東北銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 東北銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 スタンダード市場に上場する銀行です。岩手県内を中心に預金・貸出業務等の銀行業務を展開するほか、リース業務やクレジットカード業務も手掛けています。2025年3月期の連結業績は、経常収益が増加したものの、与信関連費用の増加等により経常利益は減益、親会社株主に帰属する当期純利益も減益となりました。


※本記事は、株式会社 東北銀行 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東北銀行ってどんな会社?


地域社会への資金供給を使命とする岩手県の地方銀行です。銀行業務を中心にリースやカード業務も展開します。

(1) 会社概要


1950年に戦後第一号の銀行として設立され、岩手県盛岡市にて営業を開始しました。1997年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2005年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2012年に金融機能強化法に基づく第一種優先株式を発行しています。2024年には子会社の東北銀ソフトウエアサービスを吸収合併しました。

2025年3月31日時点の連結従業員数は563名、単体では553名です。筆頭株主は公的資金の注入に伴い優先株式等を引き受けた株式会社整理回収機構で、第2位は岩手県の食品加工会社である株式会社十文字チキンカンパニー、第3位は資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
株式会社整理回収機構 29.73%
株式会社十文字チキンカンパニー 2.23%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 2.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役頭取は佐藤 健志氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
村上 尚登 取締役会長(代表取締役) 1974年入行。本店営業部長、常務取締役、専務取締役、取締役副頭取、取締役頭取を経て2022年6月より現職。
佐藤 健志 取締役頭取(代表取締役) 1989年入行。戦略統括部長、地域応援部長、常務取締役、専務取締役を経て2022年6月より現職。
高橋 淳悦 取締役専務執行役員 1984年入行。経営企画部長、常務取締役、取締役常勤監査等委員を経て2024年6月より現職。
保 和衛 取締役常務執行役員 1983年岩手県庁入庁。同秘書広報室長、同副知事を経て2022年当行入行。2023年6月より現職。
阿部 英則 取締役常務執行役員 1982年入行。大船渡支店長、久慈支店長、執行役員北上支店長、常務執行役員を経て2024年6月より現職。
青木 昭憲 取締役常務執行役員 1984年日本債券信用銀行入行。大和住銀投信投資顧問常務執行役員等を経て2022年当行入行。2025年1月より現職。
鬼柳 伸二 取締役常勤監査等委員 1986年入行。リスクコンプライアンス統括部長、事務統括部長、東北銀ソフトウエアサービス代表取締役専務を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、村井 三郎(元検事)、村雨 圭介(SANSUI国際特許事務所盛岡オフィス代表)、下田 栄行(下田栄行公認会計士事務所代表)、舘脇 幸子(エール法律事務所弁護士)、福士 千恵子(テレビ岩手代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業務」「リース業務」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業務


本店および支店等において、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、為替業務を行うほか、公共債や投資信託の窓口販売などの金融サービスを岩手県内を中心に提供しています。

主な収益源は、貸出金利息、有価証券利息配当金、および各種手数料収入です。運営は株式会社東北銀行が行っています。なお、信用保証業務を行っていた東北保証サービス株式会社は、2025年2月に全株式を売却したため連結の範囲から除外されています。

(2) リース業務


各種機械設備の賃貸借(リース)および売買業務を行っています。地域の企業の設備投資ニーズに対応したサービスを提供しています。

顧客からのリース料収入や売買収益が主な収益源となります。運営はとうぎん総合リース株式会社が行っています。

(3) その他


クレジットカード業務を行っています。キャッシングサービスやショッピングサービスなどを提供しています。

クレジットカード会員からの年会費や手数料、加盟店からの手数料などが主な収益源となります。運営は株式会社東北ジェーシービーカードが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、経常収益は135億円から150億円程度で推移しており、直近では増加傾向にあります。経常利益については、2023年3月期に25億円を記録しましたが、その後は20億円前後で推移しています。当期純利益(親会社株主に帰属)も同様に推移し、直近の2025年3月期は前期比で減少しました。利益率は高水準ではありませんが、安定的に黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 135億円 138億円 135億円 147億円 150億円
経常利益 17億円 21億円 25億円 21億円 20億円
利益率(%) 12.9% 15.3% 18.6% 14.6% 13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 13億円 15億円 14億円 11億円

(2) 損益計算書


2024年3月期と2025年3月期の比較では、経常収益は約3億円増加しました。これは主に資金運用収益や役務取引等収益の増加によるものです。一方で経常費用も増加しており、特に資金調達費用やその他経常費用が増加しました。結果として経常利益は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 147億円 150億円
経常利益 21億円 20億円
経常利益率(%) 14.6% 13.1%


経常費用のうち、営業経費が89億円で最も大きな割合を占めています。また、その他経常費用として貸倒引当金繰入額が10億円計上されており、与信コストが一定の負担となっています。資金調達費用も金利上昇等の影響により増加しています。

(3) セグメント収益


銀行業務では、貸出金利息や役務取引等収益が増加し増収となりましたが、預金利息の増加などにより減益となりました。リース業務は割賦収入の減少などで減収減益となりました。その他事業は減収増益で推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
銀行業務 129億円 136億円 21億円 19億円 13.7%
リース業務 13億円 10億円 0.7億円 0.6億円 5.4%
その他 5.4億円 4.4億円 0.7億円 0.5億円 11.0%
調整額 7億円 5億円 -1億円 -億円 -
連結(合計) 147億円 150億円 21億円 20億円 13.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 599億円 -151億円
投資CF -193億円 -45億円
財務CF -5億円 -5億円


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は3.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域金融機関として地域社会の発展に尽くし共に栄える」を経営理念として掲げています。地域社会への安定的な資金供給を使命とし、地域経済の中核を担う中小企業等を中心に営業活動を展開することで、地域の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「共感・共鳴・共創」をテーマに掲げ、社会全体の発展と地域との絆の深化を図る姿勢を重視しています。顧客の期待に応えるとともに、銀行自身の成長と健全な経営基盤の強化を求め、役職員一丸となって地域経済の活性化に取り組む文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


第2次中期経営計画(2025年4月~2028年3月)において、最終年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 当期純利益:20億円
* お客さまサービス等利益(本業利益):20億円
* 自己資本比率:8.5%以上
* 総預金残高:1兆円
* 総貸出金残高:7,500億円

(4) 成長戦略と重点施策


「とうぎんVision」の実現に向け、地域の活性化支援、脱炭素化支援と一次産業支援、収益力の拡大、組織力の強化という4つのプロジェクトを重点戦略として推進します。デジタル化やサステナビリティへの対応を進めつつ、顧客への金融支援や本業支援を通じて地域経済を活性化させ、「地域力の向上」に貢献する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「とうぎん型人材」の育成を目指し、挑戦、意思疎通、課題解決力の3つの能力を備えた人材づくりに注力しています。個々のキャリアプランに合わせた研修機会の提供や、他業種交流、資格取得支援を推進します。また、エリア行員制度や短時間勤務制度によりライフプランに合わせた働き方を支援し、健康経営にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 15.9年 5,390,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.6%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 59.7%
男女賃金差異(正規) 62.4%
男女賃金差異(非正規) 75.5%


※男性労働者の育児休業取得率については、有価証券報告書本文の記載に基づき100.0%となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断受診率(100%)、再検査・要精密検査受診率(96.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク


融資先の倒産や経営悪化、担保価値の下落等により、不良債権処理費用が発生し業績に悪影響を与える可能性があります。引当金は計上していますが、実際の貸倒れが見積りを超えた場合、追加費用が発生するリスクがあります。

(2) 市場リスク


金利変動による利鞘の縮小や、保有する有価証券(債券・株式等)の価格下落により、業績に悪影響を与える可能性があります。金利リスクや価格変動リスクについては、定量的手法を用いて管理しています。

(3) オペレーショナル・リスク


事務事故、システム障害、不正行為、法令違反、風評被害など、業務遂行に伴う様々なリスクがあります。これらが顕在化した場合、損害賠償や社会的信用の低下により、業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 優先株式による希薄化リスク


公的資金に関連して発行された第一種優先株式について、将来的に普通株式への転換が行われた場合、既存の普通株式の持分が希薄化する可能性があります。最大で発行済普通株式数の約130%に相当する株式が交付される可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。