阿波銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阿波銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、徳島県を地盤に銀行業やリース業などの総合金融サービスを展開する企業です。直近の業績は、資金運用収益の好調により前年度比で増収増益となり、過去最高益を更新するなど堅調に推移しています。地域社会に寄り添った息の長い取引である「永代取引」を軸に持続的成長を目指しています。


※本記事は、株式会社阿波銀行の有価証券報告書(第214期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阿波銀行ってどんな会社?


徳島県を地盤とする地方銀行として、預金や貸出などの銀行業務を中心に、リース事業など幅広い金融サービスを展開しています。

(1) 会社概要


1896年に阿波商業銀行として設立され、1964年に現在の阿波銀行へ社名を変更しました。1973年に上場を果たし、近年では2019年に子会社5社を完全子会社化するなどグループ体制を強化しています。2021年には野村證券との提携による金融商品仲介業務を開始し、顧客への幅広いサービス提供を推進しています。

現在、グループ全体で1,410名、単体で1,317名の従業員を抱えています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は大塚グループの事業会社である大塚製薬工場、第3位には従業員の持株会が名を連ねており、安定した資本構成と地域企業との強固な結びつきが伺えます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.31%
大塚製薬工場 3.99%
阿波銀グループ職員持株会 2.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役頭取は福永丈久氏が務めており、社外取締役の比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
福永丈久 取締役頭取(代表取締役) 1984年同行入行。総合企画部長や人事部長、常務取締役、専務取締役などを経て、2023年より現職。
長岡奨 取締役会長 1980年同行入行。審査部長や人事部長、常務、専務、取締役頭取などを経て、2025年より現職。
山下真弘 専務取締役(代表取締役) 1992年同行入行。リスク統括部長や大阪支店長、常務取締役などを経て、2025年より現職。
西大和 常務取締役 1994年同行入行。松山支店長や経営統括部長などを経て、2020年より現職。
三河広明 常務取締役 1991年同行入行。リスク統括部長や鳴門支店長などを経て、2023年より現職。
伊藤輝明 常務取締役 1994年同行入行。審査部長や東京支店長などを経て、2024年より現職。
板東克浩 取締役徳島市内広域エリア母店長兼本店営業部長兼両国橋支店長兼かちどき橋支店長 1995年同行入行。審査部長や東京支店長などを経て、2024年より現職。
豊田晃 取締役経営統括部長 1996年同行入行。松山支店長や池田支店長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、野田聖子(弁護士)、橋爪正樹(放送大学徳島学習センター所長)、竹川都之(公認会計士)、瀧典子(公認会計士・税理士)、岸淵和也(ニッセイ情報テクノロジー代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「リース業」の事業を展開しています。

銀行業


預金業務や貸出業務をはじめ、有価証券投資、国内外の為替業務、公共債や投資信託・保険の販売、金融商品仲介や信託業務などを通じて、地域社会に幅広い金融サービスを提供しています。

収益源は、貸出金利息や有価証券の利息・配当金などの資金運用収益や各種手数料です。運営は主に阿波銀行が行うほか、阿波銀保証が信用保証業務を、阿波銀カードがクレジットカード業務などをそれぞれ担っています。

リース業


地域の企業や個人事業主などの顧客に向けて、機械設備や車両などを貸し出すリース業務や関連する金融サービスを提供しています。

収益源は、顧客から定期的に受け取るリース料などの売上です。本事業の運営は、主に連結子会社である阿波銀リースが中心となって担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、経常収益は市場環境の変動により増減を繰り返していますが、直近では貸出金利息や有価証券利息配当金が増加し、大幅な増収となっています。経常利益および当期利益も堅調に推移しており、前年度比で増益となり過去最高益を更新するなど、底堅い収益基盤を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 679億円 881億円 761億円 790億円 954億円
経常利益 161億円 154億円 166億円 179億円 218億円
利益率(%) 23.7% 17.5% 21.8% 22.7% 22.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 110億円 101億円 112億円 132億円 155億円

(2) 損益計算書


直近2期間の収益状況をみると、有価証券利息や貸出金利息を中心とした資金運用収益が好調に推移し、前年度から大幅な増収となっています。資金調達費用の増加を吸収し、安定的な利益拡大を実現しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 790億円 954億円


営業経費(販売費及び一般管理費に相当)のうち、給料・手当が108億円(構成比34%)、事務委託費が36億円(同11%)、減価償却費が29億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益をみると、主力である銀行業は貸出金利息などの資金運用収益の増収により大幅な増収増益を牽引しました。リース業についてもリース売上高が増加したことで堅調な増収増益となり、グループ全体の業績向上に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 626億円 773億円 176億円 216億円 27.9%
リース業 164億円 180億円 7億円 8億円 4.4%
調整額 -億円 -億円 -5億円 -5億円 -%
連結(合計) 790億円 954億円 179億円 218億円 22.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 282億円 136億円
投資CF 20億円 -629億円
財務CF -49億円 -69億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は9.6%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「堅実経営」を行是とし、①「信用の重視」②「地域への貢献」③「お客さま第一」④「人材の育成」⑤「進取の精神」を掲げています。また、「永代取引(世代を超えた息の永い取引を継続し、お客さまの永続的な発展に貢献する)」を伝統的営業方針としています。存在意義(パーパス)として「永代取引によるお客さま感動満足の創造と豊かな地域社会の実現」を定めています。

(2) 企業文化


行是である「堅実経営」には、「原理原則に基づき、信用を重んじる」「良き伝統を守り、未来に挑戦する」という二つの意味が込められています。単に堅実というだけでなく、「守るべきは守り、進むべきは進む」という、時代の変化に積極的に対応する進取の気性や、対話を重視して誰もが意欲的に挑戦できる組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


長期経営計画「Growing beyond 130th」の3rdステージを推進しており、最終年度の2028年3月期に向けて以下の数値目標を掲げています。

* 当期純利益:200億円以上
* 当期純利益ROE:5.00%以上
* 配当性向(連結):40%以上
* ESG投融資残高:3,000億円
* 女性役付者比率:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「永代取引の進化」「持続可能な地域社会への取組み」「活力ある組織と多様な働き方の実現」「経営基盤の強化」を基本戦略としています。コンサルティング機能の高度化やDX・GX支援による地域課題の解決を図るとともに、人的資本経営を深化させ多様な人材が活躍できる環境を整備します。また、リスク管理とコンプライアンスを徹底し、持続的な企業価値の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「永代取引」を支える最も大切な要素は「人」であるとし、人的資本経営を推進しています。自律的なキャリア形成を支援する研修制度の拡充や専門人材の育成を行うとともに、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進し、働きがいと働きやすさを両立する職場づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 19.1年 7,385,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.9%
男性育児休業取得率 133.3%
男女賃金差異(全労働者) 54.9%
男女賃金差異(正規労働者) 65.6%
男女賃金差異(非正規労働者) 73.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役付者比率(30.6%)、専門資格取得者(784名)、ダイアログ実施回数(104回/年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスクと市場リスク


中小企業向け融資において、景気変動や物価高騰などにより与信先の経営状況が悪化し、不良債権の増加や与信費用が発生するリスクがあります。また、金融・為替市場における金利や株価の変動により、保有有価証券の評価損が発生する市場リスクも抱えています。

(2) お客さま本位の業務運営に関するリスク


金融商品の販売において不適切な対応や法令違反等が発生した場合、行政処分や信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は「お客さま本位の業務運営に関する取組方針」を制定し、法令遵守と適切な販売管理態勢の構築に努めています。

(3) システムリスクおよびサイバーセキュリティ


業務遂行に不可欠なシステムが災害や障害で停止、あるいはサイバー攻撃によって情報漏えいや改ざんが発生した場合、信用失墜につながるリスクがあります。同社はバックアップ体制の整備やサイバーセキュリティ対策組織(AWA-CSIRT)を設置し、防御と対応能力の強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。