三洋堂ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三洋堂ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三洋堂ホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、新本と古本を併売するハイブリッド型書店を核にトレカ館や駿河屋などの小売サービス事業を展開しています。直近の業績では、利益率の高い新規事業や成長部門が牽引して増収増益を達成しました。スマート無人営業の導入など生産性向上も推進中です。


※本記事は、株式会社三洋堂ホールディングスの有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三洋堂ホールディングスってどんな会社?


三洋堂ホールディングスは、書店を中心にトレカや中古ホビーなどの小売サービス事業を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


1959年に杁中三洋堂として設立され、1978年に三洋堂書店として分離独立しました。2006年の株式上場を経て、2012年に持株会社体制へ移行し現在の社名へ変更しました。近年は従来の書店に加え、フィットネス事業やビュッフェ事業、中古ホビー事業の駿河屋など、多様な新規事業へ積極的に参入しています。

現在の従業員数は連結で181名、単体で43名です。筆頭株主は事業会社のトーハンで、第2位は日和エステート、第3位は創業家の加藤和裕氏となっています。

氏名 持株比率
トーハン 36.49%
日和エステート 23.43%
加藤 和裕 9.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性5名の計10名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長最高経営責任者兼最高執行役員は加藤和裕氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 和裕 代表取締役社長最高経営責任者兼最高執行役員 1983年同社取締役就任、1987年日和エステート設立・社長就任。1996年同社副社長を経て、2000年社長に就任。2011年最高経営責任者兼最高執行役員となり、グループ各社の社長などを歴任して現職。
亀割 卓 取締役副社長上席執行役員 1990年東京出版販売(現トーハン)入社。同社取引部長等を経て、2017年三洋堂ホールディングス総務部次長に入社。同社総務部長、取締役上席執行役員を経て、2020年より現職。
伊藤 勇 取締役執行役員経営企画室長 1988年同社入社。2007年取締役執行役員店舗運営部長に就任。その後、AV商品部長や人事総務部長などの要職を歴任し、2022年より現職。
加藤 正康 取締役執行役員業態開発室長 2014年愛知銀行入行。2017年同社に入社し、日和エステート取締役も兼務。三洋堂プログレ社長を経て2019年同社取締役。三洋堂書店取締役新規事業部長などを務め、2022年より現職。


社外取締役は、杉本香織(オーケーズデリカ代表取締役社長)、下和田静香(COCOAS代表取締役)、沓友紀子(トーハン関連事業本部マネジャー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売サービス事業」を中心とする単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 小売サービス事業


同社グループの中核事業として、新刊書籍と古本を併売するハイブリッド型書店を展開しています。加えて、トレーディングカードを扱う「トレカ館」や、中古ホビーを扱う「駿河屋」、文具・雑貨・食品、映像やゲームソフトなどの新品販売・リユース・レンタルサービスを幅広く顧客に提供しています。

収益は、店舗での商品販売や買取・レンタル利用料から得ています。事業の運営は主に事業会社である三洋堂書店が行っており、スマート無人営業の導入など利便性向上とコスト削減を図りながら多様なフォーマットでの店舗展開を推進しています。

(2) 新規事業およびその他のサービス


書店事業の枠組みを超え、顧客のライフスタイルに合わせた時間消費型のサービスを提供しています。具体的には、飲食店を運営するビュッフェ事業や、店舗スペースを活用したフィットネス事業、教育事業、自動販売機設置のほか、不動産賃貸などを展開しています。

収益は、各施設やサービスの利用料、テナントからの賃貸収入などで構成されています。運営は三洋堂書店のほか、ビュッフェ事業を担う三洋堂プログレなどが担当し、書店を核としながらも新しい価値を提供する複合的なビジネスモデルを構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は市場環境の変化を受けて減少傾向にありましたが、直近ではトレカや中古ホビーなどの成長事業が牽引し増収へと転じました。利益面でも、不採算店舗の整理や利益率の高いリユース部門の拡大が寄与し、経常利益・当期利益ともに大幅な改善を見せ、安定的な黒字基調を回復しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 189億円 178億円 173億円 166億円 172億円
経常利益 0.4億円 -2億円 1億円 2億円 3億円
利益率(%) 0.2% -1.2% 0.8% 1.0% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -4億円 -0.4億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で約6億円の増収となり、利益率の高い新規事業やリユース部門の好調を背景に、売上総利益率も改善しました。営業利益は前年の1億円から3億円へと拡大し、収益性の向上が顕著に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 166億円 172億円
売上総利益 53億円 56億円
売上総利益率(%) 32.2% 32.7%
営業利益 1億円 3億円
営業利益率(%) 0.7% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が21億円(構成比40%)、地代家賃が10億円(同18%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業のキャッシュ・フローは、本業で得た資金を元に外部調達も活用して積極的な投資を行っている「積極型」です。直近では営業活動によるプラスのキャッシュ・フローを確保しつつ、新規出店やスマート無人営業の導入などに向けた設備投資を継続的に実施しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.4億円 0.3億円
投資CF -1億円 -0.6億円
財務CF 0.6億円 1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ほんとのであいのおてつだい」をミッションに掲げ、「Creating a world without boredom.」をビジョンとしています。このミッションに基づき、バラエティに富んだ品揃えと利便性の高いサービスをお客様に提供し、持続的な成長を実現することを企業の存在意義として定めています。

(2) 企業文化


コンプライアンスに沿った適正な企業活動によって利益を確保し、持続的な成長を目指す姿勢を大切にしています。また、人権の尊重や差別・ハラスメントの撲滅、労働環境の整備を重要課題(マテリアリティ)に掲げ、すべての従業員が安全で健康に能力を発揮できる職場風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


資本の収益性指標としてROA(総資産対当期純利益率)と、事業の現金創出力を示すEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を重視しています。これらの指標の継続的な改善を目標とし、成長のための投資を可能とするキャッシュ・フローの獲得を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


新本と古本を併売するハイブリッド型書店を核に、スマート無人営業やスマートフォンを活用する「スマート・ブックバラエティストア」業態への進化を進めています。中期的な収益構造の確立に向けて、トレカや中古ホビー(駿河屋)などの成長商材へ投資を拡大し、リユース事業の仕入力と販売力の向上に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業構造の変化に対応できる人材の育成と、多様な人材の活躍促進を軸としています。特にリユース分野等の成長領域における専門知識の育成を進めるほか、パート社員からの正社員登用や転勤のない地域社員制度、ジョブリターン制度を整備し、ライフステージに応じた多様な働き方を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.4歳 22.2年 4,917,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 36.6%
男女賃金差異(正規雇用) 86.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 21.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店と不動産価格上昇の影響


店舗網の拡大において、計画通りに適した物件を確保できない場合や、既存店舗の契約更新ができない場合は業績に影響が及ぶ可能性があります。また、昨今の不動産価格や建築資材価格の上昇、建設業界の人材不足なども店舗開発のコスト増につながる懸念事項として挙げられます。

(2) 特定仕入先への依存


同社グループの総仕入実績の半分以上はトーハンが占めています。同社とは資本業務提携契約を結び安定的な取引関係を構築していますが、何らかの理由でこの取引関係の継続が困難になった場合、商品の安定供給が滞り、業績や財務状況に影響を与えるリスクがあります。

(3) リユース品の仕入れと競争激化


中古ホビーやトレカなどのリユース事業は一般顧客からの買取が中心のため、計画的な仕入数量の確保が難しい特性があります。また、環境意識の高まり等で新規参入が増え競争が激化しており、十分な質と量の商品を確保できない場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 大規模なシステム障害とサイバー攻撃


店舗運営や商品管理において情報システムへの依存度が高まっています。外部データセンターの活用やセキュリティ対策を実施しているものの、予測を超えるサイバー攻撃やランサムウェアの被害などでシステムが停止した場合、業務への支障や信用低下を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。