シップヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シップヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場上場。医療・保健・福祉・介護の分野で、トータルパックプロデュース、メディカルサプライ、ライフケア、調剤薬局事業を展開しています。直近の2026年3月期は売上高7,182億円と増収、経常利益は263億円と増益でしたが、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。


※本記事は、シップヘルスケアホールディングス株式会社の有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シップヘルスケアホールディングスってどんな会社?


医療・保健・福祉分野に特化し、医療機関のインフラ整備や医療消耗品の販売、介護施設や調剤薬局の運営等を行っています。

(1) 会社概要


1992年8月にシップコーポレーションとして設立され、コンサルティング業務を開始しました。同年11月にグリーンホスピタルサプライを設立し、2005年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2009年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。その後もM&Aを通じて各事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で7,819名、単体で21名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は外国法人のSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY、第3位は資産管理会社とみられるコッコーとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 11.30%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 10.70%
コッコー 8.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役会長は古川國久氏、代表取締役社長は大橋太氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
古川 國久 代表取締役会長 1964年西本産業入社。1992年シップコーポレーション設立、代表取締役社長。2021年より現職。
大橋 太 代表取締役社長MSP事業部門長 1987年エフエスユニマネジメント入社。2009年同社取締役。2021年より現職。
小川 宏隆 代表取締役副会長TPP事業部門長 1981年西本産業入社。1992年グリーンホスピタルサプライ入社、取締役。2021年より現職。
横山 裕司 取締役副社長秘書室長 1981年西本産業入社。2007年同社入社。2025年より現職。
海野 眞史 常務取締役営業企画本部長 1983年住友銀行入行。2018年同社入社。2022年常務取締役。2025年より現職。
安田 芳郎 取締役管理本部長 1984年富士銀行入行。2012年エフエスユニマネジメント入社。2023年より現職。


社外取締役は、佐野精一郎(元三洋電機社長・指名・報酬諮問委員会委員長)、今別府敏雄(元厚生労働省政策統括官)、伊藤文代(元国立病院機構大阪医療センター看護部長)、西尾信也(元大和証券代表取締役副社長)、内山由紀(TMI総合法律事務所カウンセル)です。

2. 事業内容


同社グループは、トータルパックプロデュース事業、メディカルサプライ事業、ライフケア事業、調剤薬局事業を展開しています。

トータルパックプロデュース事業


医療機関の新設・移転新築・増改築や医療機器購入のニーズに対し、企画運営・設備コンサルティング、医療設備等の販売・メンテナンス・工事を一括で提供します。医療情報システムの開発・保守なども行っています。

医療機関からコンサルティング料、工事代金、販売代金、リース料などを受け取ります。運営は主にグリーンホスピタルサプライやセントラルユニなど複数のグループ会社が行っています。

メディカルサプライ事業


医療施設に対して診療材料や医療機器などの販売を行います。ルート営業のほか、院外SPDシステム(院内物流代行システム)を用いた販売や、診療材料の物品管理・滅菌・保守点検業務などの受託も行います。

医療施設から医療材料の販売代金やSPDの業務受託料を受け取ります。運営は主にグリーンホスピタルサプライ、小西医療器などの子会社が行っています。

ライフケア事業


老人ホーム、グループホーム、小規模多機能施設などの運営やデイサービスの提供、医療・福祉施設向けの食事提供サービス業務を行っています。リハビリ支援業務なども展開しています。

入居者から施設利用料や介護サービス料を受け取るほか、医療施設等から食事提供の委託料を受け取ります。運営はグリーンライフやシップヘルスケアフードなどが行っています。

調剤薬局事業


医療機関からの処方箋に基づき、患者への調剤・処方を行う調剤薬局の運営と、地域医療に密着したサービス提供を行っています。

患者や健康保険組合などから調剤報酬や医薬品代を受け取ります。運営は主にシップヘルスケアファーマシーなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間を通じて売上高は右肩上がりで成長を続けており、7,000億円を突破しました。経常利益も概ね増加傾向にありますが、直近は親会社株主に帰属する当期純利益が減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,144億円 5,723億円 6,310億円 6,782億円 7,182億円
経常利益 213億円 206億円 252億円 260億円 263億円
利益率(%) 4.1% 3.6% 4.0% 3.8% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 62億円 63億円 68億円 57億円 54億円

(2) 損益計算書


売上高が増加した一方で、売上総利益はほぼ横ばいとなり、利益率は低下しています。これに伴い営業利益もわずかに減少しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,782億円 7,182億円
売上総利益 667億円 667億円
売上総利益率(%) 9.8% 9.3%
営業利益 248億円 245億円
営業利益率(%) 3.7% 3.4%


売上原価が売上高の大部分(91%)を占めています。販売費及び一般管理費(422億円)のうち、主なものは給料及び手当が144億円(構成比34%)、役員報酬が17億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるメディカルサプライ事業が増収増益を牽引していますが、トータルパックプロデュース事業は大型案件の反動等により減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
トータルパックプロデュース事業 1,332億円 1,366億円 120億円 108億円 7.9%
メディカルサプライ事業 4,749億円 5,096億円 70億円 75億円 1.5%
ライフケア事業 367億円 373億円 22億円 22億円 5.9%
調剤薬局事業 335億円 347億円 34億円 40億円 11.5%
連結(合計) 6,782億円 7,182億円 248億円 245億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 204億円 221億円
投資CF -40億円 -21億円
財務CF -246億円 -163億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「SHIP」(Sincere:誠実な心、Humanity:「情」の心、Innovation:革新者の気概、Partner SHIP:パートナーシップ精神)を経営理念とし、「生命を守る人の環境づくり」をグループミッションとしています。医療や介護の分野から、より良く生きる環境づくりの領域への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


SHIP理念に基づき、自律的な人材を組織として育むことを方針としています。社員一人一人がお互いを尊敬し、共に育み合いながら能力を最大限に発揮できることを目指し、多様な人材の採用・起用を積極的かつ継続的に行いつつ、特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備を進めています。

(3) 経営計画・目標


連結売上高1兆円の企業集団を目指すとともに、中期経営計画「SHIP VISION 2030」(2030年3月期まで)を策定しています。「グループ経営資源の最適化によるポートフォリオ経営」を基本方針とし、以下の目標を掲げています。

- 売上高年平均成長率(CAGR)5%
- 2030年3月期 営業利益率 4%
- 2030年3月期 ROE 12%

(4) 成長戦略と重点施策


各事業の基盤強化とグループ内シナジーの創出を進めます。トータルパックプロデュースではDX化やIT対応力を向上させ、メディカルサプライでは物流・在庫管理の高度化を図ります。ライフケアや調剤薬局事業では、業務効率化や再編統合を通じた収益基盤の拡充に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材の活躍を推進するため、階層別職能研修の体系構築やマネジメント研修をグループ共通で導入しています。また、安全で安心して働ける職場環境の創出を目指し、事業分野ごとに特徴のある人事制度や教育制度を導入してエンゲージメント力を高める施策を実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.4歳 10.3年 8,538,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 30.2%
男女賃金差異(正規雇用) 64.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 36.8%


※女性管理職比率については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(58.6%)、マネジメント研修参加人数(75名)、次世代経営者研修(72名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大型案件の遅延リスク(トータルパックプロデュース事業)


大型プロジェクト案件のスケジュールの遅延や変更・中止が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、長期大型案件に必要となる専任人員の配置には限界があり、これが事業拡大の制約要因となるリスクがあります。

(2) 価格変動と競争激化のリスク(メディカルサプライ事業)


特定保険医療材料価格の引き下げ等が生じた場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。また、院外SPDシステム業務を他社が受注した場合や、他社がより優れたシステムを提供した場合には、医療機関等との取引における大きな制約要因となります。

(3) 人員確保と安全管理リスク(ライフケア事業)


老人ホーム等の介護職員や食事提供サービスの管理栄養士等の人材確保が困難な場合、サービスの量的・質的な低下を招く恐れがあります。また、高齢者の事故や集団感染、食中毒等が発生した場合は重大な管理責任が問われ、事業存続に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。