武蔵野銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

武蔵野銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、埼玉県を主要基盤とする地方銀行です。銀行業を中心にリースや信用保証等の金融サービスを展開しています。2025年3月期の連結業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により、経常収益・利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、株式会社武蔵野銀行 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 武蔵野銀行ってどんな会社?


埼玉県を地盤とする地方銀行として、預金・貸出等の銀行業務を中心に、リースや信用保証などの総合金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1952年に埼玉県大宮市(現さいたま市)で設立・開業し、1969年に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌1970年には同市場第一部へ指定替えとなりました。1975年には総合オンラインシステムを稼動させるとともに、武蔵野総合リース(現ぶぎん総合リース)を設立しリース業務を開始しました。2019年には信託業務へ参入し、2021年には新本店ビルを竣工させるなど、地域経済の発展とともに業容を拡大しています。

連結従業員数は1,990名、単体では1,854名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様の信託銀行です。第3位には千葉銀行が名を連ねており、同行とは「千葉・武蔵野アライアンス」として包括提携を結び、共同店舗の運営や商品の共同開発などで連携を深めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.76%
日本カストディ銀行(信託口) 7.85%
千葉銀行 2.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役は取締役頭取の長堀和正氏と、専務取締役の白井利幸氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
長堀 和正 取締役頭取代表取締役 1984年同行入行。戸田西、越谷支店長、総合企画部長を経て、2011年執行役員総合企画部長に就任。常務、専務を歴任し、2019年6月より現職。
白井 利幸 専務取締役代表取締役 1985年同行入行。伊奈、志木支店長、営業企画部長を経て、2013年執行役員営業企画部長に就任。人事部長、常務を経て、2020年6月より現職。
大友  謙 常務取締役 1988年同行入行。新座、大井、越谷支店長、営業統括部長を経て、2016年執行役員営業統括部長に就任。総合企画部長、常務執行役員を経て、2020年6月より現職。
宮﨑 貴夫 常務取締役 1987年同行入行。宮原西口、東川口、越谷支店長、融資部長を経て、2020年執行役員融資部長に就任。人事部長、常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
滝沢  潔 常務取締役 1992年同行入行。岩槻、北浦和支店長、営業統括部長を経て、2022年執行役員北浦和支店長に就任。2024年6月より現職。


社外取締役は、満岡隆一(元ボッシュ専務)、真田幸光(愛知淑徳大学名誉教授)、小林彩子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」「信用保証業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業

武蔵野銀行が中心となり、埼玉県内および東京都内などの店舗網を通じて、預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務、有価証券投資業務などを展開しています。地域密着型の金融機関として、個人や法人顧客に対し資金決済や融資、資産運用相談などのサービスを提供しています。

収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、為替手数料や投資信託販売手数料などの役務取引等収益が主となります。運営は主に武蔵野銀行が行っています。

リース業

連結子会社であるぶぎん総合リースが中心となり、各種情報機器、産業機械、事務機器等のリース業務を行っています。顧客の設備投資ニーズに対し、賃貸借契約を通じた物件の提供を行っています。

収益は、顧客から受け取るリース料収入等から成ります。運営は主にぶぎん総合リースが行っています。

信用保証業

連結子会社であるぶぎん保証が中心となり、武蔵野銀行の個人向け融資(住宅ローン等)にかかる信用保証業務を行っています。銀行ローン利用者の債務保証を引き受けることで、円滑な資金借入をサポートしています。

収益は、ローン利用者(被保証人)から受け取る信用保証料が主となります。運営は主にぶぎん保証が行っています。

その他

クレジットカード業務、金銭の貸付、コンピュータシステムの開発・販売、地域経済の調査研究、コンサルティング業務などを行っています。顧客の多様なニーズに応える付加価値サービスを提供しています。

収益は、クレジットカードの手数料やシステム開発の対価、コンサルティング料などです。運営は、むさしのカード、ぶぎんシステムサービス、ぶぎん地域経済研究所、ぶぎんキャピタル、むさしの未来パートナーズなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、主にリース業における銀行業との連携強化による提案活動の進展や、株式関係損益の改善、退職給付費用の減少などが要因です。過去5期を見ても、経常収益は概ね増加傾向にあり、経常利益も堅調に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 714 712 819 811 841
経常利益(億円) 128 135 156 163 181
当期純利益(億円) 80 90 109 113 131

(2) 損益計算書

当期は、経常収益が前期比で増加し、経常利益も伸長しました。経常費用も増加しましたが、収益の伸びがそれを上回る結果となりました。当期純利益も前期から増加し、増益基調を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 811 841
経常費用 648 660
経常利益 163 181
当期純利益 113 131

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益は、当期において前期比で増加し、非金利収益の拡大に貢献しました。中でも「預金・貸出業務」が最も大きな割合を占め、次いで「証券関連業務」が続きました。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 144 156
預金・貸出業務 69 81
為替業務 18 18
証券関連業務 19 22
代理業務 25 23

(4) キャッシュ・フローと財務指標

武蔵野銀行グループは、預金を基盤とした貸出金業務や有価証券投資業務を中核事業としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、預金・貸出金の増加により資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の運用増加を主因に資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払により資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー △3 △3
投資活動によるキャッシュ・フロー △2,195 △376
財務活動によるキャッシュ・フロー △4 △4

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域共存」「顧客尊重」という経営理念を掲げています。銀行の持つ社会的・公共的責任を自覚し、調和のとれた健全かつ透明性の高い経営を目指すとともに、地域になくてはならない銀行として、経済・社会の持続的成長に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「地域・お客さまの期待を超える存在へ」「組織・従業員の力を最大化」を基本方針とし、自由闊達で創造力と活力に溢れた企業風土の醸成を目指しています。行員一人ひとりが個性を発揮し、働きがい・生きがいを持てる環境づくりを重視し、多様な価値観を認め合う組織文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「MCP」の実現に向け、中期経営計画「MCP 1/3」を推進しています。最終年度である2026年3月期に向け、以下の経営目標を設定しています。

* コア業務純益:209億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:140億円
* コアOHR(連結):65%以下
* 自己資本比率(連結):11%以上
* ROE(連結):5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「リアルとデジタルを融合し、地域・お客さまとともに歩む」「あらゆる価値を認め合い、多彩な人材が躍動する」をテーマに掲げています。デジタル化の加速や人的資本への投資を通じ、顧客接点の強化と新サービス創出を目指します。具体的には、営業態勢の強化、法人・個人・地域活性化戦略の推進、グループ機能の最大化、非対面チャネルの拡充等に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織・従業員の力を最大化」を掲げ、従業員一人ひとりの能力発揮に向けた高い専門性や多様な働き方の提供に努めています。自律的なキャリア形成を支援し、多様な価値観を認め合う組織づくりを推進するとともに、デジタルや専門分野における高度な提案力・課題解決力を有する人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 16.4年 6,838,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 15.8%
男性労働者の育児休業取得率 104.4%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 54.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 68.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 63.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.82%)、一人あたり有給休暇取得平均日数(13.1日)、一人あたり残業時間(11時間40分)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク及び市場リスク

貸出金業務や有価証券投資業務において、取引先の経営状況悪化による不良債権の増加や、金利・株価・為替等の市場変動による損失が発生する可能性があります。これらが顕在化した場合、業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

(2) オペレーショナル・リスク

事務ミス、システム障害、サイバー攻撃、情報漏洩、法令違反、人的な不正行為、有形資産の被災など、業務運営に伴う多様なリスクが存在します。これらが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 感染症の流行に伴うリスク

新型コロナウイルス等の各種感染症の世界的大流行により、地域経済活動が停滞したり、役職員に感染者が発生して業務運営に支障を来したりする場合、業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。