百十四銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

百十四銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

百十四銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、預金・貸出などの銀行業を中心にリース業なども展開しています。直近の業績は貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により、前年比で増収増益を達成しました。今後も広域瀬戸内圏を基盤に、地域社会のウェルビーイング向上と持続的な成長を目指しています。


※本記事は、株式会社百十四銀行の有価証券報告書(第157期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 百十四銀行ってどんな会社?


預金・貸出などの銀行業を中心に、リース業やクレジットカード等の金融関連事業を展開する地方銀行です。

(1) 会社概要


1924年3月に高松百十四銀行と高松銀行が合併し設立されました。1948年に現在の百十四銀行に商号を変更し、1972年に東京・大阪証券取引所市場第二部、1973年に市場第一部へ上場しました。その後、クレジットカード業やリース業の子会社を設立し事業を拡大、2022年にはプライム市場へ移行しています。

従業員数は連結2,107名、単体1,872名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.89%
日本カストディ銀行(信託口) 5.90%
日本生命保険相互会社 2.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役頭取は森匡史氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
綾田裕次郎 取締役会長 1982年に同行に入行し、名古屋支店長、営業統括部長などを歴任。その後、常務執行役員、取締役頭取などを経て、2024年4月より現職。
森匡史 取締役頭取(代表取締役) 1989年に同行に入行し、明石支店長、秘書室長などを歴任。その後、営業戦略部長、執行役員経営企画部長、常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。
豊嶋正和 取締役専務執行役員兼CCO(代表取締役) 1985年に同行に入行し、経営企画部長などを歴任。その後、執行役員経営企画部長、常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。
多田和仁 取締役専務執行役員(代表取締役) 1990年に同行に入行し、神戸支店長などを歴任。その後、執行役員営業戦略部長、常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。
菅弘 取締役常務執行役員 1988年に同行に入行し、福岡支店長、丸亀支店長などを歴任。その後、執行役員今治支店長、常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
岩根正明 取締役常務執行役員 1994年に同行に入行し、水島支店長、秘書室長などを歴任。その後、市場国際部長、常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
小田英城 取締役常務執行役員 1990年に同行に入行し、人事部長、執行役員大阪支店長などを歴任。その後、常務執行役員を経て、2025年6月より現職。
岩瀬徹也 取締役常務執行役員 1991年に同行に入行し、経営企画部副部長、リスク統括部長などを歴任。その後、常務執行役員を経て、2025年6月より現職。
佐久間達也 取締役(監査等委員) 1986年に同行に入行し、秘書室長、執行役員経営企画部長などを歴任。その後、常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
對馬敬生 取締役(監査等委員) 1987年に同行に入行し、融資部長、地域創生部長などを歴任。その後、常務執行役員監査部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、山田泰子(元香川県立ミュージアム館長)、藤本智子(元香川大学理事・副学長)、小西範幸(青山学院大学大学院教授)、丸森康史(公益財団法人三菱経済研究所副理事長)、鬼頭誠司(元日本生命保険副社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、銀行業およびリース業、その他事業を展開しています。

(1) 銀行業


同行の主力業務であり、個人および法人顧客に向けて預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務などの金融サービスを提供しています。広域瀬戸内圏を中心に、全国の店舗網を活用して顧客の資産形成や資金調達を支援しています。

収益は貸出金から得られる利息や、各種手数料などから構成されています。事業の運営は百十四銀行が行っています。

(2) リース業


法人などの顧客に向けて、産業機械や情報通信機器、設備等のリースサービスを提供しています。企業の設備投資ニーズに対して、最適なファイナンス手段を提案し、経営の効率化を支援しています。

収益は、顧客に賃貸する機器や設備のリース料から得られています。事業の運営は百十四リースが担当しています。

(3) その他事業


クレジットカード業務や信用保証業務などの金融関連事業に加え、人材派遣、データ処理受託、不動産の賃貸および管理業務などの非金融事業を幅広く展開しています。

収益は、クレジットカードの各種手数料、保証料、システム開発の受託料や人材派遣の利用料などから得られています。運営は百十四ジェーシービーカード、百十四システムサービス、百十四人材センターなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の経常利益および当期利益は、一時的な増減はあったものの、全体として右肩上がりの成長を見せています。特に直近の2期間では大幅な増益を達成しており、収益基盤の強化が順調に進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 152億円 133億円 146億円 199億円 291億円
当期利益(親会社所有者帰属) 108億円 83億円 89億円 129億円 180億円

(3) セグメント収益


主力の銀行業セグメントが貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により、大幅な増収増益を牽引しました。また、リース業もリース料収入の増加が寄与し、好調に推移しています。全体として各事業が堅調なパフォーマンスを見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 809億円 990億円 185億円 277億円 28.0%
リース業 70億円 75億円 3億円 4億円 5.6%
その他事業 22億円 21億円 16億円 15億円 72.9%
連結(合計) 900億円 1086億円 199億円 291億円 26.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスのため、「事業検討型」のキャッシュ・フローとなっています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1307億円 -1401億円
投資CF -941億円 1909億円
財務CF -38億円 -66億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は6.6%といずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客さま・地域社会との共存共栄」「活気ある企業風土の醸成」「健全性の確保と企業価値の創造」を経営理念として掲げています。この理念のもと、すべてのステークホルダーにとって価値のある企業であり続けるため、「健全性の確保」と「企業価値向上」の実現を通じて、真に信頼される銀行づくりを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、役職員が大切にしたい価値観や考え方を「百十四銀行 行動指針」として定めています。「対話を密にし、相互の信頼を深めます」「プロフェッショナルとして成長するための努力を惜しみません」「多様性を理解し、人権を尊重します」などの指針を掲げ、期待を超える行動の実践や活気ある職場環境の構築に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、「長期ビジョン2030」の達成に向けた指標として、ウェルビーイング、経営基盤、地域インパクトの3つを測る「サステナビリティ指標」を設定しています。経営の持続可能性を高めるため、新中期経営計画において具体的な数値目標を掲げ、段階的な達成を目指しています。

・連結ROE:8%以上
・連結自己資本比率:11.5%~12.5%
・単体コアOHR(コア業務粗利益ベース):55%程度
・親会社株主に帰属する当期純利益:350億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「総合コンサルティング・グループ」の進化により、地域とのウェルビーイングな社会の創造を目指しています。新中期経営計画では、「人財価値創出に挑戦」「金融DX推進に挑戦」「地域経済成長に挑戦」「経営基盤強化に挑戦」の4つのテーマを掲げ、地域ごとの特性に応じた「選択と集中」の実践や外部との協働により、新たな価値創出に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略と人事戦略の連動により人的資本の最大化を図るため、多様な働き方や能力開発を積極的に支援しています。戦略的な人員配置や採用手法の多様化を進めるとともに、行内資格制度「114マイスター制度」や「行内留学制度」などを通じて、顧客や地域の課題解決に熱意をもって取り組むプロフェッショナル人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 17.7年 7,211,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.6%
男女賃金差異(正規雇用) 63.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 41.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役席者比率(34.5%)、エンゲージメントスコア(68pt)、CO2排出量削減率-2013年度比-(75.6%削減)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスクと貸倒引当金の増加


日本や世界的な景気後退、インフレの進行等により取引先の業績が悪化した場合、与信費用が増加するリスクがあります。また、大口与信先の経営支援の長期化等により、多額の貸倒引当金を計上する可能性があり、同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。

(2) 金利ある世界における市場変動リスク


金利環境の変化に伴う競争激化やイールドカーブの変化によって、資産・負債構成が変動し、スプレッドの縮小や損益への悪影響が生じるリスクがあります。さらに、地政学リスク等に起因する急激な市場の変動が有価証券の評価損益を悪化させる可能性も想定されます。

(3) 地域経済の縮小に伴う成長機会の喪失


地域の人口減少、少子高齢化、経済の低迷が進行することで、取引先数の減少や個人預金の流出などビジネス規模が縮小するリスクがあります。これに対応するため、同社は総合コンサルティング機能の強化や新たな領域への事業拡大に取り組んでいますが、成果が遅れた場合は収益に影響が及びます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。