アートネイチャー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アートネイチャー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、オーダーメイドウィッグの製造・販売を主力事業としています。直近の業績は、売上高が前期比で微増したものの、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも減益となりました。


※本記事は、株式会社アートネイチャー の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アートネイチャーってどんな会社?


オーダーメイドウィッグの製造・販売を主軸に、既製品ウィッグ販売や毛髪関連サービス等を展開する総合毛髪企業です。

(1) 会社概要


1967年に設立され、阿久津三郎氏のかつら事業に参画する形で創業しました。1987年には女性用分野へ本格進出し「レディースアートネイチャー」を発表。2007年にジャスダック証券取引所へ上場し、2013年には東京証券取引所市場第一部へ市場変更しました。2024年にはバングラデシュに製造子会社を設立しています。

連結従業員数は3,899名、単体では2,382名です。筆頭株主は同社代表取締役会長兼社長の五十嵐祥剛氏で、第2位は資産管理会社と推察される有限会社アイ・コーポレーションです。第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
五十嵐 祥剛 18.61%
有限会社アイ・コーポレーション 9.94%
塚本 武 7.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長兼社長は五十嵐祥剛氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
五十嵐 祥剛 取締役会長兼社長(代表取締役) 1967年同社設立時に入社。2000年代表取締役社長に就任。2007年より代表取締役会長兼社長。複数の海外子会社の会長等を歴任し、2024年よりANBD社取締役会長を兼任。
森安 寿一 専務取締役上席執行役員メンズ営業本部長 1991年アートネイチャー関西入社。同社営業本部長などを経て2017年専務取締役就任。2024年2月より現職。
五十嵐 啓介 常務取締役 1998年アートネイチャー関西入社。同社広告宣伝部長などを経て2012年常務取締役就任。2015年8月より現職。
内藤 功 常務取締役 1982年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2009年同社入社。管理本部長、人事部長などを経て2016年常務取締役就任。同年8月より現職。
川添 久幸 取締役上席執行役員生産本部長 1995年アートネイチャー中部入社。生産本部長などを経て2009年取締役就任。ANMP社社長などを兼任し、2024年よりANBD社取締役副会長も務める。
重松 小百合 取締役上席執行役員レディース営業本部長 1994年入社。レディース企画部長、ジュリア・オージェ営業部長などを経て、2024年2月よりレディース営業本部長。同年6月より現職。


社外取締役は、中山マヤ(元ELCジャパン(合)常務取締役)、清永敬文(弁護士)、松岡幸子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「男性向け事業」「女性向け事業」「女性向け既製品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 男性向け事業


男性顧客向けに、主力製品であるオーダーメイドウィッグのほか、増毛商品、育毛剤等のヘアケア商品、理美容サービスを提供しています。

収益は、商品の販売代金や施術・アフターサービス料等を顧客から受領することで発生します。運営は主に同社が行っています。

(2) 女性向け事業


女性顧客向けに、オーダーメイドウィッグ「レディースアートネイチャー」のほか、ヘアケア商品、理美容サービスなどを提供しています。

収益は、商品の販売代金やメンテナンス料等を顧客から受領することで発生します。運営は主に同社が行っています。

(3) 女性向け既製品事業


女性向け既製品ウィッグを、ショッピングモール等に出店する「ジュリア・オージェ」や展示会、NAO-ART店舗にて販売しています。

収益は、商品の販売代金を顧客から受領することで発生します。運営は同社および連結子会社のNAO-ART株式会社が行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、通信販売事業、医療関連サポート事業等を行っています。

収益は、商品販売代金等を顧客から受領することで発生します。運営は同社や、株式会社ビューティーラボラトリ等の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2021年3月期以降、回復・増加傾向にあり、当期は433億円となりました。一方、経常利益は2023年3月期をピークに減少しており、当期は前期比減益となっています。当期純利益も前期から減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 359億円 404億円 432億円 429億円 433億円
経常利益 20億円 30億円 35億円 27億円 22億円
利益率(%) 5.6% 7.5% 8.2% 6.4% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 8億円 19億円 15億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価および販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益、経常利益ともに減少しました。特に営業利益率は低下しており、コスト負担の増加が利益を圧迫している状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 429億円 433億円
売上総利益 287億円 287億円
売上総利益率(%) 67.0% 66.2%
営業利益 27億円 22億円
営業利益率(%) 6.2% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が62億円(構成比23.3%)、給料手当が47億円(同17.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


男性向け事業と女性向け既製品事業は増収増益となりましたが、女性向け事業は減収減益となりました。特に女性向け既製品事業は利益率も高く、業績への貢献度が高まっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
男性向け事業 228億円 232億円 145億円 146億円 63.1%
女性向け事業 128億円 126億円 84億円 80億円 63.5%
女性向け既製品事業 57億円 61億円 46億円 49億円 81.0%
その他 16億円 15億円 14億円 14億円 92.2%
調整額 - - -2億円 -2億円 -
連結(合計) 429億円 433億円 287億円 287億円 66.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アートネイチャーは、営業活動により資金を創出し、設備投資や配当金の支払いに充当しています。

営業活動では、減損損失や退職給付に係る負債の増加等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上等により、前連結会計年度を上回る資金収入を確保しました。一方、投資活動では、有形・無形固定資産の取得や敷金・保証金の差入等により、前連結会計年度を上回る資金支出となりました。財務活動では、配当金の支払いが主な資金支出となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比で減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 26億円
投資CF -22億円 -29億円
財務CF -9億円 -9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、髪に関する悩みを抱える全てのお客様に対し、総合毛髪企業として最適な品質とサービスを提供することでその解決に努め、「お客様に満足頂ける毛髪文化を創造する」ことを経営理念としています。

(2) 企業文化


「ふやしたいのは、笑顔です。」をモットーに、製品開発、生産、サービス体制の充実を図っています。また、コンプライアンス体制の強化や積極的な情報開示を通じ、株主や投資家をはじめとするステークホルダーから信頼され支持される経営を目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「アートネイチャーAdvanceプラン」において、2026年3月期の目標指標を設定しています。
* 売上高:476億円
* 売上高経常利益率:6.0%
* ROE:5.5%

(4) 成長戦略と重点施策


「お客様の数を増やす」ことを最優先課題とし、ニーズに応じた高品質な製品・サービスの開発と効果的な広告宣伝により需要を喚起します。また、「新領域の事業を開拓し拡充する」ため、M&Aや新規事業により「美と健康」に係る領域への拡大を図ります。さらに、採用強化とダイバーシティ推進による「高水準の人財確保」、生産拠点分散やDX推進による「中長期的な企業価値向上」に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


業績伸長や新領域開拓のため、採用の募集ルート多様化や間口拡大を進め、高水準の人財を安定的に確保する方針です。また、ダイバーシティマネジメントを推進し、ワークライフ・バランス重視や健康経営の実践を通じて、従業員一人ひとりが活き活きと働き、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境整備と定着化を図ります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 11.8年 4,468,363円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.3%
男性育児休業取得率 68.2%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 76.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人的資本リスク


スタイリストには理美容師免許が必要であり、今後の事業拡大には海外事業や新規事業、DXに対応できる人財の確保が不可欠です。必要な人財を十分に確保できない場合や、人事制度・環境が不十分で従業員のエンゲージメントが低下し離職が増加した場合、事業戦略の遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場リスク


国内ヘアケア市場では異業種の参入が進み、同社が属する毛髪業市場規模は漸減傾向にあります。同業他社や異業種との競争激化、競合による革新的な新製品の発売、価格競争の激化などが起きた場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) レピュテーションリスク


主力製品であるオーダーメイドウィッグは顧客同士の情報交換がされにくい特性があるため、マスコミやインターネット、SNS等で否定的な風説や風評が拡散した場合、事実確認が難しく、ブランド価値が毀損し社会的信用が低下することで、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。