※本記事は、株式会社紀陽銀行 の有価証券報告書(第215期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 紀陽銀行ってどんな会社?
和歌山県と大阪府を主要な営業エリアとする地域金融機関です。銀行業務を中心に、リースやカード業務なども展開し、地域経済の発展に貢献しています。
■(1) 会社概要
1895年に紀陽貯蓄銀行として設立され、1922年に紀陽銀行へ商号変更しました。2006年には和歌山銀行と合併し、経営基盤を拡大。2013年には持株会社である紀陽ホールディングスを吸収合併し、東証一部に上場しました。現在は東証プライム市場に上場しています。
同社グループは連結従業員数2,390名、単体2,065名の体制で事業を展開しています。主要株主には、資産管理サービスを行う信託銀行が名を連ねているほか、従業員持株会も上位株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.08% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.45% |
| 紀陽フィナンシャルグループ従業員持株会 | 3.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役会長は松岡靖之氏、代表取締役頭取は原口裕之氏が務めています。社外取締役は3名で、取締役全体の約27%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松岡 靖之 | 取締役会長(代表取締役) | 1978年入行。経営企画本部部長、取締役営業推進本部長、常務取締役、専務取締役を経て、2015年に代表取締役頭取に就任。2021年6月より現職。 |
| 原口 裕之 | 取締役頭取頭取執行役員(代表取締役)(監査部担当) | 1985年入行。執行役員営業推進本部長、取締役上席執行役員管理本部長、取締役常務執行役員経営企画本部長などを歴任。2021年6月より現職。 |
| 丸岡 範夫 | 取締役常務執行役員経営企画本部長(東京本部・融資本部担当) | 1988年入行。リスク統括部長、融資部長、執行役員営業推進本部長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 溝渕 栄 | 取締役常務執行役員営業推進本部長 | 1988年入行。東和歌山支店連合店統括支店長、執行役員融資本部長、阪和信用保証社長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 朝本 悦宏 | 取締役常務執行役員和歌山営業本部長兼本店営業部長 | 1989年入行。田辺支店連合店統括支店長、執行役員営業統括部長、取締役常務執行役員融資本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 向井 守寿 | 取締役上席執行役員管理本部長(事務システム本部担当) | 1989年入行。業務監査部長、執行役員東和歌山支店連合店統括支店長、紀陽情報システム社長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 西川 隆示 | 取締役監査等委員 | 1987年入行。人事部部長代理、営業企画部長、地域振興部長、営業支援部長兼地方創生推進室長を経て、2019年6月より現職。 |
| 倉橋 啓之 | 取締役監査等委員 | 1991年入行。融資部副部長、業務監査部長、監査部長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、西田恵(弁護士法人淀屋橋・山上合同パートナー弁護士)、堀智子(堀公認会計士事務所代表)、足立基浩(国立大学法人和歌山大学副学長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
本店および支店等において、預金業務、貸出業務、内国為替業務および外国為替業務などを行っています。和歌山県および大阪府を主要な営業エリアとし、地域に密着した金融サービスを提供しています。
収益源は、顧客からの貸出金利息や手数料などです。運営は主に紀陽銀行が行っており、連結子会社と連携して総合的な金融サービスを提供しています。
■(2) その他
銀行業以外の金融サービスとして、クレジットカード業務、リース業務、信用保証業務、事務代行業務、職業紹介業務、投資業務、システム開発などを行っています。
収益源は、クレジットカード利用者からの手数料、リース料、保証料、システム開発受託費などです。運営は、紀陽カード、紀陽リース、阪和信用保証、紀陽ビジネスサービス、紀陽パートナーズ、紀陽キャピタルマネジメント、紀陽情報システムなどのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収増益となりました。これは、主に経常収益の増加が要因です。過去からの趨勢として、経常収益は近年増加傾向にあり、当期はその流れをさらに加速させる結果となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 789 | 816 | 844 | 848 | 987 |
| 経常利益(億円) | 204 | 243 | 51 | 201 | 233 |
| 当期純利益(億円) | 136 | 155 | 39 | 150 | 176 |
■(2) 損益計算書
当期は、経常収益が前期より増加した一方で、経常費用も増加しました。経常収益の増加は、主に役務取引等収益の増加によるものです。一方、経常費用の増加は、主に特別損失の増加によるものです。これらの結果、経常利益は増加しました。当期純利益についても、前期を上回る結果となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 848 | 987 |
| 経常費用 | 646 | 754 |
| 経常利益 | 201 | 233 |
| 当期純利益 | 150 | 176 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。これは、非金利収益の強化に向けた取り組みが進展したことを示唆しています。中でも「預金・貸出業務」が最も大きな割合を占めており、次いで「為替業務」が続いています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 175 | 185 |
| 預金・貸出業務 | 63 | 71 |
| 為替業務 | 23 | 24 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
紀陽銀行は、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したものの、投資活動によるキャッシュ・フローは増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは減少しましたが、これらの結果、現金及び現金同等物は減少しました。資金運用収支は増加し、役務取引等収支も増加しました。その他業務収支は減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,151 | △1,862 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,306 | 17 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △27 | △74 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地域社会の繁栄に貢献し、地域とともに歩む」「堅実経営に徹し、たくましく着実な発展をめざす」という経営理念を掲げています。また、長期ビジョンとして「お客さまとの価値共創と企業変革への挑戦を続け、人が未来を創造する地域金融グループとなる」ことを目指しています。
■(2) 企業文化
長期ビジョン実現のために、お客さまの持続的な成長を支援し共に新しい価値を創造する「価値共創」、時代の変化に順応し変革に挑戦する「企業変革への挑戦」、役職員一人ひとりの能力が発揮される環境を整える「人が未来を創造」という考え方を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
第7次中期経営計画「KX~Kiyo transformation~」(2024年4月~2027年3月)に取り組んでいます。最終年度(2027年3月期)の経営指標(修正後)として以下を掲げています。
* ROE(連結):8.0%以上
* 親会社株主に帰属する当期純利益(連結):210億円以上
* 顧客向けサービス業務利益(単体):220億円以上
* 自己資本比率(連結):10-11%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、中小企業取引を起点としたビジネスモデルへの変革を進めています。営業体制の最適化による資本効率性を意識した営業活動、成長分野への戦略的投資によるグループ収益の増強、デジタルバンキング戦略による地域DXの推進、サステナビリティ戦略による地域未来の創造を主要戦略として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な学びの機会提供と挑戦・成長を後押しする環境整備により、従業員の自律的な思考・行動を促す人材育成を目指しています。また、健康経営の推進や多様な価値観・働き方を受容する風土醸成により、従業員エンゲージメントの向上と能力の最大発揮を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.0歳 | 14.8年 | 5,846,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.6% |
| 男性育児休業取得率 | 88.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、本業支援人的資本ROI(0.93倍)、エンゲージメントスコア(総合)(70.8)、時差勤務・在宅勤務等の利用者数(379人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
主要営業基盤である和歌山県および大阪府の経済動向により、貸出金や預金量が変動し業績に影響する可能性があります。また、取引先の経営状況悪化等による不良債権の増加や、担保価値の下落により、与信関係費用が増加する可能性があります。
■(2) 市場リスク
保有する債券、株式、投資信託等の価格は、金利、株価、為替等の市場変動の影響を受けます。予期しない金利上昇や株価下落等が発生した場合、保有資産の価値減少や評価損が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) オペレーショナル・リスク
事務ミスや事故、不正、コンピュータシステムの停止・誤作動、サイバー攻撃、法令違反、自然災害、情報漏えいなどが発生した場合、業務運営に支障をきたし、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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