※本記事は、株式会社山形銀行の有価証券報告書(第214期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 山形銀行ってどんな会社?
山形県を主要な営業基盤とし、銀行業務を中心にリースや信用保証などの金融サービスを提供する地方銀行です。
■(1) 会社概要
1896年に両羽銀行として設立され、1965年に現在の山形銀行へと行名を改称しました。1973年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1975年に同市場第一部へ指定されています。その後、各種金融商品の窓口販売業務を開始し、地域のコンサルティング機能の強化や活性化に向けた取り組みを進めています。
同社グループの従業員数は連結で1,178名、単体で1,059名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は生命保険会社、第3位は山形県内で事業を展開する事業会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.13% |
| 明治安田生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行) | 3.88% |
| 両羽協和 | 3.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役頭取は佐藤英司氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 英司 | 取締役頭取(代表取締役) | 1987年山形銀行入行。酒田支店法人営業部長、営業支援部長、常務取締役、専務取締役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 三浦 新一郎 | 専務取締役(代表取締役) | 1994年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2005年山形銀行常務取締役、2014年専務取締役などを経て、2022年6月より現職。 |
| 藤山 豊 | 取締役常務執行役員 | 1988年山形銀行入行。狩川支店長、寿町支店長、融資部長、常務取締役などを経て、2024年6月より現職。 |
| 笹 浩行 | 取締役常務執行役員 | 1990年山形銀行入行。人事総務部長、経営企画部長、取締役常勤監査等委員、常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。 |
| 垂石 卓朗 | 取締役常勤監査等委員 | 1987年山形銀行入行。久野本支店長、総合企画部副部長、金融市場部長などを経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、井上弓子(元髙島電機社長)、原田啓太郎(元ハッピージャパン社長)、廣田直人(元三菱UFJ銀行専務)、押野正德(押野正德公認会計士事務所長)、岡本明子(松田綜合法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」「信用保証業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
同社グループの中核として、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務および為替業務などの金融サービスを顧客に提供しています。
収益は、顧客企業や個人に対する貸出金利息や、各種金融サービスの手数料、有価証券の運用収益から得ています。運営は主に山形銀行が行っています。
■リース業
情報通信機器や産業機械などの各種設備・機器に関するリース業務を法人顧客向けに提供し、地域企業の設備投資を支援しています。
収益は、顧客企業から受け取るリース料によって構成されています。運営は連結子会社である山銀リースが担当しています。
■信用保証業
個人顧客が住宅ローンなどを利用する際に、信用保証を提供するサービスを展開しています。
顧客からの保証料を主な収益源としています。運営は連結子会社である山銀保証サービスが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、データ処理、クレジットカード業務、地域商社業務、およびベンチャーキャピタル業務などを展開しています。
クレジットカードの年会費や加盟店手数料、各種コンサルティング手数料などを収益源としています。運営は山銀システムサービスややまぎんカードサービスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常利益および当期利益は一時的な落ち込みがあったものの、概ね回復傾向にあります。特に直近の事業年度では大幅な増益を達成しており、安定した収益基盤を背景に堅調な推移を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 55億円 | 55億円 | 38億円 | 65億円 | 90億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 33億円 | 21億円 | 44億円 | 65億円 |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上(経常収益)を見ると、主力の銀行業が貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により大きく成長を牽引しています。リース業も堅調に推移しており、グループ全体として安定した収益拡大を実現しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 454億円 | 552億円 |
| リース業 | 58億円 | 65億円 |
| 信用保証業 | 2億円 | 2億円 |
| その他 | 15億円 | 15億円 |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 |
| 連結(合計) | 529億円 | 633億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -428億円 | 264億円 |
| 投資CF | 570億円 | -378億円 |
| 財務CF | -16億円 | -35億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「地域とともに成長発展し すべてのお客さまにご満足をいただき 行員に安定と機会を与える」という経営理念を掲げています。地域の成長に責任を持つ企業として、ステークホルダーを重視し、「安全・安心」の銀行として信頼を確保することを基本方針としています。また、持続可能な地域社会の実現に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
「挑戦を楽しむ企業文化」を育むことを重視しています。前例や前提、常識にとらわれず業務を見直し、やりがいや価値のある仕事を創造する姿勢を求めています。また、自身やグループの成長を追い求めること、さらには「指示の連鎖」から「対話の連鎖」への転換を通じて主体性を向上させ、すべての役職員のウェルビーイングを高めることを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月からスタートした第21次長期経営計画「Pro-Act」では、2026年度に向けた経営目標として具体的な数値を掲げています。さらに、2030年度の長期ビジョンに向け、当期純利益75億円、ROE5%の達成を目指して事業を展開しています。
* 当期純利益(単体):50億円
* ROE(連結):3.5%
* 自己資本比率(単体):9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンである「お客さまの価値を共に創造し、地域ポテンシャルを最大化する金融・産業参画型ハイブリッドカンパニー」の実現を目指しています。コンサルティング営業の実践による新たな価値の創造や、サステナビリティ経営の実践による地域課題の解決に注力します。ものづくり支援や事業承継・M&Aの取り組み、脱炭素化の促進、および専門性の高いプロフェッショナル人財の育成を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を価値創造の源泉かつ最重要資本と位置づけ、「プロフェッショナル人財としての成長・活躍」「挑戦・キャリア自律」「ダイバーシティ推進」をコンセプトに人事制度を改定しています。コンサルティング能力や専門性を高めるためのキャリアフィールドの設定、副業制度や行内インターンの活用、多様な働き方の環境整備を通じてエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 17.8年 | 6,917,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.5% |
| 男性育児休業取得率 | 90.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 64.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(70.2点)、有給休暇取得日数(13.9日)、時間外労働時間(1ヵ月あたり)(10時間56分)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地域経済動向の悪化
同社は山形県を中心とする特定の地域を主たる営業基盤としているため、人口減少による営業基盤の縮小や地域経済の停滞が業績に直接的な影響を及ぼすリスクがあります。また、首都圏や海外の経済動向の悪化が取引先の業況を通じて悪影響をもたらす可能性もあります。
■(2) 信用リスクの顕在化
国内外の景気動向や金利・株価の変動等により取引先の業績や財務内容が悪化した場合、不良債権および与信関係費用が増加するリスクがあります。著しい経済情勢の悪化や不動産価格の下落が生じた際には、貸倒引当金の積み増しが必要となり、財務内容を圧迫する可能性があります。
■(3) 金融市場における価格変動
金利、有価証券等の価格、為替などの市場リスク要因の変動により、保有する資産の価値が変動し損失を被るリスクがあります。株価や債券価格の下落、急激な為替変動が生じた場合、評価損や売却損が発生し、同社の業績および財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) オペレーショナル・リスク
事務処理の不備やシステム・ネットワークの障害・停止、サイバー攻撃による情報漏洩や不正送金などにより、信用失墜や損失が発生するリスクがあります。また、人材の流出や担い手不足による業務遂行力の低下、法令等遵守状況の不備によるコンプライアンス上の問題も事業に影響を及ぼす懸念があります。



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