※本記事は、株式会社焼肉坂井ホールディングスの有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 焼肉坂井ホールディングスってどんな会社?
同社は、焼肉や寿司などの多様な外食ブランドを全国展開し、食を通じた幸せと笑顔の提供を追求する企業です。
■(1) 会社概要
1959年に教育用品センターとして設立後、1989年に寿司部門を営業譲受して外食事業へ進出しました。2001年の店頭登録を経て、2005年に居酒屋「とりあえず吾平」を譲受するなど事業を多角化しました。2021年には現在の焼肉坂井ホールディングスへ社名変更し、近年もM&Aで事業を拡大しています。
同社グループの従業員数は連結で719名、単体で519名です。筆頭株主はグループホールディング会社としてコンサルティング等を行うジー・コミュニケーションで持株比率は50.29%に達し、同社の親会社となっています。第2位は個人株主の沼田昭二氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ジー・コミュニケーション | 50.29% |
| 沼田昭二 | 9.59% |
| アリアケジャパン | 0.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は髙橋仁志氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本英雄 | 代表取締役会長 | 日本エル・シー・エー等を経てベンチャー・リンク常務執行役等を歴任。2004年にジー・コミュニケーション取締役社長に就任後、2007年より同社顧問及び代表取締役会長。2018年4月より現職。 |
| 髙橋仁志 | 代表取締役社長 | 三重銀行を経てコイサンズを設立し代表取締役に就任。その後、ジー・コミュニケーション取締役やテンフォー代表取締役等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 稲吉史泰 | 取締役第二営業本部長 | 蒲郡信用金庫を経て、がんばる学園等で代表取締役を歴任。2005年より同社に入社し、代表取締役社長や副社長を歴任。2021年4月より現職。 |
| 山下淳 | 取締役管理本部長兼戦略支援本部長 | 2002年にジー・コミュニケーションに入社し、内部監査室長や総務本部総務部長を歴任。2010年より同社取締役に就任し、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、畑中裕(エムアンドシーコンサルティング設立・代表取締役)、星谷哲男(元Citibank Japan Ltd.ダイレクター大阪支店長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「外食事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■外食事業
焼肉、寿司、居酒屋、ファーストフード、イタリアン、フレンチなど幅広いジャンルの飲食店チェーンを展開し、一般消費者に飲食サービスを提供しています。主要ブランドとして「肉匠坂井」「平禄寿司」「とりあえず吾平」「おむらいす亭」などを擁するほか、商業施設内のフードコートや水族館内の飲食事業も手掛けています。
収益は直営店舗の来店客から得られる飲食代金のほか、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や加盟金、商品販売代金で構成されています。運営は親会社である同社を中心に、フードコート運営を担うタケモトフーズ、イタリアン業態の壁の穴、フレンチ業態のDBTなど、各業態に特化した子会社群が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は段階的に成長を続け、直近で243億円規模に達しています。しかし、利益面では経常利益が減少傾向にあるほか、特別損失などの影響から直近2期は最終赤字を計上しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 183.0億円 | 230.6億円 | 228.2億円 | 235.3億円 | 242.5億円 |
| 経常利益 | 10.0億円 | 4.8億円 | 6.1億円 | 4.3億円 | 2.4億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 2.1% | 2.7% | 1.8% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6.0億円 | 3.8億円 | 0.0億円 | -6.5億円 | -5.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加し、売上総利益も拡大して総利益率は安定的に推移しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加が総利益の伸びを上回った結果、営業利益は前期比で減益となり、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 235.3億円 | 242.5億円 |
| 売上総利益 | 156.7億円 | 161.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.6% | 66.4% |
| 営業利益 | 4.7億円 | 1.6億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 0.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が69億円(構成比43%)、地代家賃が25億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
外食事業の単一セグメントとなっており、売上高は前年から約3%増加して242.5億円となりました。インバウンド需要の回復や新規出店、一部ブランドの改装・リブランディング効果が増収に寄与しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 外食事業 | 235.3億円 | 242.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF+資金調達で事業転換のための投資を行う局面(再建・転換型)です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.6%でいずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.3億円 | 5.6億円 |
| 投資CF | -5.6億円 | -16.3億円 |
| 財務CF | 10.3億円 | 12.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、全ブランドおよび業態において「食を通して幸せになっていただく、食を通して笑顔を作り出す」という強い想いのもと、日々の店舗運営に励んでいます。「食」を通じて関わるすべての人に幸せを提供し、その輪を社会へと広げていくことを使命として掲げています。
■(2) 企業文化
最も大切なものは「人」であると考え、美味しさやおもてなしの心を支える「人の情熱と技術」を重んじています。世の中の変化にかかわらず、本質的に変わらないものを常に大切にする「不易流行」の精神のもと、時代の変化に柔軟に対応しながら常に進化を続ける企業文化です。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、キャッシュフロー獲得のベースとなる償却前営業利益である「EBITDA」を重視した目標設定を行っており、中長期的な収益力の向上を目指しています。
* EBITDA:9.1億円(2027年3月期目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
既存業態では大衆性とカジュアル性を軸とした再設計とリブランディングを推進し、新規出店やM&Aを活用した事業規模の拡大を図ります。また、海外へのフランチャイズ展開を強化するとともに、デジタル技術を活用した次世代店舗の確立による生産性向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材」を持続的な企業成長を支える重要な基盤と位置づけ、中途採用による即戦力確保や新卒・リファラル採用の強化を図っています。また、人事評価制度や教育カリキュラムを見直し、単なる人員確保にとどまらず、定着と育成を重視した人材構造への転換を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.4歳 | 10.3年 | 4,139,311円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.6% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 90.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人社員の採用人数(47人)、在籍外国人社員数(182人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店政策と店舗の老朽化
新規出店は立地条件や採算性を総合的に勘案して決定されるため、条件に合致する物件が確保できない場合は計画が遅れる可能性があります。また、既存店の老朽化や商圏の縮小が売上低迷を招くリスクもあります。
■(2) 食中毒の発生と食品衛生
飲食店舗における衛生管理には細心の注意を払っていますが、万一食中毒を発生させた場合、広範囲に及ぶ営業停止処分やマスコミ報道による企業イメージの悪化が生じ、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料価格の高騰と調達不安
魚介や牛肉などの輸入食材への依存度が高く、為替相場の変動や貿易協定、漁獲量の減少等による仕入コスト増大のリスクがあります。また、疫病や自然災害、国際紛争等による調達不安が経営に影響を及ぼす可能性があります。



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