※本記事は、株式会社ひらまつの有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ひらまつってどんな会社?
同社は、高級フレンチレストラン「レストランひらまつ」やイタリアン、ホテル等を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1982年に西麻布で「ひらまつ亭」を開店し、その後「レストランひらまつ」へ改名しました。2001年にはパリに出店し、2003年にJASDAQ市場へ上場、2010年には東証一部へ上場を果たしました。2016年よりホテル事業へ進出しましたが、2024年7月にホテル資産を譲渡し運営受託方式へ転換するなど、事業構造の改革を進めています。
連結従業員数は733名(単体731名)です。大株主構成については、筆頭株主は同社と資本業務提携関係にあったマルハン太平洋クラブインベストメントで、第2位はひらまつ社員持株会、第3位は不動産投資等を行うロードスターキャピタルとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マルハン太平洋クラブインベストメント | 36.21% |
| ひらまつ社員持株会 | 2.17% |
| ロードスターキャピタル | 2.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは三須和泰氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三須 和泰 | 代表取締役社長CEO | 1979年三菱商事入社。同社食品本部長、執行役員等を歴任。2016年カンロ代表取締役社長、2023年ひらまつ社外取締役を経て、2024年6月より現職。 |
| 服部 かおり | 取締役COO | 1998年ひらまつ入社。広報室、ブライダル企画部マネージャー、上席執行役員営業戦略本部長、事業統括本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、熊谷信太郎(弁護士)、勝丸千晶(公認会計士・税理士)、三上秀樹(元マルハン取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レストラン事業」、「ホテル事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) レストラン事業
同社は、「レストランひらまつ」「リストランテASO」「ポール・ボキューズ」など、高級フレンチやイタリアンのレストランを運営しています。主な顧客は、記念日や会食などで利用する個人や法人です。また、これら店舗を活用したウェディングサービスも提供しています。
収益は、来店客からの飲食代金や、婚礼利用客からの挙式・披露宴代金等から得ています。運営は主にひらまつが行っています。フランスやイタリアの食文化を日本に広めるべく、海外の有名シェフとの提携ブランドも展開しています。
■(2) ホテル事業
「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS」等のブランドで、滞在型レストランとしてのホテルを展開しています。美食と宿泊を融合させたサービスを提供し、富裕層やインバウンド顧客を主な対象としています。2024年7月にホテル資産を譲渡し、運営特化型へと転換しました。
収益は、宿泊客からの宿泊料や飲食代金に加え、資産譲渡後はホテル運営SPCからの運営受託報酬を受け取るモデルとなっています。運営はひらまつが担っており、地域性を活かした料理やサービスを提供しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、オンライン販売やライセンスビジネス、マネジメントビジネス等を展開しています。オンライン販売では、高品質なワインや食品などを一般消費者に提供しています。
収益は、オンラインショップでの商品販売代金や、ライセンス供与に伴う手数料、運営受託報酬などから得ています。パリにある子会社HIRAMATSU EUROPE EXPORT SARLは、主にグループ向けの飲食材輸出を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2023年3月期にかけては、当期純損失を計上する厳しい状況が続きましたが、売上高は回復基調にありました。直近の2025年3月期は、ホテル資産譲渡の影響で売上高は減少したものの、当期純利益は大幅な黒字となり、利益率も改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 63億円 | 92億円 | 124億円 | 139億円 | 107億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | -24億円 | -16億円 | -6億円 | 2億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | -38.9% | -17.1% | -5.0% | 1.3% | 1.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -41億円 | -25億円 | -9億円 | -2億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
前連結会計年度と比較すると、売上高は減少しましたが、売上総利益率および営業利益率は改善傾向にあります。特に営業利益率は1.9%から2.3%へと上昇しており、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 139億円 | 107億円 |
| 売上総利益 | 81億円 | 60億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.4% | 56.2% |
| 営業利益 | 3億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が16億円(構成比28%)、地代家賃が10億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
レストラン事業は微増収となり、利益も確保しています。一方、ホテル事業は資産譲渡に伴い運営受託へ移行した影響で大幅な減収となりましたが、損失額は縮小しました。その他事業は増収増益となり、成長を見せています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| レストラン事業 | 90億円 | 91億円 | 10億円 | 10億円 | 11.0% |
| ホテル事業 | 44億円 | 10億円 | 2億円 | -0億円 | -3.8% |
| その他 | 4億円 | 5億円 | 1億円 | 3億円 | 46.9% |
| 調整額 | -2億円 | -2億円 | -10億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 139億円 | 107億円 | 3億円 | 2億円 | 2.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方、固定資産の売却等により投資キャッシュ・フローがプラスとなり、その資金で借入金の返済を進める財務キャッシュ・フローがマイナスの「事業検討型」となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | -3億円 |
| 投資CF | -7億円 | 121億円 |
| 財務CF | -0億円 | -108億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.4%で市場平均とほぼ同じ水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「美しい味を、未来へ。」をパーパスとして掲げています。また、「食の可能性を広げ、心ゆさぶる『時』を提供する」というミッションと、「この世界を、食の感動で繋がる大きなテーブルに」というビジョンのもと、食を通じて持続可能で豊かな社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「業界最高レベルの料理人・サービス人の集団」であることを最大の強みとしており、サステナビリティ経営の推進も重視しています。環境負荷の軽減、地域社会との共生、多様性や人権への配慮など、ESGを意識した経営を実践し、中長期的な視点での企業価値向上を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画2030」を策定し、2030年度(2031年3月期)に向けた財務目標を掲げています。これらの目標は単なる数値達成ではなく、顧客満足や従業員の成長、地域社会との共生といったステークホルダーへの価値提供の結果として実現すべきものと位置付けています。
* 連結売上高:133億円
* 営業利益:13億円
* 営業利益率:10.0%
* 1株当たり当期純利益:18.24円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中期経営計画において、「人財戦略の強化」「事業戦略の推進」「投資計画の実行」を重点施策として掲げています。具体的には、新たな人事制度や教育・研修制度の整備、ブランド戦略や出店戦略の再構築、新規ビジネスの創出、そして新規出店や既存店改装への戦略的投資を推進していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財」を最も重要な経営資本と位置付け、「個性輝く人財が活躍し続ける人的資本の強化」を掲げています。業界最高水準の料理人およびサービス人財の育成・確保を目指し、新たな人事制度の構築、複線型キャリアパスの導入、教育・研修体制の整備、報酬体系の見直しなどを通じて、人的資本の質的向上と定着力の強化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 33.7歳 | 6.9年 | 5,232,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 35.7% |
| 男性育児休業取得率 | 20.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 91.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 100.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員に占める女性労働者の割合(46.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ブランドの毀損リスク
同社グループは海外シェフとの提携契約に基づきブランドを展開しています。これらの契約が何らかの要因により持続できなくなった場合、ブランドイメージに影響を与え、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の上昇リスク
天候不順、自然災害、原油高騰、為替変動などにより原材料価格が上昇した場合、原価の上昇につながります。メニュー価格の改定等で吸収できない範囲の影響が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 感染症に関するリスク
新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の発生・拡大や収束の遅れにより、外出自粛などが生じサービスの需要が減少した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。



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