※本記事は、株式会社百五銀行 の有価証券報告書(第210期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 百五銀行ってどんな会社?
三重県を主要地盤とする地方銀行です。預金・貸出等の銀行業務を中心に、リースや証券等の金融サービスをグループで展開しています。
■(1) 会社概要
1878年に第百五国立銀行として設立され、1897年に株式会社百五銀行として発足しました。1973年に東京・名古屋証券取引所市場第二部に上場し、翌年市場第一部へ指定替えとなりました。その後、海外駐在員事務所の開設や証券子会社の設立等を経て、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場・プレミア市場へ移行しています。
連結従業員数は2,796名、単体では2,159名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手生命保険会社、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.28% |
| 明治安田生命保険 | 4.10% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役取締役頭取は杉浦 雅和氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 歳恭 | 取締役会長 | 1976年入行。資金運用グループマネージャー、名古屋支社長、常務取締役、取締役副頭取などを経て2015年に取締役頭取に就任。2022年6月より現職。 |
| 杉浦 雅和 | 代表取締役取締役頭取 | 1980年入行。経営企画部長、南勢支社長、資金証券部長、常務取締役、専務取締役営業本部長などを歴任。2022年6月より現職。 |
| 山﨑 計 | 代表取締役取締役専務執行役員資金運用本部長兼秘書室長 | 1984年入行。国際営業部長、執行役員中勢支社長、取締役常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 加藤 徹也 | 取締役常務執行役員 | 1988年入行。伊勢支店長、執行役員営業本部副本部長、取締役常務執行役員事務本部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 荒木田 豊 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1988年入行。人事部長、執行役員北勢支社長、執行役員南勢支社長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 浦田 康寛 | 取締役常務執行役員 | 1991年入行。経営企画部長、執行役員経営企画部長、執行役員資金証券部長などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、小林長久(元日本トランスシティ会長)、川喜田久(三重トヨペット会長)、西岡慶子(光機械製作所社長)、中村篤志(明治安田生命保険取締役代表執行役副社長)、廣田恵子(元三重県副知事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「リース業」、ならびに「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
本店および支店等において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務等を行っています。また、投資信託・保険等の窓口販売や金融商品仲介、事業承継やストラクチャードファイナンス等のソリューション提案にも取り組んでいます。
主な収益源は、顧客からの貸出金利息や各種手数料収入です。運営は主に同社が行っており、現金等の精査・整理業務等は百五ビジネスサービスなどの連結子会社が担っています。
■(2) リース業
地域企業の設備投資ニーズ等に応えるため、各種物件のリース業務を行っています。
顧客からのリース料収入が主な収益源です。運営は百五リースが行っています。
■(3) その他
金融商品取引業務、クレジットカード業務、コンサルティング業務、コンピュータによる情報処理業務、投資事業組合の運営業務などを展開しています。
顧客からの手数料や業務委託料などが収益源です。運営は百五証券、百五カード、百五総合研究所、百五デジタルソリューションズ(旧百五コンピュータソフト)、百五みらい投資などがそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、経常収益は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大きく伸長しています。経常利益および当期純利益についても、2024年3月期に一時的な減少が見られたものの、全体としては堅調な推移を示しており、直近では最高益を更新しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 936億円 | 987億円 | 1,029億円 | 1,195億円 | 1,245億円 |
| 経常利益 | 185億円 | 194億円 | 208億円 | 201億円 | 257億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 130億円 | 134億円 | 145億円 | 143億円 | 180億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、資金運用収益の増加等により経常収益が拡大しています。これに伴い経常利益も増加し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 1,195億円 | 1,245億円 |
| 経常利益 | 201億円 | 257億円 |
経常費用のうち、営業経費は414億円で、その主な内訳は給料・手当が210億円(構成比約51%)となっています。
■(3) セグメント収益
銀行業セグメントは貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により増収となり、セグメント全体の収益を牽引しています。リース業セグメントおよびその他セグメントも増収を確保しており、全セグメントで堅調な推移を示しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 988億円 | 1,028億円 |
| リース業 | 157億円 | 166億円 |
| その他 | 49億円 | 52億円 |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 1,195億円 | 1,245億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にコールマネーの減少や貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 842億円 | -7,102億円 |
| 投資CF | -181億円 | -290億円 |
| 財務CF | -62億円 | -62億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「信用を大切にする社会をささえます。」「公明正大で責任ある経営をします。」「良識ある社会人として誠実に行動します。」の3つの企業理念に基づき、健全な金融活動を通じて信頼し合える社会づくりに努めるとともに、顧客本位の経営を推進しています。
■(2) 企業文化
倫理を重んじ、自主独立の精神で公明正大な経営を行うことを重視しています。また、良き社会人として知見を深め、良心に従って行動し、感謝の心で誠意をつくし、明るく元気に新しいことに挑戦する姿勢を行動指針としています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月より中期経営計画「KAI-KAKU150 FINAL STAGE『未来への挑戦』」を推進しており、以下の財務目標を掲げています。
* 2028年度:連結純資産ROE 5%以上
* 2028年度:連結当期純利益 240億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「社会価値の創造」「成長への挑戦」「人材戦略」「デジタルトランスフォーメーション」「戦略基盤の強化」の5つを基本戦略としています。地域を創造する新業務への挑戦や銀行業務の徹底的な効率化、コンサルティング機能の強化を通じて、社会価値と経済価値の双方の創出を目指しています。また、サステナビリティ経営の実践や人的資本への投資も重視しています。
* 2030年度目標:サステナブルファイナンス 1兆円(うち環境関連融資 5,000億円以上)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「高いモラルと豊かな発想で行動する自立した企業人」を求める人材像とし、主体的に「学び」「考え」「前進(行動)」する行員の育成を進めています。働きやすい職場環境のもと、従業員が主体的にキャリア形成に取り組み、働きがいを感じながら活き活きと働くことができる組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 15.6年 | 7,503,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.8% |
| 男性育児休業取得率 | 105.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 41.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 81.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者比率(21.1%)、従業員意識調査の働きがいに関する肯定的回答割合(80.0%)、プロフェッショナル資格保有者数(451人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不良債権及び貸倒引当金に係るリスク
地域経済の動向や貸出先の信用力低下、不動産価格の下落等により、不良債権額や与信関係費用が増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、実際の貸倒れが見積りを上回り、引当金が不足するリスクもあります。
■(2) 金融資産の価格変動等に係るリスク
保有する株式や債券等の価格変動、市場金利の上昇による評価益の減少や評価損の発生、為替相場の変動、発行体の信用力悪化等により、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 営業基盤である地域経済の低迷
同社の主たる営業基盤である三重県および愛知県の経済が低迷した場合、貸出先の業況悪化に伴い不良債権額や与信関係費用が増加し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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