鳥取銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 鳥取銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥取銀行は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、銀行業務を中心にクレジットカード業務等も展開しています。直近では資金運用収益等の増加により、経常収益・経常利益ともに増収増益のトレンドにあります。地域社会の発展を力強くリードするコンサルティングバンクとして、地域価値の向上に貢献しています。


※本記事は、株式会社鳥取銀行の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鳥取銀行ってどんな会社?


地域密着の営業基盤を有し、法人・個人向けの金融サービスや各種コンサルティング業務を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


同社は1921年に鳥取貯蓄銀行として設立され、1948年に普通銀行への変更を経て、1949年に現在の鳥取銀行へと商号を変更しました。1996年には大阪証券取引所第二部等へ株式上場を果たし、2000年に東京証券取引所第一部銘柄へ指定されました。その後クレジットカード業務やリース業務、ベンチャーキャピタル業務などを順次展開し、2022年には東京証券取引所の市場再編に伴いスタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数はグループ連結で638名、単体で632名です。筆頭株主は鳥取銀行従業員持株会で、第2位は損害保険業務等で連携関係にある事業会社の損害保険ジャパン、第3位は明治安田生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
鳥取銀行従業員持株会 3.15%
損害保険ジャパン 2.28%
明治安田生命保険相互会社 2.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役頭取執行役員は入江到氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
入江到 代表取締役頭取執行役員 1988年4月入行。人事部長、ふるさと振興部長、米子営業部長などを歴任し、2022年6月より現職。
平井耕司 代表取締役会長 1982年4月入行。審査部長などを経て2016年6月に代表取締役頭取執行役員に就任し、2022年6月より現職。
八木俊英 取締役専務執行役員 1992年4月入行。経営統括部長、大阪支店長、常務執行役員などを経て、2026年4月より現職。
倉光裕之 取締役専務執行役員 1993年4月入行。鳥取北支店長、審査部長、常務執行役員などを経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、藪田千登世(元鳥取大学理事・副学長)、西尾信也(元大和インベストメント・マネジメント社長)、福居一彦(元インフォメーション・ディベロプメント執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 銀行業


本店や支店等のネットワークを活用し、地域の個人および法人顧客に対して預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替・外国為替業務など幅広い金融サービスを提供しています。地域経済に密着した営業活動を通じ、顧客の資産形成や資金調達ニーズに応える役割を担っています。

収益モデルとしては、主に企業や個人に対する資金の貸出を通じた利息収入と、為替や有価証券売買、代理業務などを通じた各種手数料収入で構成されています。事業の運営は、親会社である鳥取銀行が主体となって行っています。

(2) その他


銀行業を補完する形で、クレジットカード業務、リース業務、ベンチャーキャピタル業務、ファンド運営業務、およびコンサルティング業務などの金融関連サービスを提供しています。地域の法人顧客が抱える経営上の課題に対し、より専門的で多様なソリューションを提案できる体制を整えています。

クレジットカードの手数料や事務機器などのリース料、ファンドを通じた投資運用収益などを主な収益源としています。これらの事業運営は、とりぎんカードサービス、とりぎんリース、とっとりキャピタルなどの子会社や関連会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、経常利益および当期利益は安定的な成長傾向を示しています。とくに直近の2期間では資金運用収益や役務取引等収益の拡大が寄与し、利益水準が大きく向上しています。強固な事業基盤を背景に、順調な増益基調が続いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益(または売上高) - - - - -
経常利益 5億円 17億円 16億円 19億円 22億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 10億円 11億円 13億円 16億円

(3) セグメント収益


同社グループは銀行業の単一セグメントですが、サービス別の経常収益を見ると貸出業務が全体の半数以上を占めています。当期は個人向けおよび企業向け貸出の堅調な推移により貸出業務が伸長したほか、手数料収入などの増加によりその他業務も成長し、全体の収益拡大に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
貸出業務 97億円 115億円
有価証券投資業務 27億円 26億円
その他 39億円 50億円
連結(合計) 163億円 190億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


末期型(事業拡大に伴う資産増加)
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -376億円 -47億円
投資CF 66億円 -169億円
財務CF -5億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域社会への貢献と健全経営」を経営の基本理念として掲げています。また、“地域社会の未来を「創る」「守る」「支える」”というパーパスを制定しており、金融の枠組みを越えたサービスを提供することで、地域の価値向上と持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


人口減少や多様性への対応といった社会環境の変化を見据え、一人ひとりが家庭や地域、職場で心豊かに暮らせる社会の実現を重視しています。「地域を支え地域社会の発展に全力を尽くす」「プロフェッショナル人財を育成する」というビジョンのもと、組織全体で自律と挑戦を促す文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


2024年度からの3年間を計画期間とする中期経営計画「for the FUTURE ~未来に向けて~」を推進し、「地域社会の発展を力強くリードするコンサルティングバンク」を目指しています。2026年度に向けた計数目標として以下を掲げています。

* 経常利益:20億円
* 自己資本比率:8%程度
* コアOHR:80%台前半
* 行内プロフェッショナル人財:150人

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、「新たな地域価値の創造」「コンサルティング深化」「経営基盤の強化」「人的資本経営の実践」の4つを重点テーマに据えています。地域の課題解決に資するソリューションを提供しつつ、DX推進等の生産性向上により経営基盤を強靭化させ、持続的な企業価値の向上を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本経営の実践」を経営計画の重点テーマに掲げ、すべての従業員が能力を十分に発揮できる職場環境づくりを進めています。「自律人財の育成」「挑戦する風土の醸成」「ダイバーシティの推進」を軸に、付加価値の高いコンサルティング機能を提供できるプロフェッショナル人財の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 16.1年 5,404,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 115.4%
男女賃金差異(全労働者) 55.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たりの人財開発投資額(414千円)、一人当たり研修参加回数(10.5回)、障がい者雇用率(3.04%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク


日本経済の減速や地域経済の景気後退により、融資先の財務状況が悪化し倒産などに至った場合、債務者区分の変更に伴って不良債権および与信関係費用が増加するリスクがあります。これらの信用リスクが顕在化することで、同社グループの経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場変動と金利リスク


同社が保有する株式や債券の価格変動により、株価の大幅な下落や急激なイールドカーブの変動が生じた場合、評価損や減損が発生するリスクがあります。また、調達資金と運用資金の満期や金利更改時期の差異により、将来的な金利動向の変化が資金利益を減少させる可能性があります。

(3) オペレーショナルリスク


事務ミスや不祥事件、システム障害、情報漏洩などが生じるリスクがあります。とくに基幹系システムのトラブルやサイバー攻撃によるネットワークの停止、保有する顧客情報の漏洩などが発生した場合、同社グループの社会的信用が失墜し、業務継続や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 気候変動関連リスク


気候変動に伴う自然災害や異常気象の激甚化により、同社の営業拠点や担保物件が直接的に毀損する物理的リスクがあります。さらに、脱炭素社会への移行に向けた規制強化により、融資先企業の業績が悪化する移行リスクが存在し、中長期的な財務状況への悪影響が懸念されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。