※本記事は、株式会社秋田銀行の有価証券報告書(第123期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 秋田銀行ってどんな会社?
秋田県を基盤とする地域金融機関として、銀行業務を中心に多角的な金融・非金融サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1941年に旧秋田銀行など3行の合併により設立されました。1973年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌1974年に同第一部へ指定替えとなりました。その後、1975年に秋田グランドリース、2021年に地域商社である詩の国秋田、2023年にあきぎんキャピタルパートナーズを設立し、グループの機能を拡充しています。
現在のグループ従業員数は連結で1,175名、単体で1,126名です。大株主の属性を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は生命保険事業を営む明治安田生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.51% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.64% |
| 明治安田生命保険 | 4.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役頭取は芦田晃輔氏が務めており、社外取締役の比率は58.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 芦田晃輔 | 取締役頭取(代表取締役) | 1994年4月秋田銀行入行。執行役員人事部長、取締役常務執行役員経営企画部長兼デジタル戦略室長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 皆川剛 | 取締役専務執行役員 | 1990年4月秋田銀行入行。執行役員地域サポート部長、取締役常務執行役員経営企画部長等を経て、2023年6月より現職。 |
| 三浦力 | 取締役専務執行役員 | 1991年4月秋田銀行入行。執行役員地域未来戦略部長、常務執行役員地域価値共創部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 保坂英明 | 取締役常務執行役員 | 1992年4月秋田銀行入行。執行役員本店営業部長、常務執行役員審査部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 工藤重信 | 取締役(監査等委員) | 1985年4月秋田銀行入行。執行役員事務統括部長、執行役員東京支店長兼経営企画部東京事務所長等を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、榊純一(秋田大学電動化システム共同研究センター長)、柿﨑環(明治大学法学部教授)、伊東裕(ANA総合研究所顧問)、江畑佳明(北日本コンピューターサービス代表取締役)、田中里沙(事業構想大学院大学学長)、面山恭子(面山恭子法律事務所所長)、長谷部光哉(長谷部光哉公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業務」「リース業務」および「その他の業務」を展開しています。
■(1) 銀行業務
本店ほか98か店の国内店舗網を通じて、個人および法人顧客向けに総合的な金融サービスを提供しています。預金業務や貸出業務を中核としながら、有価証券投資業務、内国・外国為替業務に加え、公共債や投資信託、保険商品の窓口販売業務など幅広く手がけています。
収益源は、顧客への貸出金から得られる利息収入や有価証券の運用収益、金融商品の販売手数料や為替手数料などです。同社グループの中心的な事業として位置付けられており、事業の運営は親会社である秋田銀行が主体となって行っています。
■(2) リース業務
地元企業などの法人顧客を中心として、設備投資をサポートするためのリース業務や割賦業務などを提供しています。顧客のニーズに合わせた情報機器、産業機械、車両などの各種物件のリースに対応し、地域経済の基盤を支える役割を担っています。
収益源は、顧客に貸与したリース物件に対するリース料収入や割賦手数料などです。この事業は、同社の子会社である秋田グランドリースが運営を行っており、銀行業務と連携しながらグループ全体での金融サービスの拡充に貢献しています。
■(3) その他の業務
銀行・リース業務以外の多様な金融・非金融サービスを提供しています。地域活性化支援や経営コンサルティング、地域商社業務、ファンド組成・運営のほか、個人ローンの信用保証業務やクレジットカード業務などを展開しています。
収益源は、コンサルティング手数料、保証料、クレジットカードの加盟店手数料や会員手数料など多岐にわたります。運営は、秋田保証サービス、あきぎんリサーチ&コンサルティング、詩の国秋田などの子会社6社がそれぞれ専門分野を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常収益は一時的な増減があるものの全体として増加傾向にあり、最新期では611億円に達しています。経常利益および当期利益も順調に推移しており、収益性の向上に伴い利益率も11.9%から18.4%へと大きく改善しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 397億円 | 469億円 | 427億円 | 522億円 | 611億円 |
| 経常利益 | 47億円 | 49億円 | 66億円 | 91億円 | 112億円 |
| 利益率(%) | 11.9% | 10.5% | 15.4% | 17.5% | 18.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 34億円 | 46億円 | 60億円 | 78億円 |
■(2) 損益計算書
本業のトップラインである経常収益は、貸出金利息や有価証券の利息配当金が増加したことにより、前期の522億円から当期は611億円へと拡大しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 522億円 | 611億円 |
■(3) セグメント収益
セグメント別の経常収益を見ると、主力である銀行業務が全体の約90%を占めており、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により前期から大幅な増収を牽引しています。一方、リース業務はやや減収となり、その他の業務は堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業務 | 456億円 | 549億円 |
| リース業務 | 57億円 | 53億円 |
| その他の業務 | 9億円 | 10億円 |
| 調整額 | -0.1億円 | -1.2億円 |
| 連結(合計) | 522億円 | 611億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にコールローンおよび貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1,305億円 | -634億円 |
| 投資CF | -878億円 | -314億円 |
| 財務CF | -15億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地域とともに歩み、地域の発展とともに栄える」という「地域共栄」を経営理念として掲げています。地域金融機関として求められる役割が多様化・高度化するなかで、株主や顧客、そして地域の期待に的確に応え、地域の発展に貢献することを基本方針として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社グループが大切にする価値観として、「あきぎんVALUE」を定めています。地域社会や顧客との信頼関係を維持・発展させるため、人材・職場・地域社会の三訓からなる「行訓」を伝統として継承しています。これを基礎として、多様な人材がそれぞれの強みを見つけ、成長を感じながら活躍できる組織風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2030年を展望するグループVISION「価値をつくる。未来へつなぐ。」の実現に向け、2025年度から中期経営計画を推進しています。最終年度である2027年度の主な数値目標は以下の通りです。
- 連結当期純利益:100億円以上
- 連結ROE:5.0%以上
- 連結自己資本比率:11%程度
- お客さまサービス等利益:50億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「価値共創ビジネスモデルの確立」「地域資源の錬磨と高付加価値化」「人的資本の充実」の3つを基本方針としています。資金調達の支援に加え、地域商社を通じた販路拡大や人材不足への対応など、非金融分野の機能と融合した質の高いコンサルティングを提供し、地域の持続的な成長と高付加価値化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を最も重要な経営資本と位置付け、「人的資本の最大化」を目的とした新たな人事制度を導入しています。職員一人ひとりが「Will・Can・Must」の考え方に基づいて自律的にキャリアを形成し、成長を実感できる組織づくりを推進しています。また、戦略的な人材配置や研修の充実により、プロフェッショナルな人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.2歳 | 18.3年 | 6,787,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.0% |
| 男性育児休業取得率 | 113.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(56.2点)、障がいのある方の雇用率(2.87%)、月間平均時間外労働時間(7.0時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクおよび市場リスク
貸出先の業績悪化や担保価値の下落により不良債権が増加し、与信費用が膨らむ信用リスクがあります。また、保有する有価証券や貸出金等の資産・負債において、金利や市場価格、為替相場が不利に変動した場合、資金利益の減少や評価損が発生する市場リスクを抱えています。
■(2) オペレーショナル・リスク
正確な事務処理を怠ったり、役職員による事故や不正が発生した際の事務リスクがあります。また、システムのダウンやサイバー攻撃による情報漏えいやサービス停止が生じた場合のシステムリスクのほか、法務リスク、人的リスク、有形資産リスク、風評リスクなどが顕在化する可能性があります。
■(3) 金融犯罪に係るリスク
キャッシュカードの偽造や盗難、振り込め詐欺などの金融犯罪による被害を防ぐためのセキュリティ対策や、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策を推進しています。しかし、金融犯罪が高度化・巧妙化し、被害補償や対策費用の増加、信用の失墜が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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