※本記事は、ひらまつの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ひらまつってどんな会社?
レストラン、ブライダル、ホテルの各事業を通じて、独自のホスピタリティを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1982年4月に西麻布で「ひらまつ亭」を開店したことから始まりました。1994年に婚礼事業へ本格進出するとともに、2001年にはフランス・パリに出店するなど業容を拡大しました。2003年のJASDAQ市場への上場を経て、2010年には東証一部(現在はスタンダード市場)へ上場しています。近年はホテル事業にも進出し、事業領域を広げています。
同社グループは、連結従業員数716名、単体従業員数714名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業会社のマルハン太平洋クラブインベストメントで、第2位はロードスターキャピタル、第3位はひらまつ社員持株会です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マルハン太平洋クラブインベストメント | 36.19% |
| ロードスターキャピタル | 2.12% |
| ひらまつ社員持株会 | 1.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEOは三須和泰氏が務めています。社外取締役の比率は60.0%(5名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三須和泰 | 代表取締役社長CEO | 三菱商事にて食品本部長や執行役員海外市場本部長を歴任。カンロ代表取締役社長CEOを経て、2024年6月より現職。 |
| 服部かおり | 取締役COO | 1998年同社入社。ブライダル企画部や営業企画部のマネージャーを経て、事業統括本部本部長に就任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、熊谷信太郎(熊谷綜合法律事務所開設)、勝丸千晶(税理士法人石川オフィス会計開設)、三上秀樹(元マルハン取締役調達本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レストラン事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) レストラン事業
フランス料理・イタリア料理をはじめとする高級レストランの運営、ならびにレストラン内でのブライダル(婚礼)事業を展開しています。また、ホテル事業の運営受託も行い、顧客に対して質の高い食とホスピタリティを提供しています。
主に一般顧客からの飲食代や婚礼費用を収益源としています。また、ホテル等の運営委託契約に基づく運営受託報酬も得ています。運営は主にひらまつが行っています。
■(2) その他事業
ラグジュアリーブランドとの協業による店舗運営受託やコンサルティング事業、およびワインなどのオンライン通信販売事業を行っています。海外では現地の有力企業との提携等を通じたブランド展開も進めています。
店舗運営受託やコンサルティング費用、オンライン販売での商品代金、およびパリにおいて同社グループ向けの飲食材の輸出による収益等を得ています。事業はひらまつや、子会社のHRMI、HIRAMATSU EUROPE EXPORT SARLなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はコロナ禍からの回復で前期まで増加傾向にありましたが、ホテル資産の譲渡に伴い当期は減収となりました。一方、利益面では業務の効率化や客単価の改善などの各種施策が奏功し、経常利益は増益を達成しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 106.6億円 | 98.8億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 | 2.0億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 2.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15.3億円 | 2.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年を下回りましたが、人件費の適正化やコストコントロールなどの生産性向上に向けた取り組みが着実に進展し、本業の儲けを示す営業利益は黒字を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 106.6億円 | 98.8億円 |
| 売上総利益 | 59.9億円 | 54.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.2% | 55.5% |
| 営業利益 | 2.5億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が15.5億円(構成比29%)、地代家賃が9.7億円(同18%)、広告宣伝費が3.1億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ホテル事業の運営形態をマネジメント契約へ移行したことに伴い、当期より報告セグメントを「レストラン事業」の単一セグメントへ変更しています。既存店での集客力強化や客単価の向上が見られましたが、店舗閉鎖等の影響で全体の売上は前年同期を下回りました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| レストラン事業 | 106.6億円 | 98.8億円 |
| 連結(合計) | 106.6億円 | 98.8億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる「末期型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3.5億円 | -6.5億円 |
| 投資CF | 121.4億円 | -7.9億円 |
| 財務CF | -107.9億円 | -2.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「美しい味を、未来へ。」というパーパスを掲げ、「食の可能性を広げ、心ゆさぶる『時』を提供する」というミッションの実現を目指しています。料理を文化として捉え、フランス料理やイタリア料理をはじめとするヨーロッパ食文化の日本における普及の一翼を担うことを社会的意義としています。
■(2) 企業文化
同社は「この世界を、食の感動で繋がる大きなテーブルに」というビジョンに基づき、食を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献することを重視しています。業界最高水準の料理人およびサービススタッフの育成に努め、多様な価値観や感性を持つプロフェッショナル人財が能力を最大限に発揮できる企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2030」を策定し、顧客・従業員・地域社会・株主といったステークホルダーへの価値提供を通じ、持続的な成長と収益力の向上を目指しています。
・2030年度連結売上高:133.3億円
・2030年度営業利益:13.3億円
・2030年度営業利益率:10.0%
・2030年度1株当たり当期純利益:18.24円
■(4) 成長戦略と重点施策
人財戦略と事業戦略を経営の2本柱に据え、ガバナンスおよびサステナビリティ経営を基盤とした成長戦略を推進しています。ブランドポートフォリオの再構築とイノベーションを通じたフラッグシップ店舗の開発、厳格な資本効率管理による高収益モデルへの重点投資、海外展開およびM&Aを活用した新規事業領域の拡張に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の提供価値の源泉はプロフェッショナル人財であり、その確保・育成・定着を最重要課題と位置付けています。専門性を評価する複線化されたキャリアパスや独自の新人事制度を導入し、次世代リーダーの育成、多様な働き方に対応した処遇設計など、個性輝く人財が長期的に活躍できる組織基盤の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 34.5歳 | 7.2年 | 5,472,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 34.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 80.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男性育児休業取得率および非正規従業員の男女賃金差異については、有価証券報告書にデータの記載がないため「-」としています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ブランドの毀損リスク
同社グループは「食」を通じた高品質な顧客体験の提供をブランド価値の中核としています。食品安全上の問題、接客サービスの問題、コンプライアンス違反、SNS等を通じた風評被害が発生した場合、社会的信用やブランドイメージが毀損し、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料価格の上昇リスク
天候不順や自然災害、為替変動等による原材料価格やエネルギー価格、物流費の上昇は、原価上昇につながります。メニュー価格の改定等で十分に対応できず、コストの上昇を吸収できない場合、収益を圧迫し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人的資本・人財確保に関するリスク
同社が提供するサービス品質は、料理人やサービススタッフ等の人財に大きく依存しています。優秀な人財の確保・育成が計画どおり進まない場合や、労働市場環境の変化で必要な人員を確保できない場合、サービス品質が低下し競争力や業績に影響を与える可能性があります。



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