関門海 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関門海 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関門海は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、主にとらふぐ料理専門店「玄品」の店舗展開を行っています。直近の業績は売上高が前期比微増の52.7億円となった一方で、原材料費高騰や人件費などのコスト増加が響き、経常利益は1.8億円と減益になりました。飲食事業の他に食材の外部販売なども手掛けています。


※本記事は、株式会社関門海の有価証券報告書(第38期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 関門海ってどんな会社?


とらふぐ料理専門店「玄品」の運営を中心に、食材の外部販売も手掛ける外食企業です。

(1) 会社概要


同社は1980年にとらふぐ料理専門店を開店し、1989年に現法人の前身を設立しました。2002年に屋号を「玄品ふぐ」に統一し、2005年に株式上場を果たしています。2018年には屋号を「玄品」へとリブランディングしました。長年にわたりとらふぐ料理業界で国内トップクラスの店舗網を構築しています。

現在の従業員数は連結で174名、単体で171名です。筆頭株主は創業者関連とみられる椿台で、第2位は事業会社であるサントリー、第3位は代表取締役社長の田原久美子氏です。経営トップや事業関連先が上位株主として名を連ねる資本構成となっています。

氏名 持株比率
椿台 30.65%
サントリー 5.10%
田原久美子 1.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は山口久美子氏が務めています。取締役における社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 久美子 代表取締役社長 サンミート(現椿台)代表取締役を経て同社入社。執行役員等を経て2020年6月より現職。
大村 美智也 取締役事業統括本部長 同社入社後、玄品ふぐ事業部長や営業本部長、商品・営業統括本部長などを経て2024年9月より現職。


社外取締役は、松下義行(元大阪府警察刑事部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、店舗運営事業の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 店舗運営事業(直営・フランチャイズ)


主力事業として、とらふぐ料理専門店「玄品」などの直営店舗の運営およびフランチャイズ展開を行っています。独自の冷解凍技術と安定した調達力を強みとし、国内外の顧客に向けてとらふぐ料理を提供しています。インバウンド需要や季節需要にも対応したメニュー開発を進めています。

収益源は、直営店を利用する顧客からの飲食代金や、フランチャイズ加盟店に対する食材等の販売代金およびロイヤリティです。これらの店舗運営事業は、主に関門海およびシンガポールや中国の関連子会社が主体となって展開しています。

(2) その他事業(外部販売)


飲食店舗の運営以外に、通信販売や小売り・流通業界等への食材販売を手掛けています。店舗利用以外の顧客接点を創出し、とらふぐを中心とした加工食品や各種食材を広く一般消費者や外部法人に向けて提供しています。季節変動の影響を軽減する収益の柱として強化を進めている領域です。

収益源は、一般消費者向けの通信販売による商品代金や、小売店・流通業者など外部法人顧客への食材の卸売代金です。自社のセントラルキッチンを活用した生産体制を基盤とし、本部の外販・通販部門が主体となって関門海が事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


コロナ禍からの回復により売上高は増加傾向にあり、直近では52億円規模に達しています。利益面では前期まで増益基調が続いていましたが、当期は原材料費の高騰や従業員の待遇向上に伴う人件費等の増加が響き、経常利益および当期利益は減益に転じました。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 42.1億円 50.2億円 52.6億円 52.7億円
経常利益 0.7億円 2.1億円 3.0億円 1.8億円
利益率(%) 1.6% 4.1% 5.7% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.1億円 3.3億円 3.8億円 1.1億円

(2) 損益計算書


売上高は微増を確保したものの、食材価格の高騰やフェア実施に伴う原価上昇により売上総利益は減少しました。また、人手不足を背景とした採用コストの増加や広告宣伝費などが増加したため、営業利益は前期から大きく落ち込んでいます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 52.6億円 52.7億円
売上総利益 35.1億円 34.3億円
売上総利益率(%) 66.6% 65.1%
営業利益 3.3億円 1.9億円
営業利益率(%) 6.2% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、労務費が13.9億円(構成比43%)、地代家賃が4.0億円(同12%)を占めています。売上原価の主な内訳は、とらふぐなどの原材料仕入が占めていると考えられますが、詳細な内訳の記載がないため割愛します。

(3) セグメント収益


直営店舗事業は高価格帯メニューの販売増やフェア実施が寄与したものの、訪日外国人客の減少等もあり売上は横ばいとなりました。外部販売を担うその他事業は、法人向け卸売が好調に推移し増収に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
直営店舗事業 41.1億円 41.1億円
フランチャイズ事業 3.5億円 3.3億円
その他事業 8.1億円 8.4億円
連結(合計) 52.6億円 52.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金内で投資と借入金の返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6.0億円 2.0億円
投資CF 3.3億円 -1.4億円
財務CF -15.6億円 -6.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.9%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人間の宇宙をも一体化する可能性を確信し、本当のやさしさ・高い理想・信念・行動力を併せ持つ、主体性ある進化する個人を育て、愛に満ちた社会を創造する」という企業理念を基本方針に掲げています。飲食を通じて単に食事を提供するだけでなく、個人の成長を促し、より良い社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社の企業文化の根幹には、「人づくり」を重視する価値観が据えられています。多様な人材が主体性を持って活躍できる環境整備に努め、従業員満足度の向上を図ることで、最終的な顧客満足の実現やブランド価値の向上につなげる組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、店舗ごとの収益性を重視した以下の経営目標を掲げています。

・売上高営業利益率:10%
・店舗ごとの償却前営業利益率:20%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は主力ブランド「玄品」の価値向上と、季節変動リスクの軽減に向けた以下の重点施策を推進しています。

・「美味で健康的な本物のおいしさ」を追求した商品開発による通年での安定収益確保
・インバウンド需要の多様化を見据えた商品やサービスの提供
・外部販売事業(外販・通販)の強化による新たな収益の柱の構築

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


少子高齢化に伴う人材確保難を課題と捉え、「人づくり」の理念に基づき新卒を中心とした若手人材の積極採用と社内教育の強化を推進しています。賃上げや福利厚生の充実で従業員満足度を高めるとともに、外国人材の活躍に向けた日本語研修や、ライフイベントに応じた柔軟な働き方の導入など、多様性を尊重する社内環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.5歳 7.4年 4,411,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.7%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全従業員) 84.5%
男女賃金差異(正規雇用) 80.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 99.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役職者に占める女性労働者の割合(25.8%)、役職者一人当たりの残業時間(35.5時間)、従業員全員の所定外労働時間(554.0時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食材調達と食の安全性に関するリスク

主力事業の「玄品」は、とらふぐの調達状況や食中毒等の衛生問題が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は養殖事業者との連携による安定調達や、独自の冷解凍技術による品質維持、HACCP認証の取得などの徹底した衛生管理により、これらのリスク低減に努めています。

(2) 季節による売上変動リスク

とらふぐ料理の特性上、同社の売上高は冬場である11月から3月に偏重する傾向があります。この閑散期における需要低下リスクに対応するため、夏場に向けたうなぎ等のとらふぐ以外のメニューの拡充や、テイクアウト・デリバリーの活用、季節ごとのフェア開催などの対策を講じています。

(3) ふぐ調理師免許等の法的規制リスク

ふぐ料理を提供するためには、事業所ごとにふぐ調理師免許保持者の登録が義務付けられています。出店地域においてふぐ調理師が不足した場合、店舗展開や業績に支障をきたす恐れがあります。そのため同社は、社内におけるふぐ調理師免許の取得や登録の推進に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。