※本記事は、株式会社三洋堂ホールディングス の有価証券報告書(第48期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三洋堂ホールディングスってどんな会社?
東海地方を地盤に、書店を核とした複合店舗「三洋堂書店」などを展開し、地域密着型の小売サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1959年に株式会社杁中三洋堂として設立され、1978年に株式会社三洋堂書店を設立して営業を承継しました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2012年には持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は175名、単体従業員数は43名です。筆頭株主は主要取引先である出版取次会社、第2位は代表取締役社長が代表を務める資産管理会社、第3位は代表取締役社長です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トーハン | 36.49% |
| 日和エステート | 23.31% |
| 加藤 和裕 | 9.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性5名の計10名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長最高経営責任者兼最高執行役員は加藤和裕氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 和裕 | 代表取締役社長最高経営責任者兼最高執行役員 | 1983年同社入社。1996年代表取締役副社長を経て、2000年より現職。三洋堂書店社長を兼務。 |
| 亀割 卓 | 取締役副社長上席執行役員 | 1990年トーハン入社。同社取引部長などを経て2017年三洋堂HD入社。2020年より現職。 |
| 伊藤 勇 | 取締役執行役員経営企画室長 | 1988年同社入社。AV商品部長、人事総務部長などを歴任し、2022年より現職。 |
| 加藤 正康 | 取締役執行役員業態開発室長 | 2014年愛知銀行入行。2017年同社入社。三洋堂プログレ社長を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、杉本香織(オーケーズデリカ社長)、下和田静香(COCOAS代表取締役)、沓友紀子(トーハン書店事業本部マネジャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売サービス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 小売サービス事業
書店部門を核に、トレーディングカード、文具・雑貨、セルAV、古本、ゲームソフト、レンタル等を扱う複合店舗を展開しています。また、「駿河屋」フランチャイズ店舗の運営、フィットネス事業、ビュッフェ事業、教育事業なども行っています。
一般消費者への商品販売、レンタル料、サービス利用料などが主な収益源です。運営は主に株式会社三洋堂書店および株式会社三洋堂プログレが行っています。
■(2) その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸業などを行っています。
保有する不動産や店舗スペースのテナントへの賃貸による賃料収入が主な収益源です。運営は主に同社および連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にありますが、不採算店舗の整理やコスト削減効果により、利益面では赤字から黒字への回復が見られます。直近では営業外収益の寄与もあり、経常利益が安定的に確保されています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 209億円 | 189億円 | 178億円 | 173億円 | 166億円 |
| 経常利益 | 6.7億円 | 0.4億円 | -2.2億円 | 1.4億円 | 1.7億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 0.2% | -1.2% | 0.8% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.1億円 | -1.7億円 | -3.6億円 | -0.4億円 | 1.8億円 |
■(2) 損益計算書
減収に伴い売上総利益は減少しましたが、販売費及び一般管理費の抑制が進んだことで営業利益は増加しました。特に人件費や地代家賃の削減が寄与しており、収益構造の改善が進んでいます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 173億円 | 166億円 |
| 売上総利益 | 54億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.4% | 32.2% |
| 営業利益 | 0.8億円 | 1.2億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | 0.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が21億円(構成比39%)、地代家賃が10億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
書店部門やレンタル部門、セルAV部門などは市場縮小の影響を受け減収となりましたが、トレカ部門や新規事業部門(駿河屋、ビュッフェ等)は店舗網拡大により増収となりました。既存事業の落ち込みを成長事業が補う構図となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 書店部門 | 98億円 | 91億円 |
| トレカ部門 | 18億円 | 20億円 |
| 文具・雑貨・食品部門 | 16億円 | 15億円 |
| セルAV部門 | 7億円 | 6億円 |
| 古本部門 | 6億円 | 5億円 |
| TVゲーム部門 | 5億円 | 4億円 |
| レンタル部門 | 10億円 | 8億円 |
| 新規事業部門 | 10億円 | 13億円 |
| サービス販売部門 | 1.2億円 | 1.1億円 |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 173億円 | 166億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.4億円 | 0.4億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | -1.4億円 |
| 財務CF | -5.0億円 | 0.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ほんとのであいのおてつだい」をミッションとし、「Creating a world without boredom.」をビジョンとして掲げています。持続的な成長を実現するため、バラエティに富んだ品揃えと利便性の高いサービスの提供を通じて企業活動を行っています。
■(2) 企業文化
「ほんとのであい」を実現するため、コンプライアンスに沿った適正な企業活動によって利益を確保すること重視しています。また、顧客ニーズの変化に合わせた様々な販売・サービス部門の導入や、スマートサービスの開発を通じて、持続的な成長を目指す姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的な改善を目標とする経営指標として、以下の2点を重視しています。
* ROA(総資産対当期純利益率)
* EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)
■(4) 成長戦略と重点施策
新本と古本を併売するハイブリッド型書店を核に、スマート無人営業やスマホ活用サービスを提供する「スマート・ブックバラエティストア」業態の展開を進めています。また、動画配信等の影響による市場変化に対応するため、成長商材の拡大やコスト構造の見直しに取り組んでいます。
* スマートサービスの拡大(無人営業、セルフ受取等)
* 成長商材(トレカ、駿河屋、プラモデル等)の拡大と新商材開発
* リユース事業の強化(買取価格適正化、販売力向上)
* コスト構造及び利益構造の見直し(有人時間帯見直し、ロス対策)
* 人材の確保と育成
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
将来にわたり企業価値を拡大するため、人材の確保・育成および多様な働き手を支援する環境整備を進めています。また、成長を続ける新規事業に対応するため、人事制度や資格制度の再構築にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.0歳 | 21.4年 | 4,921,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.6% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 35.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 87.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 24.9% |
※男性労働者の育児休業取得率の「-」は、育児休業取得の対象となる男性労働者がいないことを示しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(連結)(17.8%)、正規雇用労働者の有給休暇取得率(連結)(52.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 店舗の出店について
ローコスト出店のため主に賃貸物件を利用していますが、地主等の事情や大規模小売店舗立地法の手続きにより計画通りの出店ができない、または営業継続が困難になる可能性があります。また、建築資材価格や不動産価格の上昇も業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 差入保証金等について
賃貸物件利用に伴い貸主に敷金等を差し入れていますが、貸主の破綻等により回収リスクが生じる可能性があります。また、中途解約時に返還請求権放棄や違約金支払いが必要になる場合があり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定仕入先への依存度について
主要取引先であるトーハンからの仕入割合は約6割に達しています。資本業務提携等により関係は安定していますが、取引関係の継続が困難となった場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
■(4) 電子書籍や映像・音楽配信の影響について
書籍・雑誌やDVD・CD等の市場は電子化や配信サービスの影響で縮小傾向にあります。新規事業の導入を進めていますが、ライフスタイルの変化が想定より急速に進んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。



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