WDI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

WDI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はスタンダード市場に上場し、「カプリチョーザ」や「ウルフギャング・ステーキハウス」など多様なブランドのレストラン運営を行う企業です。当連結会計年度は、インバウンド需要の回復等により増収となりましたが、原材料価格や人件費の高騰等が影響し、経常利益および当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社WDI の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. WDIってどんな会社?


国内外で「カプリチョーザ」等のレストランを展開。「ダイニングカルチャーで世界をつなぐ」を理念とする企業です。

(1) 会社概要


1954年に映画館経営を行う中央興行として設立され、1972年に外食事業へ参入しました。1985年に「カプリチョーザ」直営1号店を開店し、マルチブランド展開を加速させました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2009年には「ウルフギャング・ステーキハウス」の海外直営1号店を開店しています。

同社グループは連結従業員2,266名、単体6名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家に関連すると推測されるSoken Corp.で、第2位は同社取締役会長の清水洋二氏です。

氏名 持株比率
Soken Corp. 24.17%
清水 洋二 10.18%
清水 謙 2.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は清水 謙氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
清水 謙 代表取締役社長 1992年さくら銀行入行。1998年同社入社。2003年代表取締役社長兼C.O.O.を経て、2008年より現職。
清水 洋二 取締役会長 1963年東急不動産入社。1971年同社代表取締役社長、2000年代表取締役会長兼C.E.O.を経て、2008年より現職。
佐々木 智晴 取締役管理本部本部長 1989年太陽神戸銀行入行。2001年同社入社。2003年執行役員管理本部本部長を経て、2006年より現職。
堀内 順 取締役 1993年同社入社。2009年WDI International, Inc.代表取締役。2015年より現職。
中谷 巌 取締役 1965年日産自動車入社。一橋大学教授、多摩大学学長、ソニー取締役等を歴任。2003年より現職。
阿部 佳 取締役 1982年パルコ入社。グランドハイアット東京チーフコンシェルジュ等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、中谷 巌(株式会社不識庵代表取締役)、阿部 佳(明海大学特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「JapanReportableSegments」、「NorthAmericaReportableSegments」、「MicronesiaReportableSegments」、「AsiaReportableSegments」および「その他」事業を展開しています。

(1) Japan Region


国内において「カプリチョーザ」「ウルフギャング・ステーキハウス」「ティム・ホー・ワン」等のレストランを直営およびフランチャイズで展開しています。主要な顧客は一般消費者であり、多様な食文化体験を提供しています。

収益は、直営店における一般顧客からの飲食代金や、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入等で構成されています。運営は主に株式会社WDI JAPANや株式会社Wolfgang's Steakhouse JAPANが行っています。

(2) North America Region


米国(ハワイ、ニューヨーク等)において「ウルフギャング・ステーキハウス」「ティム・ホー・ワン」等のレストラン運営を行っています。観光客や現地在住者を主要顧客とし、グローバルなブランド展開を進めています。

収益は、店舗での飲食サービスの提供による代金収入が主となります。運営はWDI International, Inc.やWDI New York, LLC等の現地法人が行っています。

(3) Micronesia Region


グアムにおいて「カプリチョーザ」の店舗運営を行っています。観光リゾート地における飲食需要を取り込み、カジュアルイタリアンを提供しています。

収益は、来店客からの飲食代金によって得られています。運営はWDI International, Inc.が行っています。

(4) Asia Region


インドネシア等において「ババ・ガンプ・シュリンプ」等のレストランを運営しています。アジア地域におけるダイニングカルチャーの普及を担っています。

収益は、店舗での飲食売上等から構成されています。運営はP.T. WDI Indonesia等の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は回復傾向にあり、第71期には約320億円に達しています。一方で、経常利益は第70期の約16億円から第71期には約7億円へと減少しました。利益率も低下しており、コスト増加等の影響が窺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 192億円 262億円 310億円 320億円
経常利益 -6.6億円 9.1億円 15.9億円 7.0億円
利益率(%) -3.4% 3.5% 5.2% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 1.6億円 2.1億円 0.5億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益は前期の14億円から当期は7億円へと約半減しており、営業利益率も低下しました。増収を確保しつつも、利益面では厳しい状況となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 310億円 320億円
売上総利益 222億円 229億円
売上総利益率(%) 71.6% 71.6%
営業利益 14億円 7億円
営業利益率(%) 4.5% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び雑給が88億円(構成比40%)、賃借料が29億円(同13%)を占めています。人件費と地代家賃が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上が増加しましたが、北米セグメントは減収となりました。ミクロネシアおよびアジアセグメントは増収傾向にあります。全体としては国内事業が売上の大半を占め、全体の増収を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
JapanReportableSegments 218億円 234億円
NorthAmericaReportableSegments 77億円 71億円
MicronesiaReportableSegments 12億円 13億円
AsiaReportableSegments 2億円 2億円
TotalOfReportableSegmentsAndOthers 310億円 320億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動による資金増加が前期から大幅に減少しました。これは、税金等調整前当期純利益はあったものの、法人税等の支払いや子会社・投資有価証券の売却損益が影響したためです。投資活動では、子会社株式や投資有価証券の売却収入はあったものの、有形固定資産の取得による支出が資金減少の主な要因となりました。財務活動では、長期借入による収入を上回る返済があったため、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 3.3億円
投資CF -14億円 -2.5億円
財務CF -1.2億円 -6.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「ダイニングカルチャーで世界をつなぐ」を企業理念としています。世界の様々な国と地域で育まれた食文化を担い、伝道師の役割を果たすことを使命とし、「ホスピタリティ」「本物志向」「チャレンジスピリッツ」「グローバル」をキーワードに事業を展開しています。

(2) 企業文化


「Q.S.C+A(Quality・Service・Cleanliness・Atmosphere)」の向上を重視し、品質、サービス、清潔さに加えて雰囲気を大切にする文化があります。また、「WDIホスピタリティ」を通じて、顧客一人ひとりに価格を上回る「感動体験」を提供することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


「信頼されるブランド創り」を2025年度のテーマとして掲げています。5つのフィロソフィーである「ホスピタリティ」「本物志向」「チャレンジスピリッツ」「グローバル」「サステイナビリティ」を念頭に置き、ブランド価値の向上と持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


マルチブランドの個性を磨き上げ、独自性の高いブランドづくりを確立することや、原材料・エネルギー価格高騰への対応として継続的な適正価格への調整を行うことを掲げています。また、サステイナビリティ経営として「人財」「環境」「食材」の3つのテーマについてアクションを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ダイニングカルチャーで世界をつなぐ」理念のもと、多様性に富んだ人財の採用を進めています。女性社員比率を2027年度までに30%へ引き上げる目標や、海外からの働く仲間を積極的に受け入れることで人手不足に対応しつつ、多様な価値観を取り入れて企業価値向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.5歳 9.1年 6,478,106円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 72.0%
男女賃金差異(正規) 78.9%
男女賃金差異(非正規) 92.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(26.6%)、海外からの働く仲間の比率(14.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店に係るリスク


新規出店に際しては厳密な投資採算検討を行っていますが、条件を満たす物件がない場合、計画変更により業績に影響が出る可能性があります。また、不採算店舗が増加した場合、閉店等により業績へ影響を及ぼす可能性があります。

(2) フランチャイザーとの契約更新


自社開発以外のブランドについてはフランチャイザーと契約を締結しており、良好な関係維持に努めていますが、契約期間満了時に更新されない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) フランチャイズ事業の運営


国内外でフランチャイズ展開を行っていますが、加盟店とのトラブルや訴訟、加盟店の経営悪化や不祥事等が発生した場合、ブランドイメージの毀損やロイヤリティ収入の減少等により、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 原材料価格の変動


食材調達において、天候不順や政策等による需給変動で価格が大きく変動するリスクがあります。調達ルートの複数確保等の対策を行っていますが、仕入価格の高騰が業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。