ZOA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ZOA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のZOAは、パソコンやバイク用品の専門店「OAナガシマ」「パソコンの館」等を展開する小売企業です。第43期は、不動産事業の販売が好調に推移し、小売事業の減益をカバーしました。その結果、売上高は93億円で前期比7.9%増、経常利益も4.4億円で2.2%増と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ZOA の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

ZOA転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. ZOAってどんな会社?


パソコン、周辺機器、バイク用品の専門店運営および通信販売、不動産事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1981年4月に事務機器販売店「文具のナガシマ」として創業し、1984年にナガシマ情報通信株式会社を設立しました。2001年にダイワボウ情報システムの資本参加を受け、2004年に現社名へ変更。2005年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2018年にはダイワボウ情報システムとの資本関係を見直し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しています。

同社(単体)の従業員数は70名です。筆頭株主は代表取締役社長の伊井一史氏で、第2位は主要仕入先でもあるダイワボウ情報システム、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
伊井 一史 17.37%
ダイワボウ情報システム 11.57%
長嶋 しのぶ 11.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は伊井一史氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
伊井 一史 代表取締役社長執行役員 1983年オリエントファイナンス入社。1999年同社入社。管理部長、業務本部長などを経て、2013年代表取締役社長就任。2014年より現職。
小野 秀樹 常務取締役執行役員営業本部長兼不動産事業本部長 1994年スリーエフ入社。2015年同社入社。新規事業部長、執行役員営業本部長などを経て、2022年より現職。
安井 明宏 取締役執行役員管理本部長 1995年ダイワボウ情報システム入社。2001年同社入社。執行役員社長室長などを経て、2016年より現職。
内山 晴美 取締役(監査等委員) 1989年同社入社。総務課長、秘書課長などを歴任。2022年より現職(常勤)。


社外取締役は、坂口央乙(坂口税理士事務所所長)、奥田徹平(奥田司法書士・土地家屋調査士・行政書士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 小売事業


パソコン本体、周辺機器、パーツ、ソフト、バイク用品等を店舗および通信販売で販売しています。「OAナガシマ」「コンピュータプラザZOA」「パソコンの館」など合計22店舗に加え、ECサイト「e-zoa.com」を展開しています。

主な収益源は、一般消費者や法人顧客への商品販売代金です。また、商品販売に伴うサポートサービスや延長保証サービスの提供による対価も収益の一部を構成しています。運営は同社が行っています。

(2) 不動産事業


不動産の売買および賃貸に関する事業を行っています。具体的には、土地・建物の売買や、保有する土地の賃貸などを行っています。

収益源は、不動産の売却代金および賃貸収入です。第43期においては、販売用不動産の売却が大きく寄与しました。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は86億円から97億円の範囲で推移しています。2024年3月期は減収となりましたが、2025年3月期には93億円台へと回復しました。経常利益は4億円から5億円台を維持しており、利益率も4%後半から5%台で安定しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 95.2億円 96.1億円 97.3億円 86.0億円 92.7億円
経常利益 4.9億円 5.1億円 5.5億円 4.3億円 4.4億円
利益率(%) 5.1% 5.3% 5.6% 5.0% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.3億円 3.5億円 3.7億円 2.9億円 3.0億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、販管費の増加もあり、営業利益の伸びは小幅にとどまりました。売上総利益率は26.0%と、前期比でわずかに低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 86.0億円 92.7億円
売上総利益 23.1億円 24.1億円
売上総利益率(%) 26.8% 26.0%
営業利益 4.2億円 4.3億円
営業利益率(%) 4.9% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が4.9億円(構成比25%)、支払手数料が4.1億円(同21%)、賃借料が2.9億円(同15%)を占めています。売上原価については、商品売上原価が90%、不動産売上原価が10%を占めています。

(3) セグメント収益


小売事業は増収となったものの、利益面では減益となりました。一方、不動産事業は販売件数の増加や単価上昇により売上高・利益ともに大幅に伸長し、全社の増益に貢献しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
小売事業 82.8億円 84.4億円 3.5億円 2.6億円 3.1%
不動産事業 3.2億円 8.3億円 0.7億円 1.6億円 19.8%
連結(合計) 86.0億円 92.7億円 4.2億円 4.3億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.4億円 7.3億円
投資CF -1.3億円 -0.7億円
財務CF -1.1億円 -1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様の感動と会社の成長と社員の成長を一致させよう」という「三位一致」の精神を経営の基本方針としています。市場が飽和状態にある中で、価格の安さだけではなく「感動・安心」を価値の軸足とすることを重視し、より多くの顧客に信頼され支持される専門店を目指しています。

(2) 企業文化


専門店としての「接客」による顧客との対話を大切にする文化があります。顧客のニーズを引き出し、最適な商品を提案するために、従業員の知識・技術の向上を重視しています。また、eスポーツに精通した従業員が多数在籍するなど、専門性を発揮できる環境を整えています。

(3) 経営計画・目標


高い成長性を実現し、企業価値の最大化に努めることで株主の期待に応えることを目指しています。具体的な数値目標としては、顧客の支持を得てリピーター顧客を増加させることや、地域に根ざした経営の実践を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


パソコンおよび関連商品の販売強化のため、より専門性の高い店舗づくりを推進し、競合他店との差別化を図る方針です。具体的には、従業員の知識・技術の向上、修理・サポート専用部署による高度なサービスの提供、顧客の声を反映したサービス構築に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


顧客のあらゆるニーズに対応するため、従業員の知識・技術向上を不可欠と考え、教育に力を入れています。男女の分け隔てなく業界に精通した従業員を雇用し、自主的に意欲を持って活躍できる職場づくりを推進しています。定期的な勉強会や情報共有を通じて、業務の幅や質を高める取り組みを実践しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.9歳 14.9年 4,884,692円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 63.4%
男女賃金差異(正規雇用) 77.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 104.5%


※同社は育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員の新卒採用に占める女性割合目標(10%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合について


家電量販店やパソコン専門店などとの競争激化により、販売単価の下落や利益率の低下が生じる可能性があります。同社は、価格だけでなくサービスやサポート等の付加価値を提供することで差別化を図っていますが、市場動向や競合状況によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 棚卸資産について


商品企画チームと店舗が連携し、在庫回転期間の短縮や在庫残高の適正化に努めています。しかし、品揃えが顧客ニーズの変化に十分対応できなかった場合、棚卸資産が増加し、将来の財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) パソコン本体等の価格変動について


同社の主力商品であるパソコン本体や周辺機器は、販売単価の変動が激しい商品カテゴリーです。同社の予測を超える大幅な価格変動が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。