阿波銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阿波銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する地方銀行です。徳島県を地盤に、銀行業務を中心にリース業務等の金融サービスを展開しています。直近の業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により、経常収益、経常利益ともに増加し、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を更新する増収増益となりました。


※本記事は、株式会社阿波銀行 の有価証券報告書(第213期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阿波銀行ってどんな会社?


徳島県を主要な営業基盤とし、「永代取引」を掲げて地域密着型の銀行業務やリース業務を展開する地方銀行です。

(1) 会社概要


1896年に阿波商業銀行として設立され、1964年に行名を現在の阿波銀行に変更しました。1974年に東京・大阪両証券取引所市場第一部に上場を果たし、1975年には阿波銀保証(現連結子会社)を設立するなどグループ体制を強化してきました。1994年には信託業務の取り扱いを開始し、総合金融サービス機能の拡充を図っています。2021年には野村證券との包括的業務提携に基づく金融商品仲介業務を開始するなど、地域顧客へのサービス向上に努めています。

連結従業員数は1,374名、単体では1,288名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は地元徳島県に拠点を置く医薬品メーカーの関連企業である大塚製薬工場、第3位は従業員による持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.31%
大塚製薬工場 3.97%
阿波銀グループ職員持株会 3.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役頭取は福永丈久氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
長岡奨 取締役会長(代表取締役) 1980年入行。事務統括部長、営業推進部長、人事部長等を歴任し、2017年に取締役頭取に就任。2023年4月より現職。
福永丈久 取締役頭取(代表取締役) 1984年入行。総合企画部長、経営品質推進室長、人事部長等を歴任し、2023年4月より現職。
西大和 常務取締役 1994年入行。松山支店長、証券国際部長、経営統括部長等を歴任し、2020年6月より現職。
山下真弘 常務取締役 1992年入行。リスク統括部長、大阪支店長、関西広域エリア母店長等を歴任し、2022年6月より現職。
三河広明 常務取締役 1991年入行。リスク統括部長、鳴門支店長、県北広域エリア母店長等を歴任し、2023年6月より現職。
伊藤輝明 常務取締役 1994年入行。審査部長、東京支店長、関東広域エリア母店長等を歴任し、2024年6月より現職。
板東克浩 取締役徳島市内広域エリア母店長兼本店営業部長兼両国橋支店長兼かちどき橋支店長 1995年入行。審査部長、経営統括部長、関東広域エリア母店長兼東京支店長を経て、2024年6月より現職。
豊田晃 取締役経営統括部長 1996年入行。川内支店長、松山支店長、経営統括部部付部長、池田支店長を経て、2024年6月より現職。
大和史郎 取締役監査等委員 1986年入行。経営統括部長、審査部長、常務執行役員管理本部長、常務取締役等を歴任。2024年6月より現職。
浜尾克也 取締役監査等委員 1986年入行。リスク統括部長、業務管理部長、監査部長、中四国広域エリア母店長等を歴任。2023年6月より現職。


社外取締役は、野田聖子(弁護士)、矢部剛(元日本生命保険取締役常務執行役員)、橋爪正樹(元徳島大学理工学部長)、竹川都之(公認会計士)、瀧典子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「リース業」事業を展開しています。

銀行業


本店ほか支店等において、預金、貸出、有価証券投資、為替業務を行うほか、公共債・投資信託・保険の販売や金融商品仲介、信託業務等を通じて幅広い金融商品・サービスを提供しています。また、連結子会社を通じて信用保証、クレジットカード、経営コンサルティング、ECモール運営、投資事業組合の運営なども行っています。

収益源は、貸出金利息、有価証券利息配当金、各種手数料(為替、投資信託販売、M&A仲介等)などが中心です。運営は主に阿波銀行が行い、信用保証業務は阿波銀保証、カード業務は阿波銀カード、コンサルティング業務は阿波銀コンサルティングなどが担当しています。

リース業


地域のお客さまに対して、設備投資等に関連するリース業務を提供しています。ファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引を通じて、企業の設備導入を支援しています。

収益源は、顧客からのリース料収入が中心となります。運営は、連結子会社である阿波銀リースが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。経常収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金など資金運用収益が増加したことが主な要因です。一方、経常費用は、円貨債券を中心に国債等債券売却損が増加したことなどから増加しました。結果として、経常利益は増加し、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を達成しました。過去数年間では、経常収益は概ね増加傾向にあり、経常利益・当期純利益も堅調に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 656 679 881 761 790
経常利益(億円) 127 161 154 166 179
当期純利益(億円) 85 111 102 113 132

(2) 損益計算書

当期は、貸出金利息や有価証券利息配当金など資金運用収益の増加により、経常収益が増加しました。経常費用は、円貨債券を中心に国債等債券売却損が増加したことなどから増加しました。この結果、経常利益は増加し、当期純利益も増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 761 790
経常費用 595 611
経常利益 166 179
当期純利益 113 132

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益は、前期比で増加しました。最も大きい区分は預金・貸出業務であり、次いで為替業務となっています。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 106 107
預金・貸出業務 79 80
為替業務 11 11
証券関連業務 7 7

(4) キャッシュ・フローと財務指標

阿波銀行は、預金及び借用金の増加により、営業活動によるキャッシュ・フローが大きくプラスとなりました。有価証券の売却及び償還による収入が取得による支出を上回ったことから、投資活動によるキャッシュ・フローもプラスを計上しています。配当金の支払い及び自己株式の取得などにより、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー △315 282
投資活動によるキャッシュ・フロー △446 20
財務活動によるキャッシュ・フロー △43 △49

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来培ってきた「堅実経営」を行是とし、「信用の重視」「地域への貢献」「お客さま第一」「人材の育成」「進取の精神」の5項目を経営方針として掲げています。「堅実経営」には、原理原則に基づき信用を重んじるとともに、良き伝統を守りながら未来に挑戦するという、時代の変化に積極的に対応する想いが込められています。

(2) 企業文化


伝統的営業方針として「永代取引」を掲げています。これは、世代を超えた息の永い取引を継続し、お客さまの永続的な発展に貢献するという考え方です。この方針のもと、地域やお客さまの成長・発展に貢献し続けることを重視しており、揺るがない行動や意思決定の軸として全役職員に共有されています。

(3) 経営計画・目標


長期経営計画「Growing beyond 130th」を展開しており、2026年3月期(単体)の経営目標として以下の数値を掲げています。

* 修正OHR:62%未満
* コア業務純益ROA:0.46%以上
* 当期純利益:133億円以上
* 当期純利益ROE:4.00%以上
* 株主還元率(連結):40%以上
* ESG投融資残高:2,000億円
* 女性役付者比率:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


経営計画の最終ステージ(3rdステージ)において、「永代取引の進化」「持続可能な地域社会への取組み」「活力ある組織と多様な働き方の実現」「経営基盤の強化」を基本戦略としています。特にお客さま感動満足の創造、人的資本経営、DXを起点としたイノベーション推進、事業領域の拡大を重点テーマとしています。

* 法人顧客へのコンサルティング力強化(資金繰り、事業承継、DX・GX等)
* 個人顧客へのファミリーサポート営業強化(資産形成支援)
* 対面・非対面チャネルのシームレスな連携
* ESG投融資の拡大と地域課題解決への貢献

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「永代取引」を支える人材の育成と、多様な人材が活躍できる環境づくりを基本としています。実務研修の拡充や専門人材の活用によるスキル向上、自律的なキャリア形成支援を行うとともに、女性やシニアを含む多様な人材が活躍できる「働きやすさ」と「働きがい」の両輪からダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 19.2年 7,390,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.1%
男性育児休業取得率 109.7%
男女賃金差異(全労働者) 53.3%
男女賃金差異(正規雇用) 64.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、職務別研修実施時間(693時間)、専門資格取得者(559名)、ダイアログ実施回数(104回/年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク・市場リスク


銀行業務において、取引先の経営状況悪化等による信用リスクや、金利・株価等の変動による市場リスクは業績に重要な影響を与えます。同社は「永代取引」を通じた経営実態の把握や、特定の業種・債務者への過度な集中回避に努めています。また、市場リスクについてはVaR法を用いた統合管理やストレステストを実施し、リスク管理を徹底しています。

(2) 気候変動に関するリスク


気候変動対応に伴う規制強化(移行リスク)や自然災害の激甚化(物理的リスク)は、投融資先の信用コスト増加や同社設備の被災につながる可能性があります。同社はシナリオ分析を実施し、移行リスクによる信用コスト増加額や、洪水等による物理的リスクの影響額を試算するなど、影響の把握と管理に努めています。

(3) システムリスク


業務に不可欠なコンピュータ・システムの停止、誤作動、サイバー攻撃等は、業務遂行への悪影響や信用失墜をもたらす重要なリスクです。同社はバックアップ体制の整備や「AWA-CSIRT」の設置によるサイバーセキュリティ管理態勢の強化など、対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。