※本記事は、株式会社百五銀行の有価証券報告書(第211期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 百五銀行ってどんな会社?
地域の経済発展に貢献するため、銀行業務やリース業務など総合的な金融サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1897年7月に第百五国立銀行の営業を継承して普通銀行に改組し、百五銀行として発足しました。1973年4月に東京・名古屋の証券取引所に上場し、2022年4月にプライムおよびプレミア市場へ移行しました。1979年以降、ビジネスサービスやリースなどの子会社を次々と設立し、総合的な金融サービスを拡充しています。
同社グループの従業員数は連結で2,828名、単体で2,193名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はGOLDMAN SACHS INTERNATIONAL、第3位は事業会社の明治安田生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.98% |
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL | 5.05% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 4.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役取締役頭取は杉浦雅和氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉 浦 雅 和 | 代表取締役取締役頭取 | 1980年4月百五銀行入行。取締役経営企画部長、常務取締役営業本部長、取締役専務執行役員などを経て、2022年6月より現職。 |
| 山 﨑 計 | 取締役会長 | 1984年4月百五銀行入行。国際営業部長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員資金運用本部長兼秘書室長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 加 藤 徹 也 | 代表取締役取締役専務執行役員資金運用本部長兼秘書室長 | 1988年4月百五銀行入行。伊勢支店長、執行役員営業本部副本部長、取締役常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。 |
| 浦 田 康 寛 | 代表取締役取締役専務執行役員 | 1991年4月百五銀行入行。経営企画部長、執行役員資金証券部長、取締役常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。 |
| 五十嵐 靖 尚 | 取締役常務執行役員 | 1992年4月百五銀行入行。人事部長、執行役員中勢支社長兼本店営業部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 川 上 貢 司 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1992年4月百五銀行入行。伊勢支店長、執行役員北勢支社長、執行役員南勢支社長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、川喜田久(エバーグリーンホールディングス代表取締役会長)、西岡慶子(光機械製作所代表取締役社長)、中村篤志(明治安田生命保険取締役代表執行役副社長)、廣田恵子(元三重県副知事)、安藤仁(日本トランスシティ代表取締役社長社長執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」の報告セグメントおよび「その他」の事業を展開しています。
■銀行業
同社グループの中心となる銀行業では、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務等を行っています。また、投資信託や保険等の窓口販売、金融商品仲介業務に加え、事業承継やストラクチャードファイナンス等のソリューション提案に積極的に取り組み、多様化する顧客ニーズに対応したサービスを提供しています。
収益は顧客からの貸出金利息や各種手数料などを中心に得ています。事業の運営は主に百五銀行が担うほか、百五ビジネスサービスが現金等の精査業務、百五ハートフルサービスが文書帳簿等保管管理業務、百五不動産調査が担保不動産の調査・評価業務を行うなど、複数の子会社と連携して展開しています。
■リース業
リース業では、顧客が必要とする機械や設備などの資産を代わりに購入し、長期間にわたって賃貸するリースサービス等を提供しています。地域の企業が設備投資を行う際の資金調達手段として活用されており、同社グループの多角的な金融支援の重要な柱となっています。
収益は、顧客企業から定期的に受け取るリース料などを主な収益源としています。本事業の運営は、百五銀行の連結子会社である百五リースが中心となって展開しており、グループ全体の金融サービスの強化に貢献しています。
■その他
その他の事業では、証券業務、クレジットカード業務、コンサルティング業務、情報処理業務、投資事業等を行っています。地域の産業調査や専門的な金融商品の提供など、銀行業務を補完する多角的なサービスを展開しています。
収益は、金融商品取引による手数料やクレジットカードの加盟店手数料などを収益源としています。運営は、百五証券、百五カード、百五総合研究所、百五デジタルソリューションズ、百五みらい投資などの各子会社がそれぞれの専門領域を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の連結業績を見ると、経常利益は一時的な減少はあったものの、全体として拡大傾向にあり、増益基調を維持しています。親会社株主に帰属する当期純利益についても、経常利益の成長に伴って着実に増加しており、直近の2026年3月期は大幅な増益を達成するなど、収益力の強化が進んでいます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 208億円 | 201億円 | 257億円 | 370億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 142億円 | 138億円 | 175億円 | 258億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の経常利益と当期純利益を比較すると、前期から当期にかけていずれも大幅な増益となっています。資金運用収益や株式等売却益の増加が増益に寄与しており、同社グループの稼ぐ力が着実に向上していることがうかがえる堅調な推移を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 税引前利益 | 254億円 | 369億円 |
| 当期利益 | 175億円 | 258億円 |
■(3) セグメント収益
各事業セグメントの直近2期間の売上(経常収益)推移を見ると、主力の銀行業が大幅な増収を達成し、全体の成長を牽引しています。また、リース業や報告セグメントに含まれないその他の事業についても堅調に推移しており、すべての事業領域で前年を上回る増収を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 1,028億円 | 1,396億円 |
| リース業 | 166億円 | 171億円 |
| その他 | 52億円 | 57億円 |
| 連結(合計) | 1,245億円 | 1,624億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -7,102億円 | 290億円 |
| 投資CF | -290億円 | -276億円 |
| 財務CF | -62億円 | -86億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も6.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「信用を大切にする社会をささえます。」「公明正大で責任ある経営をします。」「良識ある社会人として誠実に行動します。」の3つの企業理念を掲げています。健全な金融活動を通じて活力と潤いに満ちた互いに信頼し合える社会づくりに努め、社会の信頼に応える責任ある経営を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「良識ある社会人として誠実に行動します」という行動指針を定めています。良識ある社会人として知見を深め、良心にしたがって行動することを重視し、感謝の心で誠意をつくし、明るく元気に新しいことに挑戦し続ける組織風土を大切にしながら、地域の持続可能な発展に貢献する姿勢を貫いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「KAI-KAKU150 FINAL STAGE『未来への挑戦』」において、2028年度までの目標を定めています。サステナブルファイナンスでは、2030年度に累計2兆円を目指し、環境関連融資5,000億円以上の実行を目標としています。
- 連結純資産ROE:6%以上
- 連結当期純利益:340億円以上
- サステナブルファイナンス:2兆円(2030年度)
- 女性役職者比率:25%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、長期ビジョン「グリーン&コンサルバンクグループをめざして」のもと、社会価値の創造、成長への挑戦、人材戦略、デジタルトランスフォーメーション、戦略基盤の強化の5つの基本戦略を掲げています。地域の脱炭素化を支援し、コンサルティングを通じて顧客の経営課題解決を図ることで企業価値の向上を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人を価値創造の源泉である資本」と捉え、一人ひとりの個性や価値観を尊重し、多様な能力を持つ人材が最大限に力を発揮できる環境の提供を目指しています。プロフェッショナル人材の育成や健康経営の実践を通じて、従業員がいきいきと働きがいを感じながらキャリア形成に取り組める組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.9歳 | 15.3年 | 7,764,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.2% |
| 男性育児休業取得率 | 110.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.9% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 66.3% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 86.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者比率(23.0%)、従業員エンゲージメント指数(85.0%)、障がい者雇用率(2.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 財務面に関するリスク
同社は主に貸出金等による信用供与を行っており、地域経済の動向や貸出先の経営状況、不動産価格の下落などにより不良債権や貸倒引当金が増加する可能性があります。これにより与信関係費用が膨らみ、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 金融資産の価格変動等に係るリスク
同社は株式や債券などの有価証券を保有しており、市場金利や株価の急激な変動、為替相場の変動などが生じた場合、保有資産の評価損や減損が発生する可能性があります。また、発行体の信用力悪化によるカントリーリスク等も業績に影響を与える要因となります。
■(3) 情報セキュリティとシステムリスク
金融サービスを提供する上でITシステムの安定稼働は不可欠であり、大規模なサイバー攻撃やシステムの誤作動、情報漏洩等が発生した場合は、直接的な損害のほか、社会的信用の低下を招き、同社グループの事業運営や業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。



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