大分銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大分銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場。銀行業務を中心に、リース、クレジットカード業務などを展開しています。直近の業績は、資金運用収益や役務取引等収益の増加により、経常収益が増加しました。利益面でも、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに増益となり、堅調な業績トレンドを示しています。


※本記事は、株式会社大分銀行 の有価証券報告書(第219期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大分銀行ってどんな会社?


大分県を主要な営業基盤とする地方銀行です。預金・貸出等の銀行業務を中心に、リースやクレジットカード等の金融サービスを展開し、地域経済の発展に寄与しています。

(1) 会社概要


1893年に創業し、1927年に二十三銀行と合併して商号を大分合同銀行に変更、1953年に現在の商号となりました。1973年に東京・大阪・福岡の各証券取引所に上場し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。近年では、2022年に野村證券と金融商品仲介業務における包括的業務提携を締結するなど、サービス拡充を進めています。

2025年3月31日現在の従業員数は連結で1,653人、単体で1,526人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は大手生命保険会社の明治安田生命保険です。第3位には資産管理を行う日本カストディ銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.21%
明治安田生命保険相互会社 4.48%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役頭取は高橋靖英氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
後 藤 富一郎 取締役会長(代表取締役) 1978年4月入行。常務取締役経営戦略本部長、専務取締役経営戦略本部長などを経て、2016年4月取締役頭取に就任。2024年6月より現職。
高 橋 靖 英 取締役頭取(代表取締役) 1985年4月入行。取締役総合企画部長兼収益管理室長、常務取締役経営戦略本部長、専務取締役経営戦略本部長などを経て、2024年6月より現職。
岡 松 伸 彦 専務取締役経営戦略本部長 1984年4月入行。執行役員中津支店長、常務執行役員別府支店長、常務執行役員本店営業部長、常務取締役などを経て、2024年6月より現職。
佐 藤 泰 則 常務取締役営業統括本部長 1987年4月入行。執行役員法人営業支援部長、常務執行役員本店営業部長などを経て、2023年6月より現職。
池 田  雄 常務取締役 1988年4月入行。執行役員総合企画部長兼収益管理室長、常務執行役員本店営業部長兼東支店長を経て、2024年6月より現職。
和 田 久 継 取締役 1976年3月三和酒類入社。同社代表取締役社長、代表取締役会長、宇佐市観光協会会長などを経て、2023年6月より現職。
相 良 雅 幸 取締役監査等委員 1982年4月日本銀行入行。2015年6月当行入行。執行役員監査部長、執行役員リスク統括部長、常勤監査役を経て、2021年6月より現職。
平 川 浩 行 取締役監査等委員 1986年4月入行。営業戦略部長、小倉支店長、府内産業代表取締役社長を経て、2021年6月より現職。
河 野 光 雄 取締役監査等委員 1981年3月公認会計士登録。河野公認会計士事務所開設。ジョイフル社外監査役などを兼務し、2021年6月より現職。
大 呂 紗智子 取締役監査等委員 2001年4月農林水産省入省。2010年12月弁護士登録。弁護士法人アゴラ勤務を経て、2021年6月より現職。
山 本 章 子 取締役監査等委員 1981年4月大分県庁入庁。生活環境部長などを経て、2020年6月当行取締役。2023年6月より現職。


社外取締役は、和田久継(三和酒類相談役)、河野光雄(公認会計士・税理士)、大呂紗智子(弁護士)、山本章子(元大分県生活環境部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」、「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


本店を含む本支店87ヵ店、出張所6ヵ店において、預金、貸出、為替、有価証券投資、金融商品仲介、保険商品の窓口販売等の業務を行い、地域に密着した営業活動を展開しています。また、銀行の従属業務として経理関係計算業務等も行っています。

主な収益源は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および為替や金融商品販売に伴う手数料収入です。運営は主に大分銀行が行い、経理計算業務は大銀オフィスサービスが担当しています。

(2) リース業


地域におけるリースに関するニーズに対応し、各種リース業務を行っています。企業の設備投資支援などを通じて地域経済に貢献しています。

顧客からのリース料収入が主な収益源です。運営は連結子会社の大分リースが行っています。

(3) その他


銀行業およびリース業以外の金融サービスとして、クレジットカード業務、債務保証業務、コンピューター関連業務、投融資業務(ベンチャーキャピタル)などを展開しています。個人・法人それぞれの多様なニーズに対応しています。

クレジットカード会員からの年会費や手数料、ローン利用者からの保証料、システム受託に伴う手数料などが収益源となります。運営は、大分カード、大分保証サービス、大銀コンピュータサービス、大銀経済経営研究所、大分ベンチャーキャピタルなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。経常収益は、有価証券利息配当金、預け金利息及び貸出金利息の増加等により、前連結会計年度に比べて増加しました。一方、経常費用は、預金利息の増加等により増加しました。この結果、経常利益は増加し、親会社株主に帰属する当期純利益も増加しました。過去5年間で見ると、経常収益、経常利益、当期純利益はいずれも増加傾向で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 5,771 5,552 7,291 7,324 7,792
経常利益(億円) 677 725 780 908 1,109
当期純利益(億円) 362 538 541 654 756

(2) セグメント収益

当期は、有価証券利息配当金等の増加により経常収益が増加しました。経常費用は、預金利息の増加等により増加しましたが、経常収益の増加がこれを上回ったため、経常利益は増加しました。当期純利益も、経常利益の増加等により増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 7,324 7,792
経常費用 6,416 6,683
経常利益 908 1,109
当期純利益 654 756

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益は、当期は前期比で減少しました。その中でも、最も大きい区分は「預金・貸出業務」であり、次いで「為替業務」となっています。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 29 11
預金・貸出業務 29 11
為替業務 0 0


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均(プライム市場9.4%)を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.6%で市場平均(プライム市場非製造業24.2%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「地域社会の繁栄に貢献するため銀行業務を通じ最善をつくす」を経営理念として掲げています。また、長期ビジョンとして「Vision2031『地域の持続可能性を高める価値創造カンパニー ~ステークホルダーとともに~』」を定めており、地域やお客さまの課題解決を通じて、持続的な成長と地域社会の発展を目指しています。

(2) 企業文化


「感動を、シェアしたい。」をブランドスローガンとし、行員一人ひとりが使命感を持って業務に取り組む姿勢を重視しています。社会課題の複雑化や環境変化に対応するため、「挑戦」を「あたり前」にする風土の醸成を目指し、従業員エンゲージメントの向上やダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2024」では、「私たちにしかできない『金融+α』~“挑戦”を“あたり前”に~」を基本テーマとしています。最終年度である2027年3月期の目標として、以下の指標を掲げています。

* 連結当期純利益:80億円以上
* 連結ROE:4.0%程度
* 連結自己資本比率:10%程度
* 金融商品仲介資産残高:7,000億円(2030年度目標)
* SDGs投融資累計額:2,500億円以上
* CO2排出量削減率:65%以上削減(2013年度比)
* 従業員エンゲージメント:85%以上
* 女性管理職比率:5.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「Growth(成長)」「Region(地域)」「Transformation(変革)」「Sustainability(持続可能性)」の4つの基本方針に基づき施策を展開しています。コアビジネスの深化やソリューションビジネスの進化、デジタルの利活用による構造改革、サステナビリティ経営の基盤強化に注力し、地域やお客さまの課題解決に取り組むことで、企業価値向上と地域価値創造の両立を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員は財(たから)」という考えのもと、自主自立の気概にあふれ、環境変化に適応できる人材の育成を目指しています。経営戦略実現に向けた人材ポートフォリオの構築、データ活用による適所適材の配置、新卒・キャリア採用の強化を行うとともに、キャリア自律を促す支援や、挑戦を推奨するカルチャーの醸成、多様な働き方の推進など、働きがいのある職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.1歳 16.2年 6,771,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 87.7%
男女賃金差異(全労働者) 43.6%
男女賃金差異(正規雇用) 63.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理・監督職比率(18.6%)、キャリア開発支援に関する従業員満足度(86.7%)、有給休暇取得率(67.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク


国内外の経済動向や取引先の経営状況悪化等により不良債権が増加し、信用コストが増大する可能性があります。2025年3月末時点の不良債権比率は1.69%であり、十分な引当を行っていますが、予期せぬ事象により業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場リスク(金利・為替・価格変動)


金利、為替、株式等の市場変動により、資産・負債の価値や収益が変動するリスクがあります。特に、預貸金の金利改定タイムラグによる利鞘縮小や、保有する有価証券の価格下落による評価損・減損の発生は、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 流動性リスク


財務内容の悪化や市場の混乱等により、必要な資金の確保が困難になる、または著しく不利な条件での調達を余儀なくされる可能性があります。これにより、資金繰りや損益に悪影響が生じるおそれがあります。

(4) オペレーショナル・リスク


事務処理のミスや不正、システム障害、サイバー攻撃、法令違反、自然災害などにより、業務運営に支障が生じたり、損害を被るリスクがあります。特にシステムのダウンや情報漏洩は、信用の失墜や損害賠償等につながり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。