※本記事は、株式会社山形銀行 の有価証券報告書(第213期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 山形銀行ってどんな会社?
山形県を主要な営業基盤とし、銀行業務を中心にリースや信用保証などの総合金融サービスを提供する地方銀行です。
■(1) 会社概要
1896年に両羽銀行として設立され、1965年に現在の山形銀行へ行名を変更しました。1975年に東京証券取引所市場第一部に上場し、地域の金融機関として基盤を固めてきました。2018年には山銀ビジネスサービスを吸収合併し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。
同社グループは連結従業員1,175名、単体1,047名の体制で運営されています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は大手生命保険会社の明治安田生命保険、第3位は地元企業の関連会社である両羽協和です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.82% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 3.79% |
| 両羽協和 | 3.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役には取締役頭取の佐藤英司氏らが就任しています。取締役10名のうち社外取締役は5名で、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長谷川吉茂 | 取締役会長(代表取締役) | 1973年住友銀行入行。1985年山形銀行常務、専務を経て2005年頭取に就任。2023年6月より現職。 |
| 佐藤英司 | 取締役頭取(代表取締役) | 1987年山形銀行入行。営業支援部長、常務、専務などを経て2023年6月より現職。 |
| 三浦新一郎 | 専務取締役(代表取締役) | 1994年三菱銀行入行。2005年山形銀行常務、経営統括本部長委嘱などを経て2022年6月より現職。 |
| 藤山豊 | 取締役常務執行役員 | 1988年山形銀行入行。融資部長、常務取締役などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、井上弓子(髙島電機株式会社会長)、原田啓太郎(ハッピージャパン代表取締役会長)、五味康昌(三菱UFJ証券ホールディングス名誉顧問)、押野正德(公認会計士)、岡本明子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」、「リース業」、「信用保証業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
山形県を中心とした営業基盤において、預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務、有価証券投資業務などを提供しています。地域社会や法人・個人顧客が主な対象です。
収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および各種手数料収入から構成されています。運営は主に山形銀行が行っています。
■リース業
地域企業などを顧客とし、各種機械設備や情報関連機器などのリース業務を提供しています。
収益は、顧客からのリース料収入が主な源泉です。運営は主に連結子会社の山銀リースが行っています。
■信用保証業
住宅ローンなどを利用する個人顧客に対して、信用保証業務を提供しています。
収益は、保証利用者からの信用保証料収入が主な源泉です。運営は主に連結子会社の山銀保証サービスが行っています。
■その他
クレジットカード業務、ベンチャーキャピタル業務、地域商社業務、事務受託業務などを展開しています。
収益は、クレジットカードの手数料や年会費、投資事業組合からの収益などが源泉です。運営は、やまぎんカードサービス、やまぎんキャピタル、TRYパートナーズなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2020年度から2022年度にかけて経常収益は増加傾向にありましたが、2023年度以降は横ばいから微減で推移しています。一方、利益面では2023年度に一時的な落ち込みが見られましたが、2024年度には経常利益、当期純利益ともに大きく回復し、利益率は改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 48億円 | 55億円 | 55億円 | 38億円 | 65億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 31億円 | 33億円 | 21億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
銀行業特有の会計処理のため、一般的な売上高や営業利益の表示はありませんが、経常費用は前期比で減少しました。特にその他業務費用が大きく減少したことが、経常利益の押し上げに寄与しています。
なお、同社の経常費用のうち、営業経費は207億円を計上しており、前年とほぼ同水準で推移しています。
■(3) セグメント収益
銀行業は経常収益が減少したものの、セグメント利益は大幅に増加しました。リース業、信用保証業は安定的に推移しています。その他事業では、地域商社やクレジットカード業務などが寄与し、収益・利益ともに増加傾向にあります。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 銀行業 | 477億円 | 454億円 | 34億円 | 56億円 | 12.4% |
| リース業 | 58億円 | 58億円 | 2億円 | 2億円 | 3.6% |
| 信用保証業 | 2億円 | 2億円 | 7億円 | 7億円 | 303.7% |
| その他 | 14億円 | 15億円 | 3億円 | 4億円 | 24.6% |
| 調整額 | -0.2億円 | -0.3億円 | -9億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 551億円 | 529億円 | 38億円 | 65億円 | 12.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1,454億円 | -428億円 |
| 投資CF | 942億円 | 570億円 |
| 財務CF | -11億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地域とともに成長発展し すべてのお客さまにご満足をいただき 行員に安定と機会を与える」という経営理念を掲げています。この理念のもと、地域のステークホルダーを重視し、「安全・安心」の銀行として信頼を確保することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
第21次長期経営計画において、役職員が大切にする3つの価値観として「Trust(信頼)」「Growth(成長)」「Well-being(幸福)」を定めています。顧客から頼られる存在になること、サステナビリティ経営の実践、そして挑戦を楽しむ企業文化の醸成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
第21次長期経営計画「Pro-Act」では、2026年度を最終年度とする目標を設定しています。また、2030年度に向けた長期ビジョンの実現を目指し、収益性、効率性、健全性の向上に取り組んでいます。
* 当期純利益(単体):50億円(2026年度)
* ROE(連結):3.5%(2026年度)
* 自己資本比率(単体):9%以上(2026年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
「金融・産業参画型ハイブリッドカンパニー」を目指し、コンサルティング機能と専門性の強化を進めています。具体的には、事業承継やM&A支援、ビジネスマッチングなどのソリューション提供を強化するとともに、地域の脱炭素化支援やDX推進など、地域課題の解決に向けた取り組みを加速させています。また、人的資本への投資を強化し、プロフェッショナル人財の育成に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「プロフェッショナル人財としての成長・活躍」「挑戦・キャリア自律」「ダイバーシティ推進」をコンセプトに、専門性を高める育成体制を整備しています。「山形銀行金融大学校」での研修や資格取得支援に加え、副業制度やジョブリターン制度など、柔軟な働き方と自律的なキャリア形成を支援する環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 18.0年 | 6,827,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.1% |
| 男性育児休業取得率 | 129.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 47.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 59.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 65.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(68.0点)、ITパスポート保有者数(463人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地域経済動向に係るリスク
同社は山形県を主要な営業基盤としているため、同地域の経済動向の影響を強く受けます。人口減少による市場縮小や地域経済の停滞は、資金需要の減少や与信費用の増加を通じて、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金利・市場変動リスク
金利、有価証券価格、為替などの市場変動リスクを有しています。国内外の金利変動による債券価格の下落や、株式相場の下落による保有株式の減損処理が発生した場合、同社の業績や自己資本比率に影響を与える可能性があります。
■(3) サイバーセキュリティリスク
金融サービスのデジタル化が進む中、システムやネットワークに対するサイバー攻撃のリスクが高まっています。不正アクセスによる情報漏洩やシステム停止などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償などにより、同社の経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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