※本記事は、株式会社東北銀行の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東北銀行ってどんな会社?
同社は岩手県を中心に、銀行業務をはじめとする地域密着型の総合金融サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1950年に設立され、同年より岩手県盛岡市で営業を開始しました。1997年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2005年には同市場第一部へ指定されました。2024年には再生可能エネルギー事業を担うとうぎんリニューアブル・エナジーを設立するなど、地域課題解決に向けた取り組みも進めています。
現在の従業員数は連結で560名、単体で548名です。筆頭株主は整理回収機構で、第2位は事業会社の十文字チキンカンパニー、第3位は戦略的業務提携を締結しているSBI地銀ホールディングスとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 整理回収機構 | 29.71% |
| 十文字チキンカンパニー | 2.22% |
| SBI地銀ホールディングス | 2.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.18%です。代表取締役頭取は佐藤健志氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤健志 | 取締役頭取(代表取締役) | 1989年同社入行。戦略サポート室長、戦略統括部長、参事宮古地区本部長などを経て、2020年専務取締役。2022年より現職。 |
| 村上尚登 | 取締役会長 | 1974年同社入行。本店営業部長、常務取締役、専務取締役、取締役副頭取などを経て、2014年取締役頭取、2022年より現職。 |
| 高橋淳悦 | 取締役専務執行役員 | 1984年同社入行。融資統括部長、経営企画部長、常務取締役、取締役常勤監査等委員などを経て、2024年より現職。 |
| 保和衛 | 取締役常務執行役員 | 1983年岩手県庁入庁。同秘書広報室長、同副知事などを経て、2022年同社取締役執行役員、2023年より現職。 |
| 阿部英則 | 取締役常務執行役員 | 1982年同社入行。大通支店長、大船渡支店長、久慈支店長、執行役員北上支店長などを経て、2024年より現職。 |
| 鬼柳伸二 | 取締役常勤監査等委員 | 1986年同社入行。リスクコンプライアンス統括部長、事務統括部長などを経て、2021年東北銀ソフトウエアサービス代表取締役専務、2024年より現職。 |
社外取締役は、村井三郎(元検事・弁護士)、村雨圭介(SANSUI国際特許事務所盛岡オフィス代表)、下田栄行(公認会計士・税理士)、舘脇幸子(エール法律事務所弁護士)、福士千恵子(テレビ岩手代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業務」「リース業務」および「その他」の事業を展開しています。
■(1) 銀行業務
岩手県内を中心とした地域のお客さまに対し、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替業務などの総合的な金融サービスを提供しています。また、代理業務や国債等の窓口販売などの付帯業務も展開しています。
収益源は、企業や個人への貸出に伴う資金運用収益や、預り資産販売などに係る役務取引等収益が中心です。事業の運営は、主に同社が担っています。
■(2) リース業務
地域の中小企業などの顧客向けに、各種機械設備や車両などの賃貸および売買業務を提供しています。顧客の設備投資ニーズに応える多様なリースサービスを展開しています。
収益源は、リース契約に基づく各種機械や設備などの賃貸料および割賦収入です。事業の運営は、主に子会社であるとうぎん総合リースが担っています。
■(3) その他
地域のお客さまの多様な決済ニーズに応えるため、クレジットカードを活用したキャッシングサービスやショッピングサービスなどを提供しています。
収益源は、クレジットカードの利用に伴う加盟店手数料や会員からの各種手数料などです。事業の運営は、主に子会社である東北ジェーシービーカードが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、経常収益が130億円台から170億円台へと順調に拡大傾向にあります。経常利益は一時的な増減があるものの、直近では貸出金利息の増加などにより25億円規模まで伸長しています。当期利益についても底堅く推移し、直近では16億円規模に達しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 138億円 | 135億円 | 147億円 | 150億円 | 179億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 25億円 | 21億円 | 20億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 15.3% | 18.6% | 14.6% | 13.1% | 14.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 15億円 | 14億円 | 11億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の収益構造を見ると、貸出金利息などの資金利益や預り資産販売に伴う役務取引等利益の増加により、経常収益が順調に拡大しています。また、与信関連費用の減少などが寄与し、全体の収益性を押し上げることで、増収増益となる堅調な推移を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 150億円 | 179億円 |
| 連結粗利益 | 120億円 | 125億円 |
| 粗利益率(%) | 80.0% | 69.8% |
■(3) セグメント収益
各セグメントの業績を見ると、主力の銀行業務は貸出金利息や役務取引等収益の増加により大幅な増収増益を達成しました。一方、リース業務は割賦収入の増加で増収となったものの、割賦原価や与信関連費用の増加によりわずかに減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 銀行業務 | 136億円 | 163億円 | 19億円 | 24億円 | 14.7% |
| リース業務 | 10億円 | 12億円 | 0.6億円 | 0.5億円 | 4.2% |
| その他 | 4億円 | 5億円 | 0.5億円 | 0.4億円 | 8.0% |
| 連結(合計) | 150億円 | 179億円 | 20億円 | 25億円 | 14.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金で借入の返済や事業投資を賄う、健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -151億円 | 55億円 |
| 投資CF | -45億円 | -1億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は3.3%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「地域金融機関として地域社会の発展に尽くし共に栄える」をコアバリュー(経営理念)に掲げています。地域社会への安定的資金供給を使命として設立された銀行として、地域経済の中核を担う中小企業などの顧客を中心に営業活動を展開し、地域社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、パーパス(存在意義)として「地域力の向上」を掲げ、従業員一人ひとりが地域のために自律的に学び、考え、行動する文化を重視しています。また、多様な価値観や個性を尊重し、すべての従業員が能力を十分に発揮して輝ける職場づくりを進めるなど、挑戦を応援し自己実現を支援する風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、長期経営計画達成への戦略として「第2次中期経営計画」を策定し、2028年3月期に向けた単体の経営数値目標を設定しています。本業である預貸金や役務取引等から得られる収益力の強化と、自己資本の充実に向けた具体的なマイルストーンを掲げています。
* 当期純利益:20億円
* お客さまサービス等利益:20億円
* 自己資本比率:8.5%以上
* 総預金残高:1兆円
* 総貸出金残高:7,500億円
■(4) 成長戦略と重点施策
持続可能なビジネスモデルの構築に向け、第2次中期経営計画に掲げる「4つのプロジェクト」に基づく施策を推進しています。原材料価格の高騰や人手不足といった課題に直面する中小事業者に対し、最適な金融ソリューションの提供や経営課題解決に向けた本業支援を強化し、地域力の向上に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「地域とともに成長し 一人ひとりが 輝ける組織へ」「挑戦を応援し 自己実現を支援する」とする人事基本理念を定めています。多様性を確保し、個々のキャリアプランに合わせた教育研修により能力を引き出すとともに、地域の発展を支える高いコンサルティング能力を備えた人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 16.1年 | 5,572,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 75.9% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断受診率(100%)、定期健康診断後の再検査・要精密検査受診率(99.5%)、新卒採用者における女性比率(41.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事務およびシステム関連のオペレーショナル・リスク
役職員による正確な事務の怠りや不正、顧客情報の漏洩などが発生した場合、損害賠償等の経済的損失や社会的信用の低下を招く恐れがあります。また、サイバー攻撃等によるシステム障害が業務遂行に影響を与える可能性があります。
■(2) 自己資本比率の低下リスク
同社は国内基準(4%以上)の自己資本比率を維持する必要がありますが、保有資産のリスク顕在化による自己資本の毀損や、算定方法の変更、繰延税金資産の減額などにより基準を下回った場合、業務停止等の行政処分を受ける可能性があります。
■(3) 岩手県など地方経済の動向によるリスク
同社は岩手県を主要な営業地域としているため、同地域の経済環境が悪化した場合、取引先の信用状況の悪化や貸出金の減少、担保不動産価値の下落などが生じ、同社の業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 銀行業免許の取消等に関するリスク
同社の事業継続には銀行業免許が必要不可欠ですが、将来何らかの理由により免許の取消等を受けた場合、主要な事業活動に支障をきたし、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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