※本記事は、株式会社アートネイチャー の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
アートネイチャーは、オーダーメイドウィッグの製造・販売を主たる業務としています。お客様の頭部を3D型取りシステムで計測し、製造子会社に委託してウィッグを製造。女性向け既製品ウィッグも国内外の製造委託先で製造し、複数の店舗形態で販売しています。
単体従業員数は2,321名、連結従業員数は3,851名です。セグメントは男性向け事業、女性向け事業、女性向け既製品事業の3つです。
主な国内グループ会社は、ビューティーラボラトリ(商品企画・開発・販売)、AN友の会、アート三川屋、NAO-ART()(毛髪関連製品の販売)、アートメディカルサービス(医療関連サポート事業)などです。
アートネイチャーは、安価なウィッグ事業参入のためNAO-ART社を子会社化。医薬品販売や医療関連サポート事業への参入を目指し、アートメディカル社を設立するなど、新領域の事業に取り組んでいます。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
アートネイチャーは、毛髪関連事業を展開する企業として、従業員の働きがいと成長を重視する姿勢が見られます。給与水準や人材の定着傾向、そして多様な働き方を支える制度を通じて、従業員が長期的にキャリアを築ける環境を提供していると考えられます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の定着を促し、経験を積んだ人材が活躍できる環境が整っている傾向が見られます。平均勤続年数や平均年齢から、安定して長く働く従業員が多いことがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 4,553,307円 |
| 平均勤続年数 | 12.3年 |
| 平均年齢 | 45.2歳 |
| 単体従業員数 | 2,321人 |
| 連結従業員数 | 3,851人 |
| 単体のグループ内比率 | 60.3% |
同社グループは、確定給付型の制度として退職一時金制度を設けており、また同社は退職一時金制度に加えて確定拠出型年金制度を導入しています。確定給付型は給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度、確定拠出型は会社が拠出した資金を従業員が運用する制度です。
退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、退職給付債務は41.4億円、年金資産は1.4億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、長期ビジョン「ARTNATURE 2.0」及び中期経営計画「アートネイチャーFrontierプラン」に則り、「人的資本の強化」を目指した人材戦略を掲げています。具体的には、スタイリストのリスキリングと本社人財の育成を実践しています。
従業員の給与その他の給与の額及び内容については、サステナビリティに関する考え方及び取組に記載の「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」に基づき、社内会議にて決定されています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.7% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
アートネイチャーグループは、オーダーメイドウィッグの製造・販売を主軸に事業を展開しています。顧客の性別に応じた製品やサービスを提供し、毛髪関連のニーズに応えています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、オーダーメイドウィッグの製造・販売を主たる業務としています。顧客の頭部形状を計測し、製造子会社に委託してウィッグを製造する体制を構築しています。また、既製品ウィッグの販売も手掛けています。
収益モデルとしては、オーダーメイドウィッグや既製品ウィッグの販売が中心です。加えて、女性向けオーダーメイドウィッグや既製品ウィッグの無償点検サービス、製品販売時に付与されるポイントなど、長期的な顧客との関係に基づく収益の要素も持ち合わせています。これらの履行義務は、期末日後1年以内に約79%、残り約21%が期末日後2年以内に収益として認識される見込みです。
同社グループの事業は、顧客の性別ごとに戦略を立てており、以下のセグメントで構成されています。
男性向け事業
男性顧客に対し、オーダーメイドウィッグ、増毛商品、育毛ケア・サービス、アフターサービスを提供しています。当連結会計年度においては、新規・リピートともに売上が前期から増加しました。収益は、これらの製品やサービスの提供から得ています。
女性向け事業
女性顧客に対し、オーダーメイドウィッグ、増毛商品、育毛ケア・サービス、アフターサービスを提供しています。当連結会計年度では、リピート売上が堅調に推移し、前期から売上が増加しました。収益は、これらの製品やサービスの提供から得ています。
女性向け既製品事業
女性顧客に対し、既製品ウィッグ、その他の商品、サービスを提供しています。リピート販売が好調に推移したことにより、当連結会計年度の売上は前期から増加しました。収益は、既製品ウィッグの販売から得ています。運営は、ジュリア・オージェ、NAO-ARTが行っています。
その他の事業セグメント
この区分には、報告セグメントに含まれない製造子会社などが含まれています。当連結会計年度の売上は前期から増加しました。
同社グループの売上高は、大部分を日本国内の外部顧客から得ており、海外比率は低い傾向にあります。特定の顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の10%以上を占めることはありません。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 男性向け事業 | 232億円 | 233億円 |
| 女性向け事業 | 126億円 | 135億円 |
| 女性向け既製品事業 | 60.8億円 | 62.3億円 |
| その他の事業セグメント | 15.3億円 | 15.8億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、直近5年間で売上高が緩やかに増加傾向にあります。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は変動が見られますが、当連結会計年度においては大幅な増加となりました。これは、男性向け及び女性向けのリピート売上が堅調に推移したことや、女性向け既製品売上が増加したことなどが寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 432億円 | 428億円 | 433億円 | 446億円 |
| 経常利益 | 30.4億円 | 35.3億円 | 27.2億円 | 22.5億円 | 34.5億円 |
| 経常利益率 | 7.5% | 8.2% | 6.4% | 5.2% | 7.7% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 12.0億円 | 18.7億円 | 14.6億円 | 8.2億円 | 19.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 37.51 | 58.00 | 44.99 | 25.25 | 58.29 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は前期から増加しており、生産性の向上が見られます。また、従業員1人あたり営業利益も前期から増加しており、収益性の改善が進んでいることが示されています。これらの指標は、組織全体の効率性や事業活動による収益創出能力の傾向を示すものです。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 11.1百万円 | 11.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.6百万円 | 0.8百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
株式会社アートネイチャーは、堅実な事業活動を通じて安定した資金を生み出し、財務基盤を強化しています。本業で得た資金を投資に回しつつ、手元資金も厚く保たれている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は53.4%となっており、プライム市場の非製造業平均と比較して高い水準を示しています。ROE(自己資本利益率)は6.9%で、プライム市場平均を下回っています。手元資金である現金及び預金は199億円と潤沢であり、不況時にも耐えうる財務的な安定性があると言えます。これらの財務基盤は、入社後の雇用や給与の安定性にも寄与する要素です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 271億円 | 283億円 |
| 自己資本比率 | 53.8% | 53.4% |
| ROE(自己資本利益率) | 3.1% | 6.9% |
| 現金及び預金 | 182億円 | 199億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは52.0億円の資金収入となりました。これは税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の増加等によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは24.6億円の資金支出となっており、有形固定資産の取得による支出等が主な要因です。この結果、本業で得た資金が投資を上回るフリーキャッシュ・フローは27.4億円の資金収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは9.1億円の資金支出で、配当金の支払いが主な要因です。同社グループは本業で安定的に資金を創出し、投資を賄いつつも余剰資金を生み出している状況です。この資金状況は、将来の事業展開や雇用・給与の安定性につながるものと言えます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 25.8億円 | 52.0億円 |
| 投資CF | △29.1億円 | △24.6億円 |
| 財務CF | △9.1億円 | △9.1億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △3.3億円 | 27.4億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、毛髪業市場の漸減傾向と異業種からの参入による競合激化を市場リスクとして認識しています。消費者ニーズやトレンドの変化に適応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、少子高齢化による労働人口減少や働き方の多様化に伴う人材獲得競争の激化を人的資本リスクとして挙げています。必要な人材を確保できない場合、事業戦略の遂行に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
アートネイチャーは、お客様の「よりポジティブな生き方」を支える毛髪文化の創造を目指し、人財への投資と挑戦を重視する企業風土を持っています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
アートネイチャーは、総合毛髪企業として、髪に関する悩みを抱える全てのお客様に対し、最も適した最高の品質と最良のサービスを提供することを経営理念としています。
これにより、「よりポジティブな生き方、より美しく輝きのあるライフスタイルを提唱する」とともに、「お客様に満足頂ける毛髪文化を創造する」ことを目指しています。
この経営理念の実現に向けて、同社グループは「グローバル・ネットワークで、最高の品質と最良のサービスを提供する」こと、そして「広く社会から信頼される経営を通して、常に豊かで潤いのある未来を築いていく」ことを経営戦略としています。
中期経営計画「アートネイチャーFrontierプラン」では、「世界一のウィッグライフメーカーを目指す」という長期ビジョンを掲げています。
事業基盤を強化し、新領域の事業に挑戦するという目標に向かって、自らの道を切り拓く「開拓者」としての強い意志を示しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
アートネイチャーは、総合毛髪企業としてお客様に最高の品質と最良のサービスを提供し、毛髪文化を創造することを目指しています。
この目標達成のため、同社グループはグローバルな視点で事業を展開し、広く社会から信頼される経営を通じて豊かな未来を築くことを重視しています。
また、サステナビリティを経営上の重要課題と認識し、その課題への取り組みを取締役会で審議・報告する体制を構築しています。
中期経営計画「アートネイチャーFrontierプラン」では、自らの道を切り拓く「開拓者」としての強い意志を掲げ、挑戦する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
アートネイチャーは、中長期的な企業価値向上を目指し、特に人的資本の強化を重点テーマとしています。
専門性の高い人財を競争力の源泉と捉え、人財への投資を加速させています。
理容師・美容師資格保有者には最新の技術力・接客力・商品提案力のリスキリングを実施し、お客様ニーズへの対応力を高めています。
また、次世代を担う管理人財やデジタル人財の育成に注力しています。
健康経営の推進や「くるみん」「えるぼし」認定に関わる施策を通じて、ワークライフ・バランスの向上と社員が能力を最大限発揮できる職場環境の整備にも取り組んでいます。
主要ポストのサクセッションプランを実践し、サステナブルな経営体制の構築を目指しています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
アートネイチャーは監査役会設置会社であり、社外取締役3名を含む9名の取締役会と、社外監査役2名を含む3名の監査役会で構成されています。同社グループは、取締役会の意思決定機能と監督機能を高めるため、執行役員制度を導入しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
アートネイチャーの筆頭株主は代表取締役会長兼社長の五十嵐祥剛氏です。上位株主には、有限会社アイ・コーポレーションや塚本武氏が名を連ねています。創業家や関連会社が上位に位置しており、特定の株主グループが経営に影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 五十嵐 祥剛 | 18.61% |
| 有限会社アイ・コーポレーション | 9.94% |
| 塚本 武 | 7.68% |
| UHPartners2投資事業有限責任組合 | 7.53% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.32% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は12名(男性9名・女性3名)で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長兼社長は五十嵐祥剛氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 五十嵐 祥剛 | 取締役会長兼社長(代表取締役) | 1967年4月同社創業者故阿久津三郎の営むかつら事業に参画。1967年6月同社設立時に入社。2007年7月同社代表取締役会長兼社長。2016年4月同社代表取締役会長兼社長より現職。 |
| 森安 寿一 | 専務取締役 | 1991年5月同社入社。2009年6月同社取締役兼上席執行役員営業本部長。2017年8月同社専務取締役兼上席執行役員営業本部長。2026年4月同社専務取締役より現職。 |
| 五十嵐 啓介 | 常務取締役 | 1998年12月同社入社。2000年4月有限会社アイ・コーポレーション代表取締役社長。2015年8月同社常務取締役より現職。 |
| 内藤 功 | 常務取締役 | 1982年4月株式会社富士銀行(現株式会社みずほ銀行)入行。2009年5月同社入社。2016年8月同社常務取締役より現職。 |
| 川添 久幸 | 取締役 | 1995年11月同社入社。2009年6月同社取締役兼上席執行役員生産本部長。2026年4月同社取締役より現職。 |
| 重松 小百合 | 取締役上席執行役員レディース営業本部長 | 1994年11月同社入社。2024年6月同社取締役兼上席執行役員レディース営業本部長より現職。 |
社外取締役は、中山マヤ氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科非常勤講師)、清永敬文氏(弁護士)、松岡幸子氏(公認会計士)です。
同社は監査役会設置会社を採用しており、株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人を会社の機関としています。社外取締役3名体制により、経営に対する監督機能の充実を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
アートネイチャーの役員報酬は、優秀な人材の確保と維持を考慮しつつ、同社グループの業績および企業価値増大へのモチベーションを高めることを主眼としています。業務執行取締役の報酬は、固定報酬、臨時報酬、自社株報酬のバランスを勘案した体系です。社外取締役は、職務執行に対する監督機能の役割を担うことから、固定報酬となっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 4.0億円 | 66.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 18百万円 | 18.0百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 25百万円 | 5.0百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は、五十嵐祥剛氏(1.72億円)です。
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