富山銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 富山銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富山銀行は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、銀行業務を中心にリース業務などの金融サービスを展開しています。直近の業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により前年比で増収増益となり、堅調に推移しています。地域に密着した営業基盤を活かし、持続的な成長と地域経済の発展を目指しています。


※本記事は、株式会社富山銀行の有価証券報告書(第100期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富山銀行ってどんな会社?


富山県を地盤とし、地域社会の発展を支える金融サービスを展開する地域金融機関です。

(1) 会社概要


1954年に富山産業銀行として設立され、同年井波信用金庫を吸収合併し、1967年に現在の富山銀行へ行名を変更しました。1981年に富山リースを設立して事業領域を拡大し、2019年には本部・本店ビルを移転新築しています。2025年には監査等委員会設置会社へ移行し、コーポレート・ガバナンスの強化を図っています。

現在の従業員数は連結で325名、単体で319名です。筆頭株主は資本業務提携を結びホスピタリティ事業等で連携するPlan・Do・Seeで、第2位は同地域の金融機関である北陸銀行です。第3位には富山県に本社を置くビルメンテナンス会社のホクタテが名を連ねています。

氏名 持株比率
Plan・Do・See 4.90%
北陸銀行 4.38%
ホクタテ 3.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表者は取締役頭取の中沖雄氏です。社外取締役は5名で、全体の38.5%を占めています。

氏名 役職 主な経歴
中沖雄 取締役頭取 1986年日本興業銀行入行。みずほ証券不動産投資銀行部長、執行役員等を経て2019年富山銀行常務取締役に就任。2020年より現職。
森永利宏 取締役専務執行役員 1984年富山銀行入行。総合企画部リスク統括室長、経営企画室長を経て2011年取締役就任。常務取締役などを歴任し、2025年より現職。
髙田恭介 取締役専務執行役員 1982年日本銀行入行。札幌支店長等を経て名古屋鉄道専務取締役CFO、矢作建設工業代表取締役副社長等を歴任。2025年より現職。
寺尾晋一 取締役常務執行役員 1987年三菱銀行入行。東京三菱銀行ニューヨーク支店、三菱UFJ証券HD等を経て2023年富山銀行入行。取締役執行役員を経て2025年より現職。
末武真吾 取締役執行役員 1994年富山銀行入行。金沢事務所長、取締役金沢営業部長、取締役執行役員営業統括部長等を歴任し、2025年より現職。
金田卓也 取締役執行役員 1993年富山銀行入行。駅南支店長、砺波支店長、営業統括部次長を経て2019年に経営管理部長就任。2021年執行役員を経て2023年より現職。
西岡浩紀 取締役執行役員 1990年富山銀行入行。事務部企画役、審査部資産査定管理室長、監査部次長を経て2022年事務部長に就任。2024年執行役員を経て2025年より現職。


社外取締役は、大澤眞(フィーモ代表取締役)、野田万起子(Human Delight代表取締役)、海下巧(海下巧公認会計士事務所開設)、新田洋太朗(日本海ガス絆ホールディングス代表取締役社長)、山口省蔵(金融経営研究所代表取締役所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「リース業」の報告セグメントと「その他」事業を展開しています。

銀行業

本店ほか支店38か店等において、預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務、証券投資信託・保険商品の窓口販売業務などを提供しています。富山県および石川県を主要な営業基盤とし、地域に密着した金融サービスを展開しています。
収益源は、貸出金利息や有価証券利息配当金、各種手数料などです。事業の運営は同社が主体となって行っています。

リース業

同社の顧客をはじめとする幅広い顧客層を対象に、様々な機器や設備のリース業務を提供しています。多様なニーズに応えることで、地域産業の発展を資金面・設備面からサポートしています。
収益源は、顧客から受け取るリース料収入などです。事業の運営は連結子会社の富山リースが行っています。

その他

同社が取り扱う住宅ローンなどの各種融資に対する信用保証業務を提供しています。顧客の資金調達を円滑にし、グループ全体の信用リスクの軽減に寄与しています。
収益源は、各種ローン利用に伴う保証料収入などです。事業の運営は連結子会社の富山保証サービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3年間の業績は、売上高(経常収益)が101億円から138億円へと拡大し、増収傾向が続いています。経常利益も8億円から18億円へと順調に増加しており、地域に密着した営業活動による貸出金利息の増や有価証券運用による収益の確保が、業績の安定的な成長を支えています。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 101億円 97億円 138億円
経常利益 8億円 13億円 18億円
利益率(%) 7.8% 13.3% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 10億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間における収益構造を見ると、市場金利の上昇や有価証券運用力の強化を背景に資金運用収益やその他経常収益が伸長し、売上高は大きく増加しました。資金調達費用等も増加していますが、増収効果が上回り利益水準が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 97億円 138億円


営業経費のうち、給料・手当が22億円(構成比40%)、事務委託費が8億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


銀行業は貸出金利息や有価証券関連収益の増加により増収増益となりました。リース業やその他事業についても安定した推移を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 81億円 120億円 12億円 17億円 14.5%
リース業 16億円 17億円 0.5億円 0.2億円 0.9%
その他 0.4億円 0.3億円 0.3億円 0.3億円 81.8%
調整額 -0.2億円 -0.2億円 -0.0億円 -0.0億円 -
連結(合計) 97億円 138億円 13億円 18億円 12.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで生み出した資金で借入金返済や投資を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。安定した預金基盤を背景に手元資金を確保し、有価証券への投資等を行いながら堅実な財務状態を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -40億円 94億円
投資CF 19億円 -96億円
財務CF -5億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も5.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「健全経営を維持しお客さまから信頼されること」「地域経済の発展とお客さまのご繁栄を通して社会貢献を図ること」「創造性、自発性を尊重し明るい企業文化を創ること」を経営理念として掲げており、1954年の創業以来変わらぬ基本精神として引き継がれています。

(2) 企業文化

同社は、パーパス(存在意義)として「地域を愛し、お客さまに常に寄り添い続け、最も頼りにされる銀行を実現します」と定めています。環境変化を成長の好機と捉え、創造性や自発性を尊重しながら地域社会とともに持続的な発展を目指す風土を持っています。

(3) 経営計画・目標

第7次中期経営計画「Change & Challenge」(2028年度最終)を推進し、以下の目標を掲げています。
・事業承継コンサルティング件数(5年間累計):1,000件
・NISA残高:80億円以上
・外部研修派遣者数(3年間累計):45名
・コア業務純益(除く投信売却益ベース):16億円以上

(4) 成長戦略と重点施策

急激な金融経済環境の変化に対応し、持続的な成長と資本効率の向上を図るため、以下の4つの重点戦略を推進しています。
・金利ある世界での収益構造の転換
・企業支援を通じた地域金融力の強化
・組織・DX改革による効率経営の追求
・効率的かつ実効性あるガバナンス態勢の確立

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は経営戦略の実現に向けて、「能力開発」「エンゲージメント」「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」の3つを柱とする人材育成プランを推進しています。環境変化や経営戦略に対応した人員配置を行い、専門人材の育成や長期的に働きがいを実感できる職場づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 16.3年 5,713,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 72.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職に占める女性の割合(16.0%)、管理職に占める中途採用者の割合(13.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク

金融経済環境の動向や不動産価格・株価の変動により、信用供与先の財務状況や経営状態が悪化した場合、不良債権や与信関連費用が増加し、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場リスク

国内外の金利や為替、有価証券価格の変動によって保有資産の価値が減少するリスクです。特に、預貸金の金利改定のタイムラグによる利鞘の縮小やボラティリティの高い市況が継続した場合、収益に影響が生じる恐れがあります。

(3) オペレーショナルリスク

事務ミスなどの事務リスク、システム障害や不正使用によるシステムリスクのほか、法令等違反やサイバー攻撃などにより損失を被り、同社の社会的信用の低下や業績悪化につながる可能性があります。

(4) 自己資本比率に係るリスク

有価証券の価値低下や不良債権処理等による与信関係費用の増加、繰延税金資産の取り崩しなどにより自己資本比率が低下し、一定基準を下回った場合は金融庁から業務の停止等の命令を受けるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。