※本記事は、株式会社関門海の有価証券報告書(第37期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 関門海ってどんな会社?
とらふぐ料理専門店「玄品」を国内外で展開し、独自の冷凍解凍技術を強みに高品質な食材を提供する外食企業。
■(1) 会社概要
1989年に前身となる株式会社さかな亭(現 関門海)が設立され、2002年にとらふぐ料理専門店の屋号を「玄品ふぐ」に統一しました。2005年には東証マザーズへの上場を果たし、その後、海外展開として2017年にシンガポールへ出店しました。2020年には東証二部へ市場変更を行い、2022年の市場区分見直しに伴い現在はスタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は167名(単体166名)です。筆頭株主は代表取締役社長の関連会社である椿台で、第2位は飲料メーカーのサントリー、第3位は代表取締役社長本人です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 椿台 | 30.65% |
| サントリー | 5.10% |
| 田原久美子 | 1.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名、計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は山口久美子氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山口 久美子 | 代表取締役社長 | 椿台代表取締役を経て2012年入社。執行役員、副社長を経て2020年6月より現職。 |
| 大村 美智也 | 取締役事業統括本部長 | 1989年入社。玄品ふぐ事業部長、営業本部長、子会社社長等を歴任し2024年9月より現職。 |
社外取締役は、松下義行(元大阪府警察刑事部長・警視監)です。
2. 事業内容
同社グループは、「店舗運営事業」および「その他」事業を展開しています。
■店舗運営事業
主力事業として、とらふぐ料理専門店「玄品」を国内および海外で展開しています。独自の特許技術を活用したとらふぐの調達・加工・提供を行い、高品質な料理をリーズナブルな価格で提供するほか、夏季にはうなぎ料理なども取り扱っています。一般消費者やインバウンド旅行客が主な顧客です。
収益源は、直営店における一般消費者からの飲食代金や、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入、食材販売収入などです。運営は主に同社および連結子会社であるKANMONKAI-SG PTE.LTD.が行っています。
■その他事業
店舗運営以外の事業として、通信販売や外部への食材卸を行っています。自社の技術力を活かした食材や加工品を、一般消費者や小売・流通業界向けに販売しています。
収益源は、通信販売や卸売における商品販売代金です。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は回復傾向にあり、直近では50億円台に達しています。利益面でも、過去の赤字状態から脱却し、経常利益および当期純利益ともに黒字化が定着しています。特に直近の第37期においては、増収効果もあって利益率が改善し、親会社株主に帰属する当期純利益も増加傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 26億円 | 42.1億円 | 50.2億円 | 52.6億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | 0.7億円 | 2.1億円 | 3.0億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 1.6% | 4.1% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.0億円 | 2.1億円 | 3.3億円 | 3.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は60%台後半の高い水準を維持しています。営業利益についても、増収効果により増加しており、営業利益率は前期の5.0%から当期は6.2%へと改善しました。コストコントロールと売上拡大の両立が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 50.2億円 | 52.6億円 |
| 売上総利益 | 32.7億円 | 35.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.2% | 66.7% |
| 営業利益 | 2.5億円 | 3.3億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、労務費が13億円(構成比42%)、地代家賃が4億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、販売実績の内訳を見ると、主力の「とらふぐ料理」および「その他」ともに売上が増加しています。特に「その他」の伸び率は7.4%増と全体を牽引しており、外販や通販などの店舗外収益の拡大が寄与していると考えられます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| とらふぐ料理 | 41.1億円 | 41.1億円 |
| その他 | 11.6億円 | 11.6億円 |
| 連結(合計) | 52.6億円 | 52.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動では定期預金の払戻等によりプラスとなりました。一方、財務活動では借入金の返済を進めたため大幅なマイナスとなっています。これは営業利益と手元資金を活用して有利子負債の圧縮を進める「改善型」の状況と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.8億円 | 6.0億円 |
| 投資CF | -5.7億円 | 3.3億円 |
| 財務CF | -6.0億円 | -15.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人間の宇宙をも一体化する可能性を確信し、本当のやさしさ・高い理想・信念・行動力を併せ持つ、主体性ある進化する個人を育て、愛に満ちた社会を創造する」という企業理念を掲げています。この理念に基づき、人づくりを通じて社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「人づくり」を根本とし、従業員満足度の向上や働きがいのある環境づくりを重視しています。また、「美味で健康的な本物のおいしさの追求」を掲げ、特許技術を用いた食材開発や安全性の確保に努める姿勢が根付いています。多様な人材が強みを活かして活躍できる組織風土の醸成にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、店舗ごとの売上高営業利益率を重要な経営指標と位置づけています。具体的には、以下の数値目標の達成を継続していく方針です。
* 売上高営業利益率:10%
* 店舗ごとの償却前営業利益率:20%
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業である「玄品」のブランド価値向上を基礎とした再成長と収益性向上に取り組んでいます。具体的には、年間を通じて顧客ニーズに対応できる商品開発や、インバウンド客の取り込み、フランチャイズの拡大を推進しています。また、外部販売事業の強化や、人的資本経営の推進による人材確保・育成にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材難の環境下において、高い技術やノウハウを持つ優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。新卒・若手人材の積極採用に加え、賃上げや福利厚生の充実による従業員満足度の向上を図っています。また、商品知識やマネジメントに特化した研修を行い、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.5歳 | 7.2年 | 4,088,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.3% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 100.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役職者一人当たりの残業時間(44.0時間)、従業員全員の所定外労働時間(592.0時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) とらふぐ料理専門店「玄品」について
主力事業である「玄品」は、とらふぐの調達状況や食の安全性に関する問題が経営成績に影響を与える可能性があります。同社は養殖事業者との連携強化や独自の冷解凍技術により安定調達を図るとともに、徹底した衛生管理やHACCP認証取得などを通じて安全性の確保に努め、単一食材への依存リスクを管理しています。
■(2) 売上高の季節変動について
「玄品」の売上高は、鍋料理の需要が高まる冬場(11月から3月)に偏重する傾向があります。これに対し同社は、うなぎ等のとらふぐ以外の食材提供や、テイクアウト・デリバリーの活用、季節メニューの開発などを通じて閑散期の需要開拓を行い、通年での収益安定化を目指しています。
■(3) 法的規制について
ふぐを取り扱う事業には都道府県知事へのふぐ調理師免許保持者の登録等が必要であり、有資格者の不足が出店計画や営業に影響を及ぼす可能性があります。また、食品衛生法の規制を受けており、食中毒等の衛生問題が発生した場合には経営成績に重大な影響を与えるリスクがあります。
■(4) 減損会計について
店舗事業を展開しているため、店舗業績の不振により固定資産の減損損失を計上する場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は各店舗の収益性向上に努めていますが、将来のキャッシュ・フローが見込めないと判断された場合には、減損処理が必要となるリスクがあります。



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