富山銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 富山銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、富山県及び石川県を基盤とする銀行業務を中心に、リース業務等の金融サービスを展開しています。2025年3月期の連結業績は、経常収益が前期比減収となったものの、与信費用の減少等により経常利益は増益、当期純利益も増益となりました。


※本記事は、株式会社富山銀行 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富山銀行ってどんな会社?


地域密着型の金融機関として、銀行業務を中心にリースや信用保証などの金融サービスを展開しています。

(1) 会社概要


1954年に富山産業銀行として設立され、同年に井波信用金庫を吸収合併しました。1967年に現在の富山銀行に行名を変更し、地域に根差した営業基盤を築いています。1981年には富山リースを設立し、グループ体制を強化しました。2015年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は337名、単体では331名です。筆頭株主は地元の地方銀行である北陸銀行で、第2位は富山県内でビルメンテナンス業等を営むホクタテ、第3位は総合物流企業のトナミホールディングスです。地元有力企業や金融機関が主要株主として名を連ねており、地域経済との強い結びつきを持っています。

氏名 持株比率
北陸銀行 4.38%
ホクタテ 3.35%
トナミホールディングス 3.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役は取締役頭取の中沖 雄氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
中 沖  雄 取締役頭取(代表取締役) 1986年日本興業銀行入行。みずほ証券執行役員を経て、2019年同行入行、常務取締役。2020年5月より現職。
森 永 利 宏 取締役専務執行役員 1984年同行入行。経営企画室長、総合企画部長などを歴任。2011年取締役、2017年常務取締役を経て、2025年1月より現職。
髙 田 恭 介 取締役専務執行役員 1982年日本銀行入行。名古屋鉄道専務取締役、矢作建設工業副社長などを経て、2023年同行監査役。2025年1月より現職。
末 武 真 吾 取締役執行役員営業統括部長 1994年同行入行。金沢事務所長、金沢営業部長などを歴任。2020年取締役就任。2024年2月より現職。
金 田 卓 也 取締役執行役員経営管理部長 1993年同行入行。駅南支店長、砺波支店長、営業統括部次長などを歴任。2019年経営管理部長。2023年6月より現職。
寺 尾 晋 一 取締役執行役員リスク統括室担当 1987年三菱銀行入行。三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て2023年同行入行。2024年6月より現職。


社外取締役は、大澤 眞(株式会社フィーモ代表取締役)、野田 万起子(Human Delight株式会社代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


本店および支店38か店等において、預金、貸出、内国・外国為替、証券投資信託・保険商品の窓口販売業務などを行っています。営業基盤である富山県および石川県において、地域経済の発展と顧客の繁栄を目指した金融サービスを提供しており、同社グループの中心業務と位置づけられています。

これらの業務に伴う金利収入、手数料収入などが主な収益源です。運営は主に同社(富山銀行)が行っており、地域密着型の営業推進に積極的に取り組んでいます。

(2) リース業


幅広い顧客を対象として、各種機器や設備のリース業務を行っています。銀行業務と連携し、多様化する顧客の金融ニーズに応えるサービスを提供しています。

顧客からのリース料収入が主な収益源となります。運営は連結子会社である富山リース株式会社が行っています。

(3) その他


同社が取り扱う住宅ローン等に対する信用保証業務を行っています。銀行の貸出業務を補完し、円滑な資金供給を支える役割を担っています。

保証料収入が主な収益源です。運営は連結子会社である富山保証サービス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2020年度から2024年度までの推移を見ると、経常収益は増減を繰り返しながら推移しています。2022年度に100億円台に達しましたが、直近では90億円台後半となっています。一方、利益面では経常利益、当期純利益ともに変動が見られますが、2024年度は前期比で増益となり、回復傾向を示しています。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上収益(または売上高) 93億円 85億円 108億円 101億円 97億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 10億円 4億円 16億円 8億円 13億円
利益率(%) 11.0% 4.4% 14.8% 7.8% 13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 3億円 10億円 6億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の経常収益はやや減少しましたが、経常利益率および当期純利益率は向上しています。収益が減少した一方で利益が増加しており、コストコントロールや与信費用の減少などが寄与したことで、収益性が改善している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 101億円 97億円
売上総利益 -億円 -億円
売上総利益率(%) -% -%
営業利益 -億円 -億円
営業利益率(%) -% -%


営業経費のうち、給料・手当が22億円(構成比41%)を占めています。

(3) セグメント収益


銀行業は経常収益が減少したものの、セグメント利益は大幅に増加し、全体の増益を牽引しました。リース業も増益を確保しています。全体として、銀行業の収益性改善が業績向上の主要因となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
銀行業 85億円 81億円 7億円 12億円 15.0%
リース業 16億円 16億円 0.1億円 0.5億円 2.9%
その他 0.4億円 0.5億円 0.3億円 0.3億円 67.4%
調整額 -0.4億円 -0.6億円 -0.0億円 -0.0億円 -
連結(合計) 101億円 97億円 8億円 13億円 13.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は**金融型**です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 -40億円
投資CF 10億円 19億円
財務CF -3億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.1%で市場平均を大きく下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


1954年の創業以来、「健全経営を維持しお客さまから信頼されること」、「地域経済の発展とお客さまのご繁栄を通して社会貢献を図ること」、「創造性、自発性を尊重し明るい企業文化を創ること」を経営理念として掲げています。この基本精神を継承し、地域社会からの信頼獲得と発展への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「創造性、自発性を尊重し明るい企業文化を創ること」を理念として掲げています。また、第7次中期経営計画のスローガンとして「Change & Challenge」を打ち出し、変化を恐れず挑戦する姿勢を重視しています。パーパスとして「地域を愛し、お客さまに常に寄り添い続け、最も頼りにされる銀行を実現します」を制定し、地域との共存共栄を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2024年4月から2029年3月までの第7次中期経営計画「Change & Challenge」を推進しています。最終年度である2028年度の主な目標として以下を掲げています。

* 最終利益(連結ベース):10億円以上
* 中小企業等貸出比率:75%以上
* 事業承継コンサルティング件数(累計):1,000件
* 積立投信の毎月積立金額:1億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「トップラインおよび課題解決力の強化」「効率経営の追求」「人的資本投資の深化」「強固な経営基盤の確立」「IR・ブランディングの浸透」の5つを重点戦略としています。融資・ソリューションによる関係強化やリテール営業の推進、店舗戦略の見直しによる効率化、多様な専門人財の育成などに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本投資の深化」を重点戦略の一つとし、持続可能な人財ポートフォリオの構築を目指しています。人財のレベル底上げと多様な専門人財の育成を進めるとともに、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」および健康経営を推進し、従業員が働きがいと幸福をより実感できる職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 16.3年 5,547,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.9%
男女賃金差異(正規) 63.4%
男女賃金差異(非正規) 68.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職に占める女性の割合(15.4%)、管理職に占める中途採用者の割合(9.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 貸出先の信用状態悪化による影響


貸出先の財務状況が悪化した場合、資産価値の減少や消失により損失を被る可能性があります。同社グループは引当てを行っていますが、経済環境や不動産価格の変動により貸出先の経営が悪化し、想定を上回る信用コストが発生すれば、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場金利等の変動リスク


資産と負債の金利や期間のミスマッチがある中で金利が変動すると、利益が低下したり損失を被る可能性があります。また、外貨建資産・負債の為替変動や、保有する有価証券の価格変動により、資産価値が減少し、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) システム障害等のオペレーショナルリスク


事務ミスや不正、コンピュータシステムの停止・誤作動、サイバー攻撃などにより損失が発生するリスクがあります。特にシステム障害やサイバー攻撃は、業務停止や情報の流出などを引き起こし、同社グループの信用低下や損害賠償などにより、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自己資本比率規制への対応


同社グループは国内基準に基づき自己資本比率を算出していますが、これが基準(4%)を下回ると業務停止等の命令を受けることになります。有価証券の価値低下や与信費用の増加、繰延税金資産の取崩しなどが生じた場合、自己資本比率が低下し、業務運営に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。