紀陽銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

紀陽銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

紀陽銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、和歌山県および大阪府を地盤に銀行業務を中心とした金融サービスを展開する地方銀行です。直近の業績では貸出金利息や各種手数料収益の増加により、経常収益が前期比で増収、経常利益も大幅な増益を達成しており、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社紀陽銀行の有価証券報告書(第216期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 紀陽銀行ってどんな会社?


銀行業務を中心に、リースやクレジットカード等の多様な金融サービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


1895年に紀陽貯蓄銀行として設立後、普通銀行への転換等を経て事業を拡大しました。2006年には和歌山銀行との合併により現在の強固な経営基盤を確立し、2013年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。その後も情報システム会社等の設立や子会社化を進め、グループ全体で事業を多角化しています。

現在の従業員数は連結で2,473名、単体で2,125名です。筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には自社の従業員持株会が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.15%
日本カストディ銀行(信託口) 4.17%
紀陽フィナンシャルグループ従業員持株会 3.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役頭取は原口裕之氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
松岡靖之 取締役会長(代表取締役) 1978年4月入行。本店営業部長等を歴任し、2015年6月に代表取締役頭取に就任。2021年6月より現職。
原口裕之 取締役頭取頭取執行役員(代表取締役) 1985年4月入行。営業推進本部長や経営企画本部長等を歴任し、2021年6月に代表取締役頭取に就任。
丸岡範夫 取締役専務執行役員 1988年4月入行。融資部長や営業推進本部長等を歴任し、2025年6月より現職。
溝渕栄 取締役常務執行役員 1988年4月入行。融資本部長や営業推進本部長等を歴任し、2026年4月より現職。
向井守寿 取締役常務執行役員 1989年4月入行。事務システム本部長や管理本部長等を歴任し、2026年4月より現職。
山東弘之 取締役常務執行役員 1992年4月入行。事務システム部長や融資本部長等を歴任し、2025年6月より現職。
倉橋啓之 取締役監査等委員 1991年4月入行。業務監査部長や監査部長を歴任し、2021年6月より現職。
前田竜佐 取締役監査等委員 1994年4月入行。融資部長や堺支店長等を歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、西田恵(弁護士)、堀智子(公認会計士)、足立基浩(大学教授)、藤原敏正(企業経営者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


本店および支店等の拠点網を通じて、地域の中小企業や個人等に対して総合的な金融サービスを提供しています。主に預金業務、貸出業務、内国為替業務および外国為替業務などを行っています。

収益は、顧客からの預金等を原資とした貸出金利息や、為替取引等の各種役務に関する手数料から得ています。運営は紀陽銀行が担い、主要な営業エリアである和歌山県や大阪府を中心に強固な営業基盤を構築しています。

(2) その他


銀行業以外の金融サービスや周辺業務に係る事業を多角的に展開しています。具体的にはクレジットカード業務、リース業務、信用保証業務、投資業務のほか、プログラム作成などの計算受託業務も提供しています。

収益は、各サービスを利用する顧客からの手数料や利用料等から得ています。運営は紀陽カード、紀陽リース、阪和信用保証、紀陽キャピタルマネジメント、紀陽情報システムなど複数の子会社が分担して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の経常収益および経常利益は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により、概ね拡大傾向にあります。特に直近年度は大幅な増収となり、利益率も改善して堅調な推移を示しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 844億円 848億円 987億円 1149億円
経常利益 51億円 201億円 233億円 324億円
利益率(%) 6.0% 23.7% 23.6% 28.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 150億円 176億円 218億円

(2) 損益計算書


経常収益の大半を資金運用収益などの業務収益が占めており、堅調な本業収益を背景に利益が大きく拡大しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 987億円 1149億円
売上総利益 546億円 674億円
売上総利益率(%) 55.3% 58.7%
営業利益 233億円 324億円
営業利益率(%) 23.6% 28.2%


営業経費のうち、給料・手当が147億円(構成比40%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの直近2期間の推移では、主力である銀行業の収益が大きく牽引しています。貸出金利息や役務取引等収益が増加したことで、銀行業が大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 867億円 1023億円 209億円 307億円 30.0%
その他 143億円 149億円 24億円 18億円 12.1%
調整額 -23億円 -24億円 -0億円 -0億円 -
連結(合計) 987億円 1149億円 233億円 324億円 28.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1862億円 -83億円
投資CF 170億円 462億円
財務CF -74億円 -72億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「地域社会の繁栄に貢献し、地域とともに歩む」「堅実経営に徹し、たくましく着実な発展をめざす」という経営理念を掲げています。中長期的なビジョンとして「お客さまとの価値共創と企業変革への挑戦を続け、人が未来を創造する地域金融グループとなる」ことを目指し、地域経済の発展と持続的な成長に取り組んでいます。

(2) 企業文化


堅実経営を続けながらも、時代の変化に順応できる企業文化の醸成を重視しています。絶えず変革に挑戦することができるたくましい企業への成長を目指し、役職員一人ひとりの多様な能力や才能が最大限に発揮される環境を整えることで、個の成長や活躍により地域の未来を創造する組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2024年4月から2027年3月までを計画期間とする「第7次中期経営計画 KX~Kiyo transformation~」を策定し、以下の目指す経営指標を掲げています。

* ROE(連結):8.0%以上
* 親会社株主に帰属する当期純利益(連結):210億円以上
* 顧客向けサービス業務利益(単体):220億円以上
* 自己資本比率(連結):10-11%程度

(4) 成長戦略と重点施策


中小企業取引を起点としたビジネスモデルへの変革を進めるため、以下の領域を重点施策として展開しています。

* 営業体制の最適化:中小企業取引への経営資源投下や役務収益の増強
* グループ戦略:成長分野への戦略的投資による新たな収益基盤の構築
* デジタルバンキング戦略:地元地域のDX高度化に貢献する地域DXの推進
* サステナビリティ戦略:地域社会の持続可能性向上への取り組み

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「求める人材像:Be “CHANGE”の実現」を掲げ、多様な学びの機会を提供し、挑戦と成長を後押しする環境を整備しています。従業員一人ひとりの自律的な思考や行動を促し、多様な価値観や働き方を受容する組織風土を醸成することで、働きがいを向上させ、各人の能力が最大限に発揮される環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.7歳 14.4年 6,048,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.7%
男性育児休業取得率 108.8%
男女賃金差異(全労働者) 51.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人間ドック受診率(90.1%)、従業員持株会加入率(94.5%)、年間休暇取得日数(17.1日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地域経済への依存リスク


同社の主要な営業基盤は和歌山県および大阪府であり、貸出金や預金において同地域の比率が高くなっています。そのため、主要営業基盤である地域の経済動向や地価の変動によって、与信関係費用が増加するなど、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 有価証券投資に係る市場リスク


同社は国内債券や外国債券等の有価証券を保有しており、価格変動や金利変動のリスクに晒されています。リスクコントロールには努めていますが、予期しない金利上昇や投資先の信用状況の悪化が生じた場合、価格変動等に伴う損失を被る可能性があります。

(3) 情報漏えいおよびサイバー攻撃リスク


顧客の個人情報等の重要情報を多く保有しており、これらの情報が外部へ漏えいした場合には信用が低下する恐れがあります。また、コンピュータシステムの停止や外部からのサイバー攻撃等が発生した場合、業務運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。