業態の「とりあえず吾平」「村さ来」などを展開しています。全国にチェーン展開を行い、幅広い顧客層に食事や宴会の場を提供しています。

収益は、直営店における顧客からの飲食代金、およびFC加盟店からの加盟金、ロイヤリティ、食材等の商品販売収入からなります。運営は主に焼肉坂井ホールディングスが行っています。

(2) 専門料理事業(中華・イタリアン・フレンチ等)

中華料理「敦煌」、イタリアン「壁の穴」、フレンチ「ドミニク・ブシェ トーキョー」、ステーキ・カレー「ふらんす亭」などの専門店を展開しています。また、フードコート運営や水族館内の飲食事業も手掛けています。

収益は、各店舗における顧客からの飲食代金等からなります。運営は、敦煌、壁の穴、DBT、ふらんす亭、タケモトフーズ、ジー・アクアパートナーズなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は回復・増加傾向にありますが、利益面では変動が大きく、直近の2025年3月期は赤字に転落しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 197億円 183億円 231億円 228億円 235億円
経常利益 -13億円 10億円 5億円 6億円 4億円
利益率(%) -6.6% 5.5% 2.1% 2.7% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -21億円 6億円 4億円 2億円 -6億円

(2) 損益計算書

売上高は増加しましたが、売上原価および販管費も増加しています。特に販管費の増加により営業利益は減少しました。最終損益は特別損失の計上等により赤字となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 228億円 235億円
売上総利益 150億円 157億円
売上総利益率(%) 65.9% 66.6%
営業利益 5億円 5億円
営業利益率(%) 2.3% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が65億円(構成比43%)、地代家賃が24億円(同16%)、水道光熱費が12億円(同8%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

焼肉坂井ホールディングスは、財務活動において長期借入による収入を増加させることで資金調達を図っています。

営業活動では、減損損失や事業撤退損等が発生したものの、減価償却費等が主な増加要因となり、前年を上回る資金を得ました。投資活動では、有形固定資産の取得や事業譲受による支出がありましたが、有形固定資産の売却収入等で一部相殺されました。財務活動では、長期借入による収入が大幅に増加した一方、借入金の返済や配当金の支払い等もありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 8億円
投資CF -7億円 -6億円
財務CF 3億円 10億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「食を通して幸せになっていただく、食を通して笑顔を作り出す」というモットーを掲げています。「不易流行」の言葉どおり、伝統・歴史は重んじつつ、変えるべき部分は変え、リブランディングによって新たな価値観を創造することを目指しています。

(2) 企業文化

経営方針の中で「不易流行」を掲げ、伝統と革新のバランスを重視する姿勢を示しています。また、「食を通して幸せになっていただく、食を通して笑顔を作り出す」というモットーに基づき、日々の店舗運営に励んでいます。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、キャッシュフロー獲得のベースとなる償却前営業利益である「EBITDA」(営業利益+減価償却費+のれん償却費)を重視しています。
* 2026年3月期 EBITDA目標:12億円

(4) 成長戦略と重点施策

事業の拡大と収益基盤の強化を目指し、人材確保・育成、店舗数拡大、QSC向上、原材料調達の安定化、新規事業開発に取り組んでいます。特に、特定技能制度の活用やM&Aによるエリア拡大、海外展開の強化を推進しています。
* 人材:専門性の高い人材育成、特定技能制度活用、ES向上、省人化投資(配膳ロボット等)。
* 店舗:国内はM&A活用、海外はFC方式でアジア圏・米国などへ出店強化。
* QSC:マニュアル整備、アプリ導入、キャッシュレス化等による生産性向上。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

人材の確保や育成を強化し、特に専門性の高い調理能力を有した人材や次世代経営者層の育成に注力しています。特定技能制度を活用した外国人材の確保や、ES(従業員満足度)向上、有給休暇取得推進、労働時間見直しなどの就労環境改善を進め、定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.9歳 10.4年 4,017,200円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.9%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.5%
男女賃金差異(パート・有期) 96.7%


※男性育児休業取得率は提出会社(単体)の数値です。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店政策

都市の中心部から郊外立地まで幅広く出店していますが、新規出店にあたっては立地条件、賃貸借条件及び採算性等を総合的に勘案して決定しています。条件に合致する物件が確保できない場合は、計画どおりの新規出店が進まない可能性があります。

(2) 食中毒が発生した場合の影響

飲食店舗において衛生管理には細心の注意を払っていますが、食中毒の可能性を完全になくすことは困難です。万一発生させた場合、営業停止処分や企業イメージの毀損により、売上の減少や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料の調達および価格高騰

輸入食材への依存度が高いため、為替変動、各国の政策、不漁、疫病発生、天候不順等の影響を受けます。これらにより調達不安や食材価格の高騰が生じた場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保・育成

さらなる成長のため人材の確保・育成を重要課題としていますが、少子高齢化等により十分な人材が確保できない場合、サービスの低下による集客力の低下や出店計画の遅れなどが生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。