シップヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シップヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、医療、保健、福祉、介護、サービスの5つの分野で事業を展開しています。医療機関の設備導入を一括支援する「トータルパックプロデュース」を強みとし、直近の連結業績は売上高7.5%増、経常利益3.2%増、当期純利益9.6%増と増収増益で推移しています。


※本記事は、シップヘルスケアホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シップヘルスケアホールディングスってどんな会社?


医療機関の設備導入から運営支援、介護、調剤までを「トータルパックプロデュース」する総合ヘルスケア企業グループです。

(1) 会社概要


1992年に医療・福祉施設のコンサルティングを行うシップコーポレーションとして設立されました。その後、グリーンホスピタルサプライとの合併を経て事業を拡大し、2005年に東証二部に上場。2009年には持株会社体制へ移行し、現社名となりました。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は7,805名、単体では22名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 12.99%
株式会社日本カストディ銀行 9.36%
株式会社コッコー 8.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は大橋 太氏です。社外取締役比率は約26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
古川 國久 代表取締役会長 1964年西本産業入社。1992年シップコーポレーション(現同社)設立、代表取締役社長。グリーンホスピタルサプライ社長等を経て2014年同社代表取締役会長CEO。2021年より現職。
大橋 太 代表取締役社長 1987年エフエスユニマネジメント入社。同社社長を経て2009年同社取締役。2014年代表取締役副社長。2021年より現職。
小西 賢三 代表取締役副会長MSP事業部門長 1980年小西医療器入社。同社社長、会長を経て2016年同社代表取締役副会長。2021年より現職。
小川 宏隆 代表取締役副会長TPP事業部門長 1981年西本産業入社。1993年シップコーポレーション(現同社)入社。同社社長COOを経て2021年より現職。
横山 裕司 取締役副社長秘書室長 1981年西本産業入社。2007年同社入社。常務取締役、専務取締役を経て2025年6月より現職。
海野 眞史 常務取締役営業戦略本部長 1983年住友銀行(現三井住友銀行)入行。2018年同社入社。2022年より現職。
安田 芳郎 取締役管理本部長 1984年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2021年同社執行役員管理本部長。2023年より現職。


社外取締役は、佐野 精一郎(元三洋電機社長)、今別府 敏雄(元厚生労働省政策統括官)、伊藤 文代(元国立病院機構大阪医療センター看護部長)、西尾 信也(元大和証券グループ本社取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「トータルパックプロデュース事業」「メディカルサプライ事業」「ライフケア事業」「調剤薬局事業」を展開しています。

(1) トータルパックプロデュース事業


医療機関の新設・移転等に対し、企画運営、コンサルティング、医療機器・設備の販売、設備工事等を一括して提供します。また、医療情報システムの開発や不動産賃貸、動物病院運営等も行っています。

顧客である医療機関等から、機器・設備の販売代金やコンサルティング料、賃貸料等を受け取るモデルです。運営は主にグリーンホスピタルサプライ、セントラルユニ、酒井医療等が担当しています。

(2) メディカルサプライ事業


医療施設に対して診療材料や医療機器の販売を行うほか、院外SPDシステム(院内物流代行システム)を通じた物品管理・供給サービスを提供しています。

医療施設等から診療材料や機器の販売代金、およびSPDシステム等の業務受託料を受け取ります。運営は主にグリーンホスピタルサプライ、小西医療器等が担当しています。

(3) ライフケア事業


有料老人ホームやグループホーム等の介護施設運営、および医療・福祉施設向けの食事提供サービスを行っています。

施設の入居者から介護サービス利用料等を、医療・福祉施設から食事提供の対価を受け取ります。運営は主にグリーンライフ、シップヘルスケアフード等が担当しています。

(4) 調剤薬局事業


地域の医療機関と連携した調剤薬局の運営を行っています。

患者および保険支払機関から調剤報酬や薬価収入を受け取る収益モデルです。運営は主に日星調剤、グリーンファーマシー、シップヘルスケアファーマシー東日本等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、利益面でも安定的な水準を維持しています。特に直近では売上高が連続して増加しており、事業規模の拡大が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,972億円 5,144億円 5,723億円 6,310億円 6,782億円
経常利益 218億円 213億円 206億円 252億円 260億円
利益率(%) 4.4% 4.1% 3.6% 4.0% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 61億円 62億円 63億円 68億円 57億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、営業利益率は横ばいで推移しています。コスト構造に大きな変化は見られませんが、安定した収益性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,310億円 6,782億円
売上総利益 656億円 667億円
売上総利益率(%) 10.4% 9.8%
営業利益 245億円 248億円
営業利益率(%) 3.9% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、その他が227億円(構成比54%)、給料及び手当が139億円(同33%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディカルサプライ事業が売上の大半を占め、成長を牽引しています。トータルパックプロデュース事業は大型案件の進捗により安定した利益を上げています。ライフケア事業と調剤薬局事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
トータルパックプロデュース事業 1,337億円 1,332億円 - - -%
メディカルサプライ事業 4,285億円 4,749億円 - - -%
ライフケア事業 361億円 367億円 - - -%
調剤薬局事業 327億円 335億円 - - -%
連結(合計) 6,310億円 6,782億円 - - -%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

シップヘルスケアホールディングスは、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で資金調達と返済を行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に売上債権の増加や法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益の計上や仕入債務の増加により、収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の売却による収入があった一方、有形固定資産の取得や定期預金の預入による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払いが主な支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 316億円 204億円
投資CF -72億円 -40億円
財務CF -205億円 -246億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「SHIP」(Sincere(誠実な心)、Humanity(「情」の心)、Innovation(革新者の気概)、PartnerSHIP(パートナーシップ精神))の経営理念のもと、「生命を守る人の環境づくり」をグループミッションとしています。医療・保健・福祉・介護・サービスを事業ドメインと定め、医療機関のインフラを一括してエンジニアリングする「トータルパックプロデュース」を中心に、ヘルスケア領域のあらゆるニーズに対するソリューション提供を目指しています。

(2) 企業文化


「誠実な企業活動」を実践する社員の育成を重視しています。法令遵守はもちろん、高い倫理観、道徳観、強い責任感や挑戦意欲を持つことを求めており、これまでに培ったノウハウとグループ総合力を結集して新しい領域に挑戦していく姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年3月期から2030年3月期までの5年間を計画期間とする中期経営計画「SHIP VISION 2030」を策定しています。「グループ経営資源の最適化によるポートフォリオ経営」を基本方針とし、以下の数値目標を掲げています。将来的にはグループ売上高1兆円を目指しています。

* 売上高年平均成長率(CAGR):5%
* 営業利益率(2030年3月期):4%
* ROE(2030年3月期):12%

(4) 成長戦略と重点施策


「SHIP VISION 2030」のもと、各事業において成長戦略を推進します。トータルパックプロデュース事業ではヘルスケアエンジニアリングの進化と海外展開、メディカルサプライ事業では付加価値向上と資本提携、ライフケア事業では運営効率の向上と他セグメント連携、調剤薬局事業では店舗運営効率化と新規開発を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「SHIP理念に基づき、自律的な人材を組織として育む」という方針のもと、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境を目指しています。理念研修の全グループ展開や階層別職能研修の体系構築を進めるとともに、多様な人材の採用・起用を行うダイバーシティ推進に取り組んでいます。また、「安全で安心して働ける職場環境」の創出を目指し、事業分野に応じた人事制度や処遇体系の導入を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 9.3年 8,113,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 45.5%
男女賃金差異(全労働者) 27.9%
男女賃金差異(正規雇用) 61.7%
男女賃金差異(非正規) 32.5%


※上記数値は中核事業会社であるグリーンホスピタルサプライの実績です。連結全体での数値記載はありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(58.7%)、経営層向けコンプライアンス研修(257名)、マネジメント研修参加人数(106名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療施設等の施設需要の動向


トータルパックプロデュース事業は、医療機関等の移転新築・増改築動向により業績が変動する可能性があります。大型プロジェクト案件の遅延や中止、または1月から3月への売上集中の傾向があり、業績の期間ごとの偏重が生じる可能性があります。

(2) 診療材料等の価格競争と償還価格引下げ


メディカルサプライ事業において、病院経営の改善策模索から診療材料の納入価格引下げ要求が厳しさを増しており、同業他社との価格競争も激化しています。また、特定保険医療材料価格の引き下げ等が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 介護サービス事業の法的規制・人材確保


ライフケア事業における介護サービスは介護保険法等の規制を受けており、制度改正により事業展開に影響が出る可能性があります。また、介護にかかる人材確保が困難となった場合、事業拡大の支障やサービス品質の低下を招き、業績に影響を与えるおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。