※本記事は、株式会社筑波銀行の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 筑波銀行ってどんな会社?
筑波銀行は、茨城県を主要な営業基盤とする地域金融機関です。預金・貸出業務に加え、コンサルティングや投資業務を通じて地域経済の活性化に取り組んでいます。
■(1) 会社概要
同社は1952年に設立された関東銀行を源流とし、茨城相互銀行(後の茨城銀行)の設立を経て、地域の金融インフラを支えてきました。2003年に関東銀行とつくば銀行が合併して関東つくば銀行となり、2010年には茨城銀行と合併して現在の筑波銀行が誕生しました。2011年には金融機能強化法に基づく優先株式を発行し、経営基盤の強化を図っています。
2025年3月31日現在、同社グループの従業員数は連結で1,293名、単体で1,238名です。主要株主については、筆頭株主は公的資金の受け皿である整理回収機構で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には従業員の持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 整理回収機構 | 45.94% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.47% |
| 筑波銀行行員持株会 | 3.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名(社外取締役含む)の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役頭取は生田雅彦氏が務めています。社外取締役は5名で、構成比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 生田 雅彦 | 取締役頭取(代表取締役) | 1984年関東銀行入行。総合企画部長、営業本部長、常務取締役、取締役副頭取を経て2019年6月より現職。 |
| 篠原 智 | 専務取締役営業本部長(代表取締役) | 1985年関東銀行入行。営業推進部長、常務取締役営業本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 瀬尾 達朗 | 常務取締役 | 1986年関東銀行入行。融資部長、本店営業部長、常務取締役営業本部長などを経て2024年4月より現職。 |
| 菊池 謙一 | 常務取締役 | 1985年関東銀行入行。システム統括部長、事務統括部長、取締役事務本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 岡野 強志 | 常務取締役 | 1988年茨城相互銀行入行。人事部副部長、総合企画部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 木幡 浩 | 取締役 | 1987年東陽相互銀行入行。つくば営業部長、総合企画部長兼未来創造室長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、齋藤仁(元損害保険ジャパン日本興亜執行役員)、横井のり枝(日本大学経済学部教授)、鈴木大輔(渥美坂井法律事務所パートナー)、瀬尾純一郎(元日本銀行福岡支店長)、松田玲子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
本店および支店、出張所において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務等を行っています。地域重視の営業活動を展開し、顧客への総合的な金融サービスの向上に取り組んでいます。
主な収益源は、貸出金利息や有価証券利息配当金、各種手数料などです。運営は主に筑波銀行が行っています。
■その他
連結子会社において、システム開発業、コンサルティング業および投資業を行っています。銀行業を補完するサービスを提供し、グループ全体のシナジー効果を追求しています。
収益源は、システム開発や業務受託に伴う手数料、ファンド運営による投資収益などです。運営は筑波総研株式会社や投資事業有限責任組合などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は、株式等売却益の減少を主因にその他経常収益が減少したものの、貸出金利息や預け金利息の増加等により、経常収益は前期比微増となりました。一方、経常費用は、預金金利の引上げに伴う預金利息の増加はあったものの、国債等債券売却損の減少や与信関係費用の減少等により、前期比で減少しました。これらの結果、経常利益は大幅に増加し、当期純利益も大きく伸長しました。過去5期で見ると、経常収益は緩やかな増加傾向にあり、経常利益・当期純利益は変動しながらも、当期に大きく回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 3,579 | 3,668 | 3,710 | 4,109 | 4,113 |
| 経常利益(億円) | 247 | 520 | 176 | 247 | 448 |
| 当期純利益(億円) | 176 | 423 | 210 | 220 | 410 |
■(2) 損益計算書
当期は、貸出金利息や預け金利息の増加等により、経常収益は前期比で増加しました。経常費用は、預金金利の引上げに伴う預金利息の増加はあったものの、国債等債券売却損の減少や与信関係費用の減少等により、前期比で減少しました。これらの結果、経常利益は前期比で大幅に増加し、当期純利益も大きく伸長しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 4,109 | 4,113 |
| 経常費用 | 3,863 | 3,665 |
| 経常利益 | 247 | 448 |
| 当期純利益 | 220 | 410 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。中でも、証券関連業務が最も大きく、次いで預金・貸出業務が続きました。これらの業務は、同行の非金利収益の柱となっています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
筑波銀行は、地域経済の持続的成長に貢献するため、地域企業への資金面を含む多様な支援を通じて経営課題の解決をサポートしています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、預金が増加したものの、貸出金の増加などにより支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却や償還による収入があったものの、有価証券の取得による支出により、こちらも支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどにより支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 72 | △230 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | 184 | △151 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △5 | △4 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地域の皆さまの信頼をもとに、存在感のある銀行を目指し、豊かな社会づくりに貢献します」を基本理念としています。また、企業の存在意義を示すパーパスとして「~地域のために 未来のために~」を掲げ、地域の顧客と手を取り合い、明るくサステナブルな未来を創造することを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員が持てる力を遺憾なく発揮し、働きがいがあり、公正に処遇される自由闊達な組織を目指しています。全役職員が心を一つに「あゆみ」続ける姿勢を重視し、金融機関としての社会的責任を自覚しながら、地域経済の活性化や地方創生に惜しみない貢献を行う風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
長期的なビジョンとして「筑波銀行 未来戦略デザイン」を策定し、2034年3月期にROE8%以上、当期純利益100億円以上を目指しています。その第1フェーズとして、2025年4月から2028年3月までの第6次中期経営計画「Rising Innovation 2028」を策定し、以下の数値目標を掲げています。
* 当期純利益:50億円以上
* ROE:5%以上
* コアOHR:70%台
* 自己資本比率(単体):9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
第6次中期経営計画では、「人的資本経営の実践」「経営基盤の変革」「ビジネス戦略の強化」の3つを骨子としています。地域や顧客に「当行ならではの価値」を提供し、共に発展する持続的なビジネスモデルの構築を目指します。
具体的には、本業支援や事業承継支援などのソリューション提案を強化し、地元中小企業の経営課題解決に取り組みます。また、デジタル化やサステナビリティへの対応を進めるとともに、人材育成やエンゲージメント向上を通じて組織力を高め、将来の収益基盤を強固なものにしていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財」を戦略上最も重要な資本と捉え、「人財育成方針」と「社内環境整備方針」を策定しています。育成面では、顧客の課題解決を担うソリューション業務を主体的に推進できる人材や、高度な専門性を持つスペシャリスト人材の育成に注力しています。環境面では、研修の充実や資格取得支援に加え、フレックスタイム制や在宅勤務、サテライトオフィス等の導入により、多様な人材が柔軟に働ける環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 20.2年 | 6,198,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役付者に占める女性労働者の割合(20.1%)、一人当たりの年間研修時間(26.5時間)、中途採用者比率(30%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
国内外の景気動向や取引先の経営状態悪化、担保価値の下落等により、不良債権および信用コストが増加し、業績や財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。また、予期せぬ理由による貸倒引当金の積み増しや、担保権の実行困難による回収遅延が発生するリスクもあります。
■(2) 市場リスク
保有する有価証券の価格変動リスク、資産と負債の金利ミスマッチによる金利リスク、外貨建資産・負債の為替リスクなどを抱えています。市場金利の上昇や株価下落、為替変動等が、評価損の発生や利益の減少を招き、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 気候変動リスク
気候変動に伴う自然災害の増加や規模拡大による物理的リスク、低炭素社会への移行に伴う規制強化などの移行リスクを認識しています。これらは取引先の資産毀損や事業への悪影響を通じて、同社の与信費用増加や企業価値の低下につながる可能性があります。
■(4) オペレーショナル・リスク
役職員の事務ミスや不正による事務リスク、システム障害やサイバー攻撃によるシステムリスクがあります。これらが顕在化した場合、業務の停止や社会的信用の失墜、損害賠償の発生などにより、経営成績に重大な影響を与える可能性があります。



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