鳥取銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 鳥取銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥取銀行は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、銀行業務を中心にクレジットカードやリース業務などを展開する地方銀行です。直近の業績トレンドでは、貸出業務などの堅調な推移により、経常収益および経常利益ともに増収増益を達成しており、当期純利益も着実に増加するなど、順調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社鳥取銀行の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年9月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鳥取銀行ってどんな会社?


鳥取銀行は鳥取県を地盤とし、預金・貸出などの銀行業を中心に、クレジットカードやリースなどの多様な金融サービスを提供する地方銀行です。

■(1) 会社概要


1921年に鳥取貯蓄銀行として設立され、1948年に普通銀行への転換とともに因伯銀行へ商号を変更しました。翌1949年には鳥取信用組合から営業譲受し、現在の鳥取銀行へと商号を変更しています。その後順調に事業を拡大し、1996年には大阪証券取引所第二部等へ株式上場を果たしました。

現在の同社グループは、連結従業員数638名、単体632名の体制で運営されています。筆頭株主は従業員の資産形成を支える鳥取銀行従業員持株会であり、第2位には保険商品の窓口販売等で業務連携を行う損害保険ジャパンが、第3位には明治安田生命保険が名を連ねています。

氏名 持株比率
鳥取銀行従業員持株会 3.15%
損害保険ジャパン 2.28%
明治安田生命保険 2.19%

■(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長は平井耕司氏、代表取締役頭取執行役員は入江到氏が務めています。また、独立役員である社外取締役を3名選任し、経営の透明性確保とコーポレート・ガバナンス体制の強化を図っています。

氏名 役職 主な経歴
平井 耕司 代表取締役会長 1982年鳥取銀行入行。津山支店長、執行役員審査部長、専務などを経て2022年より現職。
入江 到 代表取締役頭取執行役員 1988年鳥取銀行入行。人事部長、執行役員ふるさと振興部長、米子営業部長などを経て2022年より現職。
八木 俊英 取締役専務執行役員 1992年鳥取銀行入行。経営統括部長、執行役員大阪支店長、常務などを経て2026年より現職。
倉光 裕之 取締役専務執行役員 1993年鳥取銀行入行。鳥取北支店長、審査部長、執行役員、常務などを経て2026年より現職。


社外取締役は、藪田千登世(元鳥取県庁福祉保健部長)、西尾信也(元大和証券グループ本社副社長)、福居一彦(元インフォメーション・ディベロプメント役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。

■銀行業

同社は鳥取県内を中心とした本支店において、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替・外国為替業務などの金融サービスを提供しています。地域に密着した営業活動を通じて、地元企業や個人の多様な資金ニーズや資産運用に応えています。

主な収益源は、企業や個人に対する貸出金利息や有価証券利息配当金、および投資信託などの金融商品販売に伴う各種手数料です。この事業は、同社が主体となって運営を行っています。

■その他

同社の子会社および関連会社において、クレジットカード業務、リース業務、ベンチャーキャピタル業務、ファンド運営業務、コンサルティング業務などの幅広い金融関連サービスを提供しています。

主な収益源は、各種サービス提供に伴う手数料収入です。これらの事業運営は、とりぎんカードサービス、とりぎんリース、とっとりキャピタル、とりぎん未来共創キャピタル、とりぎん地域デザインパートナーズなどがそれぞれ担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

■(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、経常利益は一時的な落ち込みを経て順調に回復・成長し、直近では22億円に達しています。当期利益も右肩上がりで推移しており、同社の収益力の着実な向上が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 5億円 17億円 16億円 19億円 22億円
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 10億円 10億円 12億円 16億円

■(3) セグメント収益


サービス別の収益動向を見ると、主力の貸出業務が順調な伸びを牽引しています。また、その他業務も堅調に推移しており、地域密着型のコンサルティングや各種金融サービスがグループ全体の収益に大きく貢献していることがわかります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
貸出業務 97億円 115億円
有価証券投資業務 27億円 26億円
その他 39億円 50億円
連結(合計) 163億円 190億円

■(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -376億円 -47億円
投資CF 66億円 -169億円
財務CF -5億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.4%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

■(1) 経営理念

同社は「地域社会への貢献と健全経営」を経営の基本理念として掲げています。また、持続可能な地域社会の実現に向け、これまでの金融の枠組みを越えたサービスを提供し、地域社会の未来を「創り、守り、支える存在」になるというパーパスを定めています。

■(2) 企業文化

同社は、企業が持続的な成長を実現し、にぎわいのある中心市街地や安心して暮らし続けられる地域を形成することを目指しています。多様性をお互いが認め合い、一人ひとりが家庭や地域、職場で心豊かに暮らせる社会の実現を重視する文化が根底にあります。

■(3) 経営計画・目標

同社は2024年度から2026年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画「for the FUTURE~未来に向けて~」を推進しており、最終年度の計数目標として以下を掲げています。

・経常利益:20億円
・自己資本比率:8%程度
・コアOHR:80%台前半
・行内プロフェッショナル人財:150人

■(4) 成長戦略と重点施策

「地域社会の発展を力強くリードするコンサルティングバンク」を目指し、「新たな地域価値の創造」「コンサルティング深化」「経営基盤の強化」「人的資本経営の実践」という4つの重点テーマに取り組んでいます。多様化する地域課題に対し、グループ全体のソリューション力を結集して対応していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

■(1) 人材戦略・方針

同社は人的資本を価値創造の源泉と位置づけ、「自律人財の育成」「挑戦する風土の醸成」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」をテーマに掲げています。すべての役職員が個性や能力を十分に発揮し、やりがいを持って活躍できる職場環境の整備を進めています。

■(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 16.1年 5,404,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

■(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 115.4%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 55.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 62.7%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 62.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.9%)、キャリアスキル認定者(125人)、一人当たり研修参加回数(10.5回)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

■(1) 信用リスクと不良債権の増加

日本経済の減速や地域経済の後退により、融資先の財務内容が悪化したり倒産が発生した場合、不良債権および与信関係費用が増加し、同社グループの経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

■(2) 金利および有価証券の価格変動リスク

同社は多くの有価証券を保有しており、株価や債券価格の大幅な下落が生じた場合、評価損が発生するリスクがあります。また、調達資金と運用資金の満期や金利更改時期の差異により、将来の金利動向によっては資金利益が減少する可能性があります。

■(3) オペレーショナルリスク(システム・事務)

同社は基幹系システムを共同利用型センターへ移行して運用していますが、災害やサイバー攻撃等によるシステム障害のリスクがあります。また、事務手続きのミスや顧客情報の漏洩などが発生した場合、信用失墜につながる恐れがあります。

■(4) 気候変動関連リスク

気候変動に伴う自然災害の激甚化により、同社の担保物件や営業拠点が毀損するリスクがあります。また、脱炭素社会への移行に伴う規制強化が取引先の業績悪化を招き、結果として同社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。